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二人キリ
二人キリ
村山由佳/集英社
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総合評価

93件)
4.1
36
29
20
2
0
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    大好きな作家さん。 年内で読み終わるはずが、年を越して、10日くらいかかってしまった。 昔、大島渚監督の映画を視た記憶がある。 センセーショナルな事件だったと思う。 情愛が濃すぎると、まるで中毒症のように、 人をこんなにも狂気に導いてしまうもんだと感じた。 「愛」ではなく、「執着」もしくは「独占欲」のなれの果て。 妾の子で、被害者の息子を主人公にしてストーリーを組み立てているのはとても読みやすいと思う。 さすが、村山さんの文章、表現力はビンビン胸にせまる。 そして、決してエロくなく、美しく感じる。

    30
    投稿日: 2026.01.03
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    恥ずかしながら実際の「阿部定事件」を 全く知らなかった。 ずいぶん前にレビューだけ読んで 面白そうだなと思って予約したので 実際に読むときには、どんな話か忘れていました。 フィクションというけれど、それを感じさせないぐらい 実話に基づいて書かれているものと思わせる描写。 すごいなと思った。 こんなことが実際にあったら大変な騒ぎだったろうけど これを読んだら、定さんの気持ちも ちょっと分かるような、全くの悪人ではないと 思わせられたところもすごいと思う。

    0
    投稿日: 2025.12.07
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    ほんタメ あかりん紹介本。 なかなかの分厚さだけど、一気に読んでしまった。阿部定事件をモチーフにしている今作。 どこかで何かが違えばそもそもの事件は起こらなかったのかな。定さんがもう少しだけでも器用に生きられていたならと思ってしまう。人の評判なんてアテにならないな・・・ 吉弥さんとRさんも気になります 笑

    0
    投稿日: 2025.12.04
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     阿部定。きっとこの名前を知る人は大勢いるのではないだろうか。もちろんその事件も同時に思い浮かべることだろう。  愛する人の男性器を切り取り持ち歩いていたところを捕まった阿部定。世の中では単なる好色女の猟奇殺人事件と認識されているだろうし、私自身、そういう認識でいた。  でも、この『二人キリ』を読んで、その認識が少し違ってきた。  著者の村山由佳さんはもちろんこの事件が起こった時にはまだ生まれているはずもなく、でも、吉弥に実際話を聞いたかのようにリアルに描かれていて、この小説がフィクションなのかノンフィクションなのか分からなくなるほどだった。  もちろん小説だから、大いに脚色はされているだろうが、それでもほとんどは本当のことが描かれているんじゃないだろうか。  それにしても私の住む町のすぐ隣に一時期阿部定が住んでいたのには正直驚いた。  この小説によると、阿部定が吉蔵と出会ってからは3ヶ月半くらい。2人きりになってからは25日だけの出会いだったが、これ以上ないほど愛し合い、殺すまでに至った。そして、吉蔵が亡くなってからの50年もずっと吉蔵を思って生きる阿部定は、それだけ好きな人と出会えたんだなと、少し羨ましくもあった。

    25
    投稿日: 2025.11.27
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ガシガシと読み進められる本を、と思い見つけた一冊でした。 阿部定モノでは以前にも読んだものがあるのでしたが大方は定さん本人のいじらしさや切なさの方に肩入れしていたのでこの本でもやはり〜。周りの人物たちを多くインタビュー形式で浮き上がらせてそれぞれに深く親しめたことも。何より吉さんの息子自身が語り手ということで思い通りに読み進められた。 途中でお腹いっぱいになるほど… 終章が澄んでいてよかった。

    14
    投稿日: 2025.11.23
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    構成の素晴らしさ! 猟奇的な事件が、少しずつ、いろんな方向から1人の人を描き出していく。 途中何度も息苦しくなるようなエログロに目を背けたくなる描写もあったが、吉弥さんとRの話はとても良い息抜きとなって、また先を読み進めたくなる、本当にすごい小説。 その時の2人にしか分からない、濃密な狂気な世界の中にいたのだろうことが想像できるようになっていった。

    14
    投稿日: 2025.11.16
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    昭和の初めに世間を騒がせた「阿部定事件」の小説。 私個人は「行き過ぎた愛情のために愛人の命を絶っただけでなく、さらに異常行動をとった女性の事件」というくらいしか知らずにいましたが、本作によって詳細を知りました。 この有名な事件は、その異常性のために人々の下世話な関心を集め、その後に興味本位の著作や映画が多数作られたらしいですが、本作はそれらと全く趣を変えて、一人の女性としての「定」の人間性に光を当てています。 架空の人物が事件関係者の証言や年老いた「定」本人の回想をヒアリングする形式になっており、語り口調であることがリアリティーに寄与していてすごく惹き込まれました。事実と創作が上手く融合して、まとまっていると思います。 真っ直ぐで、無邪気で、気分屋の「定」が運命に翻弄された末に巡り合った道ならぬ不実の恋とその結末にどこか必然性を感じてしまうのは作者の筆力ですね。 なお、ややエログロな作品ですので、未成年にはあまりおススメできないかも。

