
総合評価
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powered by ブクログ島根県石見銀山を舞台とした。ウメの成長物語。貧しい村を抜け出し山師・喜兵衛に拾われる。しかし女という、差別や性の対象と見られる。しかし男達は銀山への弊害で若くして死して行く。そんな中、ウメもその渦に飲み込まれるが‥男は間歩と同じく女の肚の中(手のひらの上)の様。喜兵衛、隼人、龍の傍にはウメが!そんな大河ドラマを是非一読
0投稿日: 2025.11.22
powered by ブクログ面白かった! 産まれた性別が女性か、男性かで人生が大きく変わる時代で、それぞれの生き様の描かれ方が印象的だった。
0投稿日: 2025.11.21
powered by ブクログもう何冊目読んだかわからない千早さんの作品。 今回は時代物だったので、苦手な私は最初は少し読み進めるのに時間がかかりましたが、ウメが喜兵衛に出会ってからは、その世界観に入り込めどんどん読み進められました。 癖の強い登場人物ばかりですが、その人の色々な面を知ると魅力的になり、なのに一人また一人と亡くなってしまうのが悲しかった。 銀の山が無ければ、こんなことにならなかったけれど、銀の山があったからこそ、彼らは出逢えた… 今まで読んだ千早さん作品とは全く違う作品でしたが、この作品で直木賞を受賞したことに納得しました。
0投稿日: 2025.11.17
powered by ブクログ喜兵衛という山師が行き倒れていたウメを拾い育でた、ウメの凄まじい生き様を体験する事が出来ました。圧巻です。
5投稿日: 2025.11.16
powered by ブクログ小学生の時に読んだ、『モチモチの木』を思い出した。 どこか懐かしい感じがする。 最初の方は一気に読み進め、 最後の方はストーリー展開が早すぎて 少々疲れてしまいました。
0投稿日: 2025.11.14
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
千早茜さんの直木賞受賞作とのことで手に取りました。 夜目が利くウメが、人生の暗い部分も目を凝らして現実を受け入れながら、人生の喜びと絶望の中でひたむきに生きる姿に胸を打たれました。
0投稿日: 2025.11.12
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
戦国末期の石見銀山を舞台に、幼くして父母と生き別れた少女ウメがたくましく生きていく物語。 銀で潤う町の様子とは対照的な、まっ暗闇の坑道「間歩」(まぶ)。 「信じるものがないとその闇は耐えられない」という喜兵衛の言葉から、そこに向かう鉱夫たちがどうやって自分を奮い立たせていたかを考えてしまいます。 当時の鉱夫の平均寿命は30歳ほどだったとのことですが、そこに明るく健やかな女たちの存在は大きかったんだろうな。 間歩の闇に魅せられ、恐れたウメ。 目を覆いたくなるような酷い目にも遭い、胸にズシンとくる辛い場面も多いです。でも自分を見失わず、時にしたたかに立ち回るウメの姿に、どうか闇にのまれないでくれと願いながら読みました。 ツツジや血の赤、夕鶴の白いうなじ、にぶく光る銀、そして間歩や闇夜の漆黒など、色の描き方もとても印象的。 魅力的な登場人物も多いのですが、なんといってもヨキ。ヨキ何者。ヨキ気になりすぎる。ヨキに全部持ってかれた。
10投稿日: 2025.11.10
powered by ブクログ時代背景は関ヶ原合戦前後の石見銀山。 千早さんはなんて「強くあろうとする女」を生き生きと描くのが上手いのだろうか。 生と性。男と女。海と山。光と暗闇。 対比しているものこそが、最後には同じ着地点に返ってゆく。それを理解しながら、もがき苦しみ「生きることわり」を探す。 間歩(まぶ)という言葉を始めて知った。 暗く重厚な世界観であるが、後味は悪くなく直木賞受賞も納得のいく読了感。
0投稿日: 2025.11.07
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
石見銀山に惹かれて購入。女性として銀山で生きていく上で避けられない「役割」。そこに憤りはあれど、妻として夫を愛し、母となり子を成すことに喜びを感じるのも事実。どちらも本当のウメ。でもウメの側にはいつも闇がある。その闇はウメ自身と銀山すべてを飲み込んで、一体化して、銀山の歴史を眺め続けているのかもしれないな、と思わされました。締めくくりはなんなだか、急に幕を下ろされた気分にもなりました。
1投稿日: 2025.11.01
powered by ブクログこの作者さんの既刊をボチボチと読んでいく、の6冊目。今回は直木賞を受賞されたこの本で。 夜逃げの途中で家族とはぐれ、山師の喜兵衛に拾われた少女ウメ。夜目が利くのを頼りに、女だてらに銀掘になろうと間歩(坑道)の中で働き出す…という出だし。 喜兵衛とウメ、加えて喜兵衛に従うヨキの銀山での日常が描かれる前半では、銀を掘る仕事やそこで働く銀堀たちの姿が描かれ、山の深さや間歩の暗さ、風の爽やかさや土の湿り気、水の冷たさなどの描写も染み渡る。 男ばかりの間歩の中での、女であるが故の窮屈さが、ウメが女を感じさせるようになるとともに増長して、物語の後半では、好きに生きたいように生きられないウメの半生が積み重ねられる。 男は命を削って銀を掘り、女は子供を産んで銀堀に育てる、という銀山での宿命というべき生き方がなんとも…で、時代の変化の中で生き様を閉ざされた喜兵衛や死ぬと分かっていて間歩に向かう隼人をはじめとする男たちの姿が遣る瀬無い。 一方、銀山での宿命や女であることのしがらみに直面し続けたウメではあったが、多くの死を見送りながらも彼女なりに抗いながら生きた姿が哀しくも逞しく、異国に出自を持つヨキや龍、男でありながら女として生きる菊など“異端”とされる者たちの存在感が印象深い。 とまとめてはみたが、物語に込められたであろう重厚且つ深遠なテーマを十分咀嚼したとは言えない読後感ではある。
