
総合評価
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powered by ブクログ1065ページ!何とかならんか!これに尽きる。 いくら興味深いからといっても、さすがに修行であった。 虚実ないまぜ、時空は歪み、面白げな登場人物が、太平洋戦争前後の世界を、日本を行き来するわけなのだが、三分のニくらい読み進んだところくらいから、何でもいいから早く決着をつけてくれ、という願いの方が、頭の中の想像世界を押しのけていたような気がする。 グランドミステリー以来の奥泉光。あの時はもっと夢中で読めていた記憶が。 脳が老いたかも。 恐ろしいことにあれは20年前の読書体験だったのだと知り、こっちの時空も歪んだ。
0投稿日: 2025.09.15
powered by ブクログA5判1095ページの巨編。 何度か中断しようやく読了。 「神器 軍艦「橿原」殺人事件」の続編か。 発端は、海軍上がりで探偵を自称するお調子者の主人公石目英二が山形の出羽庄内地方で遭遇した退役陸軍中将夫妻の殺害事件。 体裁はミステリー仕立てで、怪しげな「K文書」やGHQ、裏社会、宗教団体などが登場し話は複雑化する。 もう一人の主人公神島健作は、捕虜収容所で石目と出会った元陸軍少尉で殺害された陸軍中将の弟で、復員後商大に復学している。 夢の中でフィリピン奥地の沼地を破れ案山子の成りで彷徨う神島の周囲には、鼠化した人間や鼠集合体としての人間が登場し、終いには神島本人も鼠化し未来から来た水谷澄江の孫久良々(こちらも鼠)と行動を共にする。 K文書は昆布谷なる人物による予知の書で、各勢力が所在を探している。 ここに来て本書は多元宇宙論やESPといったSF的要素を内包する。 ロンギヌス物質という超物質近傍で超空間が生まれ、別の人生、いわゆる「2周目の人生」に遷移するという。 本書では「第1(第2)の書物」、「かくり世・うつし世」と呼ばれる。 出羽の山中で皇祖神霊教が執り行う怪しげな神事と混乱。 ここまで道具立てをして、作者は本書で何を語りたいのか。 天皇の存在なくして日本は国家の体をなすか。 主体性を持たない鼠化した国民たち。 空虚な中心を妄信する人々の狂気。 澄江が語る「自由な国」。 ある意味本書のクライマックスは門馬元中将に投げ掛けられた澄江の言葉かもしれず、軍隊糾弾集会で何も語らず山中で一人木像を彫る地金ミノルは作者が提示するアンチテーゼにもみえる。 探偵を廃業する決心ヲした石目だが、愛しの卑弥呼さんこと鈴木奈緒美の誘いに、ドイツで失踪した女性ピアニスト(これも前作と関係?)の捜索に呆気なく乗り出す。
0投稿日: 2025.06.04
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
あり得たかもしれない戦後史を陰画として描いた伝奇ミステリー。まずはモノとしての本の厚さに圧倒されるが、主役級の数名は言うに及ばず、次々登場する端役キャラに至るまで1人1人異なる味付けがされているところや風景事物の細部を描いて戦後の匂いがしっかり再現されているところ(特に下山事件を彷彿とさせる各種団体名には事件の臭いがプンプン)など注入されたエネルギーには恐れ入るしかない。 序盤どんどん話の風呂敷が広がり続けるなか、インテリ層による新憲法評価の議論に一つのクライマックスがあるが、そこから話がオカルト方面に転換して少しテーマを見失いそうになった。最後には再び本テーマに回帰するが個人的には最初の疾走感を維持したまま没入したかった。現代のシスターフッド的要素など後半の一連の流れと登場人物には著者自身本当に書きたかったことなのか疑問に感じて少し雑味を覚えてしまった。ただ現代っ子の鼠が国体論を振りかざす大蛇と対決する場面では、敵役の論理に借り物(21世紀のウツ先生によると〜)の論理で立ち向かう形となり、明らかに力不足を露呈して、小説としての成否とは別に、現代リベラルのひ弱さが見事に描かれていると受け取った。
0投稿日: 2025.02.24
powered by ブクログまずは最初に目にした時のインパクトといったら!分厚すぎでしょ!それに装丁のDADADAは何ぞや?と、ページをめくる前から期待度が上がります。内容は…重厚かつ軽妙。ミステリーでもあり、SF要素もあり、怪奇・幻想小説っぽくもあり、純文学でもあり、大衆文学でもあり。作家さんって、すごいなあ…。最高に好みの作品でした。
