
総合評価
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powered by ブクログ<翻訳文学試食会>で取り上げられた人新世SF短編集です。人新世とは(以下まえがき抽出・引用)人間の活動が地球環境に影響を及ぼし、それが明確な地質年代を構成していると考えられる時代、すなわち現在のこと。 ポットキャストでは、氷河期から現代(未来まで)を完新世というが、人間が地質学に影響を与えているとして人新世という言葉がでてきて…ということを解説してくれております。 https://creators.spotify.com/pod/profile/honyaku-shishoku/episodes/130-e34ljqo バンデミック、経済格差、人権、資源、環境破壊、気候変動…、短編では現在の地球の環境がもっと悪くなっているころとか、完全に環境が破壊された後の人間の生活をテーマにしている物が多いです。現代社会の延長の感じでSF分類なのかな。 正直に言って「アイデアは悪くないと思うんだけど、文章とか登場人物とかはそんなに…、…。」というものが多く(^_^;)、またテーマを広げすぎて「何のためにこの設定だしたの?」思ったり、主人公がウジウジしてたり攻撃的だったりで、小説として良し悪しの前に読んでいてあんまり楽しくない物語も…。 【メグ・エリソン(アメリカ)『シリコンバレーのドローン海賊』】 設定:配送はネットで注文し、ドローンが届けるというもの。ドローンの配送ルートも決められている。野球観戦に行ってもアプリでホットドックを注文し、決められた時間になったらドローンたちが一斉に注文客に飛んでくるっていうんだけど、野球場を飛び回るってすごく小回りが効くようになってるんでしょう。 ダニー少年の父エリオットはシリコンバレーで流通企業に勤めている。 ある時ダニーは友人たちとの暇つぶしとして「配送中のドローンを捕獲する」遊びを初めた。 シリコンバレーには大手企業に勤めるお金持ちたちと、貧しい労働者たちがいる。ダニーはお金持ちだが、友達のなかには労働者階級もいる。ダニーは「お金持ちの暇つぶし」の感覚だったけど、労働者階級の友人がドローン捕獲をものすごく真剣に組織的に行っていることを知る。その理由が働けなくなりキャンプ生活者のためだ。 格差を見たダニーが、社会の問題に気がついてなにかをしようと決意する、というお話。 === このあとダニーは上流階級者として表から格差を変えようとするのではなくて、地下組織で上流階級者に対抗する道をとるのかなあ、「道を決めた瞬間」を書いてる小説、ってことで良い? 【テイド・トンプソン(ロンドン生まれナイジェリア人)『エグザイル・パークのどん底暮らし』】 設定:各国が廃棄したプラスチックが固まってできた浮島が世界の海を漂ってます。プラスチック浮島の管理は領海権を持つ国が責任を持つことになる。もし知らんぷりして他の国が浮島を占領したら、領土侵害となって本国も責め取られるかもしれないという存在。 この短編に出てくるギニア湾の浮島はナイジェリアが放棄したのでなんとなく住む場所がない人たちや、地上を放棄した人たちが住み着くようになった。そして「流人(エクザイル)・パーク」と呼ばれて地底ぐらしの人たちからはアンタッチャブルになってます。 数学者(多分)のフランシスのところに、かつての学友コズモが訪ねてくる。コズモは流人パークに暮らしているんだが、最近おかしなことが起きているから調査してほしい、という。 避けられる流人パークでは案外秩序的な生活が行われているので題名の「どん底暮らし」は逆説的なかんじ。舞台は未来だけど、流人パークの秩序のもとになっていたのが、大地の神様みたいな?ものが存在していて人々の行動思考に影響していたんだとか。 === アイデアは悪くないと思うんだけど、文章とか登場人物とかはそんなに…、…(^_^;) 【ダリル・グレゴリイ(アメリカ)『未来のある日、西部で』】 設定:地球熱帯化で外を歩くのも危険、車は自動運転。山火事頻発。子供たちも学校には登校せずにオンライン授業なのかな?(短編に出てくる子供が特殊事情なのかもしれません)肉食は忌み嫌われて、栽培された肉っぽいものを肉として食べている。昔ながらの本物の農場もあるし、肉食する人もいるけれど、デモ隊と衝突している。人の感情を可視化する(数値化?)メガネとかもあるみたい。 とってもとってもとっても熱くなってるカルフォルニア。山火事も頻発して避難勧告とかも出る。 最近夫と別れた女医は、一人暮らし老人のオンライン診察をしている。彼女の娘は人の感情を読み取ることが苦手。女医は担当の老女とオンラインを繋ごうとするが彼女は出ない。外は山火事。女医の車は盗まれた。だが患者を探しにゆくことにする。暑いカルフォルニアを徒歩で、娘を連れて。 最後のカウボーイは、女性牧場主から今は高価になった牛肉の運搬の依頼を受けた。デモ隊に取り囲まれながら、山火事が起きている地域に向かう。