    13
    投稿日: 2025.11.02
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    定吉二人キリ 完全にR18。未成年は絶対に読んではいけない。 愛人の男石田吉蔵を絞殺し、局部を切り取るという凄惨な「阿部定事件」。 犯人の阿部定を、事件の真相を、吉蔵の婚外子である吉弥が追う。 尋常じゃない深さの狂った愛。 性愛の極北に至った二人。 怖いけど、こんなふうに愛されてもみたい。 愛し満たされるのであれば。 ・・・・とは、さすがに思わない笑 けど、吉蔵は首絞めもちん切りも含め、全てを受け入れていたのかもな。 吉蔵の定に対する愛の形は、エーリッヒ・フロムが説く、愛する技術を彷彿させた。 (もちろん、不倫という時点で、全く違うのですが・・・) 定のことはなんか憎めなくて、というか、感情移入すらしそうになる。 なんでちん切ったのかまでわかる気がする。 さすが村山さん、という感じなんでしょうね。 村山作品、もっと読んでみたい、と思いました。

    69
    投稿日: 2025.10.08
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    息苦しいくらいの究極の愛だった。 すごいものを読んでしまった。 読んだ後に残るこのなんとも言えない気持ちはなんだろう。 とにかく村山さんの文章が繊細で凄まじく惹き込まれる。 ページ数が多いのにもっと読んでいたいと思わされる筆力。すごすぎました…。 言葉にならない。

    2
    投稿日: 2025.10.06
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    面白かった。 どんどん、お定さんのことが好きになってくる。 阿部定事件を、あの有名な事柄程度しか知らないからこそ この物語を楽しめた。 そして吉弥さんのことも好きになってくる。 校長先生がとても良かった。でも可哀想だった。 先生との旅行のために買った石鹸箱のくだりとその後がたまらない。

    1
    投稿日: 2025.09.25
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    これは、村山由佳さんにしか書けないやつ!487ページ、読み終えた時には何故か「良かったね、おさあちゃん」と思ってしまった。色情に溺れた究極に駄目な二人。吉蔵と貞。なのに、なんなんだろう、 この読後感は? 吉哉という、吉藏の息子の目線で語られ、小説執筆、映画制作というフィルターを通して演出されているからか? 吉哉が素直で優しいキャラクターだからなのか? 私が知っていた阿部貞事件と史実は 大差なかったようだ。 知らなかったのは、 出会ってから事件まで三ヶ月半、 深い関係になってから 1ヶ月弱という、短い間に濃縮された二人の関係だったこと。 本当にくだらない二人。 日本は貧しくて 戦争もあって、それどころじゃないでしょ、あんたたち!って時代。 倫理観はないの? まわりに感謝とか、誠実さとか、ないの? 貞のしでかした事は 決して肯定できるものではないけれど、 これだけ何十年とたっても語り継がれるってことは、もしかして、 「自分には絶対できないけど、二人の関係を心の底では.羨ましい、憧れる」と思う人が多いのか? 小説の構成が見事で、聞き取りの部分、貞本人の語り、吉哉のストーリー部分、と 視点を変えつつ、ずっと読者を惹きつけたまま離さない。村山由佳さん、 猫を膝に乗せ、貞が乗り移ったかのように 狂気の世界に浸かりながら執筆されていたのでは?なんとも色気のある作家さんのお一人。足にタトゥーを入れたら、渡辺淳一さんに「お!いい女になってきたな!」と言われたエピソードが印象深い。女性の強さ、逞しさを描かせたら、ナンバーワンじゃないかな?と勝手に思っています。 「風よあらしよ」も読んでみたいな。

    15
    投稿日: 2025.09.20
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    このレビューはネタバレを含みます。

    オーディブルで聴いた。 村山由佳さんの小説は2作品目。 「PRIZE―プライズ―」が面白かったのと、ほんタメであかりんが紹介してたので、気になってオーディブルで聴いた。 生々しかった。絶対に、家族の乗ってる車で流したら危険。笑 阿部定事件のこと、全く知らなくて、この本で知った。好きになった人と一緒になれない、悲しい話に思えた。特に興味のあるような内容ではなかったのに、ぼーっとしながら話の続きを聞きいってしまう没入感があった。