72投稿日: 2025.11.01
powered by ブクログ文章はとても良い 内容は、主人公が暗闇に魅入られているだけあって、暗め 決して暗いだけではないけど、私には合わなかった すぐに気分転換がしたい 新潮文庫の100冊2025
0投稿日: 2025.10.28
powered by ブクログ女として生を受けたからには、どうしようもなく女として生きるしかなかった時代。石見銀山の銀堀の男たちと、運命に抗いながらも毅然と生き抜く一人の女性を描く。間歩の闇、光る葉、血の匂い、死の影など印象的な表現が随所に現れ、読み易くも重力のある内容に、読了まで時間が掛かった。「生きること」の尊さを問う、ある登場人物の台詞が強く心に残った。
0投稿日: 2025.10.23
powered by ブクログ主人公のウメが山師に拾われ、どう生き抜いていくのかが興味をそそられた。またウメの魅力に引かれる男たちの存在や、その男たちを追いかける女たちなど、男女の恋心のもつれも描かれていて、読んでいて飽きなかった。銀を掘る男たちが短命で亡くなっていっても、その場を離れず、闇とともに生きるウメの覚悟に胸を打たれた。
0投稿日: 2025.10.22
powered by ブクログ千早茜『直木賞受賞作品』 千早茜、初読み。 戦国末期の石見銀山。 シルバーラッシュに沸く、石見銀山に家族とともに向かうウメ。途中、父母と生き別れ、山師・喜兵衛に拾われる。 銀山で銀掘として、間歩に入りたいと願うウメだったが、喜兵衛からは許されなかった。 銀に魅せられ、銀山に入っていく、男たち。 そして、男たちのからだは蝕まれていく… 銀山に生きるひとたち。 銀山に魅せられ、銀山にしか生きられない男たちと、共に生きる女たちの世界。 ウメは、喜兵衛に魅せられたからこそ、銀山に魅せられた。自分も喜兵衛のようになりたいと… 山師になることはできなかったが… 銀山に入る隼人や龍、息子たちを支え続けることで自らの生きる糧としたのだろう。 喜兵衛がウメの仇をとっていたことには溜飲を下げた。喜兵衛は大きな男だった。 願わくば,ウメには山師のもとに嫁いで欲しかった。石見で成功してもらいたかった… 石見銀山に魅せられたのだから… ウメに関わる男たちが銀山に魅せられ、肺の病で死んでいったことがやるせない… わかっているのに、変えれなかったのか、と。
13投稿日: 2025.10.18
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
男まさりの強い女性が、地域社会に適応していく中で様々な葛藤と人間的成長を経験していく。 強姦した犯人を殺害したのが喜兵衛だと知った場面で、思わず泣いてしまった。
1投稿日: 2025.10.18
powered by ブクログ後半の引き込まれ感がすごい。私も日に日に病気に侵されていく人と生活しているかのよう。辛い咳が、隣から聞こえてくるような、、、それでも生活のために間歩に入る。 ウメの波瀾万丈すぎる人生。それでも生きていく。
1投稿日: 2025.10.17
powered by ブクログ両親と共に夜逃げしたウメは道中で両親と生き別れとなる。さまよいつつ一歩一歩き川を遡り間歩にたどり着いた先で山師喜兵衛と出会う。女児のウメを育てることに冷やかな反応も多い中、喜兵衛はつかず離れずでも大きな愛情をもってウメを育てていく。いつしか銀堀になりたかったウメだが、そこに立ちはだかる性の問題。家族を生かすために必死で銀堀する夫と家で子供を守りじっと夫の帰りを待つ妻。やがて夫は銀堀の病に侵され次々と死を迎える。妻は子供を養うために次の夫と結婚していく。このような銀山の生活の中にウメも入っていくこととなる。性別によりどうしてもかなわない事への悲しみ・怒りなどを自分の中でもがき、受け入れながら必死で生活していく姿が美しい感情表現で描写されている。生きる意味とは、生きながら得ることとは…戦国時代の石見銀山を舞台にした小説。
1投稿日: 2025.10.15
powered by ブクログ時代小説を初めて読んだ。今まで読む機会なく敬遠していたが、千早さんの作品ということで挑戦してみた! 最初は慣れない言葉や文体に慣れなくて読み進むのに時間がかかったが、千早さんの圧倒的な文章力に惹き込まれた。 銀掘りたちとそれを支える女たちの一生。力強さと儚さ。 この作品はフィクションだが、実際に昔の石見銀山ではこのような日常があったのだろう。 病に倒れていく男たち、それを最後まで見届ける女、辛い。でも掘り続ける。ここで生きていくという覚悟に魅せられた。 登場人物たちが魅力的だったな。 「死にたいと望むことは生きたいと同義なんかもしれん」 「銀がなくなっても、光るなにかを人は探すと思います。それで毒を蓄えても、輝きがなくては人は生きていけない。無為なことなどないんです。ウメさんの歩んできた道に光るものはありませんでしたか。 足掻きましょう、無為に思えても。どこにも逃げられはしないんです」
5投稿日: 2025.10.12
powered by ブクログ静岡県の土肥金山に行ったことがある。呑気に砂金採りや坑道に潜るなどの体験をした。 この小説は石見銀山の話。そうか、実際の鉱山というのはこれほど苛烈で闇で熱く苦しいものであったかと、啓かれた感じ。資料や観光地などで見聞きしてはいたが、ここで描かれる生活と金と権力と病、男たちは次々と死んで女は何人もの夫に嫁ぎ、男子は育つとまた坑道に送り込まれる、というリアルは全然わかっていなかった。
1投稿日: 2025.10.11
