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逃げても、逃げてもシェイクスピア―翻訳家・松岡和子の仕事―
逃げても、逃げてもシェイクスピア―翻訳家・松岡和子の仕事―
草生亜紀子/新潮社
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総合評価

7件)
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    このレビューはネタバレを含みます。

    とてもおもしろかったです。松岡さんの訳してきたシェイクスピア作品を読んだこともないですが、舞台もぜひ今後見てみたいと思いました。 戯曲翻訳について、これまであまり知らなかった、というか、ほぼ考えたこともなかったので、こんなお仕事があってこうして作品がつくられていくのか、という驚きのようなものもありつつ、 でも内容は実際どうお仕事されているかというより、それまでのいきさつが中心ではあり、 松岡和子さんが生まれるときやその前、ご両親の出自と言ったところも… 出征した父親が敗戦後にソ連に抑留され過ごした過酷な11年間、そしてそれを経て1956年に見事に帰国し、見事に社会にも復帰し、その間もその後も夫婦の間が壊れることもなく、長生きされ… その父親は本にして経験を残されていたり、松岡和子さん自身も多く記録を残されていたり、と、様々な情報が組み合わせられて編まれた作品でした。

    1
    投稿日: 2025.10.30
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     2021年にシェイクスピアの全戯曲の完訳を成し遂げた翻訳家であり演劇の評論もする松岡和子のここまでの生涯を描いたドキュメンタリー。戦時中に満州で生まれ、終戦直後の11月に満州国の司法部次長であった父親がソ連軍に連行されるところからストーリーは始まる。引き上げ後の一家の苦労と、ソ連で11年の抑留生活を送ることになった父親の壮絶な獄窓生活、和子の学生生活、仕事と家庭を両立させてきたこと、演出家や俳優との交流と翻訳へのこだわりについて、手記や話をもとに松岡和子を描いたもの。  何かの感想にあったが、激動の時代に翻弄されつつ懸命に自分らしく生きていく女性、みたいな話が、まるで朝ドラみたいだった。最近シェイクスピアの演劇に関わる機会があって、この機会にまとめてシェイクスピア関係の本を読んでみようと思い、この本も図書館で予約していたので、読んでみた。正直、勢いで予約した本で、松岡和子の翻訳もそんなに読んだことがあるわけでもなく、どれくらい興味が持てるか不安だったが、一つは父親のソ連の抑留生活の描写がリアルなので食い入るように読めたことと、もう一つはやっぱりシェイクスピアや演劇についての話はどう語られても興味が持てる、ということで、結果的にはとても面白い内容だった。  父親のソ連時代の話は、無実の罪で投獄されながらも希望を失わずに生きる、という感じがまるで『ショーシャンクの空に』みたいだなと思った。希望というよりは死んで相手の思う壺になってたまるかという「敵愾心」(p.37)だし、自分から何かしようと言うよりもその時の情勢に翻弄されているという点も違うんだけど。でも獄中の限られた資源でロシア語を習得する、っていうのもなんか刑務所の映画みたいだなと思った。盲腸炎とか脳出血とか病気を重ね、体が思うように動かせないまま汚物にまみれる話、というのが最も壮絶だった。父親なしで引き上げ、子供3人を育てた母親の話もリアルで、この父と母の話だけで、全部で5章あるうちの1章でしかないのだけど、感覚的にはもうこの本の半分くらいの内容のように感じる。  あと印象に残ったのは蜷川幸雄の話で、稽古場での話。とても有名な台詞を、「主演俳優が緊張のせいかこれをうまく言うことができなかった。蜷川は厳しい口調で『もう今日の稽古はやめよう』と言い、俳優に向かって問いかけた。『こういういい台詞を言うために役者になったんだろう?こういういい台詞を言いたくても言えずに終わった役者がどれだけいると思うんだ。俺もそうだけど。」(p.137)という部分。やっぱりプロだったら絶対に外してはいけないところ、それを外すならプロとは言えないという厳しさって、どんな仕事にもあるものなんだな、とか思った。ただ松岡和子は最後の「俺もそうだけど」という部分に感激したそうで、「蜷川は注文をつける時に自分を安全地帯に置かない。俳優として自分は優れていなかったという自己認識を蜷川は隠さなかった。だからこそ蜷川の言葉は役者に響いたし、役者にも響いた。」(同)ということで、もちろんそれはそうだと思うけど。あとはシェイクスピアの描く「人間の愚かさ」について。「その愚かさには大きく分けて三つある。ひとつ目は自分が見えていない愚。これが自惚れや過信を生む。ふたつ目は、『信じてはいけない人を信じ、信じるべき人を信じない。聞いていけない言葉を聞き、聞くべき言葉を聞かない』ことの愚。三つ目は、人や愛を試す愚。」(p.214)という話。シェイクスピアの魅力の語り方って色々あると思うけど、全部を翻訳した訳者だからこその説得力もあって、納得した。最後に、最近『マクベス』のトゥモロースピーチはおれも覚えるくらい英語で音読したけど、そのTo-morrowの表記をなんとも思ってなかったけど、これは「『翌日』と『朝に向かって』の意味が重なっている」(p.202)ことを示していて、なんだったらTo morrowと印刷されている版もあることから、全体の主語(つまりcreepsの主語)は、「マクベスを含む『我々人間』とみなしてよいのではないか。そう考え直して、『明日へ、あまた明日へ、とぼとぼと小刻みにその日その日の歩みを進め…』と改めることにした。』(pp.202-3)というのは、全く今まで思ってもいなかった話で、目から鱗だった。  ということなので、シェイクスピアの興味があるならやっぱり面白い本だと思う。(24/03/27)