立ち寄った小屋で信じがたい物を見た! 投機師と勝負師は一つの体に二つの人格を持って、人称は「かれら」(「they」とか「Ze」とかかな?)。かれらは張り巡らせたネットの網のなかに特上のネタを見つけ、山火事の避難勧告を無視して勝負に出る。当たれば大富豪、外れれば一文無し。(…日本だと山火事日常茶飯事だと避難訓練とか、防災車ま回ったりして危険周知しそうだけど、アメリカだと避難するかは自己判断なのかな…) この三者の様子が順々に語られ、最後に繋がります。 テーマの範囲が幅広いし、登場人物がショックを受ける場面が「あの好感高いトム・ハンクスがまさかあんなことを!?」というように実在俳優出してくるんだけど、意味がわからなかった(-_-;) ※ポットキャストを聞いてやっとわかった。この時代は人間の信用も金融取引となる。好感度の高い老トム・ハンクスのスキャンダル映像を利用すれば利益が出せるかもしれないってことだった。しかしカウボーイはどうするんだ(-_-?) 【グレッグ・イーガン(オーストラリア)『クライシス・アクターズ』】 科学者カールの父が「健康になり寿命を伸ばすエセ薬」に騙されて大金を出したらしい。信じない自分をバカにしてくる父に呆れるカール。 読者としても「お父さん、信じ込んじゃってる人の典型的反応だーーー(-_-;)」と思うんですよ。しかし読んでいくと、地質学者で冷静に物事の本質を読み取る性質のカール自身が「地球温暖化による環境危機は陰謀論者のたわごと」という強い強い考えを持ってることが読み取れるんです。地球環境危機を訴える相手へも冷静に反論するカールだけど、実際にやってることは環境テロリストだよね(-_-;) === 小説になると、主人公(この場合はカール)の行動が珍妙であっても正しいように見えるところが面白いのかもしれない、でも父も息子もやってることが笑えない(-_-;) 【サラ・ゲイリー(アメリカ)『潮のさすとき』】 設定:地球の環境悪化により身体に障害が出る人が増えているのかな?ヒロインは、ジャイアントケルプ(巨大昆布だ!)を養殖する巨大企業の深海作業員なんだけど、世界では巨大企業が財産も地位も独占して、下層作業員は生まれてから死ぬまで搾取されるだけって感じ。 そして海の中で永遠に暮らせる身体改造も行われる! 労働者は賃金をもらうというよりポイント制で、昇格したり、住むところを変えられたり、できるみたい。 海の中には、そんな巨大企業に反対する組織もあるみたい。 === ヒロインは地上では生きづらいので、深海生活身体改造のために十年も働き続けている。 大変な環境で格差も大きいんだが、自力で逞しく生きたり他の道を選択する登場人物もいるなか、ヒロインがウジウジグジグジしていて、奪われ、やるかやらないかではやらないを選び、他の選択があっても思考停止しちゃってるので、読んでいてあまり楽しくない(-_-;) 【ジャスティナ・ロブソン(イギリス)『お月さまをきみに』】 設定:感染症とか環境破壊とかで世界が「終末」し、残った人たちは今の生活に落ち着いた。人口が減少しているし科学は発達しているので、人々は「電脳帽子」を通じて目線を共有したり、子供は授業を受けたりしている。 仕事とか善行とか勉学に対してポイントが与えられる。科学は発達しているので、ポイントが貯まれば月旅行とかにも行ける。 ナミビア沿岸でダリウスはカニ型ロボットを使って難破船を引き上げたり、環境保護活動に従事している。妻は死んだが、息子のジャックがいる。ジャックはポイントが溜まったら「ヴァイキング船に乗って世界を見る!!」ことを目標にしている。 === 感染症で人類が減った後の生活が定まってきた静かな日々が書かれます。人々は電脳で繋がっているんだけど、やはり直接の触れ合いに優しさがあります。 【チェン・チウフアン(中国)『菌の歌』】 設定:中国の国家プロジェクトで人の住む集落には超皮脂ネットワークに接続している。そのために都会からエンジニアを派遣している。 物語は、ネットワークに接続されていない山奥の村。都会っ子女性エンジニアは性格はお堅く、人工的で清潔なものを当然としている。この村は巫女が神の声を聞いている。女性エンジニアは、同じ年頃の巫女と知り合い、村の生き方、考え方を垣間見る。 === 自然には菌のネットワークがある。人工的な電脳ネットワークを巡らせることが優れいてると思ったけれど、自然界は菌のネットワーク中の一部だったんじゃないの。 粘菌の動きってかなり綿密で、人工的に巡らせた都市計画と同じ張り方をするんだそうですね。 (…女性同士の繋がりが好きな方は、好きな短編かもしれません…) 【マルカ・オールダー(アメリカ)『<軍団>(レギオン)』】 設定:女性を暴力から守るために、小さな監視カメラみたいなものを設置して誰でもアクセスできたり、本人の許可があれば視覚を共有することができる。 討論番組し会社ブレイズはノーベル平和賞受賞者の女性を番組に呼んだ。