
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
短編集。何だろう、じわじわきた。短編集だからそれぞれの話は繋がってないのに、読み終わったらじわじわと嫌な感じがきて、それが面白いと思った。扉の大島弓子のは何?青かけるもどういう話?あなたの鼻がはコメディと思えばまた違う面白さがあるし、花瓶と淋しくなったらはヴァージニア・ウルフっぽくてわけわからなくてもやがかった視界の中にいるようで面白い。ブルーインクはとにかく嫌な感じ。男が主人公の、男の嫌なとこが押し寄せてきた。これは嫌だった。娘については女同士の嫌な関係性が怖い。じわじわくる。よしえちゃん、だんだん性格悪くなってくのとか、廊下で何があったのとか、みさごは何を知ったのとか、もやもやして面白かった。読み始めてからはイマイチかなとか思ってたのに、読み終わると人の嫌なとこ、もやもやがじわじわで息苦しくて面白かった。 そういえば自殺した……ってもしかしてとか最後に思ったけど別に繋がってないよね。
1投稿日: 2025.11.09
powered by ブクログ川上未映子さん初読み。 読んでいる間、ずっと胸がざわざわしていた。 得体の知れない違和感、不気味さ?があった。 内容がよく分からないというか、難しくて、 でも表現力がすごいのはひしひしと伝わってくるので、私にはまだ早かったか……と思った。 書かれている春は、コロナ禍の春。 あの頃の鬱憤とか得体の知れないウイルスに怯えていた気持ちを思い出した。 「娘について」が一番印象に残って、こわかった。 人間の醜さが生々しかった
4投稿日: 2025.10.01
powered by ブクログ意外にも読んだことがない川上未映子。最初は短編から入りたいと思い手に取った本作。春のゆらめきのような怖いものかなというイメージで読み初めて気づく。春とは、あの年の春のことか。 すなわち、コロナ発生から間もないあの春、それがどんなもので生活をどのように変えてゆくものなのかまだ誰もわかっていなかったあの2020年の3月-4月。 海外で沢山の方々がなくなり始めるも、まだ緊急事態宣言が出されていないころ。うっすら不穏な予感が充満しているけれども自分事になってない、あのふわふわした時期。 その期間を舞台に、6つの短編が収められてる。いずれも感染症が主題ではないが、あのまだ何も知らなかった頃の日常を切り抜いてきているところに思いを馳せて読むと、薄っすら怖い。そんな話。 病気で長期入院している女子。病院ではいつか死ぬときに見る可能性のあるものすべてを今目にしていると手紙で語る。 整形して生まれ変わりたい女子。ギャラ飲みの元締め女子に覆せないヒエラルキーを見せつけられ撃沈。 もうすぐ死ぬ老女。記憶や意識がところどころ飛ぶ中、性交についての夢想がやまない。 ちょっといいなと思う女の子からもらった大事な手紙をなくしてしまう男子高校生。夜中の教室に2人で忍び込むも手紙は見つからず、夜中の学校に狂わされたテンションでそれぞれの別の面が顔を出す。 人生の閉塞感にあえぐ女。共感の的であった作家にある日失望し誹謗中傷を繰り返していたら作家が自殺。逃げ場の無さに拍車がかかり誰かに電話をしたい。 そして6篇目は…よう書けん。夢を追って上京した二人の女子。一方は恵まれた家出身で金に困らず夢への努力も中途半端。そんな相方とその母親にした主人公の意地悪が、数十年の時を経て返ってくる… 純文学よろしく、ざらっとした質感の、居心地の悪い人間の特性が描かれていて、読みながらじっとり汗をかく。 いや違う、この本の感想はそこだけじゃない。なんていうか、表現力がすごいね?この方。情景や心情が赤裸々に伝わり、終始動揺する。知っている風景、知っている感情が、思い起こされる。結論らしき結論が示されないままプツッと物語が終わり、ふぅ、脱力。薄い本なのに読み応えがある。 p.91 行くところがない。あなたは行くところはどこにもない。体はその事実に気づいているが、あなた自身には決して気づかれることがないように、あなたはあなたを気づかいながら、いくつかのふりを混ぜ合わせながら歩かせる。ひとりで、自由で、責任を負わず、自分以外には心を割かなければならない人は誰もおらず、何かを決めて、自分のためだけに何かを決めることができて、こうして自分を歩かせているのは、私自身であるのだと。 p.118 見慣れた校舎の壁や窓ガラスや、ロビーに敷き詰められた煉瓦や、掲示板やウォータークーラーなんかの輪郭が暗い青色に浮かびあがってみえた。校内は外から見るよりも少しだけ明るく感じられて、月が出ているせいかもしれないと思った。それらは濃淡のついた影に濡れてぴくりとも動かず、まるで深い湖の底に水没した校舎の絵でも眺めているようだった。
17投稿日: 2025.09.16
powered by ブクログんーよく分からなかった?共感できなかった?って言ったらいいのか。もっとゾワっとするようなものを想像してて、それを超えてこなかったからなのか。んー私にはあんまり、とゆう感じだった。私に想像力や理解力、読解力?諸々が足りなくて分からないだけかもしれないが……。 最後の話しは分かりやすいし、タイトルにも合っていたかな。あと、5話目もストーリーは好きだったけど、最後の方の男の考えが気持ち悪かった。それが演出だとしても私には無理だった。
5投稿日: 2025.08.14