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    投稿日: 2025.03.29
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    このレビューはネタバレを含みます。

    面白かった。 前半の戦争と松岡さん家族の歴史もすさまじかった。お父さん生きて帰って来れて良かった。母幸子(こうこ)さんひとりで大変だったろう。 シェイクスピア全訳完成したのに翻訳の推敲を重ねるの自分の仕事に妥協がない。阿部寛の訳者松岡さんへの言葉も良かった。俳優が演じる時のしてんから気づきを得ることがあって面白いなと思った。 松岡さんのお父さんお母さんも大卒で東大関係者も多くてみんな頭いい。 お父さんの旦那さんやばいところもあった。看護介護子育て仕事と松岡さんはすごい。

    0
    投稿日: 2024.10.01
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    このレビューはネタバレを含みます。

    こちらも友人に勧められて手に取った。 シェイクスピアといえば福田恆存で!と強く思っている一派としては、恥ずかしながら松岡和子訳のシェイクスピアを手に取ったこともないし、日本語でシェイクスピア劇を見ようと思ったこともない。 また評伝というものは、その人の自慢話/武勇伝が羅列されて飽きたり、お涙頂戴的な感情が強制されたりして萎えたりとあまりいい思い出もない。 そのような中で手に取った本書、本当に面白くてあっという間に読んでしまった。 そしてこの本で描かれている松岡和子という人が好きになったし、興味も沸いたし、日本語シェイクスピアも読みに行きたいしで、わくわくしている。面白かった、本当に! 父と母の波乱万丈の生も、若くして弟を亡くすという悲劇も、人間いろいろ人生はある中で、明るく前向きに生きている松岡和子、素敵すぎる。 大好きな福田恒存も出てきて、戯曲『億萬長者夫人』の「このおバカ秘書のモデルは絶対に私だ」大爆笑 「クラウド9」という作品、いつか見てみたい 河合隼雄との対談『決定版 快読シェイクスピア』も読んでみたい 毎日新聞の書評欄で、池澤夏樹と渡辺保と3人でそれぞれのシェイクスピアに関してお薦めの本を挙げることになった(p.196)というのも、その3人!とテンションがあがる

    1
    投稿日: 2024.09.01
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    2024年15作品目 シェイクスピアの翻訳に携わり続ける松岡和子さんの人生を描いた本作 第二次世界大戦中の松岡さんの両親の壮絶な経験から始まるので、シェイクスピア云々よりこの経験の話が興味深く、途中までなんの本か忘れていた

    5
    投稿日: 2024.07.15
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    逃げてないじゃん。全然逃げてないじゃん。塩鱈、やっぱりね。当たってた。壮絶。あの世代はこういう話が結構ある。やっぱり違う。

    0
    投稿日: 2024.06.02
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    すべてはシェイクスピアのため 大事なのはシェイクスピア、誰の翻訳かは二の次 翻訳から舞台へ、舞台からふたたび翻訳へ 自分が新訳する意味は何か 従来の解釈が正しくない⇔何が正しいいのか決着せず シェイクスピアを解釈するのは果てしのない旅 女性キャラクターの言葉遣い シェイクスピアの追体験 シェイクスピアと向き合うための頭がまえ 読むと訳すとは大違い 書かれていないことを決める苦悩 挫けそうになった作品=ジュリアス・シーザー シェイクスピアとともに生きた28年間 この世界すべてが1つの舞台、人はみな男も女も役者にすぎない。それぞれに登場があり、退場がある

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    投稿日: 2024.05.22