
総合評価
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powered by ブクログ大正期から昭和10年代前半までに発表されたホラー短編を集めたアンソロジー。ただし、当時ホラー小説で中心的な存在だった<新青年>以外のものを収録している。要はマイナーな作品を集めたと言えるだろう。各編には、編者による作者の紹介と解説がついている。それぞれ、調べられる限りの詳細なものだと思われる。 こうしたマニアックな本は、残念ながら増刷される可能性は低いと思われる。今買っておかないと後悔するかもしれない。積読でも良いから購入を薦める。 なお、ホラー小説は「怪談」と違って、ジトーッと肌にまつわりつくような湿気がないように感じる。気候風土や生活様式の違いがあるのだろうか。
50投稿日: 2025.07.30
powered by ブクログ大正から昭和初期にかけてに博文館の「新青年」意外の雑誌などに発表された怪奇・恐怖小説を集めたアンソロジー。 「新青年」以外からとるという縛りゆえか、角田喜久雄と「豹の眼」の高垣眸を除けば(エロ関係の読み物で高田義一郎は知っていたが)知らない作家ばかりだが、逆にそれがこのアンソロジーをバラエティに富んだものにしている。 収録作の中では、高田義一郎の「疾病の脅威」が後の赤塚不二夫を思わせるグロテスクなコメディで印象的。米村正一の「恐怖鬼侫魔倶楽部奇譚」は日本におけるスナッフ映画を題材にした先駆的な作品。岩佐東一郎「死亡放送」は明日死亡する予定の人物のリストがラジオ放送で読み上げられるという今時の都市伝説を思わせる内容。 全体的に当時のエロ・グロ・ナンセンスブームを色濃く反映した作品が多く、今読んでも十二分に愉しめるクオリティはある。 作品毎に編者による詳しい解説が付されているのもマイナー作家のアンソロジーとして非常にありがたい。
1投稿日: 2025.07.19
powered by ブクログここでいうモダンホラーとは戦前の所謂"昭和モダン"期のホラー、の意らしい。先に読了した『怪奇探偵小説集Ⅰ』と同時代同ジャンルの作品だが、本書の特色は当時このジャンルでメジャー誌だった〈新青年〉に掲載された作品以外からのセレクトという点。では〈新青年〉掲載作に比べ質的に見劣りするかと言うと、先に読んだ『怪奇探偵小説集Ⅰ』の作品と比べても(二、三の作品を除き)楽しさで遜色はない感じ。他の小説誌は無論、犯罪実話雑誌、少年誌からも採られているため幅広く、怪奇猟奇エログロは勿論、随筆風や実話怪談まで揃う。今では禁じ手な夢/妄想オチや乱歩の「人間椅子」的構成のものもあるが、この辺は猟奇的な内容と結末の落差で読者を驚かして楽しませる意図と共に、当時の時勢から検閲に対してのエクスキューズもあったのではないかと妄想してみたり。 作品ごとに詳細な解説が付せられており、これがまたかなりの読み応え。 印象に残ったのは ・将来の病気を恐れる余り愛娘の器官や臓器を切除していく医師を描いた「疾病の脅威」(高田義一郎)。ブラックユーモアなのだろうが、現代でもこの手の思想を持つ人間が少なからずいるのが怖い。 ・幽霊駆除の薬品が発明されたアメリカから日本へ亡命してきた幽霊との交流「亡命せる異人幽霊」(渡邊洲蔵)。ユーモア譚。 ・登山中の嵐で数日足止めされ食糧も尽きた時、人夫が差し出した肉と彼が語った話「肉」(角田喜久雄)。結末で苦笑いしてるけどそんな状況かと。 ・娼館の女主人の息子は重い障害を持っていたが、なぜかある娼婦に執着する「紅棒で描いた殺人画」(庄野義信)。犯罪実話誌〈犯罪科学〉発表の一編。なるほど、これは〈新青年〉では無理そうだ。 ・飛行機事故のスクープ記事を急ぎ書く記者に「もっと恐ろしい犯罪が行われている」と語る男「硝子箱の眼」(妹尾アキ夫)。ラストの一言は読者の感想そのものかもしれない。ちなみにこの作家のみ『怪奇探偵小説集』と被っていた。 ・ある研究に没頭した医師の父親によって忌わしい改造を施された青年の悲劇「蛇」(喜多槐三)。マッドサイエンティストものとも言えるか。中核になるアイデアには元ネタがあるとのこと。 ・古代の殺人鬼のミイラが蘇り次々に人を襲う「バビロンの吸血鬼」(高垣眸)表題作。少年少女もの専門だった作者だけに全体的に冒険活劇調だが内容はしっかり怪物ホラー。後年、映像作品の原作ともなった模様。 ・植物蒐集家とその一行がニューギニアの奥地で遭遇した異様な植物「食人植物サラセニア」(城田シュレーダー)。食人植物ものの作品はけっこうあるらしい。ちなみにサラセニアは実在の食虫植物だが当然人は食べない。 ・スナッフ映画鑑賞の秘密クラブに誘われた男が遭遇する恐怖「恐怖鬼佞魔倶楽部奇譚」(米村正一)。伏せ字の箇所がかえって生々しいが「あ、このパターンか」というオチ。 ・妻の郷里で起きたという、土葬された若い娘が蘇生した話「早すぎた埋葬」(横瀬夜雨)。エッセイ。終わり良ければ―な結末だが、これも考え様によっては……。 ・ラジオで"明日亡くなる人の名前"が読み上げられ、自分の名もそこにあった―という夢「死亡放送」(岩佐東一郎)。ネットロア「NNN臨時放送」のご先祖。 ・入院していた婦人が院内のエレベーターで亡くなった。そのエレベーターではその後不可解な現象や故障が相次ぎ、ついに―「人の居ないエレヴェーター」(竹村猛児)。本業は医師である作家による随筆から。つまりは実話怪談のようで、ストレートに怖い。 結果的に作家陣は今日では殆んど知られていない名が並んでいるが、解説にもあるように再評価されてもいい作家も少なくない。『怪奇探偵~』の感想にも書いたが、Jホラーの源流の一つがこの時代にもあるのだから、本業の余技で書かれていたり、戦争を経ていることによる原本の散逸、作家自身の後年の消息が不明等々の問題もあるだろうが、今後も紹介や評価が進んだらいいな……と一ホラー小説ファンの勝手な思い。
2投稿日: 2025.06.09