powered by ブクログコロナ禍を舞台にして春の不穏な雰囲気をそのままに色んな題材を織り込んだ6つの短編集。タイトルの通り春の怖いもの、短編に登場する主人公がどれも登場する相手役に少し妙な怖さを感じてるのは秀逸かも。 黄色い家を読んで面白くてこの著者の短編も手にしたけど、面白さは黄色い家の方が面白かった。まあ本ごとに色が違うからこの短編集はコレでいいのかな?どうなんだろう?期待していたこともあり少し普通だった。 でもちょっと貧乏や影のあるキャラの描き方はとても秀逸でした。 特に気になったのは◉あなたの鼻がもう少し高ければの整形にまつわる面接のやり取りは面白かった。 最後の◉娘についての、よしえと見砂の対比線のキャラが良かった。
13投稿日: 2025.08.13
powered by ブクログ個人的にあまり刺さらなかった。 「あなたの鼻がもう少し高ければ」のトヨちゃんの気持ちに共感した。自分より遥かに綺麗な人から否定されると自分の存在意義について考えてしまうよね。
3投稿日: 2025.08.10
powered by ブクログさて、いきなりですが、仕事中のあなたにこんな連絡が入ったとしましょう。 『来週に約束していた打ちあわせを延期させてほしい』 どんな『打ちあわせか』はこれだけでは分かりません。ただ、約束していた日を『延期させてほしい』とは余程のことが起こったに違いありません。何があったのだろうと思うあなたに、相手はこんな言葉を続けます。 『じつはここだけの共有にさせていただきたいのですが』 『ここだけ』の話と言うからには表に出すことのできない余程の裏事情が伺えます。さて、いったい何が起こったのでしょうか? 『隣の部署ではあるんですが社内で感染症の陽性患者が出てしまい…』。 今のあなたなら、はぁ?という言葉も飛び出すかもしれません。しかし、ほんの3、4年前まで時代を遡ると、そんな連絡に、早く電話を切りたい、電話でさえ関わりたくない、そんな感情が湧き上がった時代がありました。そうです。思い出したくもない”コロナ禍”です。もう二度と体験したくないあの時代。鬱屈とした毎日が永遠に続くのではないかと途方に暮れたあの時代。そんな時代を遠く振り返ることができるようになった今の時代のありがたさを改めて思います。 さてここに、そんな”コロナ禍”を舞台にした6つの短編が収録された作品があります。あの『春』を思い出しもするこの作品。それから続く不穏な時代の空気感が閉じ込められたこの作品。そしてそれは、”世界が一変してしまったあの春”に続く日常を生きた人たちを描く物語です。 『朝、目をひらくと同時に』『スマートフォンでSNSをひらき、メンションとダイレクトメッセージをチェックして、フォローしているアカウントを巡回する』のは主人公のトヨ。『気合の入っている写真がアップされてい』るのを見て、『天才♡可愛い♡顔面国宝♡』『ベリ可愛!優勝!似合い散らかしすぎだから!』『みたいなことをえんえんリプライしてからライクボタンを押し、うっざ馬鹿じゃねありえないから、と知らない相手からのメンションに悪態をつきながら、布団のなかの時間はいいな、と』感じるトヨは、『温かいし、動かないでいいし、一生ここから出たくないな』と『心からそれを思』います。『それからゆっくり、モエシャンの、みっつのアカウントをチェックする』トヨ。『モエシャンが何歳なのか、どこに住んでいるのか、色々なことは謎』と思うトヨですが、『モエシャンのチームの女の子たちに憧れて、なんとか一員になってみたいその他大勢の女の子たちとおなじように、モエシャンのSNSのアカウントをフォロー』しています。そんなトヨは、『初めてモエシャンとその界隈の存在を知って半年。今日、じっさいに自分がモエシャンに会うのだと思うと』『みぞおちはきゅうっと縮まり、死ぬほどどきどき』します。『服もメイクも迷いに迷ってどれで行くかちゃんと決めたし、今さらびびってもしょうがない』と『自分を勇気づける』トヨ。『関東近郊のしいたけ農家で生まれ育って、都内のなんてことない大学に進学したトヨの日常には、目立った困難も不満もとくに』ありませんでしたが、『昔からどうも何かを謳歌するということが、うまくできないところがあ』りました。『美人というわけでもなかったけれど、べつに醜いわけでもなかった』というトヨは、『圧倒的に人の印象に残らない顔というか、その雰囲気も含めて、人の明るい感情や、また会いたいな、みたいな、そういうポジティブなあれこれをほとんど喚起させない、そういう感じの顔をしてい』ました。とは言え『額の形を気に入っていたし、並行二重ではないけれど、いい感じに垂れた目には、ほんの少しだけ自信があった』というトヨは、『ただ上顎、上の歯茎が少し前に出ており、横から見ると口がもっさり厚くみえるのが嫌い』でした。そんなトヨは『この一年ほどSNSの美容アカウント、整形アカウントに入り浸るようにな』る中に、『自然にモエシャンに辿り着』きます。『わたしに話しかけていいのは美人だけ』、『ブスは貧乏のもと』等『言葉使いが辛辣なことでも有名だった』というモエシャン。そんな彼女の『アカウントのプロフィール欄にただひとこと書かれてあった』『心じゃない。顔と向きあえ』という文句に痺れたトヨは、『モエシャンとその仲間たちに心酔するようになってい』きます。そんなある日、『今から二時間だけDMあけるんで、楽して稼ぎたい美人は写真を送ってくださーい。早いものガチ』とモエシャンが書き込みます。『モエシャンの本拠地は港区で、そこでは毎晩のように選りすぐりの一軍女子だけを集めた羽振りのいいパーティが繰り広げられ』、『モエシャンのチームに属したい女の子たち』が『年がら年じゅう色めきたって』いるという中に『かけられた、まさかの募集』に、『きた、とトヨは胸の中で叫び、心臓がどきどき音を立て』ます。『駄目もとの勢いでダイレクトメッセージを送』ると、『すぐに応募受付専用ラインのアカウントが送られてきて、そっちに写真を送ってこい』という指示がきます。