
総合評価
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powered by ブクログ駅名変更と共に閉店することになった喫茶店と書店。惜しまれながらも、閉店までの間にその舞台である待兼山にまつわるエピソードを語り合う「待兼山奇談倶楽部」が発足された。それぞれの語り部たちの不思議な体験が語られるお話。 まず表紙の昭和レトロ喫茶の絵柄に魅了されて手に取った。併せて感じるノスタルジー。 一つ一つのエピソードがほんのりとした優しい気分になる。 関東住みなので阪急電鉄はピンとこないけど、わかる人には二度楽しめるんだろうな。 個人的には銭湯のピアニストと、あんかけうどんが好き。
1投稿日: 2026.01.17
powered by ブクログ身近な阪急電車の駅が沢山出てくるので親近感が湧きました。 どのお話も不思議で心打たれるお話ばかりでした。 最後に伏線が見事にに回収されていたのも読み終えた後じんと沁みました。
8投稿日: 2026.01.17
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
お初の作家さんです。 大阪大近くの待兼山駅にある「喫茶マチカネ」 駅名変更のタイミングで閉店するということをきき、長年の常連沖口さんがこの街で起きる不思議な話を語る会『待兼山奇談倶楽部』を提案する。 そして月一回開催され、語られた話は本にして残すことになる。 カレー屋のマスターが長年応援していた競走馬「ロッキーラクーン」の話 銭湯でピアノを弾いていた学生の話 戦後の貧しい生活の中 あんかけうどんを在日の子供に食べさせていた話などなど どれも 切なくて、優しくて暖かい。 1つ1つが不思議で、でもその人の人生が詰まってて、聞きたくなってしまう (読みたくなってしまう?!) 超感動!!とかいう 心の動かされ方ではないけど ほっこりとして優しい本でした。
1投稿日: 2025.11.21
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
優しく、心温まる話。 待兼山ヘンジの日、夕日に照らされると、並行世界が繋がる。 石橋駅のある世界から、並行世界に落ちた人が、その世界で暖かな人達に囲まれて、待兼山奇譚倶楽部を発足し、不思議な話を月に一回する。 応援してた馬らしき青年がお礼を言いに来る話。 ピアニストとストリッパーが一度夢を諦めても再度夢に向かって歩き出す時の、不思議な邂逅。 戦争から帰ってこない息子を待つ父親の元にフィリピン人の友人の子供として戻ってきた息子。 マチカネワニの二体目の化石を探す少年達。 戦後の高度成長期に、朝鮮戦争に反対した青年達が喫茶マチカネのオーナーの父だった事。 そして、待兼山奇譚倶楽部の発起人が石橋駅のある並行世界が来た話と、元の世界の妻に本を届ける話。 誰かが誰かを思い、大切にした事がわかる、優しい話。 「自分ができることで、少しは人に喜ばれるようなことを、それぞれが突き詰めていくしかない。そうしたら、その先の未来が、今より悪うなるはずない」 は、心に刻みたい名言。
2投稿日: 2025.10.17
powered by ブクログ駅名変更に伴って閉じる書店と喫茶店。その喫茶店に閉店まで月に一度集まって待兼山で起こった奇跡を語り合う。実際ある町の名前なんですね、待兼山町て。一人一人の話が少し長すぎるかなーとも感じましたが全体的には楽しめました。パラレルワールドの世界なのか、全ては沖口さんの夢の物語なのか。能登屋食堂の話が好きだった。
0投稿日: 2025.09.25
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
何を隠そう私も阪急電車ユーザーなので、本書の舞台となっている駅を何度も利用したことがありますし、駅前の街並みや商店街の雰囲気もよく知っています。 ふむふむ、作中では「待兼山駅」と言い換えているんだな。 商店街を抜けた先にある橋は赤色だったはずだけど、作中では青色という設定なんだな。 そんなことを考えながら読み進めていきましたが、最後の章に差し掛かったときに全ての謎が解けました。 どの奇談も引き込まれましたし、本当にこんな出来事もあったりするのかも…と思わされました。 本書の内容を覚えているうちに、「石橋阪大前」駅をまたぜひ街ブラしたいですね。 阪大の豊中キャンパスにあるというマチカネワニの化石を見てみたいですし、夕日が落ちる瞬間を狙って待兼山ヘンジを体感したい! もしかしたら願いごとが叶っちゃうかも…?!ですね。
18投稿日: 2025.08.28
powered by ブクログ大阪の待兼山駅前に、1階は「らんぷ堂」という書店、2階は「喫茶マチカネ」という喫茶店があった。そこを始めた両親から後を引き継いだ兄弟が営んでいたが、駅名が変更になるのに合わせて閉店する事になる。 それを機にこの街や店にまつわる話を集めようという事になり、様々な人達が話をしにくる。 商店街の色々な店にまつわる話が面白くてぐいぐい読ませた。 どれもちょっと不思議なところのある話だけれど、それもまた楽しい。
1投稿日: 2025.08.13
powered by ブクログ昭和レトロを感じさせる「喫茶マチカネ」が舞台 店主の今ちゃん 常連客の「ほんまのパン」の店主仁ちゃん のイマジンコンビ 喫茶店でアルバイトをしている繭子 そしてもう一人の常連客である沖口さん 1階は「らんぷ堂書店」という本屋さんで 今ちゃんのお兄さんが経営している本屋だ 古くから待兼山に 存在するこの喫茶マチカネから 待兼山奇談倶楽部は発足する 1人の強い意志と 待兼山を愛してやまない街の人々の思いによって 読み始めた時は喫茶店の日常の話なのかと思っていましたが 不思議な話がどんどん出てきて その魅力に惹き付けられ あっという間に読み終えました。 とても面白かったです。 喫茶店に足を運びたくなりました。
9投稿日: 2025.08.11
powered by ブクログ閉店間近の喫茶マチカネで『待兼山奇談倶楽部』が発足され6人の登場人物が体験した不思議なお話が語り口調で書かれてます。 どのお話も奇談というより素敵な奇跡のようなお話で感動しました。
4投稿日: 2025.08.01
powered by ブクログ不思議だったりそうでもなかったりな話を聞きながら最終局面、一気に冒頭まで遡って「そういうことだったの?」と呆然。 沖口さんの話が一番不思議だった。 しかもこれの何が不思議だったんだろうと思った話も絡んでた。 披露された話はどれも奇談の名にふさわしいものばかりだったけれど、そのどれもにその人の人生が色濃く滲み出ているからついつい泣きそうになってしまった。
5投稿日: 2025.07.11
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
阪急宝塚沿線在住なので、ああ阪大ね、はいはい五月山ねと思いながら読み進め、肝心の待兼山だけが分からずもやもやしてたら、まさかのオチ 異世界ファンタジーで剣と魔法の世界に飛ばされました、よりも石橋駅じゃなくて待兼山駅の世界・・・だと?!の方がよっぽどぞっとした ただ、これが鳥取駅の隣は鳥取西駅じゃなくて砂の丘駅だと?!と言う話でも、そうなの?砂の丘駅ってないの??位で、然程衝撃は受けないと思うので、多少読者を選ぶ作品かも
1投稿日: 2025.06.30
powered by ブクログ・不思議な街を行ったり来たりした人たちの不思議な物語。 ・時代や場所についてよく調べられていて、光景がくっきりと浮かぶよう。優しい文章で丁寧に描かれているので読みやすい。 ・出てくる登場人物も皆魅力的! ・妙子さんが来年、愛する人に会えますように。
2投稿日: 2025.06.18
powered by ブクログ不思議なお話だった。いや、最初は、待兼商店街にある喫茶マチカネのお話だった。お店を閉める決意をした店主。1Fの書店はお兄さんが経営。もともと両親が1Fの書店と2Fの喫茶店を開いた。 閉店になる前に、この街の不思議な話をするお話会を月に1度開くことになった。 それが各章のお話。たくさんではないけれど多少不思議な、温かい話ばかりだった。 最終章でまさかあんな風につながっていたとは。連作集とはまたちょっと違ったかかわり方。苦手な○○○○ワールドの話だったが、ちょっといい感じがした。
19投稿日: 2025.06.11
powered by ブクログ待兼山商店街を舞台に心温まる思い出話が語られる。昔ながらの喫茶店に通いたくなる本だった。少し現実離れした後半の展開ではあったが、読みやすい一冊だった。
10投稿日: 2025.06.08
powered by ブクログエピソードの一つ一つ、読み応え十分。 泣いてしまうけど幸せな気持ちが残る。 ラストも秀逸。何度も読みたくなると思う。
0投稿日: 2025.05.19
powered by ブクログ途中中だるみ部分も感じましたが、 オリックスの試合見る主人公たちが出てきたので星5です。 オリファンも兼ねてる私のゴリゴリのえこひいきです。
8投稿日: 2025.05.10
powered by ブクログ大阪の待兼山駅前で65年続く喫茶店「喫茶マチカネ」。 半年後に閉店が決まったこの店で、月に一度開催されることになった「待兼山奇談倶楽部」では、毎回ゲストがこの街、この喫茶店にまつわる不思議な体験談を語ります。 古き良き街並みを残す待兼山駅前の風景と、ゲストが昔を振り返って語る思い出話の効果で、読みながら脳内に浮かぶ景色はなんとなくセピア調で、全体にノスタルジックな雰囲気が漂う作品でした。 待兼山駅は架空の駅名のようですが、阪急石橋阪大前駅周辺の地理に明るい人であれば、きっと作中に知っている風景がたくさん出てきて、読んでいてもっと楽しいだろうなぁ。 また、喫茶店×ファンタジー作品でいえば川口俊和さんの『コーヒーが冷めないうちに』にも雰囲気が似ているように感じたので、同作が好きな方はこちらもきっと楽しめるのではと思います。 ちなみに私はタイトルと装丁から、喫茶店の美味しい食べ物が出てくるお話を想像していたのですが、実際は食べ物の描写はほとんど出てきませんでした。 "美味しい小説"を期待して読まれる方はご注意ください笑
1投稿日: 2025.05.06
powered by ブクログあまりにも馴染みの有りすぎる場所ばかりの登場に、戸惑いつつも引き込まれて読了。優しい気持ちになれる良い作品だったのに、ラストが好みでは無かった。もっと余韻に浸りたかった。残念。
1投稿日: 2025.05.03
powered by ブクログひとつひとつの物語は読みやすく読みごたえもありました!まとめかたも興味深く、おもしろく読ませていただきました…!
