
総合評価
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powered by ブクログ. 歴史小説、時代小説を読むのが好きで長年、楽しんできました。 当初は、“誰もが知っている歴史上の有名人”を主人公にして、その生涯を描いた作品を中心に、読んでいました。 しかし近年話題になった歴史小説、時代小説を読んでいると、これまであまり脚光を浴びていなかった人物や事件を扱ったものが多くなっているなと、感じています。 「知らなかった出来事を、新たに知る機会になりそうだ」と考えて、このような作品も積極的に読むようにしています。 この作品は、書評で取り上げられていたことで知り、読むことにしました。 江戸時代の中ごろ、西暦1778年の出羽国(現在の秋田県)のシーンから、物語が始まります。 小野田直武(武助)は、佐竹家分家の家臣の嫡男として、角館で生まれ育ちました。 しかしその画才が知られることになり、久保田本家の、藩主の絵の相手をする御役目に取り立てられます。 その藩主が、参勤交代で江戸へ向かうことになり、見送りに出た武助。 そこで藩主から突然、一緒に江戸に向かうように、命じられます。 その発端となったのは以前、久保田藩と関わりがあった、平賀源内。 当代一の才人と言われた源内ですが、生活が荒れて、「久保田藩の内情を公にする」と、脅すようなことを周囲に言っているとのこと。 以前、江戸で暮らした際に、源内に世話になった武助には、「源内の様子を探れ」という指示が与えられます。 絵のことしかわからない自分に、そのような役割が務まるのか。 悩みつつも、主命に従って江戸に向かった武助ですが・・・という始まり。 江戸に入り、自らの役目を務めようと奮闘する武助の姿が、描かれていきます。 上記の流れの背景にあるのが、久保田藩で過去に起こった、「銀札騒動」と呼ばれる事件。 武助のみならず現藩主も詳しくは知らない、久保田藩を二分したお家騒動。 武助は源内の様子を探ることにより、過去の騒動に関わった久保田藩内、さらには江戸幕府の関係者間の駆け引きにも、巻き込まれることになります。 源内はどのような情報を、握っているのか? 銀札騒動とは、どのような事件だったのか? これらの謎の行方を追っていくというのが、本作品のメインの楽しみ方かと思います。 作中には平賀源内以外にも、司馬江漢、杉田玄白といった、この時代を代表する文化人が登場します。 本作品を読んで知ったのですが、武助(小野田直武)自身も、杉田玄白『解体新書』の図版の原画を担当した、一流の絵師だったのですね。 解体新書の出版の経緯や、日本で蘭画がどのように広まっていったのかなどについても、勉強させていただきました。 また、本作品には田沼意次も登場するので、先に読んだ小説との人物像の描かれ方の違いなども、興味深く読みました。 『またうど』 https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/B0DFXRD5V1 多くの要素が含まれていることと、ところどころに回想が差し込まれ時間が前後することもあり、話が少々込み入っているように感じられる部分もありました。 それだけ作者は、この時代の久保田藩について、興味を持って調べたということなのでしょうね。 これまで、江戸時代中期というと「天下泰平」というイメージを持っていました。 しかし、この時代を題材にした小説を何冊か読んで、興味深い人物がいて大きな事件が起こっていたということを、知りました。 ”もっと知りたい”という気持ちになってきたので、扱っている本が無いか?と探して、読んでいきたいと思います。 .
