【感想】高い城の男

フィリップ・K・ディック, 浅倉久志 / 早川書房
(140件のレビュー)

総合評価:

平均 3.3
7
46
46
16
4
  • 虚構と現実,本物と贋作の狭間で

    第二次世界大戦でナチスと日本が勝利し,アメリカを占領統治しているという歴史改変もの。
    ヒューゴー賞受賞作で評価の高い作品だが,読みやすいかというと正直そうでもない。

    物語の中で逆にアメリカが勝利していたら……という小説が登場し,
    虚構の中の虚構は現実といったギミックや,古物の本物と贋作の考察などは面白みがあるものの,
    人物達の繋がりや全体としてのまとまりが感じられず,結局,何なの? といった印象が拭えない。

    その点,Amazonのドラマ版は,世界観・心理描写・サスペンス要素などとてもよく作り替えたのだなと思う。
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    投稿日:2017.01.03

  • 単なる「もしも」の小説ではない!

    読み方は人それぞれですが、この小説は単なる「もしも歴史が・・・」のSF小説ではないです。
    2回読みましたが、2回目は1回目よりも面白かったです。良い作品だと思います。

    投稿日:2016.05.04

  • 不思議な物語です

     第二次世界大戦で、もし枢軸国側が勝っていたら?そんな設定の小説は結構沢山あります。日本でも、関ヶ原で豊臣方が勝っていたらという小説もありますね。でも本作の面白さは、そのような「たられば」の世界を描きながら、こんな世界になるでしょうという単純なものではないところです。
     ストーリーの中では、なんと「もし連合国側が勝っていたら?」という設定の小説が隠れベストセラーになっているのです。これが展開のキモとなります。作者がアメリカ人である所以ですね。
     ストーリー展開としては、なかなか本筋が見えてこず、何がなんだかわかならいまま、モヤっとした感じで進みます。にも関わらず読み進んでしまうのは、それぞれのエピソードが興味深いからで、文化論的にも面白いかもしれません。
     ただ、もし日本が勝っていたとしたら、作中にある様にアメリカ文化に傾倒する日本人は、おそらくいないだろうし、ましてや易経が流行るとは思えないんだけどなぁ。作者はなぜ易経に注目したのか、それを聞いてみたい気がします。
     枢軸国といいながら、実は一枚岩ではなかったという点を鋭く突いて暴いているのも面白く、万人向けの小説とは言えないかもしれませんが、興味をそそった、お話でありました。
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    投稿日:2015.05.31

  • 第二次世界大戦でドイツと日本が勝利するとこうなるのか?

    だいぶ前か気になっていたんですが、何となくSFというより戦記物という印象が強くて
    読む機会がありませんでしたが、電子書籍を買う前の下読みをするつもりで近くの図書館で前半の80ページほど
    読んでみたら意外とおもしろいので買おうと思っているところです。内容は日本人がアメリカに侵入してきて
    奴らの文化が入ってきたら、こんなことになっちゃつてさぁ~困っちゃうよなぁ~みたいな
    米国人から見た日本人とナチスの奇妙な部分を話のタネにしながら話が進んでいく感じです。気になる方は
    試し読みしてみるといいかもしれないよ。
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    投稿日:2015.03.18

  • もしもの話だけじゃない。

    典型的なif世界の物語と思いきや、世界はどんどん歪んでくる。
    「イナゴは身重く横たわる」読んでみたいです。

    投稿日:2013.11.24

  • クラクラ

    不思議な読後感。頭がクラクラしています。初めは何の小説かわからず、まぁとりあえず面白いので読み進めていると、ちょっとずつ世界に歪みが出てきてモヤモヤっとして終わります。読み終わった後、しばらく考え込んでしまいました。現実と非現実との危ういバランス。どこから伏線が張られていたのか。続きを読む

    投稿日:2013.09.24

ブクログレビュー

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  • アズムンアッシュ

    アズムンアッシュ

    このレビューはネタバレを含みます

    不思議な力強さのある作品でした。

    本当にそっくりそのまま世界が反転していのは凄かったです。確かに日本とドイツが世界大戦で勝っていればこんな世界になっていたのだろうと想像ができます。陰鬱で秩序や差別が厳しい世界。

    日本タイムズなどは、読んでいて言葉が面白かったです。西海岸は日本が占領しているなど、ありえなさそうで、でも勝利していたらありえそうで、白人が日本人にあんなにオドオドする姿はある意味新鮮でした。アメリカと日本の立場が見事に逆転していていました。

    内容はかな。哲学的、人とは何なのか、人種とは何なのかという自問自答が多い。国家とは何なのか、そういった思想に近いモノを一人一人が抱えており、その思想が正しいのかどうか、自分の判断を占う為に、易経という占い(おみくじに近いかな)みたいなモノで、自分の指針を定めるきっかけにしている。そこはかなり古典的で物理的な方法だなと拍子抜けしましたが、日本が勝利し、日本の占い文化が西洋でも根付いた結果、易経が広く浸透していたのかもしれません。

    個人的には、ドイツは勝利してもヒトラーがいなければ、ナチスは機能しないと思いました。、ヒトラーがいなくなれば、ナチはうまく機能しないと思っていた。たとえどれだけ優秀な人がいたとしても、内輪揉めで崩壊する、いや、この作品はその崩壊する一歩手前を描いていたのかも知れない。