1投稿日: 2025.04.24
powered by ブクログ65年続いたらんぷ堂書店・喫茶マチカネの残された数ヶ月間を月に一度開かれる「夜会」で、街にゆかりの人々が彩る物語。ひとつひとつのお話に余韻があって心が暖かくなった。特に、銭湯のピアニストと風をあつめてのお話が好き。最後にも意外な展開があり、面白かった。
2投稿日: 2025.04.13
powered by ブクログ下町風情漂う街にある『喫茶マチカネ』。書店二階の喫茶店で繰り広げられる人間模様と、様々な不思議なお話。商店街の雰囲気や音楽がどれもレトロで、何十年も前の世界に遡ったかのよう。行きかう人々の人情も厚くて、行ったことなどないのに、なぜか懐かしい気持ちにさせてくれます。 待兼山駅の地名は平安時代から引き継がれてきたもの。その駅名変更が数か月後に迫ります。待兼山商店街の大通りから、年に一度だけ見ることができる大きく美しい夕日。その夕日の話が発端となり、月に一度 喫茶店で不思議な思い出話をする集まりを持つことが決定。その思い出話を本にして、大切な街の名前を残すことに。名付けて『待兼山奇談倶楽部』。奇妙な話というのは、それだけでわくわくしますね。果たして、毎月語られる奇談の最後に何が待っていたのか…。 この作品は、奇談倶楽部の本が完成したところからの展開が素敵。作品の最初と最後の辻褄を合わせると、不思議な世界が一気に目の前に広がります。 この本は、くるたんさんの本棚で見つけました。出会いをありがとうございます。
37投稿日: 2025.04.11
powered by ブクログ名曲喫茶、レトロ喫茶巡りが好きな私には表紙だけでもうこの世界に入り込めた。 まず、第二話の「ロッキー・ラクレーン」からつかまれた。ビートルズ尽くしのこの短編。ホワイトアルバムの中にポールの曲があった!何度も聴いたアルバムなのにスポッと抜けていた。改めて聴くとストーリーと重なり、感慨深い。 「銭湯のピアニスト」も人生の悲哀、いや生きがいが沁みてくる。ここでは、ビリージョエルの「ピアノマン」。 何よりよかったのは第六話の「風をあつめて」 朝鮮戦争に抵抗を示した吹田事件。全然知らなかった。岡林信康さんの「私たちの望むものは」をしみじみ聴く。 あ、そうか。石橋駅がリアルだったのか。 「私たちの人生って、もしも、の連続ですよね。」「もしも、の先にあったかもしれない未来」があるのかもしれない。 逆に「もしも」なんて言葉使わなくて済むような選択をしていきたい。人は一日に数万回の判断をしているというから、せめて自覚できるものだけでも。 ファンタジー要素があるとリアルがさらにリアルになる!
106投稿日: 2025.04.11
powered by ブクログ古い喫茶店と本屋で行われるちょっと不思議な、でも思いのこもった思い出話が短編で繋がっている。 ほんわりとします。
5投稿日: 2025.03.31
powered by ブクログサラッと読んでしまって、最後の最後にこれまでのどこかに伏線があったかもと後悔。もう一度読み直したい。
2投稿日: 2025.03.28
powered by ブクログ阪神間を知っている人にとっては、土地勘がはたらく場所、阪急宝塚線を舞台にした、ちょっと不思議な物語。 「マチカネ」という名前も「え!そんな駅あったっけ?」と思うのだが、最後にその謎も解き明かされる。 連作短編集だが、どの物語も心をふんわり、暖かくしてくれる作品だ。
2投稿日: 2025.03.20
powered by ブクログ昭和レトロ感溢れるカバーの雰囲気が気になって手に取ってみた。 長年にわたり営業してきた喫茶マチカネが閉店を迎える。残された数ヶ月間で、喫茶店の営業後に街にゆかりのある人達が不思議な体験談を語る夜会『待兼山奇談倶楽部』を発足する。 そこで語られるちょっと不思議な7編の連作短編集。 移ろいゆく季節を感じながら、月毎で語り手が代わるけど、どのお話もとても心温まる話で胸が熱くなった。なんと言っても語り口が皆さん穏やかで、ホント癒される。人生経験が豊富な方達ばかりだからか、話の内容にも深みがあったり、気付きがあったりで興味深かった。 人生は『もしも』の繰り返し、というくだりにハッとさせられる。あの時ああしていたら、こうしていたら、と思うことばかりだけど、後悔したことも含めてそれが人生なのかな。 ただ夜会でお話を聞くだけのストーリーでは終わらず、ラストちょっとしたファンタジー要素も入り、自分自身が不思議体験をしたような読後感もあって最後まで楽しめた。
55投稿日: 2025.03.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
なんだか不思議で、けれどとっても温かな気持ちになれる7話の連作短編集。 長年に渡り地域の人たちに愛され続けた『喫茶マチカネ』が閉店することに。そして同じく地域の人たちが長年利用してきた『待兼山駅』の駅名も改称されることに。閉店と改称を惜しみつつも、待兼山駅のある街の思い出を共有しようと、街で経験した不思議な話を語り合う会が発足した。 初めは語り合うような話が出てくるのか、と心配したけれど出るわ出るわ。しかもじんわり泣ける。 「こういう偶然は、きっといつでも、いろんなところで、いろんな人に、普通に起こっているんだ、と思うから。ただ、みんな、気づかないだけ」 もしかして本当にそうなのかも、と思わせてくれる作品だった。 それにしても最後のオチにはびっくり。初めはなかなか理解できなかった。
34投稿日: 2025.03.17
powered by ブクログ閉店する喫茶店で毎月不思議な話をひとつずつしていく。昭和レトロ漂う内容でした。最後はそういうオチなのねーと思ったけど。ファンタジーでした。
5投稿日: 2025.03.16
powered by ブクログいいなぁ、こんな喫茶店と本屋さん。街並みを見て懐かしく思う出すことある。不思議な話を交えて他人に聞いてもらったら、思いを共有できそうや。
1投稿日: 2025.03.14
powered by ブクログ閉店が決まったお店で開かれる奇談会で、街の不思議な話が語られる。ファンタジーチックなものもあるが、しみじみと心に残る話だった。
8投稿日: 2025.03.09
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
喫茶マチカネで月に一度開かれる待兼山奇談倶楽部で話されたお話を集めた本です。奇談倶楽部という名前の通り、少し不思議な体験をしたという話が多かったです。全7話あり、自分は「銭湯のピアニスト」が好きでした。最後の話にはパラレルワールドの話が出てきて、最初の話と繋がっていくところが面白かったです。
2投稿日: 2025.03.07
powered by ブクログ阪急宝塚線石橋駅の話で、宝塚線の駅名や馴染みのある名前がたくさん出てきて、入り込みやすかった。 短編に分かれているが、全て繋がっていて、毎回ほろっとくる物語ばかり。最後は不思議な感覚の内容だったけれど、素敵な本でした!