    5
    投稿日: 2025.09.19
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    阿部定事件を題材にした小説です。 1905年生まれの阿部定が事件を起こしたのは、1936年5月18日。それは226事件からわずか3ヶ月後のことでした。日本がこれから戦争へ踏み出そうとする、そういう時代の出来事です。 女が愛する男を絞め殺し、切り取った陰部とともに逃走するという事件は、猟奇的な出来事として、センセーショナルに報道されました。そのほとんどは、興味本位に書かれた記事で、加害者である定は、色情狂、悪女、淫乱、妖女などというレッテルを張られ、隠された真実に目を向けようとする者は、当時誰もいませんでした。 本書の主人公は、阿部定が殺めた石田吉蔵の息子という設定です。息子とはいっても、庶子いわゆる愛人に産ませた子供です。その子は成長し、いまは脚本家となっています。 父はなぜ定の手に掛かったのか?なぜ定は愛する男を殺めなければならなかったのか?その真実を知りたくて、彼は十代のころから事件に関する資料や記事はもちろんのこと、定に関わりのあった数多くの人物を訪ね歩き、記録に残してきました。彼は大人になって、すでに還暦を過ぎた定にも会い、その言葉をも記録していきます。 そうして様々な証言や事実関係が交錯していく中で、定の胸の奥底に秘められた真実が徐々に浮かび上がってきます。 そうするうちに、二人の間に通い合う感情が芽生えてきます。 この本で中心となって描かれているのはもちろん定ですが、彼女がこれまでの人生で出会ってきた人々と、その関係性についてもしっかり描かれています。あの人にさえ出会わなければ、こんな風にはならななかった。この人に出逢ったことで、いまもこうして生きていられる。そのような関係性を細かく描写することで、物語にリアリティーを生じさせ、読者は定の人生を通して、人間の愚かさ、生きていくことの辛さや悲しみを考えさせられることになります。 とはいえ、これはやはり小説です。あくまでもフィクションです。そうとはわかっていても、惹きこまれずにはいられません。著者の想像力、筆力には、まったく感服いたします。 https://note.com/b_arlequin

    4
    投稿日: 2025.09.01
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    阿部定事件に真っ向から向き合った小説。 かなりボリュームがあるのですが、主人公が関係者から丁寧に聞き取り調査をした物語体験を共有することができます。 起きた事件そのものは変わりませんが、その背景を知っていくことで、私自身、事件そのものや被害者、加害者の印象が大きく変わりました。 日々、いかにニュースなどの表面的な情報から物事を判断していたのかを反省させられました。 事件の都合上、性的な描写がかなり強いので苦手な方はご注意ください。

    7
    投稿日: 2025.09.01
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    村山由香さん「二人キリ」 著者の作品は「PRIZE」以来2作品目。 「PRIZE」が最高だったので著者の別の作品も読んでみたくなった。 調べてみていて色々と読んでみたい作品があったが一番興味をひかれたのが本作品だった。あの有名な「阿部定事件」のフィクション作品とは… その衝撃的な事件は自分が幼い頃から知ってはいたが、事件の概要、何がどうして何時の話だったのかは全く知らなかった。 早速書店にて購読、興味深く読んでみることに。 まず驚きなのが、事件があったのが1936年、今から約90年前。 もう10年もすれば「阿部定」というその名は100年轟く事になるだろうこと。 今の時代でもセンセーショナルな事件の部類だろうが、当時の戦時中にての色恋沙汰の果ての事件だったとは。ビックリした。 戦後の話だとばかり思っていた。 あと驚いたのがWikipediaで「阿部定事件」の概要を調べてみると、案外多くの類似事件が起きているという事実。阿部定事件~1982年迄に51件の陰茎の切断事件が起きたとのこと。そのまさしく皮切りの事件だったのが「阿部定」とのことだった。 物語は阿部定に殺された岩吉の妾の子供にあたる吉弥が、定と付き合いがあった人達から証言を集め、事件の内容の真実に迫っていくという物語。 色んな人の色んな角度からの定が描かれていて読み応えがある。 魔性の女というのとはまた違うのだろうが魅力的な女性であったのは間違いない。 愛の深さがどこまでも深い作品だった。 そして愛という煩悩の深さが起こしてしまった事件だったのだろうという読後感。 正直それだけの深さのある愛に羨ましさも感じたが、恐ろしさの方が先立って感じてしまった。愛とは見方によっては美しいが見方によっては恐ろしい、そんな印象を強くうけた。 当然、内容はある程度フィクションなのだろうが、リアルさが半端ない。 生々しさがエグく、ある意味では肉体的で性的な官能の果ての事件でもあるのだろうと感じた。局部を切り取るという行為はかなりサイコでありながら、定にとってはそれは魂よりも血よりも骨よりも大事な岩吉の象徴だったのだろう。 その心理が分かるようで、だけれども深い心理すぎて混乱してしまい、結局自分にはちゃんとした理解は得られなかった。 申し訳ないが、「阿部定事件」の深さばかりが引っ掛かってしまい、作品のレビューとしては不完全だと感じるのだが、この衝撃的な題材ではどうしてもこうなってしまうだろうと思う。 阿部定、今なお語り継がれる理由がよくわかった。

    132
    投稿日: 2025.09.01
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    村山さんのこの本を読むまで阿部定事件を知らなかったのだけど、あらすじを読んでそう言う事件があったのか……なかなかエログロな事件だなぁ……と、 思っていたのだけど、読み始めたら阿部定の辿る運命や一途すぎたり純粋すぎる故の色々な行動にただのエログロな事件ではなかったのだなと思った。 ある意味急遽の愛の形。 それを恋愛小説の名手村山さんが書いたのだから、胸にぐっと来ない訳がないよね。