1投稿日: 2025.02.06
powered by ブクログ厚さ5センチ、重さ1240グラム、1095ページというスーパー鈍器本 内容も器にひけをとっておらず、並列式「豊穣の海」に浸れます
0投稿日: 2024.12.31
powered by ブクログ表紙のデザインに惹かれて読みました。 第二次世界大戦の頃に学生で、兵隊になった人たちの戦後の思いが重く伝わってきました。ミステリーとしては、とても面白く読めました。
0投稿日: 2024.12.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
dadaの氾濫に導かれ大著に手を伸ばす 大東亜戦争敗戦後の日本に有象無象が蠢く 登場する人物は四人の女性はじめ皆魅力的だ 探偵が狂言回しとして恋に冒険に奮闘努力する 物語は未来を予知した謎文書を中心に回る 隣の次元の書物が捲られるあたりから狂気が溢れでる 人間は鼠集合体となり、主人公は戦争の泥沼から抜けられないはぐれ鼠となる 人間になり象徴となった天皇の代わりに、国家民族を信仰する集団は本物の天皇を迎えようとする 儀式は溢れる死者の声で埋もれる 自決した者はあちらの世界に行ったのだろうか 最後に霧子が顔を出すのが嬉しい
0投稿日: 2024.12.10
powered by ブクログ初めての作家奥泉光。何という筆力か! ジェットコースターに乗せられたような感覚に、これは何の本だ? 1095ページのどこをとっても密度濃く、頭の中にモヤモヤっとしたものが渦巻く。 日本の戦後史と見えるがSFのようでもある。もちろん探偵小説でもあって登場人物が生きている。 読み始めてすぐ、これは大変な読書になると予感したが、9日かけて最後の1ページにたどり着いた。 大きな仕事を成した感がある。
6投稿日: 2024.10.18
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
偶然出版されてすぐに本屋さんで並べられているのを見て、ずっと気になっていた奥泉光先生の作品+かっこよすぎる装丁+紹介文の秀逸さのコンボにやられてしまった。 読み始めると戦後の日本が舞台で、ある夫婦の殺人事件について追っていく話が始まり、本の見た目とは裏腹に小さな事件をどんどん解決していくようなお堅めの小説なのかと思っていた。 しかしそんな予想はすぐに裏切られ、「K文書」なるものや、怪しげな宗教、夢なのか現実なのかわからない世界に迷い込んだり、dadadadadadadadaのリズムが聞こえ始める。 それらに心をガッチリ捕まれ、さらに読み進めて行くとさらに大きな「企み」が分かってきて、、ラストまでdadadadadadadadadaと共に突っ走っていく。 初の1000ページ超えの作品、初の奥泉光作品ということでより思い出に残る読書体験となった。 この分厚さでもまた読み返したいと思わせてくれる最高にツボな作品でした。
3投稿日: 2024.10.13
powered by ブクログテーマもページ数も分厚い力作。不穏な空気を垣間見せながらも、軽妙な石目の章を織り交ぜながらなので、単なるミステリーかとも思わせるテンポで延々と話が進んでいく。かなりの終盤になって物語は一気に混沌の度合いを増し、虚構と現実の並行世界を体感できる。 とにかく文章が抜群に上手いのでいつまでも読み続けていられるけれど、並みの文章力でこの話を読まされたら「なんじゃこりゃ」になってしまうかもしれない。K文書や第一の書物のことなどを始めとして、様々な謎がスッキリと解消されずにモヤモヤが残ってしまった。 石目とか橿原いう名前に既視感があったのですが、これは「神器」とリンクしている作品なのでしょうか?(的外れだったらごめんなさい。「神器」の記憶は相当あやふやなのですが) 昨今の日本の状況を見るにつけ、真の日本を欲した教団の人々の気持ちもわかるような気がするのはなんとも複雑な気持ちにさせられました。
2投稿日: 2024.10.02
powered by ブクログメインストーリーはGHQ占領下の日本を舞台に元中将夫妻殺害事件の謎に迫るミステリだけど、そこにオカルト、宗教、天皇制、夢幻的展開、小説表現の遊びなんかがこれでもかって程詰め込まれて1095ページあるけど最後まで全然飽きない。続き物ではあるけど単体でも面白かった。
1投稿日: 2024.08.23