3投稿日: 2025.03.06
powered by ブクログ実際に知っている場所が登場するお話ばかりで、とても親近感を持って読み進められる。どれもほっこりする良いお話。ラジオドラマとか朗読会にも向いていると感じる。
3投稿日: 2025.03.04
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
最後がこっちの世界とあっちの世界という2つの世界線の話になりファンタジーだった。そこまではそこで生きていた人たちの巡り合い的なお話。 私はファンタジーが苦手ななので、最後が、んー…
4投稿日: 2025.02.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
65年続いた書店らんぷ堂と喫茶マチカネが閉店するまで、月イチで街や店の思い出を語る会が開催されることに。昭和の空気を感じつつちょっと不思議な体験が語られ、何ともいえない切なさを感じた。戦争の不条理さやこうでなければいけないに振り回されつつ自分で人生を切り開いた体験など、古きよき時代だけでなく生きづらい面も描かれていた。 思ったよりファンタジー要素が強かったのが意外だった。
2投稿日: 2025.02.13
powered by ブクログもうすぐ閉店することが決まった喫茶店が主催している待兼山奇譚俱楽部でいろんな人が最後に思い出を語っていく話なんですが、それまで知らなかったここの主でもあった父親の思い出話だったり、モノクロの景色がどんどん色づいていくと同時に一緒に参加している気分になった。ジェイクとあんかけうどんがなんだかすごく印象に残っている。最後はパラレル風味。
11投稿日: 2025.02.07
powered by ブクログ不思議な巡り合わせの短編集…と思いきや、最後の展開はSF?いや、なになに面白いぞ…!と大興奮で読み終わりました。いやー、楽しかった! 時代の変遷には抗えないけれど、想いを持って生きてきた一人一人の人生の中に歴史は刻まれている。巡り巡って、自分もどこかのタイミングで落ちる時が来るかしら。
2投稿日: 2025.01.19
powered by ブクログふんわりとした昭和の雰囲気ただようお話。 自分としてはそのまま終わっても良かったと感じた。 最後に時空だのパラレルだのの部分は無くても…。 きっと地元の方は楽しく読めたのではないでしょうか。
2投稿日: 2025.01.18
powered by ブクログ阪急電鉄「待兼山駅」近くにある1階はランプ堂とゆう本屋の2階で営業している喫茶店マチカネ。 今年読んだ中で1番の感動作でした。と言ってもまだ4冊目なんですけど。 偶然にも1月11日から読み始めたのですが毎月11日にこの界隈に所縁のある不思議な話を毎回素敵なゲストが語ってくれるのですがハートを鷲掴みにされました。 近所にあった銭湯の話や食堂に、挙句の果てにワニの話も出てきて驚きました。 最初に語ったカレー屋の叔父さん無茶ビートルズを熱く語ってて鳥肌ものです。日時まで鮮明に覚えているとかどんな記憶力してるのかってのけぞりそうです。銭湯に住み込みでバイトして夜中に脱衣所でピアノを弾く話しもクリティカルヒットでビリージョエルのイノセントマンは最高のアルバムで無茶聴いてだけどピアノマンは入ってなかったですねw ハッピーエンドの『風をあつめて』もCD持ってます。 ノスタルジー一杯の昭和史を語ってくれる人たちに目頭が熱くなりました。 調べてみると実在してるし、待兼山駅はなかったようで石橋駅なんですが、最後の語りでパラレルワールドを行き来する結びで異次元感覚になっちゃって残念な気がするのですがドヤ顔でまとめたつもりなんでしょうね。
98投稿日: 2025.01.15
powered by ブクログ初読みの作家さん。 タイトルから勝手にほっこりする話かと思っていたら、最後は思わぬ展開に。 なかなか面白かった。
3投稿日: 2025.01.02
powered by ブクログよく知ってる石橋駅のことが沢山出てきて楽しく読めた。物語も面白かった。だけど、これが知らない町の話だったら、それほど楽しめなかったんだろうな…。
1投稿日: 2024.12.31
powered by ブクログ読みはじめた時、「待兼駅」を検索して探したがなかったので、これは「石橋駅」を「待兼駅」として綴っているんだと分かり、グーグルビューで喫茶店の位置を確認して、居酒屋の勝男に今はなっているんだと思ったりしていた。章によってはわざとらしい作り物の感じもしないでもなかったが、最後の2章でやられた。なるほど、最後にそうもってくるかと。でもここは好き嫌いの分かれ目かなと思った。ちょっとやりすぎちゃうんと(笑)。でも、作家が伝えたいことはしっかりと伝わったと思う。
1投稿日: 2024.12.30
powered by ブクログ第10回ビブリオバトル全国大会inいこま予選会で紹介された本です。ハイブリッド開催。 2024.12.28
0投稿日: 2024.12.28
powered by ブクログ第一感想・そうきたか! ちょっと不思議だけども人情味ある話の重なり。 で終わるかと思いきや、私の好きな「あちら」と「こちら」出現! 沖口さん、ただでは終わらないと思ってたけど、予想以上の立ち回りでした。 ヘンジ恐怖。
31投稿日: 2024.12.27
powered by ブクログみんなの不思議な思い出をそれぞれが話して終わりかと思っていたら、最後の最後に、こんな事が!!って。そしてそこがここで繋がってる?って。それぞれの思い出話も心もしみじみ染みたし、初めて増山さんの本を読みましたが、良かったです。違う作品も読みます!
3投稿日: 2024.12.27
powered by ブクログ私は「風をあつめて」が好きです。「自分ができることで、少しは人に喜ばれるようなことを、それぞれが突き詰めていくしかない。そうしたら、その先の未来が、今より悪うなるはずがない」 それぞれの場所で、自分にできることがあるはずだと考えることは希望に繋がるなと思いました。その思いの先に、少しの奇跡があったらステキですよね。
4投稿日: 2024.12.08
powered by ブクログ待兼山という駅前を舞台に、不思議な話を集めた小説。 面白かったのでぜひ購入したい。 どれも不思議さや面白さに差はあれど、どれも似たファンタジーだったが、最後の話だけ毛色が違った。 特に不思議なのに、より身近に思えるのが不思議なファンタジーが最後の話。 他の話は不思議だが、フィクションらしいファンタジーだった。 最終話の「青い橋」はもちろん面白かったが、それ以外だと第二話の「ロッキー・ラクーン」が好きだった。 伏線も綺麗に回収されていて収まりの良い話だった。
4投稿日: 2024.11.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「喫茶マチカネ」の名前を残すため、月に1回待兼山にまつわる不思議な話を聞く会が催されることに。マチカネや商店街に縁のある6人が語る話は不思議で温かい内容でした。 最終話の「青い橋」はテイストが変わって、別次元の世界が出てくるなどSFっぽくなったのがちょっと引っ掛かりました。
5投稿日: 2024.11.16
powered by ブクログ軽く読める本だと思って読み始めたはずが、 全然進まず、やっとで読み終えた。 軽いようでいて、ひとつひとつをじっくりしっとり楽しむような内容で、 最後の沖口さんの奇譚からは目が離せない。 あちらとこちらの世界を楽しみました。 なかなかずっしりな本でした。
30投稿日: 2024.11.08
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
個人的になじみがある阪急宝塚線。 「待兼山駅」?読み進めていってもやっぱり 石橋駅だよなぁ~駅名も変わったことも 一緒だしなんて思ってたら 最後の話の「青い橋」で全てがすっきり! 作品内の喫茶店で月に一度開かれる 「待兼山奇談倶楽部」の話はせつない話や ミステリチックな話、ちょっといい話等々、 実際の内容なんかも絶妙にまぜられていて 多少知っていることもありなんか不思議な 感覚で読んでたら最後にSF話でびっくり。 作品を通して大阪下町の温かい雰囲気が 伝わってくる素敵な作品でした。
4投稿日: 2024.11.07
powered by ブクログ初読みの作家さんだったのですが、まず思ったのは、なぜ増山さんは同志社なのに石橋界隈に詳しいのか、という素朴な疑問。で、増山さんのプロファイルを調べたのですが、Wikiになく。。。あるサイトに「嘉門達夫と同級生」という情報があったので嘉門達夫のWikiをみると春日丘高校出身とある。そうか、茨木の人なのか。。北摂なのね。納得。 自分は初めて親元を離れた18歳からの1年間をあのあたりで過ごしたので、このお話にはヤラレました。なんということでしょう! 懐かしい地名や施設がたくさん出てきました。なかでも参ったのは「大毎地下劇場」。そう来るか~! 千里線沿線に居を移した後、梅田でのバイトの帰りに毎週のように通った名画座です。今はもうありません。 「はっぴいえんど」がURCレコードからの発売だった、というのは新しい発見。アングラ・レコード・クラブ。 マニカネワニも観ればよかった。今でも見れるのだろうか? 阪急宝塚線石橋阪大前駅、強烈に行ってみたくなりました。自分探し!
2投稿日: 2024.10.30
powered by ブクログ個人的に超地元のお話で、読みながら「ここのことね〜」と照らし合わせながら読めるのが面白かった。地元のいつまでもノスタルジーな雰囲気がよく描かれていてよかった!