    3
    投稿日: 2025.08.30
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    どこに行くにも本を持ち歩いて隙間時間に読んでいたんですが、なんだか進みが遅くて… 仕事の休憩時間にも読んでたけど、ついに読むのは諦めました… あらすじなどを見て、読んでみたいなと思っていたけど、今の私の求める本じゃなかった、ということで、またいつか読む日までとりあえずサヨナラです。

    1
    投稿日: 2025.07.30
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    このレビューはネタバレを含みます。

    出版された時からずっと読みたいなと思っていた作品。 なんとなく知っていた阿部定事件。 読んでる途中何度も阿部定さんを知りたくてスマホで調べた。 定さんの生い立ちを知って、そもそも絶対父親がおかしい。どんな事をしたとしてもなぜ可愛い娘を売れるのか?その時代ではあったことなの?疑問だらけ。 定さんの話ではあまりに生々しい描写とあまりに自分勝手に心も軀も吉さんに溺れてく様子に、周りの事も考えるとちょっと苛立ちも感じたけれど、吉さんの話の部分も読んで、もうこれは仕方ないのかなと。 愛する人を殺めても他の女に触れられたくない。そんな風に思える人に出会えたことがないから定さんの気持ちや行動は到底理解できないけれど、もうこうする他なかったんだろうな。 吉さんを生涯愛し、思い続ける定さんを嫌いにはなれない。

    2
    投稿日: 2025.07.19
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    このレビューはネタバレを含みます。

    阿部定の人生を描いた評伝風小説。 阿部定事件は子供のころ良く見聞きしていたが。今は阿部サダヲの役者名に名残があるだけのように思います。 事件は戦前で、当時はセンセーショナルに報道されていたようですが戦中を通じて風化しそうなときに、戦後のブームが発生したようで、自分が子供の時にはまだ生きていて、映画やTVのインタビューに答えていたように思いますがその後の行方や生死がわからないとは知りませんでした。 それにしても圧倒的な資料を駆使した小説化で、最後の2章で物語として昇華されているのが素晴らしいです。

    1
    投稿日: 2025.07.19
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    阿部定事件と阿部定の本当が生々しく、でも予想外に美しくて感動した。 とてつもない熱量がなだれ込んできて、こちらもエネルギーを使いながら読む。 二人はお互いを愛しすぎただけなのだ。

    29
    投稿日: 2025.07.06
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    「阿部定」はこれまで自分の中でキワモノ扱いだったけど、ようやく生身の普遍性のある人物として色づいた。お金に執着がなくて読んでいると不安になるが、なんだかんだ人の縁があり飢えることなく全国各地で生きていけているのがすごい。常識に囚われず自由な人。

    13
    投稿日: 2025.06.26
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    小説なんだけど、そんな事ないのに関係者にくまなくインタビューしたようであり、しっかり小説として構成してあるようであり、ドキュメンタリーと小説を行ったり来たり。昭和初期に起きたあの阿部定事件を題材に阿部定が被害者の遺体に書きつけた「二人キリ」をとことん描いている。読み終わって目次裏に書かれた「父に捧ぐ」の文字に気づき、ハッとしました。

    20
    投稿日: 2025.06.17
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    「あべさだ」。私も本文にあった通り名前ではなく 一つの言葉のように思っていました。心底愛する人殺めてしまう定さんのを気持ちを知りたくて、すぐ手に取りました。生い立ちや定さんの心情は現代では考えられない辛いものなのに、文章では飄々とも取れるような表現だったので逆に読む事ができたのかもしれません。ここまで愛される吉さんはそれはそれは色っぽい男性だったのでしょう。 方時も離れたくない、離せば別の女性のところに行ってしまう、定さんの身を切られるような寂しさと独占欲は当時だったからかもしれないなと思います。いまは執着できるものが溢れかえっていますから。 そこまで人を愛せる… 定さんの一途な気持ちに脱帽です。

    2
    投稿日: 2025.05.11
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    性描写が生々しいけどいやらしくない。一種の愛の形って感じ。でもとにかく長い。もう少しコンパクトにできてたらもっと読みやすくなるのに…と思った

    8
    投稿日: 2025.04.27
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    実際の事件をモチーフに書いた作品はこれが初めてでした。500ページ弱という長編!! そして読んでみたら…若干苦手な内容!笑 それでも2人の真実が気になって、読む手が止まりませんでした。でも読了後は正直疲れました!笑 でもラストは…良かったです。最後まで読んで良かった。