    かなり現実的な作品、というより、登場人物にすごく軍の中枢の人達ではなく(そういう人もいたが)1人の商人やただのお金持ちなどが登場するため、その辺りが自分達とある意味変わらず、心情を理解しやすかったです。

    第二次世界大戦後期あたりの知識がないと、世界観をうまく掴めないかも知れないです。特にドイツに関する知識は必要かも。YouTubeの簡単な解説をご覧になってからこの本を読む事をオススメします。

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    投稿日:2024.05.04

  • Mar

    Mar

    ヒューゴー賞受賞の歴史改変小説。

    1947年、第二次世界大戦は連合国側が敗れ、枢軸国側の勝利に終わり、世界は日本とドイツの二大国に分割統治されていました。それから15年、表向き平穏な世界では、敗戦国として卑屈に生きるアメリカ人、ドイツの政争、暗躍するスパイや日独の駆引きなどがアメリカ西部を中心に描かれます。

    それと同時に人々の間では「勝ったのが連合国だったら、どのような世界になっているか」という内容の小説『イナゴ身重く横たわる』がベストセラーになっていました。いったい、〈高い城〉に住んでいる小説の著者アベンゼンは、何故この本を書いたのか。そんなことも混えながら、複数の登場人物たちの行動が絡み合っていきます。

    登場人物達の心理描写が細かくて、キャラが立っていて読みやすかったです。意外に思ったのが、日本人には好意的ですが、ドイツ人にはアメリカ人の口を借りて「こんな状況になったのは、ドイツ人のせいだ」と言わせる事に始まり、いろいろ辛辣に描かれているところかな。

    とは言え、そのアメリカ人に、中国のものである「易経」を日本人にむりやり押しつけられたとあるのが面白い。作中、その「易経」による占いの結果に、登場人物たちがヤキモキしながら、行動指針にして行く様子も良かったです。

    設定以外にSF的なギミックがない本作ですが、ラストの占いにいろいろ含むところがあるのがいいですね。
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    投稿日:2024.05.03

  • ばさみ

    ばさみ

    ユービックを読んで、「うわあああああ好きいいいSF最高……早く次!!!」となった勢いで、内容を全く知らずに読んでしまった。
    つまりディックの超SF世界観を求めて読んでしまったので、あまりSF味のない雰囲気に結構な落胆を感じながら頑張って1冊読みました。笑(誰も悪くない)

    第二次世界大戦について、恥ずかしながら本当にざっくりしたことしか知らなかったので、
    大人になった今、改めてちゃんと学ばないとな…と反省。詳しい事実を知っているほど楽しめる作品。
    なんたって子供の頃、歴史が1番嫌いな教科だったからな……(盛大な言い訳)

    けれどそういった戦争どうのこうの〜〜だけを伝えたい作品ではなく、もっと抽象的で心理的な訴えを強く感じた作品だった。
    5年か10年おきに読んだら、毎回自分の成長まで感じられそうな作品。とりあえず30歳になったらまた読もう。
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    投稿日:2024.05.01

  • やかん

    やかん

    リドスコのドラマの方は1話でやめてしまい…
    本は読み切ることできてよかった!

    ちょっと思った内容と違ったけど、、
    ドラマでは自由の女神の破壊シーンとかあるのか笑

    投稿日:2024.03.16

  • kazuhisachiba

    kazuhisachiba

    第2次大戦が枢軸国の勝利で終わったif世界が描かれる.その世界では,連合国が勝利する世界が描かれたフィクション本が人気となっているという入れ子構造で語られつつ,段々とifの世界のif本が実は真実であることに辿り着き物語は終焉を迎える.二重構造を駆使した世界観を使い,信じるものの真実性は決して受動的では成立しない,群体としてではなく個体としての人の有り様が物語られる.続きを読む

    投稿日:2024.02.03

  • kouhei1985

    kouhei1985

    1962年、第二次世界大戦に勝利した日本とドイツはアメリカを分割占領され、太平洋側は日本の統治下に置かれた。日本統治の影響で中国由来の『易経』が普及し、日本人アメリカ人を問わず多くの人が易により物事を判断するようになっている。さらには「第二次大戦に連合国側が勝っていたら」という内容の小説が評判を呼んでいた。

    アメリカ古美術商のロバート・チルダン、通商代表団の田上信輔、贋作工場で働くフランク・フリンク、フランクの元妻・ジュリアナ、プラスチック産業のビジネスをするバイネス、イタリア人トラック運転手のジョーなど、さまざまな人の物語が交互に進み、そこにドイツ政府の思惑も交錯する。

    もし第二次大戦で日独が勝っていたら、という歴史改変モノなのだが、あくまで登場人物の物語が中心で、大戦終結以降の政治や歴史は断片的にしか描かれていないのでその方面を期待しては肩透かしをくらう。また、各登場人物の物語も丁寧に描かれるため、小説全体の進行もゆっくりとしている。

    田上や梶浦夫妻などの日本人に対するチルダンの卑屈な心理が描かれているが、これが戦争に負けて占領されることに対する(当時の)アメリカ人の見方なのかもしれない。
    続きを読む

    投稿日:2023.10.18

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