2投稿日: 2024.10.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
後半ぐぐっとファンタジー要素満載になって読者置いてきぼり状態に陥ったが、読み返すとなんだ初めから既にファンタジーがスタートしてるではないか。 手紙を受け取った妙子さんは「別の世界」の妙子さんだったのね。 そう思ったとたん、全ての話がファンタジーとして受け止められた。 ロッキーと銭湯ピアニストの話が個人的に好きだった。 別の世界では奇談倶楽部も沖口さんの存在もなかったことにされていたのが少し切なかったな…
27投稿日: 2024.10.26
powered by ブクログ阪急?沿線とか大阪大学とか 馴染もあるんだけど、 なんだかレトロ感が強くて 途中で読むのを止めました。 もう少しお兄さんお姉さんの読み物なのかな
3投稿日: 2024.10.05
powered by ブクログ関西にゆかりのある人ならば駅の名前に大体の土地を想像しながら読み進められる。 大人の短編集といったところか。 これ以上話すとネタバレになりそうなのでちょっと優しい気持ちになりたい人、ホッコリしたい人、読んでみてください。
4投稿日: 2024.09.23
powered by ブクログ初読みの作家さんです。喫茶店が舞台のお話というだけで、テンション上がってしまう私なのですが、第一話の『待兼山ヘンジ』の伝説がロマンティック。そして舞台となる喫茶店「喫茶マチカネ」とその下にある「らんぷ堂書店」の雰囲気がとっても素敵。商店街もノスタルジックでそれだけでかなり好みの小説。 更にこの喫茶店で毎月11日の夜に開催される「待兼山奇談倶楽部」の不思議なお話。語り手さんたちが話すお話はどれも良かった。私もその場にいて一緒に聞いている感覚でしみじみと聞き入ってしまいました。語り手さんのお話の中には懐かしい曲が出て来てそれも嬉しかった。特に『銭湯のピアニスト』でストリッパーさんがリクエストしたビリー・ジョエルの「ピアノマン」は大好きな曲なので延々頭の中で流れていました。 待兼山奇談倶楽部の発足を発案した沖山さんが最後の語り手でしたが、このお話は予想外の展開。まさかのパラレルワールド。こういう締めくくりになるとは…。
12投稿日: 2024.09.23
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
宛名だけで届いた一冊の本.待兼山奇談倶楽部という謎. 本の中には待兼駅近くの喫茶店と本屋に集う人たち6人による物語が書かれている.どれも少し不思議な味わいの,奇跡と言ってもいいような出来事.そして最後の青い橋は化石発掘の二人の少年の掛け違ってしまった人生の答えも含んでいて,そうだったのかと悲しくなったりもした. 心温まる素敵なお話です.
4投稿日: 2024.09.10
powered by ブクログ増田実の今夜、喫茶マチカネでを読みました、 物語は、差出人の名前しか書いてない本が届いたところから始まります。 最後にその原因が分かるのですが。 昭和の香りが残る待兼の街。 一階がらんぷ堂、二階が喫茶マチカネ。 駅名が変わることを節目として店を畳むことに。 それまで、月1回閉店後喫茶マチカネで奇妙な体験話をすることに。 最後だけ一寸SFみたいで冒頭に繋がっていきます。 映画かドラマになって欲しいですね
14投稿日: 2024.09.05
powered by ブクログマチカネワニ化石発掘や吹田事件など史実を膨らませた話は、ロマンを感じながら読んだ。パラレルワールドも、もしかしたら本当にあるかも。。と思えてしまった
70投稿日: 2024.09.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
今夜、喫茶マチカネで 著者:増山実 発行:2024年7月10日 集英社 初出:「小説すばる」2023年7月号~2024年1月号(『待兼山奇談倶楽部』を改題、加筆・修正) 大阪府豊中市と箕面市にまたがる待兼山。そこには大阪大学豊中キャンパスがある。最寄り駅はすぐ近くだがこちらは池田市。つまり3市の境に広がるエリア。大阪市の梅田から30分ほどの郊外であり、距離的にも環境的にも理想的な高級住宅街。その最寄り駅というのは阪急「石橋阪大前駅」。5年前まで「石橋駅」だった。以前、二つ梅田寄りの豊中駅に住んでいた僕には、言うまでもなく後者の駅名になじみがある。大学や名所などを駅名に入れ込むトレンドは関西でも強くなってきて、同じ宝塚線では中山駅→中山観音駅、服部駅→服部天神駅になった。庄内駅→庄内音大前駅にという運動もあるようだ。 石橋阪大前駅からは、同じ阪急の箕面線が出ている。つまり、箕面線の始発駅でもあり、線路はY字形に広がっている。この駅の東口側にあるのが、喫茶マチカネで、西口側にあるのが「ほんまのパン」である。どちらも駅前というわけではないが、経営者2人は幼馴染みでもある。駅名は「待兼山駅」。石橋阪大前駅がモデルになっていることは、すぐ分かる。なお、阪急電鉄の名も出てこず、単に鉄道会社とする。そんな街、とりわけ喫茶マチカネが舞台となっている小説が、この「今夜、喫茶マチカネで」である。全7話の短編小説で、全部がつながる、いわゆる連作短編形式の作品。 今澤敦己:今ちゃん、喫茶マチカネ(駅東口)者、親から継ぐ 本間高仁:仁ちゃん、「ほんまのパン」(駅西口)経営者、親から継ぐ、敦己の幼馴染み 繭子:マチカネアルバイト、阪大生 沖口久志:電車の運転士、3年前に定年退職、10年前から喫茶マチカネの常連客だが普段はあまり喋らない 今澤幸一:マチカネ1階で「らんぷ堂書店」経営、敦己の兄、存在だけで登場はしてこない 夫を亡くし、四十九日法要をした翌日、沖口妙子はポストの中に小包を見つける。匿名だったが、沖口妙子様という文字は夫の久志が書いたものだとすぐ分かった。死んだ夫から、なぜ小包が?開けると、中からは1冊の本が。「待兼山奇談倶楽部」。なんだ、これは? 本がようやくできました、という挨拶文が入っていたが、「待兼山奇談倶楽部 代表 今澤敦己(あつみ)」と書かれていた。 * 喫茶マチカネでは、マンハッタン・ヘンジならぬ待兼山ヘンジの話題が、仁ちゃんと今ちゃんの間でかわされている。イギリスのストーンヘンジのように、年に2回、高層ビルと高層ビルの間に夕陽がすっぽりと入るストリートがNYにあり、それをマンハッタン・ヘンジというが、待兼山の西口でもそれがあり、マクドナルド前あたりで雑居ビルの間に夕陽が沈む時がある、と。バイトの繭子は知っていて、その日に路上でプロポーズすると恋が成就するという都市伝説があるとも。今日、1月11日はその日にあたる。 そこに、10年ほど前から通う客の沖口久志がいて、声をかけてきた。沖口は通い始めて1年ほどしたとき、ジョン・レノンの命日に「イマジン」を流していると、初めて声をかけてきて、今ちゃんと仁ちゃんを「イマジンコンビ」と命名した。その沖口が、今回は「その夕日のことを知っている」と話し始めた。電車の運転士をしていたころ、今頃の季節、16時30分に梅田駅を出ると・・・待兼山駅を出て箕面川を渡る時に西側に夕日が見える。青い橋がかかっている・・・という具合だった。さらに、彼はこのあたりの歴史について詳しく、その知識も少し披露した。 今澤敦己が聞いているのは、父と母がここで店を始めたのは昭和29年4月1日。病弱で兵役を逃れ、日本海に面した海辺の村から出て来て、大阪市内で働いた後、待兼山駅前で本屋を始めた。らんぷ堂だった。空いている2階で喫茶店を母の思いつきで始めた。父親が死んですぐ、書店は兄の幸一が、喫茶店は敦己が継いだ。それが、ひと味違う書店と、大手チェーン全盛のなかで残る喫茶店だった。 ある会話がきっかけで、敦己が隠していたことがバレかけたので、公にすることになった。2019年9月いっぱいで閉店することになったという。待兼山駅の名前が変わり、「大阪大学前駅」になるとの内々の情報を聞いたため、喫茶マチカネもこれが潮だと考えた。元々、兄は書店経営から手を引くタイミングを考えていたので、こうなった。 あと8ヶ月と少し。沖口から提案があった。待兼山駅という名前があった証を本に残そう。月に1回、営業時間後に喫茶マチカネを愛した人が集まり、思い出を話す。それを本にする。そして、単に思い出を話すのではなく、不思議な話ばかりを集める。名前は『待兼山奇談倶楽部』。 第1回は4月11日午後9時開催となった。 書店と喫茶店に貼り紙をした。参加費無料。 