    10
    投稿日: 2025.03.06
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    阿部定事件をモチーフにした小説。被害者石田吉藏の遺児吉弥が、晩年の阿部定を訪ねるところから始まる。脚本家でもある吉弥が、事件の関係者を訪ねて、事件の真実?を探るべく、長年集めてきた証言集を、定に読んでもらおうする。と同時に、定本人の話を聞いた上で、小説にし発表したいと告げる。文中で語ってはいないが、いわばその証言を元にした小説が、本作「二人キリ」という設定だと想像する。 愛憎に機微を、赤裸々ながら細やかに表現していて、村山由佳ならではの趣のある本になっている。あくまで、フィクション、と銘打ってるが、幼少から事件に至るまでの阿部定の来歴は、ほとんどノンフィクションのようだ。それを持って読んでも面白く、とても濃い恋愛小説のようでもあった。

    3
    投稿日: 2025.02.27
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    このレビューはネタバレを含みます。

    阿部定事件のことを何も知らず小説を読むにあたって簡単に調べた上で読みました。 とでもページ数の多い小説でしたが本当に読みやすく、登場人物の心情も丁寧にえがかれていたのでずっと物語に引き込まれていた感覚でした。 フィクションということでしたが、吉弥が、吉蔵さんの思いを創作したように村山由佳さんが阿部定の思いを創作したのかなと自分なりに解釈しました。 これまであまり読んでこなかったジャンルの物語でしたがとても良かったです。

    3
    投稿日: 2025.02.02
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    400ページ以上ある長編を一気に読み終えた。それほどの大作であった。 本事件が起こった事はほんとうだが、本書の中の関係者の証言があたかも本人が本当に話しているかのように思えるほど、真実味があった。これ程真に迫ったフィクションは初めてだ!

    5
    投稿日: 2024.12.17
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    阿部定事件で定に殺された吉蔵の息子、吉弥が定の評伝を書いた、という設定。なかなかの大作、あまり好きな話ではないと途中で思ったが、読み終えた。著者の熱量は感じられた。

    4
    投稿日: 2024.11.17
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    史実にとことん忠実で、でもちゃんと小説で、著者の方の誠実さを感じた。 証言する人や登場人物に共感できるわけではないのに、でも「こういうことってきっと誰にでも起こりえるよな」と思えてしまう。 今のところ「常識的に」、一応いろんな感情をコントロールしながら生きられている自分と、性欲をはじめいろんな欲望を優先しながら生きた定と。どちらが幸せなんだろうとすら思ってしまった。

    3
    投稿日: 2024.11.16
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    昭和の初めに実際に起こった阿部定事件 いろんな思いや考えが交差して殺された吉田の息子が真実を求めて小説を書く 2人は互いに愛していて愛に溺れた

    2
    投稿日: 2024.11.11
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    阿部定の生涯を評伝風に綴ったフィクション。定に殺された吉蔵の息子、吉弥が定に関わった様々な人に話を聞き、その人たちのインタビューと定自身の独白が交互に挟まれる。吉弥が定の小説を書きたいと思い定自身に会って直接話を聞きながら小説を書いていくという、この小説自体が吉弥の書いた小説であるという入れ子形式になっている。 阿部定が80歳まで生きたことは全く知らなかった。その時その時の感情に正直に生きた人…というのは作者の定への感想だそうだが、特別な悪女という訳ではなく、こういう人はいるだろうし、自分の中にも同じような部分はあると感じました。 作者のインタビューによると話の90%は創作とのこと。定自身も、事件の関係者も亡くなった昭和初期の事件だからこそ自由に書けたのだろうが、実在の事件を扱うことの危険性も感じる。これ読んだ人はほぼノンフィクションのように思ってしまうのでは。 定と吉蔵の濡れ場は詳細に赤裸々に描かれているのに、吉弥とアナキストで映画監督のRとの関係をふんわりぼかして書くのは何故なんだろうか…。ゲイという言葉は当時はなかっただろうけども、マイノリティの透明化だなぁと思ったり。

    1
    投稿日: 2024.11.04
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    最初は猟奇的な殺人が題材のエログロな話かと思っていたが、読み進めるたびに「どうも違うぞ」と気づいた。「定」という1人の少女が世間を騒がせた「アベサダ」になるまでの彼女の人生を、彼女と関わった様々な人々の目線から読者に伝えている。定は自分のことを理解してくれる人を求めていた。本を読み終わったとき、その読者、多くの人が定を理解する人になっていることを彼女はどう思うのだろうか。本を読んで作者の意図に気付いたときは鳥肌が立った。 作者の物語の書き方にも魅せられた。話し言葉で物語を繋いでいくから、ついつい語っている人に引き込まれてしまう…480ページも苦ではなかった。 人を愛することは、苦しい事だと思う。ある程度理性が働いたり、愛以外の場所に自分の価値が置ける人は、バランスをとりながら生きていける。でも、愛を常に求めてしまう人もいる。やっと二人きりになれた、最後のシーンが非常に優しく穏やかで、苦しみ抜いた果ての最後として良かったなぁ、と思った。 性的な描写も多く、苦手な人もいると思うが、もっと奥の本当のお定を知ってほしいと思った。

