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あなたの職場を憂鬱にする人たち(インターナショナル新書)
あなたの職場を憂鬱にする人たち(インターナショナル新書)
舟木彩乃/集英社
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総合評価

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    ■おすすめポイント ・誰しも、職場で「なぜあの人はあんな行動を取るのだろう」とモヤモヤした経験があるはずだ。信頼していた上司が急にそっけなくなって驚いたり、同僚の言動で自尊心が揺らいだり、他責傾向の強い部下に振り回されたり……。本書は、心理学に基づいて、そのようなモヤモヤとの適切な向き合い方を提示してくれる。 ・著者の舟木彩乃氏は、約1万人のカウンセリングをしてきた経験豊富な心理学者だ。本書で著者は、実際に関わった「職場を憂鬱にする上司・同僚・部下」の15の事例を紹介している。これらは単なる「困った人たちのエピソード」ではなく、臨床経験と心理学的知見を踏まえ、なぜその人物がその行動を取るのか、そしてこちらはどう接すればよいのかも解説しているのがポイントだ。あなたもきっと、これまで理解不能だった他者の行動の背景が見えてくるはずだ。 ・さらに、「あなたの職場を憂鬱にする人たち」に振り回されないために必要な5つの心理学的知識も紹介されている。すぐに取り組めるワークも用意されており、習慣づければ、不安や怒りに呑み込まれず、冷静に対処できるようになるだろう。 ・職場の人間関係に疲れやすい人、他者の言動に影響を受けすぎてしまう人、特定の相手にエネルギーを奪われている人に、ぜひ読んでほしい一冊だ。 ■本書の要点 ・「過度の一般化」を悪用し、人を陥れたり傷つけたりする人には注意が必要だ。そのような人物が職場にいる場合、相手の言動に振り回されないよう、自分自身の認知を見直していく姿勢が重要である。 ・新型うつ病が疑われる人がいる場合、本人の希望をすべて受け入れるのは避けるべきだ。相手の自己愛を助長するとともに、他の社員の不公平感を招く可能性がある。 ・これまでの研究では、「首尾一貫感覚」が高い就労者はストレス反応が低いことがわかっている。自分が抱えているストレスを、「首尾一貫感覚」の3つの視点で整理してみるのも有効だ。 ■職場を憂鬱にする上司・同僚・部下 ・部下に嫉妬する上司。・大手企業に就職し、同期社員に先駆けて課長に抜擢された片岡さん(男性30代)は、常に輝かしい営業成績を収めていた。若くして昇進できたのも、部長から目をかけられたためである。課長昇進後の片岡さんは、新規プロジェクトを立ち上げたり大型契約を勝ち取ったりと、次々に成果を積み上げていった。昇進の後押しをしてくれた部長も、誰より自分の活躍を喜んでくれているはずだと信じていた。ところが昇進からしばらくした頃、部長が主導していた重要案件から突然外されてしまう。理由を尋ねると、「君も課長になって忙しいだろう」という、腑に落ちない返答しか得られなかった。その頃から、片岡さんは部長の態度に違和感を覚えはじめた。その違和感を決定づけたのが、月例の営業企画会議での出来事だ。この会議で片岡さんが新企画を提案した際、真っ先に否定したのが部長だった。反対理由を聞いても、曖昧な言葉が返ってくるばかりだ。片岡さんが提案を取り下げようとした瞬間、別の上司が「その企画、面白いよ。次回もう少し詳しく聞かせて」と評価を示したため、片岡さんは喜んで「もっと内容を詰めてご相談させてください」と応じた。そのとき、片岡さんを睨みつける部長の視線に気づいてハッとしたという。このケースでは、部長の態度の背景に嫉妬心がある可能性が高い。片岡さんの活躍を目の当たりにして、「これまで引き立ててやったのに…」という思いを抱えながら嫉妬心を募らせていたのかもしれない。 ・では、このような「部下への嫉妬を抱く上司」から不当な扱いを受けずに立ち回るにはどうすべきか。まず、嫉妬の根底には、自分の地位や評価が奪われるのではないかという不安や恐怖があると理解しておくことが重要である。そのうえで、戦略的な面従腹背を意識し、上司の心理を逆なでしない振る舞いを心がけることだ。たとえば要所で「うまくいったのは、なにより部長のおかげです」といった言葉で上司を立て、自分は下剋上を狙っていないと示す対応が有効だろう。 ・ライバルの足を引っ張ろうとする同僚。