以上が、第一話「待兼山ヘンジ」の内容。 *************** (以下は単なる読書メモ) 第二話「ロッキー・ラクーン」 喫茶マチカネは、かつて競馬ファンが集まる店だった頃があった。マチカネタンホイザなど重賞を制したマチカネがつく競走馬の馬主が、阪大前身の浪花高校を卒業した細川益男であり、彼は細川鉄工所(現・ホソカワミクロン)の経営者で、待兼山からとってその名をつけていた。そんなつながりでこの店に競馬ファンが増えた。 2019年4月11日、第一回待兼山奇談倶楽部は、駅の西口側で営業している「カレーの店 ロッキー」の経営者、時任さんに話を聞くことになった。 宮崎生まれ、高卒後、1963年に地元の銀行に就職。母親は女手一つ、パーマ屋をしながら育ててくれた。お堅い銀行勤めの中、1964年2月にラジオから流れてきたビートルズの「プリーズ・プリーズ・ミー」に衝撃を受けた。「抱きしめたい」にも魅了され、他の曲も含めてなんと5曲がトップ10入り。5月になり、彼は20歳になった。 1966年4月、抽選に当たって日本公演のチケットを手にした。公演は土曜日。金曜日、土曜日、月曜日を休まないといけない。他の理由で休みを取って宮崎駅へ。しかし、もしバレたらクビになる、苦労をかけた母親に申し訳ない、そう思って行かなかった。彼は身長が182センチあって田舎では目立つ。でも、テレビで見て、やっぱり行けば良かったと後悔。 以後、ビートルズのレコードは全部買って、すり切れるほど聞いた。ただ、田舎でビートルズなどにこっていることがバレたら大変だったけれど。 30歳になり、これでいいのかと思って仕事をやめ、大阪へ。新地の入口にあるビール会社経営のレストランでビアボーイをした。ビートルズは解散していた。レストラン近くの二番館である大毎地下劇場に、レット・イット・ビーとイエロー・サブマリンの2本立てを観に行った。レストランのバイトの女の子を誘った。帰りに手を握る。彼女がのちに妻となる。カレーの味を知ったのもその年で、レストランのコックである中田さんが作ってくれた賄い食で食べた。絶品だった。子供の頃には固形のルーなど宮崎にはなかったため、食べたことがなかった。 結婚し、生まれた子供は脳に障害があった。あかんことをすると、目を見てきっちりと怒ったが、暫くはうつむいてじっと黙っている娘。その間はなにも声を掛けない。暫くすると、娘は顔を上げてわかったという顔をした。 娘が、養護学校を出て作業所で働くことになった時、相談してレストランをやめてパン屋を始めた。パン作りは障害のある人が働きやすいため、川西市に障害者の就労を支援するベーカリーを作り、軽自動車で移動販売を始めた。それなりに成功し、20年たった時、あのカレーを作ろうと思い立った。2010年、65歳になっていた。 そこで見つけたのが待兼山。「ほんまのパン」があったので元々、よく知っていた街だった。商店街を歩き、喫茶マチカネに入った時、店名をどうしようかと思っていると、たまたま見たスポーツ紙に「ロッキーラクーン」の文字が見えた。競走馬だった。ビートルズにも「ロッキー・ラクーン」という曲がホワイト・アルバムにある。そこで、ロッキーにしようと思った。 2010年7月末、店はオープン。BGMは好きなビートルズのみ。思い切り聞ける。客は予想の5分ぐらいだった。そこからスタート。 ロッキーラクーンが気になり、梅田のWINSで馬券を買う。10頭中10番人気だったが、単勝で買った。7着だった。以後、1年間、11連敗で終わった。一度、阪神競馬場にも行って、パドックで声もかけたがダメだった。引退した、と思っていた。 2012年5月9日、68歳になった。あと2ヶ月で店は2周年。お客さんもぼちぼちついてきて、なんとか潰さずにやっていけるように。その日(誕生日)に一人で店をしていると、若いお客さんが黙って一人でカレーを食べていた。ロッキー・ラクーンが流れてきたら、涙を流してしまった。その客に事情を聞かれた。曲の説明をすると、話が進み、彼が北海道の安平(あびら)という千歳と苫小牧の間ぐらいにある街から来ていることがわかった。阪大生かと思ったけど、1月ほど前に失業し、ふらふらとしているところだという。さらに話が進むと、彼も誕生日が同じ5月9日だという。彼は、馬のロッキーラクーンは応援してくれたことを、きっと感謝していると思いますよ、と行って去った。 インターネットでロッキーラクーンのことを調べると、なんと引退はしておらず、熊本県の地方競馬でやっていた。そして、1着を含め7戦連続で連複に絡んでいることがわかった。パソコンの前で思わず叫んだ。そして、プロフィールを見ると、誕生日が2008年5月9日だった。 生涯のある娘さんの反応(ゆっくり)、カレーショップの5分の出だし、ロッキーラクーンの脚質が最後に他の馬を追い抜く「追い込み馬」であること、中央では勝てなかったが地方で活躍していること・・・先行する必要などない。 第三話「銭湯のピアニスト」 繭子の知っていた奇談。待兼山水泳同好会は、待兼山キャンパスにある中山池で泳ぐ会。水面は藻で覆われ、水辺は雑木が茂っている。ブラックバスなど外来魚が多い。そこで泳ぐ。その後は、待兼山温泉(七年前に廃業)で一風呂。ある日、部長が泳いで風呂に行ったら、ヤクザの客が一人いた。部長がサウナで座っていると、「兄ちゃん、変わった紋々入れてるなあ」。覚えがないので鏡で見ると、背中一面にブラックバスみたいな緑色の鱗がびっしりと生えていた。部長は行方不明になった。しばらくしたら、大学の職員が深夜に池を泳ぐ人影を見つけたため、危ないぞと注意すると一瞬職員を振り向いて、魚みたいな大きな眼で睨んだ後、水中に頭を沈めて浮かんで来なくなった。奇談は、そんな話だった。 5月11日は、繭子が入っているビッグバンドのOGで、15年ほど前に卒業した先輩の城崎朋子に、待兼山温泉でバイトをしていた時にあった話をしてもらうことになった。 城崎朋子の両親は東京で会社経営をしていたが、朋子が高校生の時に失敗して夜逃げ同然で福井へ。阪大へ入った彼女には仕送りも一切なし。生活費などを稼ぐため、ピアノ弾ける人を募集していた阪大ビッグバンドサークル「ゲッティングベター」へ。サークルが代々出してきた新地のバーのピアニストを途切れささないため、ビアノが引ける人を募集していたのだった。バーの経営者も阪大出身、それまでしていたのもサークルメンバーの女子。しかし、阪大留学イタリア人と結婚して中退してイタリアへ行ってしまったので、穴埋めのバイトが急遽、必要に。「高給アルバイト斡旋」の文字が書かれた看板に惹かれた朋子は、高校のときまではピアノをしていた。 有名人とも知り合え、いいバイトだったが、3年生のときに元のバイトが戻ってきた。オーナーのお気に入りだったので、クビになった。困っていたところ、待兼山温泉のアルバイト募集を見る。住み込みOK、風呂無料、賄いあり。当時あったローンズマチカネ(中井社長)のお世話にもなりつつ、銭湯で仕事。住み込み部屋は、結婚して出て行った娘さんの部屋。滑り台もある楽しい銭湯だったし、仕事も性に合った。すると、おかみさんの礼子が、女湯の更衣室でピアノを弾かないかと。娘が使っていたアップライトピアノがあるから、と。日付が変わる深夜12時~12時半まで限定。 最初は不評だった。テレビを消して演奏すると、テレビをつけてくれ、吉本のタレントのトークを見たい、と。リクエストならば仕方ないと礼子はテレビを付ける。彼女が帰っていくと、別の女性、ユカさんがピアノをリクエスト。ビリージョエルのピアノマン。嬉しくなって、歌いながら弾いてしまった朋子。ユカは、10日間だけ、夜中のみ、ここで仕事させて欲しい、掃除をする、給料は不要と言ってきた。彼女はストリッパーで、今、大阪で公演をしていた。しかし、直前に腰を痛めて満足に踊れなくなり、噂をききつけて近くの按摩師の松波さんにかかっている。これから10日間、公演が終わったら松波さんのところに通うが、終わると電車がないので宿舎に戻れない、だからここで仕事をさせて欲しい、掃除が終わったら大鏡を使わせて欲しい、それで踊りをチェックしたい、その後、昼前まで眠るから、と。 そのようにした。午前中に銭湯を出て行き、昼から夜までステージにあがり、終わると待兼山の按摩へ、そして、待兼山温泉で仕事、踊りチェック、就寝。そうこうしていると、ユカは朋子に、ストリップを見に来て欲しいと言ってきた。驚く朋子、女がいくところ?一人で行くのはちょっと・・・と尻込みしていると、一人ではなく松波さんと一緒に来て欲しいとのこと。