    3
    投稿日: 2024.11.04
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    衝撃。 生々しくて、ぶっ飛んでて、美しくて。 皆の心情が、本当にこの小説の通りだったんじゃないかと思ってしまう。 どれだけの時間をかけて研究したんだろう。 苦手な人は苦手だと思うけど 私の心には突き刺さりました。 素晴らしい一冊。

    8
    投稿日: 2024.10.11
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    阿部定をテーマにした作品 なんとなく知っていた話だが ストーリーとしてはめっちゃ面白い 傍からみたらとんでもない悪女と思われているんだろうけど その場その場は純愛 心が熱くなる作品 読み終わった後は 世の中の不条理を感じた

    3
    投稿日: 2024.10.05
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    阿部定さんの認識が ただの猟奇的なおばさんから なんだか可愛らしいお人だったのねって変わった。 そしてこの二人ならこういう結末になったのは 致し方なかったのかもしれない。

    2
    投稿日: 2024.09.28
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    読み始めてから終わるまで、めちゃくちゃ時間がかかった。途中読むのがしんどくなった。 阿部定はWikipediaとかで情報をある程度入れてたので、頭のおかしい人だとは思わなくて、むしろとても情が深くてそれだけ吉藏が大好きだったんだなぁとは思った。だけど殺すところまでは理解できても局部を切り取ったり、それを使おうとしたりするところは普通じゃないよなとも思う。 気分の浮き沈みが激しかったりキレやすかったり、、、しんどい人生だっただろうなぁと思う。最後、お定さんが安らかな気持ちで過ごせているような描写でほっとした。

    2
    投稿日: 2024.09.22
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    2024.9.22 すっごい話だったなと思って読み終わったけど、阿部定事件って本当にあった事件だったのか! 絞殺して血で定吉二人キリと書いて、定とナイフで彫ったらしい。 こんなになるほど1人の男を愛せるなんて。 吉さんもそれを望んでいたんじゃないかと思ってしまう。 性的描写が多く、直接的な表現もあったので苦手だったけど、狂気的事件という印象だったのが2人の愛の話に思えていった。

    0
    投稿日: 2024.09.22
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    久々の長編に 重たい内容で 読後はグッタリ。 阿部定事件は 余りにも有名な猟奇事件なので 知ってはいたけれど 定 の生涯がこんなに波乱万丈だったとは。 証言はフィクションだとしても それ以外の定の人生 は 出会った何人かの人たちは実在していて その重みが更に増した感じがしました。 ここまでになるのはやっぱり育った環境ってあるのかなと思ってしまいました。 激しすぎる表現に食傷気味ではあったけど 途中投げ出す気にはならなかったです。 今はすぐに 検索が出来ていいですね 阿部定ってこんな人だったんだって初めて知りました。

    8
    投稿日: 2024.09.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

    きつかった つらかった 途中で 何度も投げ出したくなった 生臭い性描写と定の短絡的なものの考え方に吐き気がした 作品としては 前半のテンポの良さに比べて 後半の失速と無駄には まいった とはいっても よく調べてあるし、 定の生涯は正確に書かれているようで 定を 知ることができたとは思う が 480ページは いらないな

    2
    投稿日: 2024.09.17
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    500ページ弱のずっしりと分厚く重たく、阿部定事件という超ディープな内容。エログロ色でどろどろの内容に辟易して逃げ出してしまうのかもと怯えていたけれど、そこは村山由佳さんの筆力が 素晴らしかった。サダさんにも亡くなった吉さんにも誰ひとりとして全く共感出来ないのにラストまで引き込まれっぱなし。吉弥はRのことが気になっていたのだろうか。サダさんのこと意外は煙にまかれたようだった。

    8
    投稿日: 2024.09.13
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    阿部定事件を追いかけた脚本家が1本の小説を書き上げる。 映画監督Rの「俺らにできるのは、伝えるべき物事ノ心臓がどこにあるかを見失わずにいることだけだ」という言葉の後、主人公である脚本家吉弥が書き上げた「創作」とは。 創作とは、表現とは。それを考えさせてくれる物語でもあります。

    2
    投稿日: 2024.09.07
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    書き出しに出てくる女性の話し方としぐさがとてもなまめかしくて、文章だけでこんなに色気が出るのかと驚いた。 阿部定事件を題材にした他の小説は読んだことはないが。フィクションだが、この小説の阿部定は愛に溢れていたと思う。

    3
    投稿日: 2024.08.31
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    久々にちゃんと小説を読みました。 自分にとって1番読みやすい文体の作家。 それでも、内容の重さによって読むのにえらく時間がかかりました。 途中の小説とノンフィクションとかのくだりが興味深い。 真実とはなんなんでしょうね。

