【感想】幻坂

有栖川有栖 / 角川文庫
(40件のレビュー)

総合評価:

平均 3.4
3
9
19
1
0
  • 余韻じんわりな大阪怪談集

    大阪を舞台にした怪談集。大阪にある7つの坂(天王寺七坂)をモチーフにした現代もの7編と、芭蕉や藤原家隆が出てくる歴史もの2編の、計9編が収録されています。
    怪談といってもあまり怖くはなく(個人的に「口縄坂」だけはぞわっときましたが)、幽霊などの怪異を織り込んではいるものの、メインとなるのはあくまでも人と人とのつながりや心の動きです。また、どの短編もラストが印象的で、最後の行を読み終えたあともじんわり心に残るものがあります。作品によって、それは温かかったりほろ苦かったりするのですが……。
    特に好きなのは、切ないながらも希望の見えるラストが魅力の「真言坂」と、こぢんまりとした料理屋で交わされる会話が楽しい「天神坂」です。
    著者のミステリ作品などに比べて文体が渋め(重め?)ですが、この本の内容には合っていると思います。芭蕉の一人称で語られる「枯野」は、当時の空気が感じられる味わい深い1編でした。
    続きを読む

    投稿日:2016.02.25

  • ただの怪談で終わらない、幻想的物語

     大阪には何度も行ったことがありますし、四天王寺界隈も歩き回ったことがあると思うのですが、天王寺七坂は、全く存じ上げませんでした。坂道というのは、タモリならずとも魅力的な場所ではあります。それにしても、小説作成のアプローチとして、こんなスタイルもあるのですね。
     それに、あとがきや解説にもあったとおり、大阪を舞台とした怪談って、考えてみれば思い当たりません。近くに京都、奈良という、そういった物語にはおあつらえ向きの古都が近くにあるのと、井原西鶴の影響が大きいのかもしれませんね。ただ考えてみれば、猥雑さが十分ある土地柄。それに古い歴史がある街ですから、そこに何かしらが息づいていても、おかしくはありませんよね。
     ツクヨミさんがレビューで書いておられるとおり、どの短篇も味わい深いものでありました。それぞれ語られる時代が様々なのも計算尽くされた感があります。
     その中で、私にとって一番不思議感が残ったのは、「天神坂」であります。あれは、登場人物全員が、あやかしであったのでしょうか?う~ん、後を引きますねぇ。
     余韻たっぷりの短篇集でありました。
    続きを読む

    投稿日:2017.09.30

  • 大阪の人には、特にたまらないと思われる上質な短編集

    天王寺七坂+2編を加えた短編集。作者は、あとがきで『大阪を舞台とした怪談』と記しているが、いづれも読み応え十分なファンタジー作品になっている。決して怪談などと呼ぶようなものではなく、上質この上ないファンタジーである。有栖川氏といえば推理作家のイメージが強いが、氏の別の側面を見たようで是非とも読んで欲しい佳作。続きを読む

    投稿日:2018.02.06

  • 改めて大阪の良さを知ることができました。

    さすが、「大阪ほんま本大賞」受賞作。
    単に名作というだけでなく、大阪の「隠れガイドブック」 ともいえる秀作だと思います。
    作品片手に、悠久の歴史ある天王寺七坂を巡りたいと思っています。

    投稿日:2018.03.09

ブクログレビュー

"powered by"

  • すず

    すず

    有栖川有栖ってミステリーのイメージだったけど、こういう艶っぽい文体の怪談書くんだな。あまり話が趣味ではなかったものも多かったけど、同僚だった男の話とかじんわりいい話もあってよかった。

    投稿日:2023.12.23

  • まさお

    まさお

    有栖川ミステリ作品が好きなのですが、この作品はミステリーではなく怪談。
    文章の美しさ、読みやすさはさすがです。
    大阪の地理、古典文学、松尾芭蕉、極楽浄土思想などについて知識と関心がない方は読むのは辛いかもしれません。(私は東京在住で古典も日本史も浅学なので、無理矢理読みました)続きを読む

    投稿日:2023.08.03

  • こんちゃん

    こんちゃん

    昔読んだ本を再読しました。
    同著者の濱地健三郎が、確かこの本のどこかの坂で出てきたなぁと思い出して。
    いました。濱地さん、ご健在で。呪える~が文庫化したら買おうとしている身です。
    幻坂も短編集で読みやすいので、まだ読んでない方は是非。続きを読む

    投稿日:2023.04.28

  • 近藤真弓

    近藤真弓

    大阪もこんな風情のある場所があるんですね。
    読みながら、訪れてみたいなーと思う場所が多々ありました。

    投稿日:2023.01.07

  • みんみん

    みんみん

    大阪の天王寺の七坂にまつわるあやかしの話。私は、生玉さんが好きで、何度かお参りに行きました。御朱印ももらいました。真言坂は知らなかったな。坂は歩いているんだけど、あの坂が天王寺七坂なんだ。この話のように、幻が見たくなりました。幻と話してみたい。けど,婚約者にも見えたなら,幻ではないのかも。七坂では、本当に不思議なことが起こるかも知れない。物語の背景に触れながら歩けば、何かの不思議に出会えるかも。続きを読む

    投稿日:2022.11.06

  • caninha

    caninha

    有栖川さんの幻想怪談短編集。濱地さんが時折出てくるのもいい。個人的には「真言坂」の話が一番好き。
    実際の坂の景色も見てみたくなりました。

    投稿日:2022.04.06

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。