【感想】脳が認める勉強法

ベネディクト・キャリー, 花塚恵 / ダイヤモンド社
(47件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
11
15
9
2
1
  • 勉強のみだけでなく、人類が脳の解明の歴史も学べるところが良いです

    この本の良いところは、勉強法のみならず脳に関わる研究の歴史も学べるところです。
    そして、この歴史の部分で何度歯ぎしりしてしまったか。

    エビングハウスの「忘却曲線」は有名ですが、一方のバラードの「レミニセンス」はほぼ無名です。
    簡単に説明すると「忘却曲線」とは時間が経てば、思い出せる記憶が段々減っていくことを実験でグラフ化したものに対し、「レミニセンス」は「一度忘れたことでも、何もしなくても思い出す」という現象のことです。
    このバラードの「レミニセンス」発表後しばらくは、追試されてましたが、「幻想だよ」と数十年放置されてしまいました。そんな話が珍しくありません。

    この手の話は、学者の話を無批判に信じるのは危険だなと感じます。そして、そういう考えを持つ人が新しい発見ができるということも、教えてくれます。

    この本の構成としては、脳はどうやって記憶をするのか? その仕組みはどうなってるの?から始まり。
    脳科学の歴史を踏まえて、勉強法を紹介していくスタイルとなっています。

    勉強時間、復習の間隔、勉強をする上での環境、反復練習、小テストの活用方法、考えなくても学べる方法が紹介されてます。これは、学習側のものだけで無く、教育指導していく人たちにも読んで頂きたい本です。

    学生時代にこの情報は知りたかったものが一つあります。それは「復習するときは、授業の時にとったノートは最初は見ないで行うこと」です。
    いわゆる、記憶を強化するのは「思いだそう」とする時なので、ノートを最初に見てしまうと効果が薄れてしまうのです。
    そして、「流暢性の幻想」にも気をつけたいところ。いやゆる、下線を引く、マーカーを付ける、覚えた直後に同じ勉強をする、他人が作ったまとめで理解する。これらは、「自分が簡単に覚えたから、もう知っている」という幻想を抱いて、本番のテストで大失敗する原因となります。

    また、絵画や美術の審美眼を鍛える、画期的な方法もこの本に載っています。驚くことに審美眼を鍛えるには考えることは必要がないのです。これも、驚くべき脳の仕組みを利用しています。

    今まで、勉強しても身につかなかったのは、けして頭が悪いわけではないのです。原因はたった一つ。

    ”勉強をして「覚えられない」原因の大半は、勉強方法が間違っていた。”

    この本をそれを教えてくれています。
    人間、生きている限り、学ぶことをから逃げることができません。したがって、今からでも正しい学習方法を知ることはとても有益なことです。

    一人でも多く、この本を手にとって頂けると幸いです。
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    投稿日:2016.04.02

ブクログレビュー

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  • iXao

    iXao

    この本を読んでると“簡単な”問題しか解いてこなかったんだなと思った。得た知識を応用し、使うなんてそんなことを意識したことはない。

    投稿日:2023.12.03

  • 伊賀嵐山

    伊賀嵐山

    正直まねしづらい。
    できたらそれをやるやり方が知りたいと読んでいて思ってしまう。自分には合わなかった

    投稿日:2023.10.11

  • なおきち

    なおきち

    このレビューはネタバレを含みます

    めちゃくちゃためになった。
    一度覚えたことは必ず脳内にある。しかし、それを探索する能力が長けているか欠けているかで思い出せるのかが決まる。
    つまり、探索能力を伸ばすことが大事。
    もう一回読む

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    投稿日:2023.02.12

  • basil1127

    basil1127

    なんでこの本を買ったのか忘れてしまったのだが、ずっと本棚にあって放置されていたのを最近になって読み始め、ゆっくり読み進めてようやく読了。

    タイトルがあまりにもなんていうか「あやしい自己啓発本」っぽい邦題なのでちょっと警戒していたのだが(じゃ何で買ったんだw)、これは面白かった!

