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アラブの格言(新潮新書)
アラブの格言(新潮新書)
曽野綾子/新潮社
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総合評価

13件)
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    サダム・フセインとの戦争時にあらためて、出版し直したものとあります。 荒野に暮らすアラブ(ベドウィン)が自然の中を生き抜くための、習慣、神とのかかわり方、考え方を伝えてくれる一冊です。 アラブのIBMということばがでてきます。 I:インシャラー 約束の念押しを迫ると答える 意味は、神の思し召しがあれば、ようは、100%保証したわけでない B:ブクラ いつできるかと問う答え。明日、でもいつになってもブクラのままである。 M:マレシ 約束が履行されなかったことについてなじるとその答え。理のないこと、過ぎたことは仕方ないじゃない。 気になったことは以下です。 ・アラブ諸国の人たちは、スポーツで、国旗のものに結束することはある。だが、彼らにとって大切なのは、部族の概念である。 ・電気のない土地では、ほとんど例外なく民主主義が定着しない。民主主義を育てたのは電力である。それならば電力の恩恵を受けない土地では、どういう支配体制が行われているかというと族長支配なのである。 ・「人に食べ物をやる時は、満足するまでやれ。殴る時は、徹底的に殴れ」  自分で守らなければ、自分も家族の生存も不可能なのである。 ・戦いをおこす原動力はいくつもあるが、もっとも普遍的なものは復讐である。正義のためでは、人はなかなか動かないが、自分の家族、財産、権利、あるいは、恥に加えらえた暴力を人は決してわすれることはない。 ・女は、ベールと墓以外何ももっていない。 ・ともかく人は生き抜かねばならない。暑さ寒さ厳しく総じて水も不足している土地で生き抜くには、それほどたやすいものではない。そこで人は死なない方法を考える。自然も人間をとり殺すが、何より恐ろしい敵は人間なのだから、相手を見抜く眼力を養わなければならない。 ・「他人を信じるな。自分も信じるな」  信じるということは、疑うという操作を経たあとの結果であるべきだ。疑いもせずに信じるということは、厳密にいうと行為として成り立たないし、手順を省いたという点で非難されるべきである。 ・「他人の家では思っていることをしゃべらず、ドアを開けず、質問をするな」  肉体的力を支えるのは精神力である。自制、知識、他人の話を聞く姿勢などについて、多くの格言を残した。 ・「人は見かけでは半分しかわからない。会話ですべてがわかる」  この観察法は人があふれる都会でも有効である。だか最近は、スマホやゲームに時間を費やす人が増え、会話は衰退の一途とたどるばかりだ。健全なのはむしろアラブのほうだ。 ・「血の一滴は、千の友に匹敵する」  友情の中でさえ、命の危険が問題にされることは承認済みなのである。血を流す勇気もなく、命をささげる決意もなく、金銭さえも捧げない人間になんの友情が期待できるだろう。 ・「議論の下手な男の下は長くなる」  おしゃべる男の話は内容がない ・荒野に暮らす人々にとって、人間は人間としてそこにいてくれるだけで貴重品だ。 ・通常、花嫁は血のつながった一族からもらうことになっている。つまり、妻にするのは従姉妹をもらうことになる。、 ・結婚のみならず、生活上の経済、社会的地位などを守るに、他人は決して信用しない。すべて、同宗教であって、しかも血族である人々によって固められるのである。 ・学校に通えないベドウィンたちは、親が教師の役目もかねる。親はしばしば文字を読むこともできないであろうが、それでも生活の上では子供たちの偉大な師である。 ・複数の妻を持つ夫は、どの妻をも平等に扱わなければならないことになっている。 ・貧困こそ、我々の中の卑怯さと残忍さを露呈し増幅する。 ・アラブ(ベドウィン)は帰ってくる  彼らは他部族と確執があれば決して忘れない。彼らと戦った人々はそのことを知っているのであろうか。  が終わりのことばです。 目次は次の通りです。 はじめに 第1章 神  追うものと追われる者は、共に神の名を口にする 第2章 戦争 一夜の無政府主義より数百年にわたる圧政の方がましだ  第3章 運命 世界は二人の人間に属した。殺された男と、彼を殺した男と 第4章 知恵 水を節約するように言われた途端に、誰もが水を飲み始める 第5章 人徳 あなたには栄誉を、私には利益を 第6章 友情 歓迎されない客人は、大英帝国のようにいつまでも居座る 第7章 結婚 私は妻にお前なんか離婚だといった。すると彼女はベットにおいでと命じた。 第8章 家族 家に老人がいないなか、一人買ってこい 第9章 貧富 貧乏は叡智 第10章 サダム・フセイン バスラの反乱以後は廃墟