松波さんは50代、全盲。しかし、ユカの体のことをよく理解し、見えるように想像できるという。そして、踊りを見てみたいという。そこで、朋子にアテンドしてもらって、踊りで今なにをしているのか横で解説しながら見せてやって欲しいとのことだった。 ストリップ劇場へ行くと、ユカが登場、曲はピアノマンだった。ユカはピアノマンの歌詞が好きだという。夢を追い掛けた頃を懐かしむ人、いま追い掛けている人、夢と現実の狭間でもがく人、そんな人たちが集うバーの歌で、彼らの心を癒やして元気づけるのがピアノマン。あのバーはストリップ劇場で、集う人はストリップを観に来るお客さん、ピアノマンが踊り子だと感じる、という。松波さんは満足してくれた。 卒業後、朋子は東京に本社がある楽器の販売会社に。忙しくて、ユカとも松波とも会えず。2012年4月に退職し、フリーのピアニストに。その年の夏の終わり、8月31日に待兼山温泉で初めてピアノの弾き語りをした日からちょうど10年、待兼山温泉に。そして、愕然。建物はなくなり、空き地に。マンション予定地となっている。 後ろから声をかける人。ユカだった。彼女も、偶然、来ていた。再会だった。松波さんはまだ店をしていた。松波さんによると、三ヶ月前、5月21日が温泉最終営業日だった。深夜は混むだろうと夜の10時に行った松波は、はっきりと聞こえてきた。女湯の脱衣所から朋子の弾くピアノマンの音色。そして、はっきり見えた、その音色に合わせてユカが踊る姿が。 朋子は驚いた。その日は、フリーになって初めての仕事が入った日、午後10時はリクエストされてピアノマンを弾いていた時。もっと驚いたユカ。いったん辞めたストリッパーに復帰したその日、自分の一番好きなピアノマンを1曲目にして踊った。その時間だった。それを、松波は「視て」いた。 第四話「ジェイクとあんかけうどん」 6月11日、第3回にして初めて自分から希望して話す人が現れた。うどん屋「能登屋食堂」の村田ふみ子ばあちゃんだった。 能登屋食堂は、ふみ子の父が昭和12年に始めた。父親は能登出身で。大正14年に大阪へ。豆腐屋で奉公。豆腐屋は大阪では古くから能登の人間が生業に。いまも半分近くは能登出身者では?冷たい、朝早い、きつい。 5年奉公し、23歳で(豊中市の)岡町に豆腐屋開店。次男も生まれ、ふみ子も。ふみ子3歳、昭和10年ごろ、隣駅である曽根駅前に北大路魯山人も経営に関係した高給料亭の星ヶ丘茶寮が出来た。従兄弟が料理長をしていて、豆腐屋をやめて来ないかと誘った。28歳からの修行だが、店も持たせてやると言われた。豆腐屋を廃業して入ったが、なじめなかった。全国から一流料亭の跡取りが修行に来ていて、彼らと話している時より、大阪中央卸売市場の人たちと話しているほうが解放された気になる。生きるか死ぬかの貧しい人がいるのに、料亭で美食に舌鼓を打つ人がいる。曾根崎警察署の食堂の料理長に誘われたが、断って茶寮を辞めた。そして、能登屋食堂を開店。 長男12歳、次男7歳、ふみ子5歳。長男は中学の時から手伝をしていたが勉強ができ、三高へ。19歳で徴兵された。昭和20年。母親は国防婦人会で帰ってきた兵士の世話をしていた。昭和20年秋、戦死公報と石ころがはいったものを役場で渡される。4月24日に死んだという。父親は破り捨てる。こんなもん嘘だ、と。フィリピンとクラークだけふみ子は覚えている。 三高の同級生によると、帰還が決まった時に長男は川で水浴びをしていた、お尻に特徴あるあざがあったから間違いない、生きている、まだ帰ってきていないのか?という。母親は帰還兵から病気をうつされたのか、2年で病死。その後、次男が店の改装を提案するも、父親は頑として受け付けない。長男が帰ってきたら分からなくなるから、そのままにしておく。 ふみ子は宝塚で食堂をしていた家の三男と結婚。次男の兄夫婦は能登食堂から離れることになったので、父親とふみ子が中心に店を回し、父親が死んでからは夫婦で回している。 公設市場の雑貨店でフィリピン人の母と息子が商売をしていた。ある日、息子が腹をすかせて食堂に来たので、あんかけうどんを生姜をきかせて食べさせたら喜んだ。彼はボクシングを習っていて、ヘトヘトに疲れるといつも店であんかけうどんを食べた。父親はお金はいらんから、なんでも食え、もっと栄養のあるものを。金は世界チャンピオンになったらもらうから、と。そして、注文をしていない唐揚げなども食べさせた。少年の名はジェイク。 ジェイクは2年ほどしてプロテストに合格。デビュー戦を東住吉区の区民ホールで見たが、勝った。東京オリンピックの頃だった。大阪万博の頃、母子はフィリピンに帰った。そして、大阪で「マチカネレストラン」でとてもお世話になって、成功を収めたという新聞記事を送ってくれた。さらに、日本に来てジェイクが試合をするという手紙も入っていた。父親とふみ子と子供の正章の3人は、東京まで見に行った。ジェイクは30歳、太くなって腹が少し出ていた。日本人相手に判定負けだった。試合後に会いに行くと、これが引退試合だったとのこと。プロモーターに無理に頼んで日本で試合をさせてもらったのだった。 何年かして、その息子のポールが訪ねてきた。ジェイクが42歳の時に死んだという。父親がポールを待兼山温泉に連れていく。すると、お尻に長男と同じあざがあった。長男はやっぱり生きていた!帰ってきた!! 第五話「恋するマチカネワニ」 7月11日は、喫茶マチカネの向かいの雑居ビル3階にある、バー「サード」のマスターの大さんが、初恋話をすることに。 大さんは、待兼山駅のひとつ南、蛍池駅が実家。中学になって、みんながサッカー部などに入るのに運動が苦手で地味な中学生、しかも「カギっ子」だった。近所に同じ「カギっ子」で3歳上の啓太郎兄ちゃんがいて、遊んでくれた。中1のとき、化石採集に誘ってくれた。いろんな工事現場に勝手に入って、化石を探す。両親は眉を顰めたが、大さんは夢中になれた。中2になる前の春休み、和歌山までアンモナイトの化石を探しにいった。見つからなかったので和歌山にある啓太郎の親戚に一泊することに。家に電話したら両親はカンカンだったが1泊した。結局、見つからなかった。 その頃、待兼山キャンパスで大がかりな造成工事があった。中2の5月3日、日曜日だったので化石を見つけに行こうと啓太郎に誘われたが、なぜか父親が日生球場に近鉄の試合に連れていってくれることになっていて、行かなければいけないので断った。すると何日か後の新聞に衝撃。そこから古代像の可能性のある化石を、地元の2少年が見つけたと報道されている。浪人生だとのこと。もし啓太郎と行っていれば、自分たちが発見者になっていたのに、と悔しい思い。 後にそれは、マチカネワニと命名された新種のワニだった。豊中市のキャラにもなった。そのワニの胃袋からは胃石が発見された。消化を助けるためにわざと飲み込む石だが、その石が5キロほど上流にある石だった。なぜだ?啓太郎がこう予想した。上流で石を飲み込んだワニは、大雨かなにかで流された。愛するワニとは離ればなれに。しかし、遡って戻るのはしんどい。そこで、このまま待っていれば、愛するワニがいつかは流されてここに来てくれると思った。だけど、歳月がたっても流れてこず、泥に埋もれながらやがて化石になった。 *マチカネワニ=トヨタマヒメイア・マチカネンシス、45万年前のワニ 相手のワニを探しにいこうと、5キロほど北西の五月山あたりを2人は探した。年が明け、啓太郎が高3になっても。なにも見つからない。やがて啓太郎は早稲田に入り、大さんは地元の公立高校に。その後、会っていない。啓太郎は早稲田で学生運動にのめり込んだとも。 大さんは大阪の大学に入ったが、中退してバーで働いていた。27歳、1977年に、御世話になっていた店のオーナーが待兼山に店を出すことになった。それで手伝うように言われた。久し振りに待兼山に戻った。するとマチカネワニ特別展示公開中、教養部地学地下階にて、という看板を発見。閉まるぎりぎりの時間に入った。マチカネワニを見たら、涙がボロボロ流れた。研究している先生が、どうしたのかと聞いたので事情を説明した。そして大さんは質問した。これはオスかメスか?先生はオスだと思われる、と答えた。 理由は、体の傷で、メスを争ってオス同士が戦った跡である、オスとメス、メスとメスなら戦う必要がないから、これはオスである、と。 大さんは、その後、その店を任されることになったが、断って今の店を自分でオープンした。そして、今日に至った。 最後に、こんな話を明かした。和歌山に行ったとき、啓太郎の親戚で寝ていると背中に何かを感じた。