【感想】孤島の鬼

江戸川乱歩 / 東京創元社
(139件のレビュー)

総合評価:

平均 4.4
75
35
17
2
1
  • 乱歩が好きなら必読の作品

    江戸川乱歩の作品でランク付けをするなら1位は、この作品しかない。
    知名度や読みやすさでは、「屋根裏の散歩者」「人間椅子」の方が入りやすいので、入門用としては初期の有名な短編群をお薦めするし、初期短編をひと通り読んだ後は中編の代表作「陰獣」をお薦めしたい。
    ただし、それらと比較しても、作品を素直に楽しめて、乱歩らしさをほどよく楽しめるのは「孤島の鬼」だろう。
    もちろん、90年近く前の作品なので、文章表現や話のテンポに難はあるし、古典的作品の宿命である「どこかで似たような作品や場面を見たことがある」という既視感はあるかもしれない。トリック自体に稚拙さを感じるかもしれない。それでも、作品に漂うインモラルな空気を是非感じて最後まで楽しんでほしい。乱歩に興味を持った方には是非お薦めの作品。
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    投稿日:2014.01.09

  • 悲しい鬼の末路

    前半は謎解きがメインのミステリー、後半は犯人の居城に乗り込む冒険譚。表題の“鬼”になった犯人の生い立ちは悲しいけれど、多くの人間を不幸の底に陥れた悪事の数々に同情の余地はない。最後は一応の大団円を迎えるが、彼によって運命を狂わされた人の命は戻ってこないのだし。
    なんとなく腑に落ちないのは、主人公の蓑浦が周りの人間に頼ってばかりの情けない男であること。何故か女からも男からもモテる蓑浦は、それを自覚しながら多くの人間を巻き込んでいくのだ。彼こそが鬼なのかもしれない。
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    投稿日:2013.09.26

  • 完全に歪んでしまった殺人「鬼」

     恋人を殺され、殺めた人物に対し罪を償わせる決心をする、主人公。そして素人探偵である深山木に調査を頼むが、彼もその餌食となってしまう。それもありえない殺害方法によってである。いったいどうやって?背後には何が・・・?

     前半は上記の謎解きをしていくミステリーですが、後半は犯人の住む孤島へと乗り込み・・・という感じで、頭も使っていきますがどちらかと言えば、体を張る行動主体の物語になっています。様々なミステリーを読んでいるので、いろいろな犯罪の動機を読みましたが、この小説の犯人の動機は異常なほど歪んでいます。「鬼」と書かれているのも納得です。昔の小説なので難しい表現や漢字などが出ると思いましたが、そんなことは無く読みやすかったです。ただし差別的な表現がありますので、嫌な思いをする方もいるかもしれません。
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    投稿日:2013.11.17

  • 人間の持っている、愛と憎悪

    恋人が殺された。それも、密室殺人。一体どうやって…?
    そこから、謎解きが始まるのですが、乱歩作品、単なるミステリーじゃありません。
    主人公の頼りなさ(男というものをちゃんと表している。)、登場人物の歪んだ愛情、憎悪。だんだんとわかってくる人間関係。
    人間の本当のところを表している作品だからこそ、ぞっとするし、魅力的なんだろうと思います。
    後半は、頭の中に映像が出てきて、単純に『どうなっちゃうの??』とドキドキしながら読めます。
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    投稿日:2013.12.27

  • 乱歩の世界

    序盤はそうでもありませんが、段々と乱歩の世界になっていきます。中盤は夢野久作、芥川龍之介、終盤は主人公が島内を謎解き、冒険する様は横溝正史のよう。横溝氏より乱歩のほうが世代は前ですね。ミステリーとしては物足りないかもしれませんが、サスペンス、伝奇小説としては面白いです。続きを読む

    投稿日:2014.07.08

  • 流石は大御所。言うことなしです。

     異形の者への異常な執着、ボーイズラブ、そして、旧家、孤島とくれば、これは日本文学の一分野として確立しているあのジャンルですよね。
     昭和4年から1年以上かかって、雑誌に連載された物語とのことです。当時のままの表現が今となっては新鮮です。
     話の展開としては、全て事件が終わってから書かれたというスタイルなのですが、なかなか謎を明かしてくれません。もどかしいったら、ありゃしない。連載当時は、次号が出るのがさぞ待ち遠しかったでしょうね。また、この本には、当時の挿絵が付いており、こちらもとても興味深いものがありました。
     日本家屋における密室殺人。ここから始まるわけですが、最初でこそ推理小説風ではありますが、次第に乱歩特有の異様な、あのじめっとした世界となります。ラスト近くの洞窟探検は、インディージョーンズも真っ青でありますよ。
     間違いなく、著者の代表的長編小説であり、読んでみれば、これが夢野久作や横溝正史に影響を与えたことは、素人の私でも判ります。乱歩ファンは勿論、夢野久作や横溝正史ファンの方も必読というのはウソではありませんでした。
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    投稿日:2019.05.01