powered by ブクログなんだろ、ジブリ映画を一本みた後のような読後感。爽やかな部分と、人間の欲望の部分がメリハリよく描かれていて、複雑な気持ちになる作品でした。 私は石見銀山に行ったこともないですし、勿論戦国時代に生きたわけでもないです。ましてや男なので、女性の体や気持ちの変化など体験したこともなく、わからないことだらけなのですが、なんだか自分がタイムスリップして、ウメ(主人公)になったような感覚を覚えるほどリアルに世界が描かれていたと思います。きっと著者は石見銀山や当時の人々の生活について、細かく調査されたのだろうと察します。 間歩(まぶ)や手子(てご)など、聞き慣れない言葉が多々でてくるのですが、自然とそういった言葉を覚えることができ、読み終わって1週間たった今も耳に残っています。そこまで、読み手をのめりこませるとは、さすがと思います。 心情描写、風景描写、構成、どれをとっても一級品で、最近★5をつけすぎな気もするのですが、★5で間違いない作品です。
18投稿日: 2025.10.09
powered by ブクログ千早茜さん。初めましてです。 気になる作家さんではありますが、作品を表紙のイラストや写真で感じて選ぶところがあるので、ちょっと難しそうかな〜と、手に取るのを避けていました。 千早さんの他の作品を知らないので比べようがないのですが、可愛らしいお名前(あくまで私の感想です)に似ずに、飾らないストレートな表現をされるのだな、と感じました。 作品の舞台は、戦国時代の島根県、石見銀山 主人公は、ウメ ウメは幼い頃に父母と生き別れ、山師の喜兵衛に拾われて銀山の坑道で働き始める。 そんなウメの生涯が、戦国の時代に銀山で働き・生きる人々の営みと共に描かれていました。 坑道で働く男たちがどのように生きて命を尽きていったのか。それを支えて共に生きた女たちはどのように生きたのか、知ることが出来ました。
36投稿日: 2025.10.05
powered by ブクログとてもよかった。重めのお話だけど一気に読んだ。 現代じゃないところもあるのか、私がこれまで読んできた千早茜さんとは違った印象のお話。人の奥底を覗くようなところは繋がるところがある気がするけれど。 ウメが子どものときから歳を重ねても、どの時も子どものような全てを悟った老年のような雰囲気を漂わせているようだった。その時々に周りにいる大切な人人たちと、忘れずに心の中にいる人と、生きていく。段々とあるがままを受け入れる靭やかさ身につけつつ、変わらない芯を持ちながら。 ウメが守り守られてきた人たちと山。喜兵衛、ヨキ、隼人、おとよ、龍…。それぞれの登場人物の愛情や矜持、強さと弱さがいろいろな形で魅せられるお話だった。
20投稿日: 2025.10.04
powered by ブクログ購入済み 2025.11.23.読了 石見銀山に魅入られた少女の生涯が描かれた直木賞受賞作品。文庫391ページの長編。 ウメの生き様が心地よい
1投稿日: 2025.10.02
powered by ブクログ千早茜さんの作品は幾つか読んできたが、今回の作品は群を抜いて良かった。 時代背景は、なんと関ヶ原の戦いの頃の日本。 島根県は石見銀山を舞台とした人間の生き様を描いた作品。 シルバーラッシュに生きる望みを託した両親に連れられ、住み慣れた村を出たウメは、一人きりで銀山の山師である喜兵衛に拾われる。 夜目の利く童だったウメは、喜兵衛に慈しみ育てられ、やがて間歩で銀を採ることを志すのだが・・・ 銀山はまさに生命そのものだ。 間歩の闇の中で掘り出される銀は、そこに生きる道を求めた人々の生きる道標であり、欲望と夢と意地の境地だった。そして、その闇は人間の体を確実に蝕んでいく。 医療や科学が未発達だった時代・・・ 人は銀山に何をみて何を感じ何を思ったのか。 そこに命をかけた人々の苦悩と羨望と官能を描ききった作者の筆力の凄まじさに、読後しばし放心状態になった。壮大な物語を読ませてもらった。 まず、登場人物一人一人が魅力的だった。 個性が明確で生き生きとしていて、躍動感を感じる程だった。一方で、時には恐ろしいほどの静寂を感じる闇が広がり、孤独感や喪失感が襲ってくる。 この一見アンバランスな感情が、物語の展開と見事に調和していて、一気に引き込まれた。 ウメの感情に気持ちをのせて読み進める内に、何度か自然と涙が溢れた。 大切な人を失うことの喪失感や無力感。 子を産めるという機能が備わっているが故の苦悩。 気持ちが揺さぶられて嗚咽になりそうだった。 どうやら「闇」がキーワードになる本作。 間歩の闇と人の内にある胎内の闇。 その裏には「人が生きる意味」という昔も今も変わらないテーマが深く根付いているように感じた。 出会えたことに感謝したい作品。 色々な方に読んで欲しいと思う。
41投稿日: 2025.09.29
powered by ブクログとても読み応えのある物語でした。 面白かったと書くのはなんだか違う気がして、まだこの胸の昂りを上手く言葉にできないです。 圧巻でした。
2投稿日: 2025.09.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
とてつもなく面白かった 時代小説あるあるなのかもしれないけど、漢字むずくて読むの時間かかった。 kindleで読めば良かった。 最初は女だけどひとりで生きる力を身に付けたくて間歩に入ろうとしていたウメだけど、それができたのは子供時代だけで、やはりこの時代に女ひとりで生きることは難しいことを嫌というほど痛感させられる。 結果的にたくさんの子をもうけて複数の夫を看取る石見の女として生涯を終える。 生きることの苦しさが描かれた作品。 石見に行ってからもう一度読み直したい ヨキが石見に戻っていて岩爺になりすましていたことや言動がかなり変わっていたことが引っかかるので読み返した際はそのへん注目する
1投稿日: 2025.09.28
powered by ブクログ千早茜さんの本が大好き。 物音がたてばカツンと どこまでも響き渡るような静寂を感じる。 今までにない時代小説ということだったが やはり纏う空気感は同じだった。 石見銀山を舞台にしていて、 銀への執念、誇り、生と死、 その時代にあった生き様が描かれていた。 主人公のウメは人と違うようでいて 女性としての人生になっていったのもまたリアル。 石見銀山にいつか訪れてみたくなった。