『一瞬ひるんだけれど』『これはわたしがくっきりするための、きれいに一皮むけるためのチャンスなんだと言い聞かせて、数ヶ月前にものすごい時間をかけて自撮りした奇跡の一枚に、さらにアプリの技術のすべてを投入して加工したものを、思い切って送信し』たトヨ。そして、『翌日、ライン審査をパスしたので、二週間後に渋谷に来いという返信』を受け取ったトヨは『モエシャンが面接するという。それが今日というわけだった』という中に『指定された』『渋谷のセルリアンホテル』へと向かいます。そんなトヨが面接に挑む様子が描かれていきます…という二つ目の短編〈あなたの鼻がもう少し高ければ〉。思い切った表現の連続にトヨの内面が垣間見えてもくる好編でした。 “世界が一変してしまったあの春、私たちは見てはいけないものを覗きこんでしまった ー。持てる者と持たざる者をめぐる残酷なほんとう。死を前にして振り返る誰にも言えない秘密。匿名の悪意が引き起こした取りかえしのつかない悲劇。正当化されてゆく暴力的な衝動。心の奥底にしまい込んだある罪の記憶。ふとしたできごとが、日常を悪夢のように変貌させていく。不穏にして甘美な六つの物語”と幾分抽象的な内容紹介が、不穏な雰囲気を余計に掻き立てるこの作品。分量も内容も全く異なる独立した6つの短編が収録された短編集になっています。 そんなこの作品に共通するもの、それこそが2022年2月28日刊行という日付と、内容紹介の”世界が一変してしまったあの春”という表現から類推される、あの忌まわしき”コロナ禍”が描写されていくところです。私はブクログの本棚に”「コロナ禍」を描く”というタグを設定しており、そこには、30冊以上の作品が登録されています。忌まわしき”コロナ禍”も2023年春に一区切りを迎え、今やすっかり過去のものとなりました。しかし、3年という月日の長さは伊達ではなく、いくら読んでも読み切れないくらいに”コロナ禍”を描写した作品がこの世に存在することを改めて思います。では、そんな”コロナ禍”の描写を3ヶ所ほど見てみましょう。 『学校は休校。授業はオンラインになるとかどうとか。田舎の親が学校に行かないぶんの授業料は返ってくるのか、そういう話はないのかと訊いてくる』。 学校が休校になるという現実には衝撃を受けましたね。東日本大震災のあともそういった状況がありましたが地域限定の話でしたし、世の中の雰囲気感も随分と違ったように思います。閉店、失業という展開も散々にニュースとなる中、授業料の問題も確かにありました。 『一瞬マスクのことを考える。買っておいたほうがいいのかもしれない。照明に吸い寄せられる蛾のように中に入ってマスク売り場に行くけれど、品切れ、入荷時期未定、と書き殴られた紙が貼られている』。 はい、”コロナ禍”と言えば『マスク』なくしては語れません(笑)。高額転売されたり、不織布マスクなのに洗って繰り返し使わざるをえなかったりという、今から考えると信じられないような現実もありました。一方で、そんな光景を『照明に吸い寄せられる蛾のように』と形容するところがなんとも辛辣です。 『自殺者も増えはじめていた。経済が縮小して、飲食店が潰れて非正規雇用者が職にあぶれて、この未知の感染症と政府の無策による犠牲者はこれからもっと増えるだろうということだった』。 『政府の無策』ということも散々言われました。ただ、じゃあ何ができたのか?というのは今振り返っても変わらない気もします。いずれにしてもこの作品は”コロナ禍”という言葉こそ登場しないものの”コロナ禍”ど真ん中の時代を映し出していることに違いはありません。その分、自然と雰囲気感が鬱屈としたものになっていきます。「春のこわいもの」という書名にはさまざまな意味が込められているのだと思いますが、間違いなくその一つには”コロナ禍”の訪れを比喩するところもあるのだろうと思いました。 そんなこの作品には、上記した通り6つの短編が収録されています。最後の短編〈娘について〉だけで全体の4割を占めるなどその分量もまちまちであり、バランス感が良いとは言えません。また、冒頭の短編〈青かける青〉が、『きみにこうして何かを書くのはずいぶん久しぶりのことで…』とはじまる実質一通の手紙であったり、3編目の〈花瓶〉が『もうすぐ死ぬと思うので、好きなことを言わせてほしい』と始まる独白のような形式になっているなど、その構成もさまざまです。そのような中で私が注目したいと思ったのが4編目の〈淋しくなったら電話をかけて〉です。この短編にはこんな文章が記されています。 ・『あなたは立ち上がって老婆の席までゆき、その手からスプーンを取り上げて床に叩きつけてやりたくなる』。 ・『あなたは彼女に注意してみるところを想像する』。 ・『もしわたしが彼女なら、わたしにそう言い返すだろうとあなたは思う』。 お分かりいただけるでしょうか?この短編は『あなた』と表現される二人称で描かれていくのです。その登場回数、全部でなんと”121ヶ所”というおびただしい『あなた』で綴られていく物語はインパクト絶大です。そして、このような『あなた』で記された表現で思い出す作品があります。そうです。第168回芥川賞を受賞された井戸川射子さん「この世の喜びよ」です。同作も『あなた』と記される二人称で記された表現が、この作品よりもさらに多い”317ヶ所”に『あなた』が記されていました。二人称の詳細については同作のレビューにたっぷり記させていただいていますのでそちらを是非ご覧いただきたいと思いますが、いずれにしても、一人称でも三人称でもなく、二人称で書かれたこの短編は独特な雰囲気感に包まれています。一見読みづらいとも感じますが、井戸川射子さんの作品同様に、一歩引いて主人公を見守るような”守護霊視点”で見ると読みやすくなります。