矢野さん(女性20代)は、新卒でPR会社に入社し、同期のHさん(女性20代)とともに企画営業部へ仮配属された。間もなく本配属が決まる時期で、企画営業部に残るのか別部署へ移るのかが気になっていた。矢野さんは控えめな性格で、明るい人の多い企画営業部で自分だけ浮いていると感じることが少なくなかった。それでも企画営業部で頑張っていきたいと思っていたのは、緻密な作業や統計分析が得意だったからである。一方、Hさんは明るく自信に満ち、部署のイベントにも積極的に参加するタイプだった。そんな折、企画営業部は仮配属者のうち1名のみを本配属にするらしいという噂が流れた。この頃から、矢野さんはHさんの言動にモヤモヤするようになったという。たとえばHさんは、部署メンバーの一部だけでつくっているSNSコミュニティグループの投稿を見せて、「言いにくいけど、みんな矢野さんを誘いにくいし、幹事もお願いしづらいみたい。だから今後は私が全部やるから安心してね」と告げてきたのである。その一言が、矢野さんに引け目や疎外感をより強く植えつけていった。著者が相談を受けた時点で、矢野さんは「企画営業部に本配属を希望しているけれど、自分はいつもみんなから必要とされていない人間で、仮配属終了後は失職するかもしれない」とまで思い詰めていた。 ・ここで矢野さんの心理的な背景を整理したい。彼女には、「結論の飛躍(失職するかもしれない)」や「過度の一般化(いつもみんな)」といった認知パターンがあった。「結論の飛躍」とは、根拠が乏しいにもかかわらず、自分に不利で悲観的な結論を導いてしまうことである。そして「過度の一般化」は、単一の事例や根拠を拡大し、他のすべてについても同じだと考えてしまうことを指す。注意すべきは、過度の一般化を悪用し、人を陥れたり傷つけたりするタイプの人が存在することである。Hさんが矢野さんの認知傾向を理解していたかは不明だが、「みんな矢野さんを誘いにくい」という表現は、結果として過度の一般化を利用した言い方になっていた。その言葉を受けた矢野さんは「みんな」に反応し、自尊心が損なわれてしまった。Hさんのような人物が職場にいる場合、相手の言動に振り回されないよう、自分自身の認知を見直し、歪みがあれば修正していく姿勢が重要である。 ・他責傾向の強い部下。杉田さん(男性40代)は、食品メーカー広報部門のリーダーだ。部下には入社2年目のQさん(女性20代)がいた。広報部配属を希望していたQさんは、配属当初こそ意欲的だったが、今では明らかに元気を失っていた。杉田さんは心配していたものの、Qさんが休日には旅行やスポーツなどを満喫している様子をSNSに頻繁に投稿していたため、しばらく様子見していたという。だが、遅刻が増えてきたことから面談を行ったそうだ。面談の場でQさんは「今の仕事は入社前に思い描いていた内容とは違っていて、これでは私のスキルを活かせないと思います」と語った。Qさんの考えていた広報の仕事は、プレスリリースの作成など企業の「顔」として情報を発信する高度な領域だ。杉田さんからすれば、Qさんにはまだ任せられない。著者が面談した際、Qさんは出勤日になると朝起きられないほど身体が重くなる一方で、休日にはその症状が出ないと話した。本人は「たぶん、自分のスキルを活かせない仕事でストレスが限界にきているのだと思います」「杉田さんでは、私の能力を活かせないような気がします」と、不満の矛先を外に向けていた。Qさんの行動の背景には、自己過大評価や承認欲求の強さがあるとみられ、理想と現実の乖離を上司への批判という形で埋めようとする他責的な思考が目立っていた。 ・Qさんは「新型うつ」の可能性がある。従来型うつ病では意欲低下や抑うつ状態が持続するのに対し、新型うつは仕事以外では元気で、旅行やスポーツを楽しめる点が特徴だ。「自分の能力を認めてもらえない」や「自分のスキルを活かせる仕事を任せてもらえない」といった他責的思考が強いことも指摘されている。その後、指示した仕事が期日までに終わっていなかったことで杉田さんが少し厳しく注意したところ、Qさんは翌日から欠勤を繰り返し、数週間後には「うつ状態のため1か月の休暇が必要」との診断書を提出して傷病休暇に入った。ところが同僚の一人が、QさんのSNSに飲み会や旅行の写真が投稿されているのを見つけ、「本当に病気なの?」と疑いを抱いた。同時に「欠勤中のフォローで自分の仕事にも影響が出ている」という不満が杉田さんに寄せられた。 ・新型うつ病は、仕事から離れた場面では活発に行動できることが多いため、「甘えているだけだ」と誤解されやすい。