【感想】狭小邸宅

新庄耕 / 集英社文庫
(96件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
19
34
29
6
0
  • 喜怒哀楽ならぬ、怒哀喜哀?面白さがギュッと詰まってます!

    私のスマホで289ページ。でも内容はそれ以上!密度の濃い小説を読んだなぁと思います。

    いま、ドラマで『家売るオンナ』をやっていて、それがとても面白いので、こちらの本を読むことにしました。私は一軒家に住んだことがないのですが、学生時代住宅展示場でバイトしてたことがあります。
    そこで営業マンて大変だなぁと思っていたのですが、本作はその斜め上行く過酷さ。社長、部長はほとんどヤ○ザです。1日で胃に穴が空いちゃうよ…。

    しかし、高学歴でこれという希望もなく不動産屋に入社した松尾。大学時代の仲間は大企業に就職していたり、院に進んだり。怒鳴られ蹴られ家を売れないと人間扱いされない自分の現状と比較して、松尾の心はやさぐれていきます。なにかというと出身大学を引き合いに出されてネチネチ言われるし。怖すぎる。

    でも、松尾がお荷物の狭小住宅の販売に成功した時は、私も一緒に「うおっしゃぁぁ!」という気持ちになりました。でもこれは初めの一歩。これから松尾はここにいる限り家を売り続けなければなりません。

    時々街中で、「この家薄っ。狭っ」という家をたまに見かけます。なんでこんな家に住むんだろう…。と不思議でしたが、その影には不動産屋さんのたゆまぬ努力があったのかもしれませんね。

    自分は一生流浪の民ですが、今度から街中の狭小住宅に敏感になってしまいそうです。
    松尾、エース営業マンになって~!と思いながら読了。この本、オススメです。
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    投稿日:2016.09.06

  • 過酷な世界を垣間見せてもらいました

     私の住んでいる家は、住宅公団が大規模造成したニュータウンの一角にあります。購入するのも抽選、購入する場所の選択も抽選でしたが、そこにいたるまで両親が多大な時間をかけて、各所を歩き回り調査研究をしていたのを、子供心に覚えています。だから、この小説に書かれた、不動産売買における売り手の心情は勿論、買い手の心情についての描写は、少々衝撃でありました。
     また、主人公は、ろくに就職活動をすることもなく、苦し紛れにこの会社に入ったことを独白していますが、これについても、大学四年生の1年間が、公務員試験対策の自主ゼミと卒業論文の執筆に、寝る間もなく完全に費やされた私には、理解しがたいものがありました。
     仕事というモノは、どのような仕事でも楽ではないと思いますけど、数字だけがすべてという営業の過酷さは大変なんですね。一方で、土地付き一戸建てというものは、終の棲家という意識が私にはありましたが、そのように考えている人ばかりではないことも初めて知りました。それにしても、主人公が蒲田の家を売ることに成功したときは、私もホントに祝杯をあげたくなり
    またよ。
     この物語は、主人公の心情が徐々に変化していくことを、とても興味深く見せてくれますが、ラストが謎です。考えオチの類になるのかなぁ。でも私の想像通りだと、ちょっと悲しすぎる気がします。
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    投稿日:2014.08.23

  • ドラマ「家売るオンナ」

    ドラマで放映中の「家売るオンナ」を興味深く見ている人ならば読んで損なし。もう少し過激ですが。正直ドラマの原案としてクレジットしてもいいんじゃない?と思うほどです。

    投稿日:2016.08.30

  • 狭小邸宅

    新庄耕が書いた本。感想を書きたいと思う。

    仕事柄不動産業者との接点のある私にとって、とてもリアルな本であった。

    営業とはまさに数字だが、不動産営業は売り上げが全てであり、売らなければ人ではない。
    契約するとこを『殺す』と表現する辺りが生々しい。
    休みなんてないし、朝から晩まで本当に彼らはよく働いている。
    自分もサラリーマンだが、彼らに比べれば大分ましだと思わせる。
    ブラック企業と呼ばれても仕方ない業界が不動産業界である。
    究極の社畜の姿が上手く描かれている。
    サラリーマンで自分を見失いそうな時、自分はまだまだ緩いなと思わせてくれるかもしれない。
    そんな人はぜひ読んで下さい。
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    投稿日:2013.09.25