目を覚ますと啓太郎が布団の中に入ってきていた。驚いた。見つかってしまった啓太郎も驚いていた。朝になっても、親戚の手前、なにもそれについては触れない。 啓太郎が早稲田へと旅立つ日、見送りに行った。その時、アンモナイトを渡された。和歌山で実は見つけていたのだった。そして、恥ずかしそうにそれをプレゼントしてくれた。なにも言わなかったが、大さんを好きだったのだろう。そして、大さんもまた、啓太郎のことが好きだった。すなわち、初恋話は「大さんの男」の話だった。店の名前「サード」は、映画「第三の男」から取っている。 第六話「風をあつめて」 8月11日は、話をさせてくれと飛び込んで来た女性、山脇恭子が話者に。 半月ほど前、ふらっと待兼山に帰ってきた。愛知県出身で、阪大に(文学部音楽学科)。1981年生まれ。待兼山に住んでいたのは2000~2004年。1階のらんぷ堂書店にしょっちゅう行っていた。 祖父が特高警察だった。ある日、東条英機や岸信介宛に送られた「もう戦争をやめてほしい」といった手紙を見せてくれた。匿名のそれらの差出人を見つけて弾圧するのが、祖父の仕事だった。戦後、証拠隠しで処分するように言われていたが、せめてもの贖罪に隠し持っていた。 恭子はゼミの先生から演歌の始まりは演説だったという話をきき、演説歌、すなわちラップのようなものだと知り、それが入り口になって民衆の抵抗の歌を研究するようになった。在学中の2003年、アメリカのイラク空爆を知り、反対のプラカードを作った上で、ギターを抱えて待兼山駅で抵抗歌を歌った。最後は岡林信康の「私たちの望むものは」だった。 1人の老人が近寄ってきて、褒めてくれた。飲みに誘われた。自称、タヌキ。51年前に起きた「吹田事件」について話してくれた。1950年に朝鮮戦争が始まった。1952年6月24日夜、阪大グランドに500人ほどが集まり、大合唱と演説を繰り返していた。自称タヌキは森に潜んでいると、2人の男が来て竹を切る。なにをするのだと訪ねると、竹やりをつくり、国鉄の吹田操車場へ行くという。翌日は6月25日、朝鮮戦争が始まってちょうど2年。ナパーム弾やクラスター爆弾を生野区の工場でつくり、そこで在日が働いている。同じ民族を殺すために。吹田はそれらを運ぶ貨物列車の発車拠点。それを阻止するためという。一人は謄写版印刷会社で働く男、もう一人は十代の少年だった。そこに、詰め襟の学生が来て、はやく用意してデモに加われと言う。この動きを統率しているリーダーだった。 デモ隊は山を越えて吹田駅へ。そこから列車に乗り込む。通勤・通学で満員なのに、竹やりを持ったデモ隊が乗り込む。警察が信じられない行動。窓から体を突っ込んで、デモ隊に発砲した。「吹田事件」となった。200人以上が逮捕された。2人も逮捕されたが、無罪放免となった。しかし、一人は印刷会社を辞めざるを得ず、待兼山で書店を開いた。結婚したばかりの妻は文句を言ったが、少したつと2階で喫茶店を始めた。今澤の父と母の話だった。 そして、URCレコードの話が出た。岡林などが所属して歌った会社。その創設者こそ、詰め襟を着ていたリーダーだった。 第七話「青い橋」 最後を締めくくる2019年9月11日は、最初から約束だった沖口久志が話者。 1956年生まれ、3年前に電鉄会社を定年退職。いろんな路線で運転士をし、宝塚線も若い頃から何十年と運転してきたが、待兼山駅で降りたことは一度もなかった。神戸線沿線に住んでいて、ここに訪れるようになったのは10年前から。2009年1月10日ぐらい、16時30分梅田発の電車を運転し、箕面川に沈む夕日を見ていると、違和感が。いつも見える赤い橋がなく、青い橋に見えた。おかしいと思い、宝塚駅で業務日誌などを書いて勤務を終えてから、帰りに初めてここの駅で下車し、歩いて橋に。夜だったが橋は青かった。夢を見ているのだろうか? しかも、駅名が違う。そこは「石橋駅」なのに「待兼山駅」になっている。駅員に聞いても、石橋駅なんてない、知らないという。電鉄会社が出来て、もう百年近くたっているけど・・・帰宅し、妻に話しても、蛍池駅の次は昔から待兼山駅だという。あんまり酒飲むなと注意された。妻を心配させたくなくて、口をつぐんだ。すると、高校生の時に経験した「石橋駅」の記憶が甦った。週刊ベースボールの文通欄で知り合った中学生の女の子で、阪急の山田久志投手のファンとの文通を望んでいた。自分の名前が久志だったこともあり、文通を始めた。会うことになった。その子は赤い橋のある街に住んでいるという。石橋駅の街だった。赤い橋の上で待ち合わせ。しかし、ちょっとオカルト的なことが書かれていたので、行くのをやめた。それ以来、ボツ交に。 翌日は仕事が休みだったので待兼山駅に出かけた。街を歩くととてもいい。大手のショッピングセンターもなく、チェーン店もない。その代わりに個人店。特に「らんぷ堂書店」と「喫茶マチカネ」。以後、この街に通い、自分が間違っていた、ここは前から待兼山駅だと言い聞かせるようにした。すっかり気に入った街に。しかし、退職して2年後の春、つまり去年の春に異変が。健診で異変が見つかり、6月に膵臓癌と判明し、余命半年と言われる。 年が明けて2019年、この店が9月で閉まるとのことを知り、毎月、話を聞こう、そして本にしよう、という考えが浮かんだ。そうすれば、見届けるまで自分も生きて生けるだろうと。 聞いていた人たちは、だったらずっと続けよう、それなら沖口さんもずっと生きられる!との声も飛ぶ。しかし、店は既に売り渡し先が決まり、大手チェーンの居酒屋が入ることに。会が終わると、沖口から2人だけでお話できませんかと敦己は言われる。 9月の終わりごろ、2人で会った。沖口が説明し始めた。「赤い橋の石橋駅」がある世界も存在し、同時に「青い橋の待兼山駅」がある世界も存在する。多元世界である。自分は前者の世界から後者の世界へと滑り落ちてしまった。同時に、こちら側にいたもう一人の自分は、あちら側に滑り落ちてしまった。つまり、入れ替わった。その穴は、10年前の電車から見た待兼山ヘンジである。沖口はそう解釈しているという。この入れ替わりは結構あって、それに気づいていない人が多いのかもしれない、とも。 頼みごとをされた。自分が死んだら、妻に出来上がった本を送ってほしい、おそらく出来上がる頃はもう自分は死んでいるからと。もう一つ、あちらの世界の妻にも送ってほしい、と。でも、どうやって?と敦己が聞くと、あの橋のたもとにある青いポストに妻の宛名だけ書いて入れれば届くのではないかと思うと答えた。 高校生の頃、文通相手の中学生がオカルトめいたことを書いてきたというのは、それだった。山田久志に何度ファンレターを書いても返事がない。住所は球団宛。無視されている。そこで、あの橋のたもとにある青いポストに、山田久志様とだけ書き、返信用封筒を入れてサインをねだる手紙を投函すると、ちゃんと返信されて返ってきた。しかし、サインの背番号が17ではなく、18だった。きっと、別世界にいる山田久志投手から来たんだろう、と。 その記憶を元に、沖口は敦己に本を送ることを頼んだのだった。 年が明けた1月に、沖口が死んだと妻の妙子からSMSが来た。2月に本が出来上がったので、両方の妙子に送ったのだった。 妙子は本を読んで、スマホで本のことを検索した。なにも出てこなかった。梅田へ行った。阪急のターミナル駅にある大型書店で調べても、その本に関するデータそのものがないと言われた。 (つまりこの妙子は「赤い橋の石橋駅」側の妙子ということになる) さらに、石橋阪大前駅に行った。本屋を探すと、ある学生が「らんぷ堂書店ですか?」と聞き、はっきり覚えていないがあった、でももうない、と答えた。その場所には居酒屋があって開店前だった。「カレーの店 ロッキー」と「能登屋食堂」はあったが休みだった。「ほんまのパン」に行った。営業していた。仁ちゃんと思われる人に喫茶マチカネのことを聞いてみると、もうないと悲しそうな顔をされた。待兼山温泉も8年前に廃業した、とも。 待兼山奇談倶楽部のことを聞いてみると、仁ちゃんは知らないと言った。沖口久志も知らない、と。ただし、らんぷ堂食堂で月に1回、なにかをしていたようだったとも。 妙子は橋にも行った。「まち角の図書館」という誰でも無料で借りていける図書館があった。そこで、昔、久志に「チボー家の人々」をサプライズでプレゼントされたことを思い出した。もしかしたら、「待兼山奇談倶楽部」も久志の全くの創作小説で、サプライズで送ってくれたのではないか、などとも思った。 マチカネワニが見られるというので、大学の学術博物館へ行った。マチカネワニが展示されていた。そこにいた60代後半の男性が声をかけてきた。その男に、待兼山奇談倶楽部を知っているかと聞いた。知らないという。そして、青い橋と赤い橋の話をした。すると、もう少し詳しくと言われたので、久志が穴を通って別の世界に滑り込んだ話をした。なんと、その男も話し始めた。早稲田を出て別のところにいたが、何年か前に帰ってきたが、そのきっかけは自分も穴でこちらの世界に来たからだという。待兼山駅の世界で生まれ育ったが、何年か前の待兼山ヘンジの時にこちらに来て、そして、石橋駅の世界に来てしまったという。待兼山駅の世界では、化石探しに夢中だったとのこと。あの啓太郎のことか? こちらでは「石橋ヘンジ」というそうである。元々の「ストーン・ヘンジ」に近い。次の石橋ヘンジを見たら、恋人に会えるかもしれない、とも。
