
【Reader Store 10周年祭り特別企画】 映画『私をくいとめて』が12/18より全国公開! 作家・綿矢りささん スペシャルゲストで登場!
“おひとりさま”を満喫する31歳のみつ子、その脳内には相談役のA(=自分の分身)がいて、いつも彼女をやさしく諭してくれる。そんな主人公に、やがて運命の人が現れて──12月18日に公開される映画『私をくいとめて』。原作は、作家・綿矢りささんによる同名小説だ。
コミカルで時にせつなく、知らず知らず臆病になっていく妙齢の女性心理を繊細な筆致で描いたこの作品に、作者である綿矢さんが込めた想いを知りたくて、今回お話をうかがった。映画を通じて小説を語るというのも、ちょっと意外で、おもしろい。

──インタビューはご負担ではありませんか? 作家さんによっては、すでに書いてあるものだから語るまでもない、という向きもありますが。
大丈夫です、楽しいです。小説を発表したときも、今回の映画の公開にあたっても作品について話せるのでうれしいな、と。語りたくない作家の気持ちもわかりますけど、小説を読むとっかかりとして、インタビュー記事で作者の意図を知りたいという読者の気持ちもわかるので、しっかり語らせていただきます(笑)。
──私は小説を読んでから映画を観ましたが、どんな順番で作品に触れても、より理解が深まりそうですよね。
そうですね。映画を気に入ってくださった方なら、本を読んで改めて「ああ、そういうことなんだ」と思ってもらえるところがあると思います。そのぐらい、映画では細かい場面まで再現されていて、うれしかったですね。
──Aの声は、大人気の若手俳優さんが演じられました。あの素敵な声は、小説を書かれていたときにイメージしていましたか?
もうちょっとフニャフニャした、湿っぽい声をイメージしていたんです。本人像も色白でふっくらしてて、根はやさしいけどちょっとオドオドしているような。映画での脳内Aは、ハリがあってやさしく包み込むような声になっていましたね。

──Aがいれば別にひとりぼっちでいいや、と思えるくらいの(笑)。
大満足ですよね(笑)。脳内で会話する相手が、いつでもAのようないい声だったら最高だろうなと思います。映画では声を発してAとしゃべっているので、すごく賑やかで楽しい。
といっても、Aはみつ子自身なんですけどね。彼女は社会に出て、強くあらねばという気持ちで武装しているところがあるけど、Aは昔のみつ子が持っていた自然でナイーブな一面を持ち続けている。だからAに癒されるんです。
誰かを幸せにできるかもしれない。そんなみつ子の可能性を信じたくなって、ラストがあんな感じになりました。
──みつ子のどことないシニカルさに共感する人は多いと思います。世の中を鼻で笑いながら、結局それは自分自身に向けられている。綿矢さんの書かれるほかの物語の中にも、そうしたキャラクターが出てきますよね。
とくに『勝手にふるえてろ』の主人公はそんな感じかもしれないです。虚勢を張っているというか、自分を守りつつ社会に適合しているっていうような。今作のみつ子はそこまで虚勢を張ってるわけじゃないけど、内と外を使い分けるにあたって、ちょっと冷めた目で世の中を見ていますね。完全に誰かを信じて、裏切られたら怖いという気持ちがどこかにある。
──そのみつ子の脆さが、映画でもよく表現されていました。
みつ子が抱えている問題の深刻さが、映画が進むにつれてどんどん明らかになっていくんです。Aみたいな存在をつくり出さないと、今の自分が保てない人なんだなっていうのが伝わってきますね。
──しかもみつ子も、彼女が恋する多田くんも、小説同様にちゃんと地味に描かれています。
本当に。多田さんを演じていらした林遣都さんも、みつ子を演じていらしたのんさんも、共にスターなんですけど商店街にもちゃんとなじんでいて(笑)。二人とも前に出るタイプではなく、おとなしいので、だから恋の進みかたが遅いんですけど、お互いを想う気持ちは薄くなくて、けっこう優しいんですよね。
──物語の最後、みつ子が勇気を出して一歩踏み出そうとする場面が印象的でした。前向きなお土産をもらったような、そんな読後感です。
みつ子はひとりでいても幸せで楽しく過ごしていて、手を伸ばしてみたい気持ちはあるけど、うまくいくかどうかわからない不安があるわけです。でも、私はみつ子に冒険してもらいたいっていう気持ちが強かったんです。多田さんと出会ったことで、また新しい自分が見つかって、誰かを幸せにできるかもしれない。そんなみつ子の可能性を信じたくなって、ラストがあんな感じになりました。
小学生のときから、とにかく読むのが楽しくて。 活字とは適度な距離を保ちつつ、長く付き合っていけたらなと思っています(笑)。
──綿矢さんは、ご自身でお書きになった作品に対しても、読者として向き合うような感覚が?
自分の読みたいものを書こうと思って書いているんです。3日ぐらい経つと書いていたときの熱が冷めていて、改めて読むと他人が書いたもののような感覚になって、「これを好きに手直しできるんや!」という喜びがあったりしますね。数日寝かせた原稿は直すのが楽しい。でも寝かせすぎると、すっかり完成したような感じになってしまうので、どう直せばいいのかが見えにくくなります。
──今現在は、どんなものを手がけられているんですか?
今は『激煌短命(げきこうたんめい)』という小説の連載をしているのと、新型コロナウィルスに関する『あの頃何してた?』という日記を2月ぐらいから書き始めて、それも連載しています。毎日コロナのニュースに触れて、思ったことを書いているんです。仕事の性質上、部屋にこもっている時間が長いので、自粛期間がつらかったということはないんですが、ただ、世の中が深刻な状況になっていたときはキツかったかな。「これからどうなるんやろ」という不安があって。それがなくて書いているのと、あって書いているのとではやっぱり違いますよね。
──ちなみに普段、電子書籍は読まれますか?
電子書籍はどこでも読めますし、続きものはとくに気持ちが乗っている状態ですぐ続巻に行けるって最高だなと思いつつ、実はいまだ足を踏み入れていません。