しかし、井戸川射子さんの作品と違って、主人公に感情移入しづらいところに曲者感を感じる作品だとは思いました。 では、そんな6つの短編の中から3つをご紹介しておきましょう。 ・〈淋しくなったら電話をかけて〉: 『カレーを食べている老婆がいる。皿にスプーンがぶつかる音がしている』のを聞いて『立ち上がって老婆の席までゆき、その手からスプーンを取り上げて床に叩きつけてやりたくなる』『あなた』。一方で『左隣の席には携帯電話で小声で話している女の客がい』て、『静かにしてもらえませんか』と『注意してみるところを想像する』『あなた』。そんな『あなた』は、『テーブルにどんとカレーが置かれたときに』『注文していたことを思いだ』し、『八百五十円。いらない。全然いらない』と、『胸の底から溜息をつ』きます。やむなく『カレーをかきこ』み、『レジで金を払い、まるで誰にも見えない人波を泳ぎ切るようにして店を出』た『あなた』は…。 ・〈ブルー・インク〉: 『手紙を失くしてしまったことに気がついたのは、電話を切ったあとだった』というのは『僕』。『制服のすべてのポケットを探り、鞄の中身をそっくりあけ…』と、『注意深く調べ』ていくも『手紙はどこにも』見つかりません。『大変なことになったと思』う『僕』は、『怪訝な表情をした彼女の顔』を思い浮かべます。『彼女になんて説明すればいいのだろう』、『よりによって彼女からの手紙を失くしてしまうなんて』と、溜息をつく『僕』は、『一年の夏休みまえに仲良くなった』という彼女のことを思います。『とても慎重な性格をしていた』彼女は、『自発的に何かを書くということを』『慎重に避けて』いました。そんな彼女が書いてくれた『手紙』を失くし…。 ・〈娘について〉: 『見砂杏奈(みさご あんな)から』久しぶりの電話を受けたのは よしえ。『高校時代の同級生で、親友だった』見砂と、『二十二歳だったかそのあたりの頃に、急にまた仲良くなった』よしえ。『自分は女優になるのだと言』う見砂と、『小説家になれたらいいなと思っていた』よしえは、やがて『上京して都内の下町に小さなアパートを借り』て『ふたりで住むことにな』ります。しかし、『たくさん笑い、一緒に暮らしていて楽しかった思い出のほうが多』かったものの、『結局うまくいかず』『同居を始めて二年』で終了しました。『急にごめんごめん。びっくりしたんじゃない?見砂です』とかかってきた電話に戸惑う よしえ。そんな中、思いもよらぬ話をする見砂は…。 3つの短編は全く異なるシチュエーションを描いていて、関係性も全くありません。しかし、そこを”コロナ禍”を匂わせる表現が雰囲気感で一つに繋いでいきます。”コロナ禍”の独特な雰囲気感に包まれていたあの鬱屈とした時代をリアルに映し取った6つの短編には、あの時代ならではの危うさと背中合わせな空気をひしひしと感じさせるそれぞれの『こわいもの』が描かれていました。 『テレビをつけてもネットを見ても、ありとあらゆる専門家とありとあらゆる非専門家が、この感染症とそれが巻き起こしている現象について、アリバイを残すように競うように、来る日も来る日も持論を予測を披露し続けていた』。 そんな皮肉にも聞こえる表現が”コロナ禍”を過去に見やる今だからこそリアルに響いてもくるこの作品。そこには、”コロナ禍”の空気感をそこかしこに纏った6つの短編が収録されていました。さまざまな表現の工夫に興味深く読んでいけるこの作品。”コロナ禍”が纏っていた空気感を上手く描き出すこの作品。 “コロナ禍”のそこはかとない怖さを上手く背景に織り込んでいく、そんな作品でした。
297投稿日: 2025.08.06
powered by ブクログ全6編の短編集で、すべてコロナが蔓延し始めた頃の設定です。物語の内容にパンデミックそのものは直接大きな影響は与えていないんですが、コロナ初期の「これからどうなるんだろう」という漠然とした不安と、外出自粛で誰とも会話しない日々で内省的な空気感が全体的にあります。 「あなたの鼻がもう少し高ければ」、「ブルー・インク」、「娘について」が良かったです。特に「娘について」は、その「こわいもの」を見てしまったという表向きの後悔と、肯定的な気持ちになってしまいそうになる自分の中の「こわいもの」があぶり出される感じで、ただただ衝撃です。
0投稿日: 2025.07.27
powered by ブクログ思っていたより薄い文庫で、本当はさらっと読めるんだろうけど、どの話も刺さらなくて乗りきれなかった。 コロナ禍の大変な時に作っていた作品なんだろうな…とは節々に感じた。いま読むと微妙。 誰かの日常が失われたという話なのかな。
12投稿日: 2025.07.20
powered by ブクログ明日が来るのがこわい、明日どう生きていられるかわからない、コロナ禍の漠然とした不安の中でそれでも色々な形で生きていく人の話。 6つの短編からなる作品で、個人的には青かける青と娘についてが興味深かった。 きみってだれだろう、失恋しておかしくなっちゃったのかな?そもそも最初からきみなんていない?明日どうなるか、いつまで1人なのかわからないのにもうすぐこの生活も終わるとそう願う気持ちと諦めとが混ぜ合わさってる感じがしてより絶望をかんじてしまった。 変わらずあるものに恐怖というか、どう接せればいいのかわからず呆然とする人のお話。 娘については、どこかで感じたことのあるような気持ちをここまで表現してくれることに感動しました。自分と他者との根本の違いを実感しながら嫉妬したり自分の方が幸せでありたいと願う気持ち、誰もがどこかで通る道なのではないかと思う さすが川上未映子さん、今作も面白かったです!