    原題の「How We Learn」、つまり「われわれはどのようにして学習するのか」の通り、学習に関するさまざまな研究や理論を紹介している極めて真面目で実は硬派な本だ。
    楽して頭がよくなる!勉強ができる裏ワザ!みたいなのを期待するとつまらないかもしれないが、実はよく読むと「学習の研究結果から理に適った、効率的な記憶や勉強法」がふんだんに書かれていることがわかる。

    忘却曲線、分散学習、ツァイガルニク効果、などなど「これ受験前に読んでおけばよかった…」という内容がもりもり。睡眠相と学習内容の関係などは、理論上はそうかもしれないけどそこまでコントロールするのは難しいでしょ、というツッコミを入れたくなったりはするものの読んでいて楽しい。

    集中してひとつのことを繰り返すよりはいろんなことを折り混ぜて練習する方が獲得にはよい、とか生活の中で実感することも書いてあったりして、なるほどなあと思う(私の場合、ひとつの曲を覚えるのに何度も繰り返し聴くより別の曲も混ぜて聴く方が覚えやすい気がしていたので)。

    著者はベテランのサイエンスライターとのこと。
    翻訳もよいのだろうが、原文も読みやすい、読者に親切な文章なのだろうなと推測できる、わかりやすくて興味深い一冊だった。
    技能の習得などにも有用なので、何かを学ぶ機会のある人にはお勧めの本。
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    投稿日:2022.12.21

  • 狐舞

    狐舞

     同じ場所で出来るようになるまで集中して反復演習するという勉強法が実は間違いであった。一度忘れる、時間を分ける、テストの前にテストをする、場所を変える、騒がしい場所が良い、中断する、一つのことをしない、別のことをやる、寝る。これが記憶の研究から分かった正しい勉強法である。
     こうやって並べると、よくないとされていたことが実は正しかったということになる。ところで、行き詰ったときに気分転換でコーヒーを飲んだり、あきらめて寝たりした後、悩んでいたことが嘘のように理解できるようになったという経験があるのではないかと思う。これは「中断」した後も脳は考え続けており、しかも無意識のうちにさまざまな検討をしているからだという。また、思い出すときに記憶が定着しやすいということも分かっており、それが「一度忘れる」「時間を分ける」ということであり、強制的に思い出す状態を作り出すのが「テストの前にテストをする」ということになる。「場所を変える」「騒がしい場所」は思い出すための取っ掛かりを増やすことにつながる。
     従来の勉強法である反復演習も間違ってはいないが、これは0を1にするのには適しているが1を10にするのには向いていないということである。また、同じ場所で同じことを繰り返すと「その場所」でなければできなくなってしまう。場所によらず、さらに応用力を身に付けるためには「場所を変える」「一つのことをしない」「別のことをやる」必要があるということである。
     科学的な裏付けによってこれまで勉強のときにやってはいけないとされていたことが、実はやった方が良いものであったというのは非常に興味深い。中断してコーヒーを飲む、敢えて寝てしまうなどは無意識のうちに正しいことをやっていたことになる。「さあやるぞ」といって机に向かうよりも成り行きに任せるような勉強の方が案外うまくいくのかもしれない。
    続きを読む

