【感想】ヤクザと原発 福島第一潜入記

鈴木智彦 / 文藝春秋
(57件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
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19
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  • 私たちがつくり出したタブー

    暴力団専門のライターが、原発に作業員として潜り込んで実情をレポートする。社会の裏の裏、アンダーグラウンドで起きている実体を描き出したのが、本書『ヤクザと原発』です。

    原発という”シノギ”に、暴力団が深く関わっていることを知った著者。深く取材していこうと思うものの、彼らは原発については非常に口が重い。それならば、と自ら作業員として職に就き、原発内に忍び込んでいきます。

    そこで明らかになっていくのは、原発とヤクザの関係性だけでなく、日本国内での”原発”という存在を支え続けてきたムラ社会の実相。地縁・血縁で強く繋がった社会では情報がオープンにならず、原発という存在もどんどんとタブー化していく様を描き出していきます。

    著者の目を通して衝撃的な事実が露になっていくルポタージュであり、「日本人と原発」と言い換えられる、私たちと原発との関係性を追求していく良質なノンフィクションです。
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    投稿日:2016.01.07

ブクログレビュー

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  • afro108

    afro108

     サカナとヤクザがオモシロかったので読んでみた。2011年の東日本大地震により起こった原発事故からここにヤクザ利権があるはず!と潜入調査するルポでオモシロかった。原発事故からもう10年が経ち、あの当時本当にどうなるか分からなかった放射能の恐怖を思い出させるだけの情報が詰まっていてもっと早くに読んでいれば良かったなと思う。一方であのとき当事者たちがどんな思いでどんな作業をしていたのか記録に残っていて、それを知ることができる本、読書の尊さも感じた。

     タイトルにもあるとおり原発とヤクザの関係を探っていくのだけども産業構造からしてヤクザが入り込んでいるのは自明に近いという話が衝撃。今に比べて暴力団やヤクザへのアレルギー反応が牧歌的だとはいえ、あれだけ注目されていた原発事故の収束に暴力団がコミットしている。そもそも原発建設する際に田舎の村社会に入り込んでいく必要があり、揉め事の仲介人である暴力団が必ずそこにいたという話や社会の矛盾に寄生していくのが暴力団という論旨は納得できた。

    ”万が一の事故の際、被害を最小限にとどめるだけではない。地縁・血縁でがっちりと結ばれた村社会なら、情報を隠蔽するのが容易である。建設場所は、村八分が効力を発揮する田舎でなければならないのだ。”

     ヤクザとは関係なく原発作業の潜入ルポとして抜群にオモシロい。全く知らない世界に対して筆者が必死にくらいついていく。マスコミである身分を偽っているので常にスリリングな展開も最高。当然放射能は怖いものだけど、防護服による熱中症が一番危ないという現場取材してないと分からない話もあり興味深かった。暴力団ダメ絶対!と抑止していくのはいいけど、結局それが表面上だけのアンダーコントロールなのであれば、それこそ原発とうりふたつ。原発、ヤクザとどう向き合っていくのかは誰かではなく自分の話でもあるなと感じた。
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    投稿日:2021.12.27

  • マエダ

    マエダ

    東日本震災後から数年経て東京から原発30km圏内の地元に戻りまず驚いたのは、反原発の声が東日本よりも小さいこと。この本を読んで納得しました。

    投稿日:2019.01.06

  • Tarjan

    Tarjan

    普通の経済・法律の枠組みに収まらない反社会勢力は一体どういったロジックで上手く回っているのかといったことがずっと気になっている。単なる怖いもの見たさもあるが、自分がそういったことをしないにせよ、悪意を持ちルールを破る覚悟をしている場合にどういった手段が存在するのかということを知っておくことは、自衛のためにもなるのではないかと考えている。「サカナとヤクザ」という本を知り、読みたいと思ったが電子書籍が出ていなかったので、同じ著者のこの本をまずは読んでみた。

    最初は反社会勢力と原発の関係は一体どんなものなのかと想像もつかなかったが、本書で取り上げられている接点は、そこまで特別なものではないように思った。まず、原発に限らず巨額の公共工事は反社会勢力が儲ける絶好のチャンスである。地元の意見をまとめ、街を代表し電力会社やゼネコンと交渉する。また、工事のための人員を出す。福島の事故の後は、事故現場に入るような人間を派遣するようなことろでも反社会勢力が出てきているようだ。原発にはタブーが多く、そのような性質は反社会勢力と相性が良い。

    正直、タイトルから想像した内容からすると、個人的には期待はずれだった。原発作業員として事故後の福島第一復旧作業に潜入したレポートは貴重であり、ずさんな被爆量管理など、なかなか面白かった。一方で、反社会勢力との関係の話はそこまで多くない。本人も終盤で、もっと良い潜入取材が出来たのではないかとやや反省している部分がある。
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    投稿日:2018.11.08

  • yajjj

    yajjj

    暴力団専門ライターによる福島原発潜入ルポ。平時より暴力団が如何に原発に関わっているのかを明らかにする。そして原発内部の復旧作業。報道されない暗部に光を当てる本書は旬なうちに読むのが正解。

    投稿日:2018.10.09

  • japapizza

    japapizza

    普通の人では発想しない切り口でとても興味深い。しかも、実際に著者自身が原発の作業員として潜入して、作業現場をリアルに著している。
    原発に限らず、また、今も昔も、人がやりたがらないものがシノギとしてのうまみがあるということだろう。
    「これは原発だけの話じゃない。…火力でも水力でも原子力でも、やり方としちゃ変わらない。民間の工場が建設される場合でもそうだ。規模のでかいみかじめ料ってヤツだ。」
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    投稿日:2018.10.08

  • sasha89

    sasha89

    大小問わず、利権のあるところヤクザあり。なので、事故後の
    福島第一原発の現場の作業員集めに、その筋の方々が絡ん
    でいるとの報道があった時、別段驚きはしなかった。

    まぁ、あるだろうねぇ。くらいの感覚だった。勿論、事故以前にも
    用地買収等に関係しているんだろうなぁ…と。

    本書は「福島第一原発の事故収束現場にヤクザがいるぞ」と
    聞き及んだ著者が、作業員として潜入を試みたルポルタージュ。

    なんだけどさ。潜入するまでが長いよ。しかも、潜入記の部分は
    100ページあるかないか。おまけに途中で正体を怪しまれてる。
    大失敗の潜入記である。

    そもそも、原発マネーとヤクザの関係を追うのにわざわざ潜入
    するという手段を取らなくてもよかったんじゃないの?

    何をルポしたかったんだろうなぁ。事故収束現場の現状?
    旧知のヤクザとのやり取り?焦点はなんなのよ~~~~。

    あの原発事故関係の作品は数多出版され、そのうちの何作
    かは読んでいる。そのなかでも本書は駄作の部類かも。

    『原発ジプシー』も『原発列島を行く』も読まずに現場へ行った
    のかな。

    潜入記部分も物足りなかったけど、そこへ辿り着くまでの長い
    長い部分が読んでいてイライラした。多分、この人、文章が
    下手なんじゃないか。暴力団専門ライターらしいけどさ。

    このタイトルをつけるのであれば、もっと違ったアプローチが
    あったはずだけどな。あ~あ、勿体ない。読んだ時間が。
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    投稿日:2017.08.20

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