2投稿日: 2025.09.23
powered by ブクログ9/8〜9/18 最初は読みにくいな〜と思ったけど、途中から引き込まれた。 ドラマの「海に眠るダイヤモンド」を思い出した
1投稿日: 2025.09.18
powered by ブクログ千早さんは、誰も入る隙のない2人で完結された空間を描くのがお上手だと思っていて、今回もそんな静謐な雰囲気の漂う作品。 変えられない運命を嘆きながらも、やはり間歩から離れずに、男たちを最期まで支えたウメは、銀堀にはなれずとも確かに喜兵衛の手子だったと思う。 胸が引き裂かれそうな闇の中でも、"おなご"として、母として、ひたむきに強く生き抜いたウメは とても美しく輝いて見えました。
1投稿日: 2025.09.14
powered by ブクログ去年あたりから千早茜さんの小説がとても好きでけっこう読んでいるのだけど、本作はこれまで読んだものとはだいぶ印象が違った。歴史小説的な要素もある。 舞台は石見銀山が栄えていた頃。物語の開始時は幼女だったウメが、親と離れ離れになり、銀堀り達が棲む村にたどり着き、喜兵衛という男に拾われる。 時代が変わっても、女はどう足掻いても女だ、と感じることは多々ある。表面的には男女平等を謳っていても、人の意識に根付くものを覆すことはなかなか難しい。 この物語の時代は殊更で、幼女だったウメが少女から大人の女性になっていく中で、周りの男たちと対等に働くことから降りて女としての役割を受け入れ果たしていく姿が描かれている。 幼い頃は勝気で「男には負けない」と闘っていたウメも、男の力に屈服せざるを得ない目に遭ってから変化していく。そこには諦めと、ある種の希望のようなものも感じられた。 ウメはそれぞれのかたちで、喜兵衛・隼人・龍という3人の男たちに愛される。一見親愛のように見える愛も突き詰めていくと男女の愛で、その愛の模様が、土臭さを感じる銀山が舞台の物語の中にそこはかとない色香や淫靡さのようなものを与えている。 命懸けで肉体労働をした男たちが帰るのは、女の待つ家。 ウメは結婚し子をもうけその役割をまっとうするが、心の中にはずっと、夫とは別の男への愛を持ち続ける。 一言で言うと、泥臭くてエロい。いやらしい場面はあまりないのだけど、なんだろう、漂うものが…という意味で。 そういうところは千早茜作品、という感じもした。直接的じゃなくて、漂う空気に湿り気があるような。 結局女は女である、という悔しさと諦め。どの部分を受け入れて、どの部分で抗うかって、私も若い頃からけっこう考えてきた。何とも思わないふりをしているけど、心底では。 直木賞受賞作だけあって読み物として面白くありながら、深い部分でずしんと来る、そういう作品だった。
4投稿日: 2025.09.12
powered by ブクログ私が普段読まないタイプの本で、読みにくいと感じながらも徐々に引き込まれていき、読む手が止まらず映画を観ているようだった。 泣けた。
2投稿日: 2025.09.08
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
銀山に生きたウメと、彼女を取り巻く男たちの物語。 山師のもとで男でも女でもないような存在から、女となり妻となり母となり、世の中の奔流に踠きながら必死で生きたウメの一生の物語ではあったのだが、何よりそのとりまく男たちが魅力的な小説だった。ウメの全てだった喜兵衛、喜兵衛の影を宿すウメを包んだ隼人、その隼人の影を宿すウメを包んだ龍。すべてが銀山に飲み込まれ、そして全てが無に帰っていく無情を、美しく描き切った名作であった。
2投稿日: 2025.09.08
powered by ブクログうーん。あんまり面白くは無かったな。つまらなくはなかったけど、読みにくかった。 人間は欲深いなと思った。
2投稿日: 2025.09.05
powered by ブクログ素晴らしい、直木賞も納得の本でした。最初から終わりまで一貫して暗く物悲しいトーンに包まれた、江戸時代始まりの時期の山奥の閉鎖された集落の日常を描く小説。希少な金属に社会は動かされ、集まった男たちは皆死んで行き、その陰で生きる女性の一生。山に掘られた間歩の闇と冷たさ、人々の欲と絶望、鮮烈な血と夜の静けさ。まさに圧巻の小説でした。
11投稿日: 2025.09.01
powered by ブクログ季節の移り変わりが美しい。家族の命が長くないこと、終わりが近いことを感じながらも、日々の楽しみを糧に生き抜こうとしているからか。 ウメさんの、満足に生きようと足掻く姿は、とてもエネルギーに溢れていて、魅力的だ。 喜兵衛の懐刀として描かれていたヨキも興味深く、ヨキ自身の言葉で語るサイドストーリーも読みたい。
2投稿日: 2025.08.29
powered by ブクログ親と離れて銀山で生きていくことになるウメという女性の一生。ウメを通して生きるということの光と闇が見える作品でした。 読み終わった後に直木賞受賞作と知り、納得の一冊でした。
8投稿日: 2025.08.26
powered by ブクログ濃密で壮大な人間ドラマに浸ることが出来た。 読後、静かに余韻が残る作品。 ウメにとって、間歩は唯一の居場所であり、生きる糧でもあった。そして喜兵衛が抱いていたウメへの情愛も、間歩のように深く底の無いもの。海の如く、母のようにすべてを包み込む。 現代では、OOガチャで人生が決まるというけれど、それは昔も同じで、それでも人は生きて行かなくてはならない。一筋の光を求めて。 「銀がなくなっても、光るなにかを人は探すと思います。それで毒を蓄えても、輝きがなくては人は生きていけない。無為なことなどないんです。ウメさんの歩んできた道に光るものはありませんでしたか」 最後の章で、龍がウメにかけた言葉が心に響いた。
