【感想】シェエラザード(下)

浅田次郎 / 講談社文庫
(109件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
24
51
26
0
2
  • シェエラザード 聞きなれない作品名だが、浅田作品の最高傑作の一つだと思う

    第二次世界大戦末期に起こった“阿波丸”沈没事件に材を取り、現在の視点から弥勒丸の沈没に至るまでの人間模様を描いた小説。当時、シンガポールからの邦人輸送の陰でアジアに埋蔵されていた軍資金の調達・運搬にかかわった土屋少佐(日銀マン)の『神イコール良心であるなら、戦争は人間が神に反逆したもの』というセリフとともに、当時の呵責を現在まで背負いつづける土屋の不器用な生きざまに涙せざるを得ない。平時と有事で物事のロジックが違うのは当たり前のように感じていたが、土屋の生き方の前では、単なるご都合主義に思える。特に、下巻は電車の中など、人前で読んではいけないですね。この時代を扱った浅田作品『日輪の遺産』『シェエラザード』『終わらざる夏』はいずれも秀作。ひとまず集団的自衛権が成立してしまった今だからこそ、これらの小説をお勧めしたい。続きを読む

    投稿日:2015.10.23

  • 戦争

    「弥勒丸」沈没の謎と金塊探しにまつわる話は興味深く、現在と戦時下が入り混じりストーリーが展開する。物語の前半は面白いが、残念かな後半は失速。同じ話が何度も何度も繰り返され、「弥勒丸」を執拗に「彼女」と擬人化し崇める。設定が良いので全体としては十分に楽しめるが、感動するところまで至らないのはこの辺が原因かもしれない。

    日本が先の大戦に至る過程や理由を、学校教育ではしていないと思う。
    このような小説に触れることも、戦争がもたらす理不尽さを理解する一助になると思う。
    「戦後」である現在が、「次の戦争」の戦前にならない事を願うのみだ。
    続きを読む

    投稿日:2016.02.25

ブクログレビュー

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  • Chiem

    Chiem

    このレビューはネタバレを含みます

    第二次世界大戦の裏に、こんな悲劇があったなんで知らなかった。
    序盤は、弥勒丸の引き上げの理由は、何か暗澹たるものなのだろうと思っていたが、読み進めるごとに、平和と船を愛した一途な男の想いとわかり、切なくなった。
    特に、最後弥勒丸が敵に包囲されお手上げ状態になったときの絶望感たるや。
    この物語のモデルになった阿波丸についてももっと知りたくなった。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.04.07

  • 近藤真弓

    近藤真弓

    そうだったのか…!
    鍵は宋さんです。
    一気に読めました。
    単なる娯楽小説でなく、考えさせられる内容でした。
    戦争って、何だったんでしょうね。

    投稿日:2023.11.26

  • yuuminanami

    yuuminanami

    上巻の流れから急転直下の展開を予想したのだけれど、予想はハズレ土屋和男とシンガポールを舞台とした話に終始して脇をかためた感じだな。下巻というより、視点を変えたエピソード2という趣き。

    投稿日:2023.07.07

  • Mkengar

    Mkengar

    じわっと感動が広がる作品でした。本書では犠牲者の方々の無念だけでなく、戦後も生き残った関係者たちの心境についてもなんとか読者に伝えようとしているのかと思いました。弥勒丸に乗船していて助けられた人、またシンガポールで弥勒丸の乗船名簿を作成していた軍人、またシンガポールで弥勒丸から下船するロシア人密航者など、様々な立場で弥勒丸に関わった人たちの心境を描写しようとしていた気がします。弥勒丸関係者の中で生き残った人の多くはその後が描写されていますが、後日談が書かれていない何人かの登場人物について、これらの人々はその後どういう人生を送ったのか、どういう気持ちで送ったんだろうかと想像を巡らせました。あらためて実際に起こった「阿波丸事件」の犠牲者に祈りを向けさせていただき、また戦後も生き残った関係者の方々の気持ちにも思いが向かいました。続きを読む

    投稿日:2023.04.30

  • びん

    びん

    阿波丸事件をベースに書かれたフィクションと知りながらも、これが真実じゃないかと思えるくらい物語にハマりこんじゃった。 もちろん戦争体験はないけれど、これまでに見てきた写真や映像から映画を観ているように読み進んだ。 それにしても戦争とは何と理不尽で人の命の軽いことのか・・・。戦争小説の終わりは、やっぱり切ないね。続きを読む

    投稿日:2023.04.29

  • ぽっきぃ

    ぽっきぃ

    上巻の内容からは急展開して話が進んでいきます。

    下巻はやはり船とともに海へ沈んでいった多くに方々のことを考えさせられます。日本がどんな状況に置かれているかも分からないまま、言われるがまま、船に乗せられ、なにも分からないまま死がやってきた。

    この事件を、ようやく語ってくれた老人。語りたくない人はたくさんいるのかもしれませんが、やはり戦争を知らない世代になんとかして語っていって欲しいと思いました。戦後、平和と繁栄を手に入れた日本には、戦争に翻弄され死んでいった多くの命が足元に眠っていることを改めて感じさせられました。
    続きを読む

    投稿日:2022.09.16

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