    1
    投稿日: 2024.08.25
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    読むのに1ヶ月かかってしまった…いつもなら積読になりそうなものなのに挫けず読み切れた。それはやはり村山由佳先生の力だと思う。 小さい頃にテレビで猟奇的事件〜的な特集で知っていた阿部定事件。真実はいくつあってもいい。もう少し若い頃に読んでいたらそんな恋したいーとか思っていたかもしれないけれど、今はただただひとの業の深さが恐ろしい。そんなことに出会わず生きてここまでこられて幸運だったかもしれない。 読了後に表紙の絵に気がつく。溺れる二人。

    2
    投稿日: 2024.08.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

    恥ずかしながら「評伝小説」の意味を知らず、450ページ越えの長編を、最後までフィクションだと思って読んでいた。全く動機がわからない猟奇殺人だったし、「生々しいな…色々と重いな…」と思いながら1か月くらいかけて読んでたのに、参考文献ページでまさかのノンフィクションだと知って、手の込んだドッキリくらった気分(自分のせい)。内容に関して色々思うところは沢山あるんだけど、それより何より、こんな事件をこの厚みで書き切ってしまう村山さんがとんでもない。あんな優しい笑顔で、声でお話しされるのに、ど変態や!!!(超褒めています) 癖になるもったり感。村山さんに骨抜きにされちゃったよ…大人しく他の作品も読みます( ◠‿◠ ) ・そんなご大層なものが、はたしてこの世にあるんだろうか。彼の言う通り、〈ほんとうのこと〉は人の数だけあって、少しずつ食い違っている。確かなものなんてない。 ・徳利の首をつまんで湯につけながら、もう何度こんなふうにしてきただろうか、とぼんやり思った。そしていったいあと何度、こんな夜があるだろうか。どんなに当たり前に見えることにも永続の保証はない。失いたくないものから失われてゆくのが世の常だ。

    4
    投稿日: 2024.08.17
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    阿部定事件を知ったのは中学生の時、男子から純情な私を揶揄うために教えられて知りました。 なんておっかない…そして恥ずかしさもあり、詳しく知ろうと思わないまま忘れてました。 死刑になったのだろうと無意識に決めつけていたので、5年で出所して大往生したのには驚きました。そして、当時どこかカリスマ的な注目のされ方をしていたことにもおどろいた。 知り合ってたった3ヶ月。狂おしいほど愛して、溺れて、狂ってしまって殺してしまった… あまりにも衝動的な恋愛で、私の中では美化しにくく、サダさんを好ましく思いきれなかった。 ただ、壮絶な人生の中、狂ってしまうほどの恋を一瞬でもできた定さんは幸せなのだろう 衝撃の一冊だった

    9
    投稿日: 2024.08.14
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    世を騒がせた阿部定事件を村山由佳さんはどう描くのか興味深く読み始めた。以前読んだ『風よ あらしよ』に書かれたアナキスト伊藤野枝の生涯はぐっと胸に迫ったものだ。阿部定事件をモチーフにした「愛のコリーダ」が大島渚監督で撮られたと聞いても、さほど観ようとは思わなかったが、女性の視点で書かれたとなると放ってはおけない。  性愛の描写は淡々と描かれてはいたが、繰り返されるたびに、今季の酷暑も相まってくらくらしてくる始末。坂口安吾ら無頼派作家には定はファム・ファタール的存在だったらしい対談が紹介されていた。やっとたどりついた最後の13章は阿部定に殺された吉蔵の証言となっていて、見まちがいかと思ったほど。 脚本家の吉弥と映画監督RがLGBTQの関係性だろうと仄めしてあるのが、昭和時代の阿部定と照らし合わせてあり良かった。一見評伝物のようだが90%はフィクションというのだから凄い。村山由佳さんは阿部定を『刹那の感情にすごく正直な人なんですよね。その時腹を立てたら腹が立ったと言うし、惚れてしまえばそれまでだし。本能で生きている感じがいいですよね』と、語っている。

    28
    投稿日: 2024.08.07
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    読後、村山由佳の刊行記念インタビュー読んだ。 吉弥はもちろんのこと、彼が集めたいろんな人の証言もほぼ創作だったとは! 説得力というか、肉声感が半端なかった。 やっばり村山由佳はすごい。 真実がどうであっても、私の中ではこの作品の阿部定でいいと思った。

    15
    投稿日: 2024.08.03
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    このレビューはネタバレを含みます。

    凄まじいお話でした。 どこまでが史実で、どこからがフィクションなのかも分からず夢中になって読み進めました。 アングラエログロの「アベサダ」ではなくてみずみずしい一人の女性の輪郭が、吉弥の目線と彼女を取り巻く人々、そしてお定さん本人の視点を通して書き上げられていて、酷い女だとも思うのに彼女に魅入られていきます。 吉弥とお定さんの二人の心の通わせ方には胸を捕まれた思いでした。 そして吉弥自身の想いの行く末が見えたことによって想いが通じ合うという感情がよりリアルに感じられ、事件の日の彼女の想いも一段と際立つ。 村山由佳さんの文章の持つエネルギーが力強くて生き生きとしていて、まるで映画を見たように情景が浮かび、感情が揺さぶられました。 もう一度読み返したい。