ブクログレビュー

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  • エヌ氏

    エヌ氏

    地獄絵だ。闇と死と獣性の生地獄だ。

    -------------------------------------------------
    これはミステリーだろうか、ホラーだろうか、冒険小説なのだろうか。どれにも当てはまるし、どれでもなく「江戸川乱歩」というジャンルなのかもしれない。
    江戸川乱歩の小説は『人間椅子』しか読んだことがなかったが、それと同様に「醜いものなのに(醜いもの故になのかもしれない)惹き込まれていく文体」を感じた。
    悪意、復讐、性愛、偏愛、など「毒」がこの小説にはある。厄介なことにこの「毒」はクセになってしまう。読書の日常の思考にじわじわと侵入してしまう。とてつもない余韻を残し、忘れられない爪痕を残す。
    諸戸道雄がこんなに魅力的なキャラクターになるとは思わなかった。最後の章のタイトルは「大団円」であったが、切なさを残す終わり方も余韻を増幅させている。
    学生時代の最後にこの本を読めて良かった。
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    投稿日:2024.03.31

  • 香具師山啖呵堂

    香具師山啖呵堂

     本作品には明智小五郎という絶対的な名探偵は登場しませんが、深山木幸吉・諸戸道雄・北川刑事・(それに蓑浦金之助?)という、凡人の素人より少しだけ探偵の素養のある方々が力を合わせて解決していくという面白さがあります。


    少年少女・ネタバレSALONO(ネタバレ注意!)
     江戸川乱歩【孤島の鬼】ネタバレ感想会(上)
      https://sfklubo.blog.jp/archives/23813740.html
     江戸川乱歩【孤島の鬼】ネタバレ感想会(下)
      https://sfklubo.blog.jp/archives/23833457.html
    続きを読む

    投稿日:2024.03.18

  • monkeypod

    monkeypod

    このレビューはネタバレを含みます

    面白かった。一気に読めた。

    恋人が殺され、その謎のために三重県の孤島に行き信組を探るという話。

    ほとんどの登場人物の外見が気持ち悪いというのはどういう事なんだろう?

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.01.28

  • おにゃむ

    おにゃむ

    このレビューはネタバレを含みます

    今まで読んだ小説の中でずば抜けて面白かった。
    普通なら途中で飽きてくるのにそれがない。
    ただの殺人事件の謎解きかと思いきや、どんどん
    スケールがでかい話になっていき最終的に
    冒険的なことしてた。次何が起こるのかハラハラしたし、
    登場人物も個性があって良い。
    最期の3行くらいでうわ~!!!!!ってなった。
    本当におすすめ。道雄…!(T_T)

    主人公が初代さんの遺灰を食べて、復讐を誓ったシーンが
    大好きすぎる~~

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    投稿日:2024.01.26

  • 香月

    香月


    1.おすすめする人
    →探偵小説が好き、日本文学を感じたい、
     ハラハラしたい

    2.内容
    →怪奇に怪奇が絡みつく作品。
     こんなにも不気味でおどろおどろしい内容とは。
     江戸川乱歩、恐るべし。
     最後の、宝物を求め洞窟に迷い込む場面は、
     横溝正史の八つ墓村を彷彿とさせる。
     年代的に、横溝正史が江戸川乱歩を
     ややなぞったのかな?と思うような内容だった。
    続きを読む

    投稿日:2023.12.27

  • イケダケンジ

    イケダケンジ

    おそるべき名作。
    密室殺人と衆目殺人を扱う前半の本格推理、事件の背景に迫る中盤の怪奇小説、暗号解読と地下探検の終盤の冒険小説…。ジャンルを軽々と乗り越えて、真相が明らかになり、物語は大団円に。これが乱歩最高傑作といわれるのもうなずける。婚約者・木崎初代への愛に加えて同性愛の雰囲気が作品に重要な彩りを与える。それだけじゃない。終盤で明らかになる●●(差別語)者製造の実態!!何とも、こちらの想定をはるかに乗り越えてくる展開に圧倒された。続きを読む

    投稿日:2023.08.14

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