  • ブラック企業

    最近流行りの『ブラック企業』とは何かを掴むために読んだ。一概に福利厚生では語れないし、やりがいがすべてをカバーできるものでもない。では何か…そのヒントが、以下の一文から読み取れた気がした。
    「…お前は特別でも何でもない、何かを成し遂げることはないし、何者にもならない」
    ここから、既にいる社員や新たに入社する社員に対する期待が、現在の構成員によって『消費』されることを意図されたものであることを感じた。ホワイト企業は、後者を(相互にであれ)『成長』させることを意図しているはずである。
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    投稿日:2014.01.08

  • 妙にリアル

    この本に出てくるような、都会の狭小地に立つペンシルハウスである「狭小邸宅」に住んでいる自分。作者は何かのインタビューで、「奇妙な形のペンシルハウスには、人間の欲望や滑稽さ、むなしさが象徴されているように思える」と答えていたけど、そのように指摘されると、そう自覚せざるを得ない。

    その“象徴”が意味するところは、買う側だけでなく、売る側にも当てはまる。「狭小邸宅」にかかわる人を通じて、人間の「欲望や滑稽さ、むなしさ」を描いている。そんな感じの本。

    不動産販売の実態と顧客との駆け引きも見所で、多少の誇張はあるにせよ、リアリティを感じる。だけど、よりリアリティを感じるのは、仕事を通じて変わってく主人公の心情。そして、成長していくかに思えた主人公は、最後に…。

    スッキリする終わり方ではないけど、妙にリアル。多くのサラリーマンが、こういう感じを飲み込んで、ヨレヨレになりながらも生きている、と思う。だから、「あー、あるある、そういうこと」って、なんだか共感してしまった。スカッとする、痛快な本も好きだけど、こういう本も好き。
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    投稿日:2014.01.18

ブクログレビュー

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  • 2041264番目の読書家

    2041264番目の読書家

    不動産業界ではないが、4月から新卒で働く身であるため、働くことの恐ろしさが鮮明に伝わってきた。主人公ははじめは全く売ることができなかったが、運が味方したことや課長にテクニックを教えてもらったことで売れる人に変わっていった。売れる人に変わったことで、自分が大物になった気になって傲りが見えてきたが、本当は中身は何も変わっていないのではないか。これは、サラリーマン全員に言えることだと思うが、謙虚でいることが1番大切なのではないか。そんなことを考えさせられた。売れなくなった時に謙虚さを持っていなければ、周りから人がいなくなってしまいそうな気がした。

    もし自分が少し仕事で成功することがあっても謙虚さは忘れずにいたい。この本はそう思わせてくれた作品。でも、謙虚で居続けることは難しいことなんだろう。
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    投稿日:2024.03.14

  • 史織

    史織

    窓際三等兵さんのツイートで、ニューカルマと並んで紹介されていたいわゆる「ブラック企業」小説。ブラックな不動産界隈の裏側への興味で読み始めました。
    ブラック企業をやめる前に最後にひとつだけ実績を残してやる、という主人公の最後のもがきに心打たれた。続きを読む

    投稿日:2024.01.05

  • sudah makan?

    sudah makan?

    リーマン後の新卒営業ってこんな雰囲気をひしひし感じながらやってたなという一冊。某不動産屋をモチーフにしているらしいが、どこまで本当かは分からない。

    割と面白かった。結局松尾がどうしたら幸せなのかは私もまだ分かりません。でも売れるようになったところでまた考えてみれば良いとも思う。そこからまた踏み出せるし。続きを読む

    投稿日:2023.12.10

  • 花奴

    花奴

    このレビューはネタバレを含みます

    一気に読めるっちゃあ読めるが、染まっていく(堕ちていく?)姿を描くにはちょっと過程が短かったかなぁ。彼女の存在も出会いも別れも中途半端な気がする。不動産屋のやり方を知るうえでは多少参考になるかも。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.11.03

  • はな

    はな

    ブラックな不動産業界で働く営業マンの話。ストーリーはわりと普通だけど、上司の言葉とか主人公の内面に同情してしまう。就活中の自分には結構刺さった

    投稿日:2023.10.31

  • panme421

    panme421

    不動産業界の闇、成果主義、狭小住宅販売の罠、営業マンのテクなど学びの多い小説だった。面白くて一気読み。ビジネス小説と侮るなかれ。かなり面白いのでおすすめです。

    投稿日:2023.09.25

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