
総合評価
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powered by ブクログ『#「失われた30年」に誰がした』 ほぼ日書評 Day940 原著は2024年刊の "The contest for Japan’s economic future"。邦題が見かけ倒しなのはいつものことだが、内容がここまで無い翻訳本も珍しい。 評者も上げている「ブクログ」(個人の書評サイト)で本書について「日本人が書いているよう」としたものがあったが、ある意味その通りで、あたかも海外好きな「ではのかみ」氏が書いたものと見分けが付かないのだ。 唯一面白かったのが "水に浮く電気自動車" の話。水害の多いタイの洪水に耐えられるように考案されたもの。部品点数を極限まで絞り込むことで小規模な生産者でも供給を可能にしたことと合わせ、興味深い着想と思うが、別に著者が発明した技術というわけでもないので、そこまで。 で、本題であるが、企業を、小回りのきくガゼルと、巨大だが動きの鈍いエレファントに分類し、日本はガゼルが少ないことから説き起こす。 アメリカなどに比べ、新規創業の少ないことを知らぬ人の方が少ない現代、このネーミングだけで何かの意味があるのだろうか? 銀行融資時の個人保証を課題とする指摘。エンジェル投資家や財政投融資機構等がもっと活躍できる基盤があれば、廃業・創業がなくても、経営者の新陳代謝によって、既存企業にあらたな風を吹き込むことができる。おっしゃる通り。 一方で労働力の流動性。本書p.246 山本勲と黒田祥子の研究(2016年)の引用によれば、日本企業で利益が最大になる労働移動率は20%で、現在の実績値は6.7%にすぎないのだとか。 評者はいわゆる外資IT勤務で、この業界の離職率は20%程度が平均(精緻な分析というより感覚値で言われることが多い)とされるが、多くの場合、諸々の離職率低下施策が講じられている。20%が適切ならば、そうした策は不要なはず。データのみで議論する弊害だ。 終盤で紹介される「フレクシキュリティ」なる用語。フレキシビリティとセキュリティ(雇用を奪われないという意味で)を組み合わせた造語で、同一労働(職種)同一賃金を徹底することで、生産性の低い業種・企業から高い方へ人が移動することを促す仕組みだそうだ。 著者によれば、実際に施行され、既に実績を上げているとのことだが、その一方でデンマークでは1/3が年間で職を変わるとの記載もあり、そのことによる不経済が生じないことへの検証は全くなされていない。 そもそも、北欧型を成功モデルとするにしても、同一労働における賃金格差の縮小が、単なら収入水準の平均化(あるいは下の水準への収斂)となることはないのか、移民問題や性犯罪大国化の問題なども伝え聞くが、移民雇用による賃金水準押し下げ等とのバランスは取れているのか等も論ぜられぬままだ。 余談だが、我が国でも四半世紀前に、非正規雇用の問題を知りつつ、無理くりに導入した手合いも、この筋だったのを思い出させる。 大手電力会社が太陽光や風力を主要な送電線と繋げようとせず、一方で新たな石炭火力発電所建設を進めようとしていることに警鐘を鳴らす。 フランスでは、直近15年ほどでベンチャーキャピタル投資が4倍になり、2023年には36のユニコーン企業が生まれた(日本は6社のみ)と、その成功を絶賛するが、そもそもフランス経済は現在好調なのだったか。 などなど、疑問ばかり残る内容で、そもそもなぜに "かの早川書房" が何を勘違いしてこんな本を出したのか、その見識が疑われるものであった。 https://amzn.to/48NgsxK
1投稿日: 2025.10.26
powered by ブクログ日本は創業と廃業が少なく新陳代謝が進まない。 スタートアップへの税制優遇など国ができることも多いという内容 ニッチのシェアは高くても市場の大きい製品のシェアがとれない
0投稿日: 2025.08.30
powered by ブクログ雇用の流動化は進んだものの不十分、成長分野への人材移動が進まないと言われて久しいが、さて日本の雇用制度が変われば日本人のマインドが変わるのかどうかは分からない。ボーダレスな世界に生きる私たちが、起業家マインドをもった国民に生まれ変わるためには、また子どもの頃からの経験にまで遡って時間をかけて変わっていかないと大きな変化にはならないかもしれないと感じた。
0投稿日: 2025.06.22
powered by ブクログ著者であるカッツ氏の座談会を拝聴する機会が先日ありましたことから、本書を手にとりました。日本の経済がなぜ近年低迷しているのか、産業の新陳代謝という観点から明解に断じておられます。 シュンペーターの言う「創造的破壊」が、1970年代後半以降の日本の産業で機能せず、急速に発展するガゼルのような米国の企業、アップル、マイクロソフト、近年ではテスラ、などのような企業が日本で出現せず、収益性の低いゾンビ企業が生き残り、雇用の安定を至上命題とする政界と財界の結託から、企業の新陳代謝が進んでいないことに大きな問題あることを著者は指摘します。一例として、2015年時点で日本では1990年以降の25年間に設立された企業はわずか5%であったが、米国では半数近くに上ると言います。 また日本の資本生産性(資本投入による追加的GDP増加額)の低さが、長年の低金利に反映される一方、間接金融が大きなシェアを占める日本で、銀行が担保を重視する与信方針をとるため、起業家が大きな資本を調達することが困難であることから、新興企業が大きく羽ばたく素地が得られていないこと、起業家自身がグローバル視点を持っていないことなどを問題として挙げておられます。 一方、日本が米国のようなモデルを採用することが現実的でないことを踏まえ、筆者は、北欧のフレクシキュリティモデルを提唱しています。これは、1990年代にデンマークで実施された、FlexibilityとSecurityを組み合わせたモデルで、市場経済を重視しつつ、所得安定と平等を図る政策です。 日本に長年住まわれるカッツ氏の、日本経済、そして若い世代への熱い期待を感じさせる本でした。
1投稿日: 2025.06.16