0投稿日: 2025.08.22
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
最初の強さと強くならざるを得ずに強くなっていくウメに魅せられた。 夜目が効くからこそ見えたもの、諦めざるを得なかったものに締め付けられる思いがした。 喜兵衛も隼人も龍も見ていたウメは同じようでそれぞれだったような気もする。
1投稿日: 2025.08.20
powered by ブクログ直木賞を受賞された本作をいつか読みたいと思っておりましたが、機会に恵まれず文庫化の折に本作を手に取りました。時代背景などについて疎かった部分があり、そこはうーんと思いながらも、ストーリー展開に魅せられ読み進めたというような感想です。 本作は孤児として、石見の採掘者に育てられた女性のお話。古い時代ということもあり男は働くもの、女は家庭を守るものという気風の中で、採掘に魅せられる主人公の人生を描くといった内容でした。 これまでの作品を読んだ印象としては、千早さんは女性の感性を丁寧に描き、女性の意志を尊重するような作品が多かった印象がありましたが、時代背景に逆らって本作もそのような作風が感じられました。物語の設定的にラストが読めてしまうのは仕方ないかなという印象でしたが、千早さんワールドを味わうことのできる作品であると感じました。
55投稿日: 2025.08.15
powered by ブクログ差別と虐待、分断と支配、暗闇の中のしろがねの光が、人を魅了し、惑わせる。 歴史的事実や事件を絡めながら、石見銀山で生きる人々の姿が描かれる。
0投稿日: 2025.08.14
powered by ブクログ何が男たちを銀堀に駆り立てるのか。 裕福になるわけでも、地位を得られるわけでもない。体が蝕まれても、命が削られるのがわかっても銀を掘り続ける。 現代を生きる自分には理解できないけど、この時代の石見に生きる男たちはそれが当たり前で、命を削ってでもなすべき業だったのか。 ウメは女性でありながら間歩に魅入られ、銀堀になろうと決めるもなれず、銀堀である夫を支えることになる。 恐れながらも間歩に入ることに憧れ、夢叶わずとも石見を見守り続けることを決めたウメを突き動かしたのは何だったのか。 基本的にミステリが好きなから好みの物語とは言えないけど、歴史の裏を知る上で読むべき小説だと思う。
0投稿日: 2025.08.13
powered by ブクログ銀の葉を見つけたものだけが、この地で生きられる。 銀を掘り、運び、守り、生きた人たちの壮絶で壮大なストーリーだった。 読み進める中で ウメと一緒に悩み苦しみ ウメと一緒に喜び悲しみ ウメと一緒に絶望を味わった。 千早さんの作品は初めてだったけど、一つ一つの表現が繊細で、でも生々しい表現は芯があって静かに心揺さぶられ、ウメの『悔しい!』と思う気持ちに、何度も涙が出た。
17投稿日: 2025.08.13
powered by ブクログ烈しいけれど静かで、芯がある。 主人公ウメと闇。闇は人の生であり死でもあり、誕生でもあり終焉でもある。 北方謙三氏の解説がとても言い得ていた。同感。 カバー裏の紹介文はちょっと違うと思う。
0投稿日: 2025.08.12
powered by ブクログ直木賞受賞作。女の、と風呂敷は広げたらあかんやろな。銀山を生き抜いたウメの一代記。山師に拾われ、育てられ、間歩という男の働き場で居場所を作ろうとするも、自分の性が思いとは裏腹に邪魔をする。柔く、弱く、何も知らん顔をして。そう生きられれば違う未来があったのか。だけど、喜兵衛に拾われなければ野垂れ死だ。喜兵衛に育てられたから。一面としてはそうかもしれない。だけど、やっぱりもっと生まれた資質なんだろうな。間歩に惹かれ、間歩に呼ばれ、間歩と共に生きた。そう、ただ、生きたんだ。
0投稿日: 2025.08.10
powered by ブクログ熱く、濃厚な描写に圧倒された。ずっと記憶に残りそうな面白い作品だった。 直木賞受賞作。 初めましての作家さんですが、他の作品も読みたくなった。 石見銀山を背景に、夜目が利く少女ウメ、ウメを拾って育てた山師の喜兵衛、スナイパーみたいな影の男ヨキ、ウメと張りあう少年隼人。 登場人物が皆、濃ゆくて熱い。 銀を掘り出す仕事をする男たち。 男たちと同じ仕事をしたいと思ってたウメ。 思うようには生きられないウメが辿る人生。
20投稿日: 2025.08.09
powered by ブクログいやぁ凄い!まるで古書を紐解いたような文章の雪崩、、『時は戦国』ドドン(太鼓) そんな時代の田舎の片隅、銀の採掘に頼るしかないギリギリの村で生涯を遂げる女性の話。 最初の幼い女の子が躍動する描写から、濃密な日々(ネタバレしないように)を過ごす中、村の繁栄から過疎までを見届ける。 銀山のある村の月日が、まるで一人の女性の一生のようにシンクロする。 最後の数ページだけ、ページ上部に記載された目次表記が本のタイトル『しろがねの葉』となっていて、今はおばあちゃん。(語彙力が枯葉) この数ページで、これまでずっと主人公の人生の走馬灯を見させられていたような、ふわっと風に乗る感覚(枯葉だけに) 副次的に、何も無い時代に生きた先人たちの活力も活字から与えられました、
24投稿日: 2025.08.05
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
2025.08.03 文体に慣れるのに少し時間がかかったものの、世界観に徐々に飲み込まれていき、一気に読み終えてしまった。 銀の山が男たちを蝕んでいき、幾度となく大切な人を失うも、銀の湧き出る山とともに生きることを決意するウメ。 銀が尽き、ここを離れて生きたいと一度は思うものの、大切なものをたくさん得たこの銀の山を捨てられず一生を終える女性を力強く、繊細に描いた作品。 いつか映像化して欲しい。
