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文明の衝突 下
文明の衝突 下
サミュエル・ハンチントン、鈴木主税/集英社
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総合評価

8件)
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    1998年に現在の「文明の衝突」の到来を予見した書籍。一方で、その文明の理解や予測の具合には極めて強い「西欧的支援」と感じる。 上巻では7つ乃至は8つの文明のアイデンティティの衝突を西欧社会対非西欧社会という構図で捉え、下巻になると西欧的視点から捉える「非西欧社会」が中心となる。中盤の多くを旧ソ連時代の東欧圏・中央アジア圏・中東圏におけるイスラム文明に割いているが、これらの思想が2000年代の米国の対外政策の根底に流れている、つまり一部の偏ったシンクタンクの戦略に基づいていたと感じてしまう。 衝突のフォルト・ラインを中核国のバンドワゴニングと文明間のバランシングで分析しているものの、日本が中国にすり寄って西欧対非西欧陣営の衝突、はさすがにそれは無いのでは…と言わざるを得ない。「文明の衝突」というコンセプトは分かり易い一方、もう少し「非西欧文明」に対する深い洞察が欲しいところ。 いずれにせよ文明のアイデンティティという著者の主張は正しいところで、現時点に限ればそれは国単位の文明どうしではなく国内の文明どうし、特に西欧社会においてそれが起こっていると言えよう。

    1
    投稿日: 2025.09.16
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    ★ 1990年代以降、西欧以外の文明が強まるにつれ、西欧の魅力が薄れ、非西欧の人々は自分たちの固有の文化に対する自信を取り戻している。

    1
    投稿日: 2025.06.01
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    下巻は、冷戦後期以降の具体的な国際関係の展開について述べられている。 その内容は、日米の経済上の反目、中国の台頭、イスラムの国境紛争、ソ連・ロシアとイスラムとの戦い、およびバルカン戦争である。 ユーゴスラヴィア弱体化に伴う90年代のバルカン情勢、つまり、 イスラムのボスニア、正教のセルビア、カトリックのクロアチア、という三勢力の争いは、まさに「文明の衝突」の代表事例と言えるだろう。 オスマントルコの侵攻したボスニアはイスラムが、オーストリア・ハンガリー支配下だったクロアチアはカトリックが優勢となっている。 個人的な経験だが、人間性を決定づけるのは宗教だという考えに自分が至ったのも、かつてバルカンについて学んだことからだった。 民族や言語が同一でも、宗教だけで全く異なる文明に属するという事例だ。 この経験がなければ、文明上の違いについて自分が考えるにあたり、人種や遺伝などの影響が排除できなかったと思う。 筆者は最後に自国アメリカに触れる。 アメリカを多文化・多民族からなる国家とする多文化主義を否定し、 『アメリカ人は文化的に西欧の家族の一部なのだ』(p241) と明確に主張する。 この根拠として引用されている梅原猛の主張、 「ソ連崩壊は、政治的イデオロギーのみで社会を規定することの不可能性を示しており、それはマルクス主義のみならず自由主義にも適用する」 と言うところは説得力がある。 筆者の主張を端的に表した言葉でもあると思う。 上下巻通じて、文明≒宗教が衝突を引き起こす、という主張は一貫しており、その裏付けも詳細に富んで、世界で広く読まれるのももっともと感じた。 多大な波紋を呼んだ著書であったようだが、さまざまな思想や利害に影響を与えた証だろう。 ただしウィキペディアの情報によると、エマニュエル・トッドは本著を批判し、「国家観が古い」としたともいう。 トッドの主張も興味深い。 さいごに。 日本版のあとがきを書いているのは、昨年残念ながら火災で亡くなった猪口孝氏である。 本著を最後まで読み、改めて、この国は惜しい人を亡くしたと感じた。 文明の衝突の中で、得難い人材ほど失われやすいのは、悔やまれるべき世の常である。 御冥福をお祈りする。

    9
    投稿日: 2025.03.02
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    20年前に書かれた本だが十分読みごたえがあった。ウクライナや中国で今おこっていることを考える上でも参考となった。

    0
    投稿日: 2022.08.23
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    上巻に比べて衝突のあり方や予想の部分が多く、若干しんどくてそうはなってほしくないと願う内容が多い。また、中国との関係性に対して、日本と中国を始めとした東アジア諸国が連携し始めることへの恐れを感じる内容。現時点では起きていないことと似たようなことが見られることがあり、大局観としてのリスク意識を持つのには良い内容。 人口的に国力が北から南へシフトするとしたら、その際の均衡の取り方は西欧化ではなく多様な文化に根ざした文明の均衡にあること20年以上前に示唆していたことになる。昔読んだ方も、もう一度読み返すと新たな気づきがありそうですよ。

    2
    投稿日: 2021.09.20
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     未来予想を行っている本を後の時代になってよむと、当たっている部分、外れている部分がある。  おひざ元のアメリカの洞察は的確で、結構予想が当たっている一方で、日本や台湾は本書に書かれているほど、中国にすり寄っていない。  だからといって本書の価値が落ちるわけではない。西欧人の視点でとらえたイスラムやロシア、アジアの分析は参考になる部分も多い(アジアの文化・文明はもう少し多様かつ複雑な気もするが…)。  経営学者(というかほとんど予言者(笑))のドラッカーのように、しっかりと本質を捉えていれば、当初の予想とは少し時間軸がずれて実現することもあるので、時折読み返す一冊としたい。      

    0
    投稿日: 2020.09.09
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    このレビューはネタバレを含みます。

    上巻は『現状分析』がメインだったのでまだ良かったのだが、下巻は『対策』それも、『西欧文明の優越が失われてしまう。キー』の対策なので、まあ、引きながら読んだ。 ああ、そりゃあ、問題になったわけだなあと。 ただし、イスラム文明が他の文明と摩擦を生じている背景としての、『人口爆発』『若い世代が多い』という分析は、大事な視点だなと。 いずれ、イスラム圏が豊かになれば、人口爆発が収まって穏健になる日も来るのだろうか?(まあ、その答えを見るまで生きていることは無理だからわからないが) あと、日本の扱いがあまりにもあれだよなあ。まあ、ちょうど細川政権の頃だろうからなあ。対米自立ダーみたいな乗りがあったのは事実だけど、それは一般化しなかったわけでさあ。まして、自立ならともかく、米国から中国に乗り換えってのはさぁ… その意味で、提示されたシナリオは(今の)日本人には、あまりにも荒唐無稽すぎてしんどかった。 そして、最大の問題点は、「文明間の衝突を防ぐ為に、互いの文明圏を超えて干渉するべきではない」ってのは、帝国主義の時代にまで歴史を戻せって聞こえて、あまりにも酷すぎた。これほどの人でも、見かけ上の現状維持を優先すると、ここまで酷くなるんだなと呆れた。その分、☆一つ減らして☆3つ。

    0
    投稿日: 2018.10.14
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    解説にありましたが、“ハンチントンは、20年早かった!”と思います。書かれている内容は、正に【今】の出来事かと思うような事ばかり。これを、20年前に予測していたんですから、ハンチントンが存命であれば、ここから20年後は、どの様に見通すのでしょうね? ただ一つだけ、腑に落ちない記述も。「文明間の戦争と秩序」と言う項で、あるシナリオが想定されているんですが、そこだけは腑に落ちないですね。全然違う事実となっています。

    0
    投稿日: 2017.10.26