0投稿日: 2025.07.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
六つの物語から成る短編集、なんだけれど、ひとつひとつの完成度と熟成された感にいちいち圧倒されて、読後、おいおい、『ヘヴン』くらいのすごい物語を読んだぞ、これは……と、ちょっと現実に戻ってくるのに数日かかるって感じの読書体験でした。 はああああ、ほんと未映子先生さいこう……たまらねえよ。 やっぱり未映子先生で好きなのはエンタメより、純文学なのよ…! どの話も胸を抉って、わたしに色んな感情の種を植え付けてくるので、ある物語(たとえば「あなたの鼻がもう少し高ければ」や「淋しくなったら電話をかけて」)を読んだときはそれはいっそ暴力だったし、ある物語(たとえば「青かける青」や「娘について」)を読んだときには、これまで自分が通り過ぎてきた他者とのやり取りの中で間違ったあれこれに報いを感じ、償いを約束するような心持ちにさせられらた。 コロナ禍を過ぎ、わたしの中の他者との距離はかたちを変えた。 わたしにとっては、あのマスクで顔を隠し、パーソナルスペースに誰も侵入してこないことがある意味約束されている”密を避ける”行動は、むしろ居心地の良いものだった。 だが一方で、多くの人間がそれによって心を壊していき、やはり自分以外の多くの人間が、人と生きていきたいと強く望んでいることを再認識し、かえってこれまで以上に深い孤独を感じるようになった。 本書は、もう”コロナ後”に慣れてしまって、楽な方へ楽な方へと流れる自分に、そんなことを思い出させた。 なんにせよ、いつのどんなときも、人が、一番、こわい。 また、「コロナ前」「コロナ後」のように、何かの前後で変化した、まるで自分の亡霊とも呼べる、他者の中に残っている「わたし」への認識にずれを感じ、生きにくくなる煩雑さをきちんと正面から受け止めようと思わせてくれるような作品でもあった。 変わってしまったのはわたしではなく世界のほうで、あなたもまた同じだ、と嘆き、責めて、乱暴で非道になった過去も、思えば変わってしまったのは自分自身の方なのだ、そして以前の自分を受け入れられなくなって突き放したのもまた、自分なのだという自戒も込めて、本を閉じた。 また何度でも読もう。
1投稿日: 2025.07.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
コロナ禍の始まりの時期を舞台にした短編集。 それぞれ違う作家さんが書いたと言ってもいいくらい、文体が篇によって異なるように感じた。 人間の心の歪みのようなものが描かれていて、どの話しも読者の想像力に委ねられるようなラストだった。 独特な世界観は、今村夏子さんの作風に少し似ているなと感じた。 ただ、あまり心には残らなかった。
0投稿日: 2025.07.13
powered by ブクログこわいものが蔓延していたあの春。 ある意味人間らしい心理や言動は不穏で陰湿で自分も他人も傷つける。時に無意識とか悪気がないという武器を纏って深く傷つける。コロナ禍で内向的になる気持ちと普段は誰にも見せない内にある気持ちがブレンドされたらこわいにきまってる。 こわいものは世の中がどうであっても人の心で、それがあの春に刺激されよりこわくなったのかもしれない。春なのにピンクがくすんでピンクグレーな色をしていた春もあったなと思い出す。
3投稿日: 2025.06.15
powered by ブクログ初めましての作家さんだったけど吸い込まれるように読んでました。 不気味な雰囲気が漂う物語たち。 言葉では言い表せない読後感がなんか癖になる。
1投稿日: 2025.06.06
powered by ブクログまずこの小説は、何か劇的なことが起こったり、何か特殊な人が登場するわけではない。私の、あなたの隣に存在しているかもしれない人々。もしくは私達自身かもしれない。無自覚の悪意や、ちょっとした意地悪。身に覚えがあるからこそ読んでいて背筋がヒヤリとする。
10投稿日: 2025.05.30
powered by ブクログ娘について、を読んだとき、どこか共感できてしまうような気がして空恐ろしさがつま先から鳩尾まですうっと広がってくるような気にさせられる。 フィクションなら着地はこうなるんだろうと予測しながら読むのに、そうはならない。そのもやもやがかえってリアル。
1投稿日: 2025.05.29
powered by ブクログ著者のInstagramに掲載されたこの本の1ページの文章があまりにも美しく、魅了され購入。 コロナ禍の抑圧された、そして春の胸がざわつくような感情が生々しく描かれていて、文章が息づいているよう。晒された胸の内が美しい日本語で表現されていて、感情が揺さぶられる。その正体は掴みどころがなく、また春がきたら読み返してみようかなと思った。
10投稿日: 2025.05.28
powered by ブクログわたがしみたいに柔らかいのに、触れた瞬間どろりと溶けてしまうような春の不穏さを味わえる短編集。 「青かける青」の美しい文章に打ちのめされたあと「あなたの鼻がもう少し高ければ」でスーッと肝が冷えた気分に……。「ブルー・インク」はほのかに村上春樹の風味。 春のほのぼのした心地良さの中に身の毛がよだつゾクりとしたちぐはぐさがあり、夢中で一気読みしました。 「あなたの鼻がもう少し高ければ」が一番お気に入り。どこにでもいる若い女の子のどこにでもありえる日常。現代を生きる若い女の子の心情の生々しさは、もはや物語ではなく現実だった。 SNSの幻惑的な世界に魅了され、小さいスマホ画面から大きな夢を見る女の子たちも、本当は「美しさ」という希望に潜む底知れぬ恐怖に怯えながら心の中で叫んでいるのかもしれない。 多様な価値観が溢れた現代で、美の価値はその流れに逆行し勢いを増しているように思う。美とは、顔とは何なのか、ルッキズムという言葉の本質を考えさせられる物語だった。