3投稿日: 2025.08.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
一家で夜逃げした家族とはぐれた少女ウメが石見銀山の山師に拾われて、一生を銀山の鉱夫(銀堀)にかかわって過ごす様子が書かれる。少女の間はウメも坑内に入るが、初潮を迎えてからは銀堀の妻として子を産み育て、家庭を守ることに専念する。一方の夫は坑内の劣悪な環境下、粉塵を吸って肺を患い、ほとんどが若くして死んでいく。ウメも夫を失い、再婚し、子を産み続ける。銀が多量に算出されるが、銀堀には還元されないようで、過酷な生活が続くだけである。 全体にこの過酷さが強烈に描かれ、救いがあまりないが、その描写は読者をひきつけて離さない。 やがては銀が採掘されつくして、銀山は廃れていくのだろう。銀堀たちもいずれ離散していく。
0投稿日: 2025.08.02
powered by ブクログすごかった。 実際にこういう歴史があって、生きた人がいるっていうのがすごい。 かならず先には死があるのに、掘り続ける人も、それを見守ることしかできない人も、その気持ちを想像するとつらい。 石見銀山に行ってみたいと思った。 途中まで難しくて淡々としていて、あんまり、、って感じだったけど、半分くらいからおもしろくなって一気に読めた感じ。
4投稿日: 2025.07.30
powered by ブクログ女の一代記という代物が好き。 ウメの、男に寄りかかず強く生きる姿勢に共感しつつも、こんなに強くは生きれないと思った。 時代小説であるにも関わらず、そこで生きることがどうゆうことなのかを肌で感じられて、銀山に魅せられた男たちの執念と誇り、女たちの悲しみが丁寧に描かれていてとても良かった。 喜兵衛、ヨキ、隼人、龍、岩爺と、ウメを取り巻く男たちが、それぞれ芯の通っていて寡黙で本当に渋くてかっこいい。 それで言ったら、ウメをはじめとした女たちも生き様が良い。悲しかったりもするけど。 これは後々も読み返す確信があったので、図書館の本は返却して早々に自分用を購入しました。私はこんな本に出逢うために日々読書を続けてるんだなと思った一冊。
4投稿日: 2025.07.30
powered by ブクログ男社会で女が生きる難しさ、技術進歩や政変により仕事環境が変化する難しさ、心に想う人があり続けながらも他の人を愛することができるという人間の愛情の複雑さ。これらが最盛期の石見銀山を舞台にして展開され、歴史的な解釈を付け加えている良い作品だった。 ドラマの「海に眠るダイヤモンド」と似た構造。
14投稿日: 2025.07.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
関ヶ原の戦い前後、シルバーラッシュの石見銀山に生きるウメと銀掘(かねほり)の男達の物語。 銀山で働く事を誇りにする一方で、肺を侵されたり事故に遭ったりと、ウメの周囲の男達がバンバン死んで終盤切なかった… それでも生き抜くウメとの強かさは見習いたい。(でも旦那さんが病死した直後、子供達だけを数日家に残し、年下の男と寝るのは理解不能…)
1投稿日: 2025.07.26
powered by ブクログ第168回直木賞受賞作。 父と娘。 母と娘。 疑似的な関係性だからこその本物と、幻想。 時は江戸時代のはじまりのとき。 銀山を舞台に女の人生を描く。 暮らしのために働くこと。 命を繋ぐために家を守ること。 どちらも人生なわけだけれど。 どうしても分断があるのかな、と考える。 任せきりにしていた時代から、 両輪を上手く回せる時代へ。 まだ変化は道半ば。
1投稿日: 2025.07.24
powered by ブクログ千早茜さんの文庫新刊。 こちらもずっと読みたかった作品♪‹‹⸜(*ˊᵕˋ* )⸝›‹⸜( *)⸝›‹⸜( *ˊᵕˋ*)⸝››♪ 家族と生き別れ、山師・喜兵衛に拾われたウメは石見銀山の坑道で働き始める。石見銀山に魅入られた少女の生涯を描く圧巻の長編。 終始、間歩の暗さ、冷たさが漂っているかのような空気感だった。 女に産まれたために、望むようには生きられない。 こういう描写を読む度に、私は恵まれた時代に産まれたんだなぁと思う。 それも、世の中を変えようと抗った女性たちがいてくれたから。感謝しなくては。 生きることを諦める者もいる中で、真に望むようには生きられなくても、生きることを諦めず、強く逞しく生きていくウメの姿に胸を打たれた。 特にウメと夕鶴が対峙した場面では銀堀へのそれぞれの想いがひしひしと伝わってきて、胸にグッときたし、ウメの強さが際立っていたように思う。 そして、自らの定めを受け入れ、命尽きるまで懸命に生き抜こうとする銀堀たちの生き様にも胸を打たれた。 銀堀と女郎の命の儚さが、物悲しい。 生きること、愛すること、生を繋いでいくことの喜び、尊さ、厳しさ、哀しさ、醜さが凝縮されたような重厚な作品だった。 ✎︎____________ 男は女がおらんと生きていけんのじゃ。(p.129) 大きうなっても、おまえは女じゃ。女はどうやっても力じゃ男に劣る。おとよのように柔く、弱く、なんも知らん顔をしておれ。油断させるんじゃ。それも女の生きる術ぞ(p.144) 見た目じゃ人はわからぬものよ(p.151) 女は男の庇護の許にしか無事でいられないのか。笑いがもれた。莫迦莫迦しい、好きになど生きられないではないか。(p.221) 叶わぬ望みを抱くより、月並みな平穏を手に入れる方が幸福なのかもしれない。(p.308) 生きてさえいてくれたら、のぞみを繋げる(p.318) 易々と生きられる場所などない。ささやかな安寧を見つけて一日一日生き繋いでいくしかない。(p.329) 女だって好いた男がいないと生きてはいけない。(p.336) 今、この手で触れられるものは、いつか触れられないものに変わってしまう。(p.343) 間歩はおぞい場所じゃ。じゃが、俺らの稼場だ、生の糧だ、俺らを繋ぐ大きな大きな命じゃ(p.356) 死にたいと望むことは生きたいと同義なんかもしれん(p.375) 銀がなくなっても、光るなにかを人は探すと思います。それで毒を蓄えても、輝きがなくては人は生きていけない。無為なことなどないんです。ウメさんの歩んできた道に光るものはありませんでしたか(p.388)