彼女と顧問弁護士は<レギオン>開発に関わったらしい。 自分の人気のために討論相手をやっつけようとする司会者と、そんな司会者に最初から攻撃的な女性弁護士で読んでいて嫌な感じ。 === 根本テーマは女性への犯罪と視覚共有をどこまで進めるか問題だと思う。そして小説としては、高圧的な男性(司会者)と女性権利を闘い取る女性の討論にその縮図を見せる、って書き方なんだろうけどさ、読んでいて嫌な感じ。 さらにこの討論番組スタジオがなぜか海の中にある。この設定必要?ダイバーが覗き込んで、討論の方向が怪しくなったら海中スタジオに何者かが攻撃を仕掛けて…、よく分からん(-_-;) 【サード・Z・フセイン(バングラデシュ、英語)『渡し守』】 設定:大気は汚染され、カーストにより住む場所も違うし、生きやすくするための薬?みたいなのも開発されているが、カーストや経済次第。階級によっては不死に近い長寿を持つことができるようになった。死ぬ人間は、お金がないことを証明するということで恥となった。カースト最下層は死体を引き取り埋葬する。カーストはあるがポイントによって上下できるっぽい。 ヴァルガはカースト最下層で死体引取人の埋葬人。死体を引き取りに行くだけで侮蔑の言葉を投げつけられる。彼もすっかり諦めて、目立たないように生き、罵られても受け入れている。 ヴァルガは、父とラミーおじさんにより死体取り扱いを教えられた。実はヴァルガは死体取り扱いの極秘の方法も教えられていたのだ。それは体はなくなっても脳だけネットの世界に開放するみたいなこと。 === 死ぬことが恥ずかしい扱いで、死体を扱う人も社会の恥扱い。人が死ななくなったときの「死」への認識を示し、カーストについてもよく読み取れる。しかし町の人達がカースト最下位の死体回収者にあまりにも攻撃的で読んでいて疲れるなあ。 そして体を離れた意識がネットワークに開放されれば(『攻殻機動隊』の草薙素子はこんな生活かな。漫画しか読んだことないけど)、現世の差別もなくなる。こここそ平等で自由だと飛びまわり愉しんでいのですが、現世のひどい差別や暴力から急に「自由で平等!」ってなってもなあ、読んでいて愉快になれない… 【ジェイムズ・ブラッドレー(オーストラリア)『嵐のあと』】 異常気象で陸地は海に沈みつつある。少女チャーリーは、祖母ヘレンと暮らしている。チャーリーは祖母はあまり好きではなく、父が迎えに来てくれることを心待ちにしている。でも読んでいくと、父も母もチャーリーを捨てたことが分かるし、祖母ヘレンは彼女なりにチャーリーを育てようとするけれども気遣いができないというか二人は悪い方にすれ違っている。 チャーリーは地元の少年少女の夜中の集まりに行ったりするんだけど浮いてしまっている。そこに恋愛問題も絡んだり、そんなモヤモヤをマリファナに身を任せたり、時代は未来だけど現在にも通じる傷ついた思春期物語です。 最後に嵐と津波が来て彼女のモヤモヤどころでなくなるのが切ない。 【ジェイムズ・ブラッドレー『資本主義より科学 キム・スタンリー・ロビンスンは希望が必要と考えている』】 ジェイムズ・ブラッドレーによる、アメリカ人SF作家キム・スタンリー・ロビンスンへのインタビュー。
47投稿日: 2025.06.26
powered by ブクログ2024-10-11 グレッグ・イーガン目当てで読んだのだけど、他の作品も粒ぞろい。結末が明るいもの、暗いもの、どちらもあるけれど、明るいものはやや夢想的になっている気がする。まあ、そりゃそうか。
0投稿日: 2024.10.11
powered by ブクログSF。短編集。 環境問題や経済格差の問題など、社会問題をテーマにしたアンソロジー。 とても好きなテーマだが、全体的にはまずまずくらいの満足度。 このテーマだったら、長編でじっくり読んだ方がより楽しめるかも。 特に好みだったのは以下2作品。 サラ・ゲイリー「潮のさすとき」 海底農場。身体改造。ジョン・ヴァーリイ的な世界観。海が舞台のSFは、個人的に好きな傾向があるように思う。 陳楸帆「菌の歌」 未開の村落へのネットワーク普及。この舞台設定も好き。もっと読みたいと思えた。個人的ベスト。
1投稿日: 2024.06.07
powered by ブクログ人新世SFということで、当然、地球環境の危機的状況をテーマにした作が多い。けれども、ハード面よりもソフト面にスポットを当てた作がほとんどを占める。環境危機への対応策なんて分かりきってる、問題は社会がそれを実行しようとしないことなのだ、ということなのだろう。ただ、そのアイデアが案外とナイーブ。全体に理想化されたコミュニティの登場が目に付くのだが、その描写がまるでカウンターカルチャー全盛の頃のヒッピーコミューンなのだ。「菌の歌」なんかは、あの頃のSFそのまんまである。こんな感じの話、いっぱい読んだなあ。まあお話の中とは言え、この問題に簡単に答えなんかが出るわきゃないってことなんでしょう。
0投稿日: 2024.05.27