12投稿日: 2025.05.20
powered by ブクログ未知のウイルスの影響下で迎えた最初の春、その後接触が断たれるとは知らず、身近な人に抱いた苛立ちや後ろめたさ。 こうして記されなければ過去として消えていったはずの、社会が閉塞に向かう中で誰かが抱いた思い、感情。コロナ禍よ早く終われと願ったけど、終わってみれば、当時のことが忘れ去られ、あの日々を過ごした自分たちが「いなかったも同然」になるのはそれこそこわい。"記録"しなければ消えてしまうあの頃の思念に心に留め、書き留めた著者のまなざし。なんだかやさしみを覚える。
0投稿日: 2025.05.16
powered by ブクログ春の終わりかけに読みたかった未映子さま。 春。暖かく草木花々は爛々と咲き、新しい予感のする季節。 その逆を行くおぞましさが各短編に散りばめられていて、コロナ禍の鬱屈とした世間の冷たさとSNSやら外見がどうのやらと他人の目にびくびくしながら生きていかなきゃならないこの世界。 どの短編もたんたんと進むようで、どこか怖さと悲しさと共感がないまぜに語られる。
37投稿日: 2025.05.16
powered by ブクログ春のこわいもの/川上未映子 読了 2025.04.30 Youtubeの本紹介で『すべて真夜中の恋人たち』をよく見かけた。気になって読んでみたけど私は好きじゃなかった。他の作品はどうだろう?と思い、文庫化された本作を購入。書影とタイトルと帯に書かれた「わたし、忘れたことないからね」に惹かれた。「世界が待ち望んだ傑作短編集」これは期待が高まる。 読んでみた感想としては、やっぱり合わなかった。好きな文や共感できるところもあるけれど、話の終わり方だったり中身だったりに、結局作者は何を書きたかったの?と思ってしまう。読後に得られるものがなかった。この作者の書く登場人物の突飛な行動に理解できないことがよくあって、それでしらけてしまうことが何度もあった。 4話目の『淋しくなったら電話をかけて』の文体はすごく面白かった。 この短編集の中で好きな話をあげるとすると1話目の『青かける青』かなぁ… 私は川上未映子さんの小説が得意じゃないのかもと感じました。
0投稿日: 2025.05.15
powered by ブクログ暖かくなって開放感や新芽の季節の爽やかさと反面ざわざわとした得体の知れない不安感、不快感みたいなものが春のこわいものなのかな。いやミスとも違ったなにかざわざわした感じ。
0投稿日: 2025.05.13
powered by ブクログコロナ禍の世界での日常の思いが描かれている短編集。 希望が持てないあの頃のものだからなのか、全体的に陰鬱な感じだった。 思いに共感できる部分もあるけれど、読後感はすっきりしないかな。
0投稿日: 2025.05.06
powered by ブクログ短編集です。私は2番目の「わたしの鼻がもう少し高ければ」が特に気に入りました。胸元を抉ってこられるようなイメージです。
0投稿日: 2025.05.05
powered by ブクログ短編集。コロナ禍の話で、どの短編も薄暗くて不穏な雰囲気だった。最後の「娘について」は切なかった。子どもに身につけさせてあげるべき力は、自分で取捨選択して生き抜く強さだよなぁと改めて思った。 他の話は、あれ、終わり?という感じだった。
1投稿日: 2025.05.01
powered by ブクログ『娘について』のよしえちゃんの気持ち、嫉妬の形は共感する部分が多かったです。杏奈のお母さんが、自分は女優に"ならなかった"といった言い方をしていること含め、言い回しが癖になりました。 川上未映子先生の文章、スキ
1投稿日: 2025.04.30
powered by ブクログ気になっていた川上未映子さんの作品を、まずは短編集から読んでみようかなと思い手に取りました。 文体が独特ですね。読みづらいということではないです。 川上未映子節にガッツリハマる人もいるんだろうな〜と思いつつ、ちょっと私の感性のストライクには入ってこなかった感じでした。 全部「うん……えっ、おわり?」って感じで。 まあでも自分にもこういうところはあるし、こういう人もいるよね〜って作品群でした。
0投稿日: 2025.04.30
powered by ブクログしずかななにかが追い立ててくるようなこわさ。まさにパンデミックの中、身動きできない家の中から感じていたザワザワそのものが文字を、文を成しているような。なぜこれがこわいのか、きっと自分の人生を振り返るとわかる。
6投稿日: 2025.04.28
powered by ブクログ初の川上未映子さん。 短編集で読みやすかった。読後感はスッキリしない嫌な感じがするけど、私はそんな本が好きなので読んでみてよかったなと思った。 特に好きだったのは「娘について」 裕福な環境に生まれ育ち、親に甘えて生活している友達に嫉妬し、最後のチャンスを潰してしまった主人公の気持ちには共感できるところもあったし、ゾッとするこわさも感じた。
2投稿日: 2025.04.28
powered by ブクログ「青かける青」 「あなたの鼻がもう少し高ければ」 「花瓶」 「淋しくなったら電話をかけて」 「ブルー・インク」 「娘について」 世界がどうなるかわからなかったパンデミックの淵、きれいな悪意に満ちている六篇。 うとうと、夢と現のあわいで眠るようにしながら読みおえた。