79投稿日: 2025.07.20
powered by ブクログ生、死、性。すべてが表裏一体というか、絡まりあって切り離せない人間の営み。当時の鉱山労働者は30歳で長寿の祝いをしたとか。
0投稿日: 2025.07.13
powered by ブクログ直木賞受賞作。 貧しい農村から一家で逃亡したウメ。家族と生き別れ一人たどり着いたのは石見銀山だった。山師の喜兵衛に拾われ、銀の山を知るうちに、幼いウメは自ら男たちに混じって銀掘たちが穿つ間歩に入るようになる。 関ヶ原の戦いを挟んで変容する銀山と変化を迫られる山師、掘削で肺を侵され斃れていく男たち、そんな男たちと相いれない世界で生きながらも癒しと活力を与える女たち‥。 ウメが男になりたがる童女から銀山の女へと成長していく様から目が離せない。 たくさんの人の成長と死を見届けながらウメはどこに辿り着くのか。 力強くも優しい物語だ。
3投稿日: 2025.07.12
powered by ブクログ千早茜さんの作品はこれが初読でしたが、その筆致の美しさと、時代の空気ごと吸い込まれるような世界観に、読む手が止まりませんでした。 物語の舞台は石見銀山。 命を落としかけた少女・ウメが、山師の喜兵衛に拾われ、間歩――鉱山坑道の世界に触れたことで、自らの人生を山と共に歩むことを選びます。 山に魅せられ、銀に魅入られ、坑道の暗闇に光を見出す人々。 それは一種の狂気であり、同時に逃れられぬ宿命でもある。 男たちは命を削り、女たちは「産むこと」でしか役割を与えられない。 そんな時代にあって、ウメは目の前にある現実を受け入れながらも、誇りを持って懸命に生きていきます。 間歩に入ることも、山で働くことも許されない女であるがゆえのもどかしさと絶望。 けれど、ウメは「見つめる者」として、銀山の営みを、そこで生きる人々の光と闇を、深く受け止めていく。 四季の描写、自然の音や匂い、手触りまでもが細やかに描かれ、五感を通して時代に連れていかれるような読書体験でした。 過酷で美しく、静かで強い。 山に魅入られた人々の、名もなき営みの記録。 深く心に残る作品です。
3投稿日: 2025.07.09
powered by ブクログ「解説 北方謙三」を見て、「やった!」という気持ち、何となくこの物語の方向性が掴めた。 はっきり言って、愉快なことはなにひとつとして起こらない。無常と無情の世界。 人が生きていく物語。 人は生きる。苦しみがあって悲しみがあって、思い通りになんかならなくたって。自由を、心を躰を奪われたって。強くなんてなくたって、互いを補いあいながら、生きていくんだ。 どんな時代のどんな環境においても。 こうした、救いがあるかと言えば無く、楽しいかと言われれば楽しくは無く、それでも「面白い」という作品、というか作品として自分自身が「面白い」と思えるようになったんだなぁと感慨深い。この本の終盤、物語を閉じていく時になって、高校時代に「読まされた」山本周五郎の『さぶ』を思い出していた。もしかしたら、今だったら、面白いと思えるのかもしれない。 勿論、直木賞を獲った作品として意識はしていた。この前に読んでいた直木賞の作品といえば、小池真里子の『恋』。何となくわかってきた。芥川賞は本をあんまり読んだことがない友人にも薦められる「面白い」作品。対して直木賞に関しては「業が深い」作品。完全に網羅しているわけではないが、現時点での気づきといえばそういったところ。読みたいと思う作品としての比重はもしかしたら今後読み進めていけば直木賞の方が多くなるかもしれない。アルジャーノンと同様別格の星6である。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 今回久々に感想投稿を、ブクログを始めた時の感覚に陥った。感想を書きたいのだ。拙くても何でも所感を表現したいのだ。何でだろう。本当に決して人に「良かったよー」って薦められる作品じゃないのに。 わたしの心の琴線に触れたってやつ。
8投稿日: 2025.07.09
powered by ブクログ壮大な物語に圧倒されて、読後感想がすぐに書けなかった。 性別によって生き方が決まっている銀山。 女でありながら間歩に入り、銀掘り達の手伝いをするウメ。ウメなら銀山のしきたりを変えて女の新しい生き方を体現していくと期待してしまう。 しかし現実は甘くない。 男達は早くして病に倒れ、女は再婚を重ね子を成していく。 ウメもそのサイクルの1人となり、やがて銀山に還る。 現代に生きる私は、そんな人生は果たして幸せなんだろうかと思ってしまうが、 彼らは間違いなく希望を持って人生を生きぬいたと信じたい。 喜兵衛がウメを襲った相手を殺したと知った時、涙が止まらなかった。 きっと、喜兵衛はウメを本当の子供のように育ててきたんだと。 物語の舞台となった石見銀山にいつか訪れたいと思う。
13投稿日: 2025.07.08
powered by ブクログこの作品に出会えて良かった 直木賞受賞時のインタビュー、対談を拝見していたので、期待しつつ 毎年楽しみにしている新潮文庫夏の100冊にラインナップされていて、手に入れました ウメの一生にすごく胸を動かされた どんなことがあっても強く生き抜くこと それがどれだけ困難なことか。 身に染みている今だからこそ、幼少期、青年期の輝きから、妻、母となりステージがガラッと変わり、老いに至るまで描かれた作品の芳醇さというか満足感があった 男性に対する感情には色々な種類があることにもとても共感 舞台もドラマティックで中々にない設定 石見銀山に行ってみたくなった