    投稿日:2022.08.28

  • shohey

    shohey

    このレビューはネタバレを含みます

    邦題:How we learn
    内容紹介
    最新の科学研究によれば、これまで定説とされてきた勉強法は多くの場合に間違っているという。では、どうすれば脳は最も効率よく学べるのか。米三大紙『ニューヨーク・タイムズ』の人気サイエンスレポーターが、著名科学者らへの取材をもとに、脳をフルパワーで働かせる記憶法・勉強法を徹底解明。全米で話題の一冊!
    目次
    はじめに ── 余白を広げる
    Part 1 脳はいかに学ぶか
    第1章 学習マシンとしての脳
    第2章 なぜ脳は忘れるのか
    記憶のシステムを機能させる忘却の力
    忘却に備わっているスパムフィルター機能
    覚えるために忘れる理論
    エビングハウスが生みだした「忘却曲線」
    「学習の科学」の扉を開いた実験手段
    一度忘れた記憶は時間がたつと回復する!?
    p46
    「レミニセンス」:覚えていると思っていなかった事実や言葉が浮かび上がってくる性質
    ようやく認められたバラードの「レミニセンス」
    記憶には「保存」と「検索」の二つの力がある
    古くなった記憶を保存しておくメリット
    認知科学が明らかにした「記憶の基本原理」
    Part 2 記憶力を高める
    第3章 環境に変化をつける
    いつもの場所、静かな環境で勉強するのは非効率
    「勉強の儀式」を守ろうとする人々
    勉強時の環境を復元するとより多く思いだせる
    音楽を聴きながら勉強するほうが効率的?
    勉強の体験は「記憶の保持」に影響を与える
    「気分」は学習にどう影響するのか
    マリファナを使ったアメリカ政府の実験
    「強い手がかり」ほど思いだす効力が大きい
    複数の知覚を関連づけるのがカギ
    勉強の場所を変えたほうが思いだしやすくなる
    手順や環境に変化をつければ「学ぶ力」は強化できる
    第4章 勉強時間を分散する
    一度に勉強するより分けたほうが効果的
    「分散学習」は一夜漬けに勝る
    なぜ分散効果は世の中に伝わらなかったのか
    バーリック家4人の研究
    世界一の外国語習得法とは?
    分散学習のソフトウェア「スーパーメモ」の誕生
    難しい題材を覚えるときの勉強法
    試験までの期間に応じて学習間隔を変える
    試験が1週間後なら1〜2日あけて勉強する
    第5章 無知を味方にする
    最善のテスト対策は、自分で自分をテストすること
    テストには悲惨な結果がつきもの
    テストを失敗させる「流暢性の幻想」
    p124
    脳の記憶を掘り起こす作業が大変になるほど、学習の力(検索と保存の力)が高まる。流暢性はこの方程式の裏返しだ。事実を簡単に思い出せるようになるほど、学習の力が衰える。勉強して覚えた直後に復習しても意味はない。記憶に何のメリットも生まれない。
    テスト対策のスキルを高める「自己テスト」
    「覚える時間」と「練習する時間」の理想的な比率とは?
    p129
    最初の1/3の時間を覚えることに使い、残りの2/3を暗唱の練習に使え
    ゲイツの研究を進展させたスピッツァー
    テストをする最高のタイミングはいつか?
    どちらの文章を多く思いだせるか?
    実験で明らかになった「自己テスト」の効果
    知らないことをテストする「事前テスト」
    なぜ「事前テスト」が学習効率を高めるのか
    テストはきわめて強力な学習テクニック
    Part 3 解決力を高める
    第6章 ひらめきを生む
    アイデアの「孵化」が問題解決のカギ
    パズルを使った「洞察問題」
    頭に浮かんだアイデアを捨て、視野を広げる
    洞察力はどのように生じるのか
    問題解決の四つのプロセス
    脳は休息中も問題と向きあい続ける
    「孵化」段階でも脳はヒントを探している
    「孵化」の助けとなる脳の2つの働き
    「孵化」からひらめきを得るには?
    忘却は問題解決にも役立つ
    一歩引いて周囲を見回す
    休憩は問題を解くための貴重な武器になる
    第7章 創造性を飛躍させる
    無から有をつくりあげる「抽出」のプロセス
    「孵化」の適用範囲を広げる
    「抽出」が創造性を飛躍させる
    留学生ツァイガルニクが選んだ研究テーマ
    人は、何かを割り当てられると完了させたくなる
    p207
    邪魔が入るという「刺激」により、その経験が記憶に残りやすくなる
    「作業を完了させたい欲求は、最初のうちはうわべだけのものかもしれない。しかし、その作業に夢中になるうちに、本物の欲求が生じる」
    「ツァイガルニク効果」と目標の関係
    p209
    ツァイガルニクの研究により、脳には目標に関して二つのバイアス(本能ともいえる)が備わっていることが明らかとなった。一つは、割り当てられた作業に着手すると、たとえ意味のない作業でも、それを心理的に目標に感じるようになるというもの。そしてもう一つは、作業に没頭しているときに邪魔が入ると、その作業が記憶にとどまる期間が長くなることだ。
    喉が渇いていると何が目に入るのか
    「ツァイガルニク効果」を目標達成に活用する
    p215
    「目標の達成に向けて行動を起こすと、それが最優先事項となり、知覚、思考、言動が突き動かされる」(イェール大学心理学者ジョン・バー)
    「チャンスはそれに備えた頭を好む」(フランス人微生物学者ルイ・パスツール)
    「チャンスはそれに意識を向けた頭を満足させる」(著者)
    「抽出」の過程を可視化したダイヴリーのカリキュラム
    p219