0投稿日: 2026.02.23
powered by ブクログ「六郷宿は、雪の訪れこそまだないものの、吐く息が白くなるくらいには冷え込んでいたはずだ。」「道端の小暗い木陰には霜が降りていたかもしれない。」という描写が冒頭にあり、「おや」と首を傾げた。この小説はどういう視点で書かれているのだろう。想像や予測、そんな視点は作者自身の視点でしょうか。少なくとも、この2文、語り手は現場にいないのだね、と思いながら読み進めたが、これ以降はすべて、語り手は現場に寄り添っていた。ここだけなのですね。 ストーリーは面白かったのですが、もう一点、読み進めるのに抵抗を感じたのは、途中に出てきた「怒り心頭」という表現。歴史小説・時代小説をその当時の言葉だけで書けなどという、そんな無理無体なことを言うつもりは毛頭ないのだが、「怒り心頭に発する」からの後半省略するような言葉遣いがこの作品の雰囲気にふさわしいかというと、私にはそうは思えなかったのです。 作品全体は、とても面白く読みました。 小田野直武の死は、いまだ定説がないような状況で、それに一つの解釈を見せてくれたのはとても興味深いものでした。秋田蘭画を作った3人が、それぞれの思い、地位、で動いていく、そのすれ違いや交流が、なんとも悲しく、美しく描かれています。それに対する源内の奇矯さは内容十分であるものの、そこにいたる経緯をもっと書いてほしかった。田沼の不気味さももっと書いてほしかった。 「背景が沈んでおればこそ、鮮やかな花に目がゆくもので……」途中で出てきた言葉。印象に残ります。 これは、一冊の本としてまとめて読むより、連載の形のまま、一章ごとに時間をおいて読んだほうが味わいのある作品かもしれません。語り手と時間の動きがそのように作られていると思いました。
3投稿日: 2025.09.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
秋田蘭画と佐竹騒動の後始末を巡る歴史ミステリー。 小田野直武と秋田蘭画はなんとなく知っていましたが、本作の三人の主人公たちの画に対する真摯な向き合い方が清々しい。 美術歴史小説としても、お家騒動時代小説としても面白く作れそうな素材を源内の死や直武の死をミステリー仕立てにしているところが面白いです。 ちょうど同じ時代の大河ドラマを見ているのですが、源内、田沼以外で共通登場人物は平沢常富で、尾美さんのイメージで読んでしまいました。 大河ドラマと違ってこの小説の田沼は怖いですが、それ以上にお家大事の主人公たちの前の代の老臣たちはもっと怖いです。 後味の悪いエンディングですが、各話のタイトルとなっている絵があるのはありがたいもののできればカラーで見せてほしかったです。
0投稿日: 2025.05.21
powered by ブクログ初出2023〜24「小説新潮」 秋田藩(久保田藩=佐竹家)の家臣に小田野武助(直武)という画家がいて、江戸で平賀源内・司馬江漢から蘭画を習い、杉田玄白の「解体新書」の挿絵を描いたというのは史実なのだろう。 源内が佐竹家の存亡にかかわる密書を持っているという情報がもたらされたため、この武助が源内の許に密偵として送り込まれる。武助の才能を見出したのは直接の主人である佐竹一門の又四郎だったが、藩主となる次郎に紹介したため武助は次郎のそばに仕え絵を教えていた。この3人の微妙な関係と、久保田藩が置かれている財政難と、10年余以前の銀札騒動での改革派藩士の大量処分事件の余波が物語の背景にあることがだんだんわかってくる。 武助は源内から密書を手に入れるが、それは源内のパトロンだった田沼意次の貿易品横流しの犯罪証拠で、佐竹藩がらみではなかったが、田沼によって源内が消される恐れがあって、武助は安全のために「謹慎」とされて久保田に戻されたものの、暗殺される。 それぞれの人物の絵への純粋な情熱が、血生臭い権力闘争によって阻まれるのがやりきれない。
0投稿日: 2025.03.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
良い。 品のある作品。 江戸時代、戦は無かったが、武士の時代で血なまぐさい組織を守る水面下の戦いはあった。なんか、組織のために個人が犠牲になる構図は今も変わらない。
0投稿日: 2025.01.25
powered by ブクログ平賀源内が武助に託した密書。其処には一体何が書かれていたのだろうか…己の保身に権力を行使し、描画を嗜む彼らを無き者にする田沼意次に憤慨。田沼の底知れぬ欲深さは噂通りであり、また源内の最期は想定外だった。
0投稿日: 2024.11.14
powered by ブクログ時は田沼意次が10代将軍家治の下で権勢を振るっていた18世紀後半。銀札騒動(1757)の記憶も冷めやらぬ久保田藩に生きた、絵を描くことの好きな3人の武士に平賀源内が絡む。 安藤昌益の直耕思想まで出てきて、ちょっとややこしくなった。
0投稿日: 2024.11.01