4投稿日: 2025.04.28
powered by ブクログ何が「こわい」のか。どこが「こわい」のか。考えながら 読んでいたら 急に 「怖く」なった。何が「こわい」 んだろう?どうして「こわい」んだろう?とページをめくりながら じわじわ怖くなってきて。カタチがなく 見えないものは 怖がり度が人それぞれちがうけど「こわい」のだ、きっと。「こわい」は「だるい」と置き換わる地方があって それを踏まえて読み返すと 全く違って、日本語って奥が深い。
13投稿日: 2025.04.28
powered by ブクログ蔓延する感染病。 無くなってしまった日常。 続いていく日常。 それまでの当たり前がなくなったことで、 それまで気付かなかった孤独が浮き彫りになったところも あったのかもしれない。 そんなことを考えさせられるような短編集でした。
0投稿日: 2025.04.27
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
この本は同じ時間軸を生きる全く別の6人の短編集 コロナに翻弄された春にあらわれた「こわいもの」の話である 私が印象に残ったのは最後の話「娘について」だ 主人公は小説家を夢見るよしえで、女優志望の見砂とルームシェアをしている。よしえは家があまり裕福ではない母子家庭のため、バイトをしつつ小説を書いては応募する日々を送っているが、見砂は過干渉な親からの潤沢な仕送りに甘え、参加費を払うワークショップに参加したり、レッスンを受ける一方で、20歳ほど離れたオジサンと付き合ったり買い物に明け暮れたりしていた。そしてそんな見砂が掴みかけた最後のチャンス。よしえは…。 恵まれた環境。恵まれない環境。環境を言い訳にせず努力する者。環境に甘える者。それを妬む者。負けず嫌いであればあるほど、社会的成功がアイデンティティに直結すると信じているほど、他人と自分という立場しか見えなくなり劣等感に陥ったり誰かより明確に成功者でありたいと望んだりする。その感情が足を引っ張ってしまうことが多々あり、その誘惑が「こわいもの」であると思った また、もう一話「あなたの鼻がもう少し高ければ」はゾッとするが、とてもリアルだった。 作中での「美人になりたいからギャラ飲みするのではなく美人になってからギャラ飲みするのであり、それは大学に入るお金が無いからGoogleに就職したいと言っているのと同じ」というシーン。驚くほどのかわいい人がギャラ飲みを斡旋し、美人の華々しい生活を発信し、それに憧れる女子が大勢いるという世界。吐き気がすると私は思ってしまうが、苦笑いされブスだと言われたトヨはこの後どうしたのか。美醜への執着と自分が醜いことによる劣等が「こわいもの」なのだろうと思った。
2投稿日: 2025.04.22
powered by ブクログどこにしまい込んだかも忘れていた罪悪感を不意に見つけてしまった瞬間。息苦しく希望ひとつ探す気にもならない未来への不安と、そんな将来にまだどこか期待をしてしまう自分の醜悪さに嫌悪を覚える。行き場のない心のモヤを宙に浮いた掴みどころのない文章で描かれるオムニバス短編。 頭から離れそうにもしつこく渦巻き続ける独特の魅力でした。
7投稿日: 2025.04.21
powered by ブクログあの春、コロナパンデミックを経験する春のこわいもの6編 川上さんは、純文学の方で英語圏でも人気が高く しかもお美しい こわいものなしではないかと思う そして、こんな角川ホラー文庫とは方向性の違う 「こわいもの」を書いてしまう 「青かける青」 お手紙形式 これをもらったらこわい 「あなたの鼻がもう少し高ければ」 私は、これが一番好き 世のルッキズムの極地 顔ちゃんとしてから来て欲しいんだけど なんでブスのまま来てるの お直し可という優しさはある 「花瓶」 死が近い老女の 恋に近かった頃 「淋しくなったら電話をかけて」 常に苛立つあなた これはコロナ禍の社会の苛立ちかな 「ブルーインク」 失くした手紙の在り方 深夜の学校へ忍び込む 「娘について」 私は、これが一番こわい 女友達が少しづつ毒を混ぜる言葉 著者も文章も無駄な肉がない よく言われましたよね、行間を読みなさいと そして、知らなかったのですが この作品はAmazonオーディオブックのための書き下ろしとのこと これからは 行間を聴きなさいという高度な読書が必要になるのかも あるいは 声優さん達が行間を演じるのかしら いろんな読書が楽しめそうです
91投稿日: 2025.04.21
powered by ブクログ「わたしに小説の才能がないこなんて明らかだ。普段から漠然と考えていたこんなようなことが、この数週間、考えようとしないでもいつでも頭の中にあり、少し離れたところから、こちらを凝視しているような苦しさがあった」 この感覚わかる。 「自分が何をしわあせに思うかに気づくのが、大事だと思うわ」
2投稿日: 2025.04.20
powered by ブクログ文庫の新刊で薄かったのもあり、小生初の川上未映子さん。芥川賞作家、現選考委員。自己の内面を問いただすような、静かで美しい6つの短編。新型コロナのパンデミックで、実現できなかったことを振り返る。
24投稿日: 2025.04.19
powered by ブクログ不安や孤独という透明な膜の様なものが世界を覆っている時代。新型ウィルスが広がったことにより、透明な膜に色がつき明確に不安や孤独を感じる様になった。そんな世界を生きる人々の心の中に深く潜り込んでいき光や闇を見つけるそんな物語。
3投稿日: 2025.04.14