    ダイヴリーは、自分の作ったカリキュラムが抽出(彼女は「孵化」と呼んだ)を妨げていると考えた。1本の小論を書くのに、学生に与えられた期間は2週間。そのわずかな時間で、廃棄物処理、デイケアが子供に与える影響、ドラッグの合法化といった難しく扱いづらいテーマを理解しないといけなかった。要するに、それらのテーマについて熟考する時間がないのだ。当然、抽出のために中断することも許されない。
    翌学期のクラスでは、学期中に小論を6回書くという構成を廃止し、次々に講義で扱うことを変えた。構成は変わっても、学生には同じ量の文章を書くことを要求した。ただし、書く内容は以前とは全く違う。
    まず、学期の終わりに一つのテーマで小論を一本書いて提出することを課した。ただし、その調査の過程において、5回の「事前課題」も課した。調査という経験そのものを文章にさせるのだ。秘湯は専門家にインタビューしたときのことを書く。一つは、小論のテーマのキーワードや、そのテーマで議論となっている場所を明示する。一つは、そのテーマの反対派の意見や反応について書く。また、調査の間日記をつけることも要求した。(中略)
    こうした工程(事前課題と日記)を設けたのは、学期の最初から最後までずっと、小論のテーマを学生の頭から離れさせないようにするためだ。
    立ち止まることから「抽出」が始まる
    p223
    創造性を助けてくれる天使や女神のささやきをもらっている人は誰もいない。抽出できるかどうかは油断のなさの問題だ。
    抽出とは「意識下とも無意識下とも呼べない場所」でアイデアを漬け込むことだ(スティーブン・キング)
    第8章 反復学習の落とし穴
    別のことを差し挟む「インターリーブ」の威力
    反復練習に対する根強い信頼
    反復練習の効果を否定した「お手玉の実験」
    p231
    「変化を取り入れた練習が、運動スキーマ(一つのまとまりとしての動きの記憶)の初期形成を促進すると思われる」
    変化を取りいれた練習が本番の応用力を高める
    p237
    「一つのことを繰り返し練習させないようにすれば、人は絶えず調整せざるをえなくなる。それにより、変化全般に対応する器用さが身に付き、ひいては個々の技術に磨きがかかる」
    p238
    子供のころ、練習では素晴らしいのに、本番になると平凡な成績しか出せない子が周りに必ずいた。
    反復練習を重ねると向上のスピードは遅くなる
    p241
    「体系的に変化を取り入れた練習」
    「分散効果」:勉強時間を分散させる
    「背景事情を変える」
    「覚えるために忘れる理論」
    小さな差を行き来させる
    邪魔を入れる学習は美的判断にも影響を及ぼす
    学習の基本原則となった「インターリーブ」
    p247
    「インターリープ」:学習中に関連性はあるが違う何かを混ぜる
    「インターリーブ」が数学の理解を深める
    数学の問題を解いてみよう!
    「インターリーブ」でアクシデントに強くなる
    Part 4 無意識を活用する
    第9章 考えないで学ぶ
    五感の判別能力を学習に活用する
    目利きは何を読みとっているのか
    膨大な視覚情報から「チャンク」を読みとる能力
    知覚した情報はどう区別されるのか
    五感は自ら学習する
    知覚学習の可能性を広げたPLM
    学校で実証されたPLMの効果
    自分ひとりでも知覚は鍛えられる
    何も考えていなくても知覚は学んでいる
    第10章 眠りながら学ぶ
    記憶を整理・定着させる睡眠の力を利用する
    謎に包まれた睡眠の世界
    睡眠の無秩序を説明しようとする試み
    「レム睡眠」の発見
    レム睡眠とノンレム睡眠の5段階
    睡眠をとると正答率が上がる
    睡眠は学習テクニックの効果を増幅させる
    睡眠の各段階で何が起きているか
    睡眠とは学習である
    おわりに ── 脳は狩猟採集を忘れていない
    p326
    集中している状態は、見た目的にも感覚的にも、世間で言われているようなものとは限らない。集中している状態には、休憩や気晴らしが含まれることもあるかもしれない。別のことが頭に浮かぶこともあるかもしれない。
    p335
    結局は、あなたのすることすべてが学習なのだ。
    付録 ── 学習効果を高める11のQ&A
    原注
    索引
    著者
    ベネディクト・キャリー(Benedict Carey)
    『ニューヨーク・タイムズ』紙サイエンスレポーター。
    コロラド大学卒業後、ノースウェスタン大学大学院でジャーナリズムの修士号を取得。フリージャーナリストを経て、『ロサンゼルス・タイムズ』紙の記者として脳科学、医療、健康の記事を執筆。2002年にはミズーリ大学ライフスタイル・ジャーナリズム賞を受賞した。2004年より『ニューヨーク・タイムズ』紙の記者となり、神経科学、精神医学、神経学、日常の心理学を主なテーマとして活動している。読者からのメールがもっとも多い人気記者のひとりで、25年にわたって科学と健康の記事を書き続けている。
    訳者
    花塚恵(はなつか・めぐみ)
    翻訳家。福井県福井市生まれ。英国サリー大学卒業。英語講師、企業内翻訳者を経て現職。主な訳書に『決める』(ダイヤモンド社)、『世界トップ3の経営思想家によるはじめる戦略』(大和書房)、『米海軍で屈指の潜水艦艦長による「最強組織」の作り方』(東洋経済新報社)、『スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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    投稿日:2021.12.31

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