3投稿日: 2024.08.29
powered by ブクログ待兼という街の名前の由来が素敵で、そこから広がっていくストーリーも心惹かれるものばかりだった。 ちょっぴり不思議で優しい物語。本当にあったんじゃないかと思えるような奇譚は、終わりを迎えようとする喫茶マチカネで語るのにピッタリ。 最後の沖口さんの願いも優しさがこもっていて、温かい気持ちになれた。 ちょっと気持ちが沈んでいるときに読んだけど、束の間の現実逃避ができた。
44投稿日: 2024.08.26
powered by ブクログ気が張って落ち着かない気分のときに読みましたが喫茶マチカネで語られる不思議な物語の世界に引き込まれ没入感によって心が自然と安らいでいきました。 睡眠前に読むとぐっすり睡れそうでオススメです。
6投稿日: 2024.08.23
powered by ブクログ7つの連作短編集。 物語は大阪、阪急沿線。 閉店が決まった喫茶店に常連さん達が月一開催の「夜会」にて生涯最高の思い出を語ります。どの作品も心が温まります。
8投稿日: 2024.08.12
powered by ブクログ大阪にある待兼山駅前で昭和29年に両親が始めた1階が「らんぷ堂書店」2階「喫茶マチカネ」が、閉店することになった。 時代の流れと駅名が変わることにより閉店が決まったこの喫茶店で、常連客により待兼山奇談倶楽部が発足されて不思議な話が語られる。 夕日が美しい待兼ヘンジから繋がる流れで、思い出とともに語られる7つの連作短編集。 懐かしくなるような郷愁漂う話に奇談というより大人のファンタジーを感じた。
68投稿日: 2024.08.12
powered by ブクログ関東出身なので、関西弁がうまく頭にはいってこず避けていたが、とっても心温まる話ですてきだった。 喫茶店の常連になりたい。
4投稿日: 2024.08.11
powered by ブクログ本書からは、第10回京都本大賞(2022)を受賞した『ジュリーの世界』と同じ匂いを感じました。歳を重ねるほど、甘過ぎずほどほどのノスタルジーに弱くなり、共感の度合いが増す気がします。 阪急電鉄「待兼山駅」近くにある「喫茶マチカネ」(2階)と「らんぷ堂書店」(1階)。最寄りの駅名から待兼山が消えるのに合わせて、両親から兄弟で継ぎ、65年続けた二つの店を同時に閉店することに‥。 そこに、常連客の一人が、待兼山駅、喫茶マチカネが確かにここにあった証を残そうと、ある提案をします。閉店まで月一回程度、待兼山にまつわる不思議な話を語り聴く会を(喫茶マチカネで)開き、本にまとめてはどうか、というものです。 そう、本書は、「待兼山奇談俱楽部」と名付けられたその会で語られた物語で構成された小説です。 郷愁を誘う昭和の出来事・カルチャーがふんだんに登場します。そして、行ったことも見たこともないのに、昔と変わらない駅前商店街の佇まいを勝手に想像し、懐かしさがこみ上げてきます。「自分にとっての、あの"時代"の、あの"街"の、鮮やかに蘇る風景」は、誰にでもある気がします。本書の描写は、じんわりと心に染み込み、胸が熱くなります。 「奇談」と言っても、怪異や恐い話ではなく、語り手の人生に起きた、ささやかだけど希望の光となるような、リアリティある奇跡でした。 後半に進むほど、ややファンタジーの色が濃くなる印象ですが、増山さんは読み手の過ぎ去った時間にも光を当て、それらの想いの価値を高め、寄り添ってくれるような作品でした。 奇跡や偶然の不思議もさることながら、それは特別なことでなく、ひっそりと日常に潜んでいるのですね。何気ない日々を大切にしたいと思えました。
78投稿日: 2024.08.09
powered by ブクログ初めての作家さんです。 関西のお話だというのを知って 私の地元というのもあり 楽しみにしていました。 私の予想通り、知っている駅や 地名がでてくるたび わくわくしながら読みました。 お話の内容も素敵なお話で待兼山駅近くの本屋らんぷ堂とその2階の喫茶マチカネが中心のお話で、駅 待兼山駅の名前が変わるにあたってどちらも閉店してしまう… みんな閉店を残念に思うが 少しでもこの辺りのいろいろ不思議なお話を残そうと待兼山綺談説倶楽部を発足する というところからはじまる地域の不思議なお話です。 これ以上はネタバレになってしまうので… とにかく なんだか不思議なんだけど温かく、繊細で 私にとっては身近な場所だけに 特別なお話ばかりでした。 他の増山さんの作品も是非読んでみたいです。
34投稿日: 2024.08.04
powered by ブクログこのなんとも言えない、レトロ感を感じる表紙に惹かれ手にしました。 大阪の待兼山駅前で両親がはじめた書店と喫茶店、1階は「らんぷ堂書店」2階は「喫茶マチカネ」書店は兄が、喫茶店を弟がそれぞれ継いでいた。待兼山の地名は、平安時代ここで人目を忍ぶ逢瀬を重ねた男女の伝説から生まれたと言われおり、両店舗とも客足が途絶えることはなかったが時代の流れから、閉店することになった…。閉店まで数ヶ月、月に1回、待兼山に関わる不思議な話を語らう会を「待兼山奇談倶楽部」と名付けて開催し、それを一冊の本にまとめることになった…。 どのお話も偶然というか、運命というのか…重なり合って、それぞれの人生に深みを与えているのが感じとれる、ちょっと心温まる語りでした。特に「らんぷ堂書店」のおじいちゃんは、よかったなぁ〜!「この世界を、少しでも平和でいい世界にするために、自分が良いと思った本を、みんなに届けることや」なんて、とってもカッコいいと思いませんか?? 読んでいるうちに、ファンタジー色が強くなってきたけれど、物語の舞台が待兼山だからこそだと思いました。私、あまりファンタジーは好きではないけれど、この作品は結構好きです。
74投稿日: 2024.08.03
powered by ブクログ人が生きていく、その営みの中で、無数の物語が生まれていく。そして、人は、その物語を求めている。映画や、舞台、そして、小説がこの世からなくならないのは、そのためなんだろうなぁ。特別なことではなく、物語は、すぐ隣に転がっている。それに気づけるか、気づけないか。
5投稿日: 2024.07.26
powered by ブクログ初作家さん。 装丁がとても好みで書評もよくつい購入。 大阪にあるマチカネという喫茶店のお話。 関西弁が読んでいて心地良く、優しい不思議な話の数々に心が癒される。 待兼山奇譚のラストのゲストの話にあれそんな展開になるの?と予想もつかなかった展開に驚く。 とはいえ、この街ならこんな展開もありかなと思えるし、ラストもとても良かった。
16投稿日: 2024.07.24
powered by ブクログ装丁に惹かれて購入 ようこそマチカネへ!と同じ場にいるかのように、どのエピソードも心に残るものだった。 自分の周りにいる人の、忘れられないことや、奇跡のような話を聞いてみたいなと思った‥良き本!
9投稿日: 2024.07.22
powered by ブクログ感想 事実は小説よりも奇なり。何もない人はいない。でもみんな同じ人間。だから人生は面白いし切ない。あっという間に過ぎる時間。少しでも笑って。
8投稿日: 2024.07.07
powered by ブクログ読み終わりこの作品はファンタジーの感動作で胸が熱くなりました。昭和世代のとっての事象や事件が懐かしく感じました。マチカネタンホイザ、はっぴいえんど、大阪万博、などなどです。増山実さんの作品は何作か読んでいますが、この作品が最高傑作だと思います。そしてラストの最終話は驚きと驚愕の結末でした。あなたも読んで感動して下さい。涙して下さい。
24投稿日: 2024.05.30