    7
    投稿日: 2022.08.16
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    どの国にも、格言や諺が存在する。 古いものも新しいものも。 一千年も昔のものでも、異なる国で、内容は似たような真理を含むものも多数存在する。 その地域の人柄を大雑把にでも理解する一助にはなる。 読んでいてなるほどと思いながらも、なぜもこんなにイスラムとキリストの溝が端的に古代人の頃から格言として残されているのに、同じ過ちを繰り返すのか、と疑問に思うが、その点についても遥か昔から宣誓されている。 もっと巧い按配にいかないものかね。 イスラム圏の思想というか、慣習などを知ると戦前の日本に違い感じがする。 親しみやすいというか、今でもとても馴染みやすそうな印象を受ける。 そういえば、一夫多妻制の元々の走りは、戦で夫を亡くした寡婦と子供が生けて行けるようにというセーフティネットだったな。 好色や性的乱脈が始まりではない。 昨今騒がしいイスラム国の、少なくとも背景の一部を垣間見れる一冊でした。

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    投稿日: 2017.11.20
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    まあ風土も宗教も違うかの国々と我が国とでは、ほんと根柢の常識が違ってるんだろうね。特に人に対する信用の仕方なんかは「ふーん」の連続で。ま、本書のみをうのみにしちゃうとだめなんだろうけど。

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    投稿日: 2016.06.25
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    本書はイスラム教圏の国々で作られた格言を集め、その地域の人々の暮らしや文化、考え方を垣間見ようとした本である。 格言を見て思うに、自然環境の厳しい中東で生活している人々は、自然とシビアに物事を考え(神との距離も近すぎず遠すぎずというのは知らなかった)、人間関係についても現実的な対応をするようになるのだろう。 その分自然や人を見る目は養われ、人間関係については本質を突いたものが多くあり、勉強になった。 本書を読んでも知らないことだらけなので、イスラム圏の人々の文化を一層学んでみたくなった。 人生の道しるべたる格言もあるので、是非一読されたい。

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    投稿日: 2015.06.12
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    原油が見つかってからまだ1世紀も経っていません。それまでは厳しい砂漠の気候の中で生活をしてきたベドウィンの彼らの格言。これは学ぶべき点も多いです。

    1
    投稿日: 2014.10.31
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    掲載されているのが日本語だけな点が少々残念。原語・出典の掲載が無いので、「本当にそう言うの?」というのに確信が持てず、日常で使うまでには至らず。ネットを見ると、「英訳されたアラブ格言を元に....」という事なので、「とっかかりの参考程度」として使うのが妥当。これをきっかけに、ネットにあるArab proverbにたどり着くのが良。

    1
    投稿日: 2014.05.29
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    2012年8月28日読了。産経新聞の連載でお馴染みの著者による、イスラム圏のアラブ諸国の日常使いの格言集。砂漠と砂嵐の国にテントを張り、人と犬を友として羊を追って暮らす人々の厳しい生活から来る格言だけあり、シニカルで激しい言葉が多い・・・。「信じれば/願えば叶う」的に楽天的な日本人の諺とは根本から異なるようだ。物事がうまくいかないときに神を呪い責任を転嫁するような格言も多くあり、「唯一神アッラーをあがめる原理主義的・敬虔なイスラム教徒」の画一的なイメージを抱いて彼らに接するのも誤りなのだな、と感じる。「友」とは自分にとって利益となる存在なのであり、単にぶらぶらと遊びに来るような人間は「女か羊を盗みに来た」と思われてもしょうがない、など。彼らの思考のほうが自分よりもシンプルで人間らしい、のかもしれない。