4投稿日: 2025.07.05
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
祝文庫化!2023年の直木賞受賞作品。 読後、「体内回帰」という曲を思い出した。 喜兵衛、ヨキ、岩爺、隼人、龍‥‥みんな還っていったんだなぁ‥‥
29投稿日: 2025.07.04
powered by ブクログ2023年第168回直木賞 いつか読むつもりであらすじや皆さんのレビュー等を避けながら、初々しい気持ちでの文庫化待ち 戦国末期の銀山に生きた少女の物語 貧しさからの逃避の途中、父母らと生き別れ 銀山の山師に拾われ山での生き方を学んでいく 当時の銀山での男女の役割、労働環境、風俗 著者が石見銀山の資料館で感じたものを 丁重に描いているようです 名前のない銀山の人達に名前がつき 小説の中で生活していく 当時の銀山の女性達がその労働環境から短命となった男達を見送りながら家庭を続けていく 彼女達に着目させて意味ある作品かと思いました
116投稿日: 2025.07.04
powered by ブクログプロローグ 今日の風は、ヌメッとした感触がある 土を蒸したような独特な香りだ 色は例えるなら薄い黄色か そして、妙に重たい空気感を纏っている 風には、匂いがあり、色がある そして特有の肌触りや質感、重さなど それを、表現していくと枚挙にいとまがない 今日の風は、私に何を訴えているのだろう 暗闇に濾された、月の僅かな光が 風とともに己を貫いた! 本章 本書『しろがねの葉』 銀の幻影をトコトン追い求めた★5 全ての五感を刺激して、何を感じ取るかを 試される小説だ 春夏秋冬、季節のそれぞれに意味があり、色、香りがある その一つ一つの表現が緻密で多彩だ 銀(しろがね)の光を見つけた者 すなわち、ヘビの寝御座と言われるシダ科の植物の葉が銀色に輝いていたら、銀の鉱脈があると その葉を見つけられる者が、才のある銀山の山師となれる ひょんな事から、山師である喜兵衛に拾われた ウメ、 女であることで、山師の道を諦めるのだが、、、 拾ってもらった、喜兵衛を愛し 娶ってもらった隼人を愛し 大きくなった、碧眼の龍を愛し いつまでも、いつまでも、銀堀を愛し続けたウメ 幾人もの漢が、銀堀の病によって逝ったが、 その幻影を永遠に追い求めたウメの眼には 行く末に何を視たのだろうか しごく納得の第168回直木賞だ この作者の季節の表現力を五感の著し方を どこまでも愛したい そう想った エピローグ 己を貫いた、光と風と思っていたものは、LINEの通知による振動とそれに伴って画面が光ったからだ LINEを開くと「大葉買ってきて!」の1行 しろがねの葉ならぬ、大葉の葉だった 果たして、銀色に輝く大葉は見つけられるのだろうか!? 家はもう目の前だったが、 スーパーへと踵を返した! 完
61投稿日: 2025.07.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
読むことが出来て良かったと思える作品でした。 決して埋まることのない男と女の差に苦しみ時に絶望しながらも懸命に生きるウメ。 ウメの人生が詰まっている。 読んだ後は悲しいような切ないような、でもどこかすっきりした気分になる。 千早さんの作品は一文字一文字が美しい。
1投稿日: 2025.07.01
powered by ブクログウメ 喜兵衛 宗岡弥右衛門 隼人 ヨキ 彦次 岩爺 多助 敷次郎 安原伝兵衛 おとよ おくに 坪内 龍 満作 大久保十兵衛 喜一 菊 夕鶴 幸 希 満次 竹村丹後守
0投稿日: 2025.07.01
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
石見銀山が栄えた頃を舞台に、そこに流れ着き、生きていくことになった少女の成長と苦悩を軸に描かれた物語。銀の採掘で坑道に入り、肺を患って短命となる男たち。子孫を残し、繁栄を願うが、山には銀が採れなくなった坑道の穴も増えていく。銀の採掘坑道はなぜ間歩と呼ばれたのだろう。間歩の中は闇の世界。間歩で生きていく人々の喜び、苦しみ、悲しみを闇が包んでいく。人の営みも、名も残らず、ただ間歩だけが残る。あゝ無常。
6投稿日: 2025.06.29
powered by ブクログ【2025年69冊目】 両親と共に夜逃げをしようとして、山の中で一人ぼっちになってしまったウメは銀を取るための穴、間歩で眠っているところを山師の喜兵衛に拾われる。女でありながらも、銀掘になることを夢見るウメだったが、やがて人間の女としての宿命に立ち向かうことに。銀山に巡り着いた一人の女と、銀を巡る男達の人生の物語。 読み終わってすぐに感想を書く気にならず、数時間経ってからしたためています。ウメという女の一生から見た、あまりにも苛烈な生と性の物語。あとを引くように、すうっと余韻を残してきて、未だに心の隅を捉え続けられている気がします。 喜兵衛はウメをどう見ていたんでしょうか。ウメにとっては、かけがえのない男であり、師であった喜兵衛。弱いところもあり、「生きている意味がわからなくなる時がある」と吐露する場面も。ウメが喜兵衛を特別に見ていたのは、女ではなく、一人の人間として見てくれていたからなのかもしれないなと思いました。故に、魂から惹かれてしまう。 間歩と共に生き、女として生き、最後にはまるで生きる岩のように生きたウメ。 物語を美しいという言葉で表現するには足りないとは思いつつ、やはり美しいという言葉がとても似合うような気がします。 千早茜さんが大好きというのもありますが、緩く棚引く余韻を残してくれる作品を読んだのが久々のような気もして、ひたひたと感慨に耽っています。 この作品が直木賞を取ってくれて嬉しい。賞を取ったという理由で初めて千早茜さんの作品を手に取る人もきっといらっしゃるはず。美しい日本語の耽美な世界をどうか楽しんで下さい。
5投稿日: 2025.06.27