では、こうした社員に対し職場はどのように向き合うべきなのか。新型うつ病が疑われる場合、本人のつらさに共感し、相手の希望をヒアリングしつつも、希望をすべて受け入れるのは避けるべきである。特別扱いをすると相手の自己愛を助長し、他の社員の不公平感を招く可能性があるためだ。上司・人事・産業保健スタッフが連携し、就業規則の範囲で取れる対応を検討して共有し、組織として一貫した姿勢を維持することが重要だ。 ■【必読ポイント!】 憂鬱にされないためにできること ・首尾一貫感覚で心を整える。本書では、実証研究やカウンセリングの臨床で効果が確認され、知っていれば一人でも実践可能な「使える心理学の知識」が5つ紹介されている。要約ではそのうち2つを取り上げる。 ・1つ目は「首尾一貫感覚で心を整える」である。「首尾一貫感覚」は、アメリカの医療社会学者アーロン・アントノフスキー博士が提唱した概念だ。博士は、ナチスの強制収容所を生き延び、戦後も過酷な難民生活を送りながら心身の健康を保ち続けたユダヤ人女性たちに注目した。そして、インタビュー調査を通して彼女たちに共通していた3つの認知的な感覚を抽出し、これを「首尾一貫感覚」と名付けた。 ・1つ目は「把握可能感」。自分が置かれている状況や先の展開を理解できるという感覚である。たとえば、同じ上司のもとで長く働き、「部下としてどう振る舞えばいいか、だいたい把握できている」と感じられる状態がこれに当たる。 ・2つ目は「処理可能感」。自分に降りかかるストレスや課題に対処できるという手応えだ。「今月はあと10人にアポイントがとれれば目標達成だ」と見通しが立つ場合などが典型例である。 ・3つ目は「有意味感」。自分の人生や出来事には価値や意味があると感じられる感覚である。たとえば、会議で提案が採用され、会社に貢献できたと実感したときに、有意味感を持つことができる。 ・これまでの研究では、首尾一貫感覚が高い就労者はストレス反応が低いことがわかっている。あなたがいま抱えているストレスを、この3つの視点で整理してみるのも有効だ。きっと新しい見え方が生まれるはずだ。 ・認知行動療法で思考のクセを正す もう一つの知識は「認知行動療法で思考のクセを正す」だ。同僚にLINEをしたけれど既読スルーだったとする。客観的な事実としては「LINEを送ったことには気づいてくれたようだが、まだ反応がない」というだけである。 しかしこれを「私は返信する価値がないと思われているのかな」「嫌われているのかな」と受け止めると、不安が一気に高まる。同じ出来事でも、認知次第でストレスの大きさが変わるということだ。こうした受け止め方には、その人固有の思考パターンが影響している。なぜなら、出来事をどう解釈するかという「認知」には、深層にある「スキーマ」が密接に関わっているからだ。スキーマとは、幼少期の経験や親子関係などから形成される信念・価値観で、この例では「自分は価値がない」というスキーマが働いているように見える。 ・ここでは認知行動療法の代表的で簡便な方法として「コラム法」を取り上げたい。この方法は、コラム(記入欄)に順に書き込むだけで、自分の思考のクセを可視化できる。 ・コラム1「最近もっともストレスを感じたことは?」:同期にLINEを送ったが既読スルーだった。 ・コラム2「その出来事を思い出したときに浮かんだ考え」:私は返信する価値がないと思われているのかな。 ・コラム3「その自動思考が生んだ感情と行動は?」(0~100点で点数化):不安(90点)。その後、なるべく同僚との接触を避けるようになる。 ・コラム法で重要なのは、まず自分の「自動思考」に気づくことである。先の例では、既読スルー→「価値がないと思われている」という自動思考→不安→同僚との接触を避けるという流れが生じていた。 ・続いて、コラム2の「自動思考」を確認し、認知が歪んでいるようなら修正する。たとえば「私は返信する価値がないと思われているのかな」という考えは、事実と必ずしも一致しない。「相手はLINEを開いただけで読む時間がなかった」「返信が不要だと判断した」など、他の可能性はいくらでもある。こうした別の解釈を探るだけで、気持ちがふっと軽くなることがあるものだ。 ・冷静に見直すと、歪んだ認知による自動思考が客観的根拠を欠いている場合は多い。コラム法を頭の引き出しに入れておき、モヤッとした出来事があれば取り出して使う習慣をつけたい。 ・この方法を繰り返すうち、自分の思考のクセやパターンが見えてくる。ネガティブで非現実的な自動思考が浮かんだときほど、別の可能性を探り、歪んだ認知を書き換えていくとよい。 ・なお、例にある「自分は価値がない」というスキーマは、「自分には存在価値がある」という新しいスキーマへ少しずつ更新していく必要がある。その方法の一つとして、「自分に存在価値を感じられた体験」を1日1つ思い出し、書き溜めていくことを勧めたい。 ■一読のすすめ ・要約で取り上げた事例の他にも、部下とうまくコミュニケーションできない上司、人の話を聞かない後輩、上司を悪者にしようとする部下など、実に多様な「職場を憂鬱にする人たち」が登場する。どの事例も驚くほどリアルで、「いるいる、こういう人」と思わずうなずいてしまうものばかりだ。そして著者の解説と合わせて読むと、「あの不可解な言動にはこういう心理が潜んでいたのか」「こうすればうまく対応できるのか」という気づきがある。 ・また、著者の専門である「国会議員秘書のストレスに関する研究」および「優秀な政策担当秘書を許せない国会議員や第一秘書」の事例も非常に興味深い。業界外の人にとっても、共感できる部分があるはずだ。 ・本書を手に取ったなら、ぜひ“憂鬱にさせられないためにできること”をまとめた章も読み込んでほしい。要約では紹介できなかった残りの3つ、「ストレスを正しく理解する」「お互いの『準拠枠』を確かめ合う」「アサーティブな表現で対等な関係をめざす」も、きっとあなたを救ってくれるはずだ。 ・なお、本書では、「憂鬱にする人」の心理的背景を知って、自分も同じ心理状態になっていないか、あらためて振り返ってみることを勧めている。自分も、周りの誰かを憂鬱にしているかもしれないからだ。 ・自分の心理状態に気づくことで、長年蓋をしてきた課題と向き合うことができ、自分自身が救われることもある。 ・そのような視点からも有用な一冊なので、ぜひ一読してほしい。

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    投稿日: 2026.02.15
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    様々なジャンルの「職場にいるとうわー付き合いづらい人だな...」という人を上司・同僚・部下の3つに分けて説明している。自分が当てはまっていないかどうか気になり、一気に読み進めたが、想像以上のエピソードばかりで逆にそういう職場もあるのかと驚きが強かった。最後の章では「首尾一貫感覚」という3つの感覚をもとに、憂鬱にさせる職場の人とどう付き合うかということを書いているが、相手が変わらないという前提のもとで書き進めているのが興味深かった。

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    投稿日: 2025.11.17
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    いろいろな事例から、ストレスの原因になる心理、 自分の思考の癖について、考えることができました。 自分に準拠枠があるように、相手にもそれぞれの準拠枠があることを尊重しつつ、自分の意見も上手く相手に伝えられるように、アサーティブな表現ができるようになることで、 コミュニケーションの枠が広げられるて良いです。

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    投稿日: 2025.11.14
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    舟木彩乃さんの著作は事例が豊富で、具体的なのが特徴です。職場の人間関係が中心ですが、それにとどまらず、いろんな場面で役に立つと思います。 現実の社会で生きる私たちには、悩みの9割を占める人間関係を心理学を使ってどう処していくかが重要で、それは学者の体系的な解説書では得られないものです。Yahooでも記事を書いておられて、そちらも合わせて読んでいると、多くの心理学的な知識とスキルを蓄えることができます。 「あなたの職場を憂鬱にする人たち」を読むと、似たような人が自分の周りにもいると思い当たります。上司や同僚、部下の憂鬱な言動に悩んでいるなら、解決する手助けをしてくれるはずです。自分は、嫉妬する上司にかなりのパワハラを受けていましたが、その心理的背景が分かりました。

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    投稿日: 2025.10.08