    0
    投稿日: 2012.08.29
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ちょっと古い本(2003年発行)ですが、当時のホットな話題であったサダム・フセインとアメリカとの戦争にも絡めて、アラブ世界の様々な格言を紹介しています。 「アラブ」というざっくりした切り口なので、当然ながらそれぞれの格言が生まれた背景や使われている国はバラバラ。それでも、似通ったものを大きなテーマごとにまとめ、分かりやすく紹介しているところは、さすが曽野さんといったところ。 アラブの常識や文化というものを理解するための一つの手段として、名言・格言という切り口から入っていくのも、なかなか面白いと思います。

    0
    投稿日: 2012.05.16
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    このレビューはネタバレを含みます。

     アラブの価値観に触れることが出来ます。それは、日本的なものでも欧米的なものでもありません。砂漠の民が何を祈り、どんな気持ちで戦っているのか、短い格言を通して手軽に知ることが出来ます。 =====【以下、引用】===== ■p23 *もしも神が許さなかったら天国は空っぽになる(アラブ) ■p27 *断食して祈れ。そうすればきっとよくないことが起こる(レバノン)  誤訳でも誤植でもない。信仰などで事はよくならない、という皮肉な現実認識である。 ■p33~p34  現代においてもなぜこの部族対立が続くかというと、これも私の実感にすぎないのだが、こうした心理の育つ土地には、今でも電気がないのである。(略)民主主義を育てたのは電力である。それならば、電力の恩恵を受けない土地では、どのような支配体制が行われているかというと、族長支配なのである。  (略)民主的な選挙をしようにも、電気もなく、通信手段もなく、テレビもなく、交通手段も原始的なままとすれば、形ばかりは民主的投票システムを採用したとしても、充分にそして安全に機能しないから、現実の政治は、依然として封建的族長政治の形態をとり続けるより仕方がないのである。そのことを我々は理解しなければならないし、非難してはならないと思う。 ■p35~p36 *一夜の無政府主義より数百年にわたる圧政の方がましだ。(アラブ) *天使に支配されるよりは、悪魔を支配する方がいい。(マルタ)  アメリカは「解放」を最上の美徳の一つとするが、彼らはそのようなものに何の魅力も感じていない。部族の支配とはむしろ解放の不安から守ってくれるものなのである。支配者がいないということは、真空と同じ恐ろしい空間になる。 *鼠の正義よりも猫の暴政の方がましだ。(レバノン) ■p37 *首長が死ぬと、同盟関係も死ぬ。(アラブ) ■p39 *金持ちが蛇を食べると、人々は「なんて賢い」と言う。貧乏人が蛇を食べると「馬鹿な奴だ」と言う。(アラブ) ■p41 金の装飾品が、郵便局や銀行の代わりにベドウィン(遊牧民)たちの貯金の方法となっている ■p42 「前の人の方が貧しいように見えましたが、貧しい人にたくさんおやりになるんではないんですか」  社長は答えた。 「人間には皆分相応ということがあります。富んだ暮らしをしている者にはたくさん与えねばなりません」  それがアラブの知恵というもので、貧しい人に恵むと言っても「過度の寛大は愚かさと同じ」ということをこの社長は知っていたのである。 ■p44~45 *もしも本当に敵を悩ませたいと思うなら、何も言わずに彼を一人にしておけ。(アラブ)  戦いをおこす原動力はいくつかあるが、そのもっとも普遍的なものは復讐である。(略)自分の家族、部族、財産、権利、あるいは恥の感覚などに対して加えられた暴力を人は決して忘れることはない。そしてその傷から立ち直る唯一の方法は、復讐を実行することなのである。  (略)「目には目を、歯には歯を」は、決して復讐を勧めたり、拡大させたりするものではなく、むしろ受けた傷と同じ量だけ厳密に返すようにという「同害復讐法(レックス・タリオニス)」を明記したものであった。つまり、目を一つ潰された男が、怒りにまかせて相手の両目を潰すことがないように、一つの耳を切り落とされた男が、相手の両耳をそがないように規制したのである。 ■p46  アラブ人たちは復讐について次のように考えているのである。 *復讐は恥を消す。(アラブ) *復讐をしないやつはロバ(馬鹿なもの)の甥。(スーダン) *俺の壷を一個割ったら、百個割返してやる。(アラブ) *犬の血の値段は、犬一匹だ。(レバノン) *一人のアラブ人の正義より一人のトルコ人の圧政のほうがましだ。(アラブ) *復讐をするのは恥ではない。(レバノン)  ただし彼らはこうも言っている。 *復讐はありきたり。慈悲は希有なもの。(アラブ)  しかし復讐は徹底的に完了しなければ意味がない。 *蛇を殺すときには、頭をこなごなにしたことを確かめろ。(イラク) ■p49 *死ぬ予感は、死そのものより悪い。(アラブ) ■p189 *アラブ(ベドウィン)は帰ってくる。(アラブ)  ベドウィンたちは一度襲われたら、たとえいったん負けて逃げようともいつか必ず帰ってくるという意味だそうである。  彼らは、他部族と確執があれば決して忘れない。彼らと戦った人々はそのことを知っているのだろうか。