powered by ブクログ「思いがけない電話がかかってきたとき。もう何年も音沙汰のなかった人の名前をメールの差出人欄に見たとき。べつに自分が何かした覚えもないのに、不安とも後悔ともつかない感情が突きあげて緊張が走り、一瞬で汗をかく。そういう予期せぬ小さな再会が、わたしは怖い」
2投稿日: 2025.04.14
powered by ブクログ初の川上 未映子作品。『乳と卵』、『ヘヴン』や『すべて真夜中の恋人たち』と著名な作品がある中で、タイトルと短編集という理由から、手に取った作品。 コロナ期を背景に描いているので、全体的に凄く閉鎖的で読んでいて、余り明るい気持ちになることはありませんでしたが、想像していたよりも、テンポが良くて時代にマッチしているような文体だなぁと感じました❗️面白いかと聞かれたら決して面白いと言える作品ではありませんが、村上 春樹さんを彷彿とさせるような文体もあって、個人的には好きな作家さんです。また気の所為かも知れませんが、心がゾワゾワする感覚が、今村 夏子さんの文章に似た感じがしました❗️ 好きな話しは、『あなたの鼻がもう少し高ければ』、『ブルー・インク』、『娘について』の3編です❗️ 少しずつ他の作品も読んでいこうかなぁと思っています。
33投稿日: 2025.04.13
powered by ブクログ---------------------------------- 「わたし、 忘れたこと ないからね」 六人の男女が体験する甘美きわまる地獄めぐり ---------------------------------- 川上未映子さんは「ヘヴン」に続き二作目です。 20代の頃「ヘヴン」を読んで、 当時の私は衝撃を受けすぎて、 そこからは著者の作品に手が伸びず。苦笑 40を目前に、 素敵な装丁と不安なタイトルに惹かれ、 今なら読めるかもと思い手に取りました。 6篇の短編集ですが、 テイストは違えど、 じわじわくる感じは共通していて。 仕方ないのですが、最近の作品はどれもSNSとコロナ禍に出会う頻度が高いなあと改めて思いました。 スマホやSNS等から離れて物語の世界に浸りたいと思いつつも避けて通れないなら、読むジャンル変えなきゃダメなのかもなあと。苦笑 個人的に印象的だったのは「花瓶」「淋しくなったら電話をかけて」「娘について」でした。 結局、SNSが登場する作品が印象に残ってる矛盾です。苦笑
10投稿日: 2025.04.13
powered by ブクログ短編集でありながら、コロナ禍をこれほど普遍的で威力のある物語に落とし込むことが出来るのかと感嘆する。何か良くない事が起きる前、の不安感が全編を通して漂う。無意識の底に沈殿している鬱憤や悪意や欺瞞や諦観といった負の澱が、沸々と浮かび上がり、心を騒つかせる。裕福な友人との関係が描かれた「娘について」が特に印象的だった。
2投稿日: 2025.04.12
powered by ブクログ「娘について」がこわい。点として語られる一つ一つの出来事がある所で線としてつながる瞬間、主人公と友人に違う種類のこわさを感じた。このこわさは、悪意・嫉妬・疑念・恨み・復讐がつまったこわさだと思う。
2投稿日: 2025.04.10
powered by ブクログ春のこわいもの #読了 世界が一変してしまったあの春。 ギャラ飲み志願の女性(ブスなりに稼いでから整形してこい) ベッドで人生を回顧する老女。 深夜の学校へ忍び込む高校生。 親友を密かに裏切り続けた作家。 娘について、かなり好きな短編ですね。 あの時のコロナ禍が思い出されます。
2投稿日: 2025.04.07
powered by ブクログコロナ禍の先行き不明な不安感が、罪悪感や焦燥感や消失感や欲望みたいなわけのわからない何かに追い詰められていく登場人物達の心理とうまく連動していて、読んでるだけで息苦しくなる。
4投稿日: 2025.04.06
powered by ブクログ美しい言葉、表現に夢中になって読むと、ぞわぞわとこわいものに取り囲まれている感覚になってそのお話がぷつっと終わる。これの繰り返しで一冊読み終わる頃には不思議なこわさにどっぷり浸かり混んでしまった。
3投稿日: 2025.04.06
powered by ブクログ『春のこわいもの』 川上未映子さん はじめまして♪ 六編からなる短編集。 『六人の男女が体験する 甘美きわまる地獄めぐり』 …って帯に書いてあるもんだから 読みたくなっちゃいました♡ 収録作品は… 青かける青 あなたの鼻がもう少し高ければ 花瓶 淋しくなったら電話をかけて ブルー・インク 娘について …となるのですが 読んでる途中 それほど響かず 「ブルー・インク」「娘について」 で夢中になって読んでいました♪ ただ、読み終わってから ジワジワ〜っと余韻にやられちゃう✨ "地獄"ってほどではないけどね なんか あとから ジワ〜って… 文章がながれるように… スーーーーーッって入ってくるの。 (語彙力なくてごめんなさいっ♡) なんだろう!? 不思議なんだけど… 江國香織さんを思い出しちゃう文体 江國さん 読みたくなっちゃうじゃん♡ ねぇ✨ 素敵な短編集でした♡
48投稿日: 2025.04.04
powered by ブクログ文庫化待ってました。 コロナ禍にまつわる幻想的な短編集。あのときの、駆け出しのときの先の見えない不安や死がすぐ近くにある感じ、世界と自分との違和なんかが書かれている。 未映子さんの作品はよく読むけど、今回はなんか読後ふと彼女の書く人物って誠実だよなと思った。人格の是非とかじゃなく、ずれてる人も、いじわるな人も、孤独な人も、ちゃんと相手に関わろうとしているなと感じさせる作品たちだった。私は薄情だから後ろめたくもなったな。
2投稿日: 2025.04.04