――ぜひReader Storeでの電子書籍デビューをお待ちしています!(笑) 綿矢さんは、“読む”こともお好きなんですよね。
そうですね。小学生のときから、とにかく読むのが楽しくて。ただ、学生のときのほうが冊数を読めていましたね。今は書きながらなので、どうしても読む時間は限られてしまいますし、“書く”と“読む”で生活が活字だらけになってしまうので、みずからセーブしているところもあるんです。
──典型的な活字中毒かもしれませんね。
学生のときはまさにそうでしたね。今は自分で書いているので、意識して少し距離を置いているというか。のめり込みすぎると、ごはんを食べることもできなくなってしまいます。だから、そうですね、活字とは適度な距離を保ちつつ、長く付き合っていけたらなと思っています(笑)。
取材・文:斉藤ユカ
撮影:荻原大志
ヘアメイク:小林奈津美(addmix B.G)
【profile】

綿矢りさ(わたや・りさ)
1984年京都府生れ。作家。2001年『インストール』で文藝賞受賞。早稲田大学在学中の2004年『蹴りたい背中』で芥川賞受賞。2012年『かわいそうだね?』で大江健三郎賞受賞。著書に『勝手にふるえてろ』『憤死』『意識のリボン』などがある。
【公開情報】
映画『私をくいとめて』
2020年12月18日(金)全国公開
<ストーリー>
おひとりさまライフを気ままにエンジョイする、みつ子、31歳。
みつ子が一人でも楽しく生きていられるのにはワケがある。それは脳内に生まれた頼れる相談役=A。人間関係や身の振り方に悩んだときは、Aはいつでも正しい答え(アンサー)をくれる。
Aと一緒に平和でゆるゆるとしたおひとりさまの毎日が続くと思っていたある日、うっかり、年下の営業マン多田くんに恋してしまった!でも20代の頃のようには進まない、もどかしいアラサーラブの現実が立ちはだかり……。
原作=綿矢りさ×『勝手にふるえてろ』の監督・脚本=大九明子のゴールデンコンビによる、アラサー女子達に容赦なく突き刺さる崖っぷちのロマンス!
監督・脚本:大九明子
出演:のん 林遣都 臼田あさ美 若林拓也 前野朋哉 山田真歩 片桐はいり/橋本愛
原作:綿矢りさ「私をくいとめて」(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
配給:日活
©2020『私をくいとめて』製作委員会
公式サイト:https://kuitomete.jp/
【原作情報】
プレゼントの応募は終了しました

●プレゼント内容
・直筆サイン色紙 (2名様)
●応募期間
2020年12月11日(金)0:00~2020年12月24日(木)23:59
●応募条件
「Reader Store」のメールマガジンの受信設定をONにされている方。
●当選発表
当選者の方へは、登録されているメールアドレス宛に2021年1月8日(金)にご連絡いたします。
(当選発表日は都合により、前後する場合がございます)
落選された方へのご連絡はございません。あらかじめご了承ください。
●ご注意事項
・お一人様1回のみのご応募となります。
・当選した商品の譲渡・転売等の行為は禁止されております。
※新型コロナウイルス感染拡大の影響により、当選賞品の発送に遅れが生じる場合がございます。当選されたお客様にはご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。何卒ご承知おきくださいますようお願いいたします。