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    投稿日: 2011.05.28
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    [ 内容 ] 神、戦争、運命、友情、家族、貧富、そしてサダム・フセインまで―。 素早く、簡潔に、かつ深くアラブ世界を理解するには、彼らの世界の格言を知るに限る。 「追う者と追われる者は、共に神の名を口にする」「一夜の無政府主義より数百年にわたる圧政の方がましだ」など、古来より伝承され数多ある中から530を厳選。 そこに加えられた著者独自の視点、解説によって、鮮明に浮かび上がる「アラブの智恵」とは。 [ 目次 ] 第1章 神―「追う者と追われる者は、共に神の名を口にする」 第2章 戦争―「一夜の無政府主義より数百年にわたる圧政の方がましだ」 第3章 運命―「世界は二人の人間に属した。殺された男と、彼を殺した男と」 第4章 知恵―「水を節約するようにと言われた途端に、誰もが水を飲み始める」 第5章 人徳―「あなたには名誉を。私には利益を」 第6章 友情―「歓迎されない客人は、大英帝国のようにいつまでも居座る」 第7章 結婚―「私は妻に『おまえなんか離婚だ』と言った。すると彼女は『ベッドへおいで』と命じた」 第8章 家族―「家に老人がいないなら、一人買ってこい」 第9章 貧富―「貧乏は叡知」 第10章 サダム・フセイン―「バスラの反乱以後は廃墟」 [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]

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    投稿日: 2011.05.23
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    日本人とは全く違う大陸的な考え方に触れて、新鮮な気分になりました。 個人的には「同じ店から買うな。同じ道を歩くな。」 という格言が印象に残っています。

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    投稿日: 2010.09.02
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    日本の諺や格言の類に、正反対のことばがあるように、アラブのそれも同じである。 しかし、全体としての傾向はあるため、参考になる。 アラブの人々がどのような思考をしているのかということについて。 人種が違えば考えていることは全然違うと思っていい。

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    投稿日: 2008.02.06
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    地域、民族、個人ごとに考え方は当然違うのだけれど、だからといって共感できないかというと、そういうわけでもない。 取っ掛かりが違うと解った上で相手の言葉に触れていくと、『なるほどなぁ』と思うことのなんと多いことか。一括りに「アラブ」とは云えない多様性。名言が多い。

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    投稿日: 2007.04.14