    7
    投稿日: 2024.07.13
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    中村遊郭で一緒だったおみよちゃんのセリフ ただただ恋焦がれて、他になんも見えんようになれた-そんだけでもう、上出来の人生や思てますよって。 定やおみよちゃんのような気持ちになったことあったかしら?と心に残る。

    0
    投稿日: 2024.07.11
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    阿部定は事件としての出来事ぐらいの表層しか知らなかったけど、この作品を読むと他の関連作品も見たくなる。 作品序盤は身近の似た系統の人を思い起こし嫌な気持ちがするが、読み進むうちに違う面が見えてきて作中の阿部定が魅力的に見える面もある。周辺の人らの証言からその人が掘り下げられていく。 表紙デザインも良い。一見青主体の模様だけと思ったら男女が絡んでいて。 p.327 いきなり、その手がそばにあった布巾をひっつかんできつく顔に押し当てた。 ----ヒイィィィ・・・・。 一瞬、やかんが沸いたのだと思った。

    9
    投稿日: 2024.07.09
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    かの有名な阿部定事件。よくよく考えてみると有名と言っても、性交中に相手を殺害し、局部を切り取って…ということしか知らなかった。 このショッキングな部分に気を取られすぎて、彼女やお相手の吉蔵(名前すら知らなかった)がどんな人であったかなんて、興味すらもっていなかったし。 別の妾と吉蔵との息子吉弥が、定に関わった人の証言を集めていく形で物語が進んでいくのだけど、史実と創作の絡み具合が絶妙。 特にラストの証言は、「二人キリ」の真実に近づくようで、物語の締めくくりに相応しかった。 生々しい描写も多いし、定に共感するようなところがある訳じゃないのに、読み終える頃にはなぜだか少し定に惹かれているという不思議な感覚に浸っている。

    40
    投稿日: 2024.07.08
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    約500ページと、少し厚めの本書は、今も「毒婦」と揶揄される阿部定事件を扱っている。 下町情緒が今も残る台東区竜泉。 そこに住む一人の女性を、「僕」こと吉弥が尋ねるところから物語は始まる。 彼は、定に殺害された吉蔵の息子だった。 彼は自ら集めた関係者の証言を集め、一つの「小説」を作り上げた。 それがこの本だ… ディープフェイク、今の世の中ではびこっている魔物は、ずっと昔からいた。 記憶の改竄、あるいは真実を虚構が凌駕すること。 阿部定事件が面白おかしくセンセーショナルに取り上げられたのは、犯人が女だったからではないか。 女とは性欲薄く、組みしだかれる側のはずなのに、淫乱で、残忍で、気性も荒く、でも見た目はいいなんてこりゃあ話題になるぞ! 人を殺しておいて、とは思うが、少なくともこの物語の中の女性を、私は嫌な人間であるとは思えなかった。 翻弄しているように見えて、でもやはり男の力に押さえつけられて。 それでも愛する人と共にいたい。 何か形見を、あの人を感じられる何かを残しておきたい。 そんな気持ちはわからないでもないのだ。 いくら何でも愛する人の陰部をちょん切ろうとは思わないが、私だって大好きな人を手放したくない。 歳の差を加味せず、若い私が先に死んで、綺麗な思い出のまま、ずっとずっと私を思っていてほしい。 他の人なんか思わないでほしい。 それは特別おかしなことだろうか? 優しくて良き理解者で、あつらえたかのような居心地の良さを手放したりできるだろうか? 愛が重いって?当たり前じゃないか。 定と私の間に線などありはしない。 見せるか見せないか、やるかやらないかの違いだけだ。

    10
    投稿日: 2024.07.08
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    女は愛する男を性交中に絞殺したあと、男の局部を切り落とした。そして男から流れ出た血でシーツに大きく『定吉二人キリ』と書き残し、女は切り落とした男の局部を持ち去った。 あまりにも有名な『阿部定事件』。1936年の出来事なのでもう90年近く前なのに、いまだにこうして小説の題材になるのは、やはりそのセンセーショナルな内容に人は色んな意味で惹かれるからなのだと思う。 本の説明としては評伝小説となっている。 定が殺害した石田吉蔵と妾であった女の間に産まれた吉弥は物書きとなり、定の生い立ちを探るため定と関わった人物たちを追って回り、そしてついに本丸である定本人にたどり着く。 吉弥からすると定は父親を殺した殺人犯に他ならないが、出所後小さな居酒屋を営む定の人となりに触れるうち、人としての情愛のようなものを感じ始める。 定は比較的裕福な家に産まれたが、14歳時のとある性的な過ちがきっかけで、実の父から娼婦として売られてしまったことから、性の歪みとともに生きることになってしまう。 人を愛することを知らないまま数多の男のために身体を開き続けた定が、ある時奉公に出た料理屋で石田吉蔵と出逢い、先に身体の関係があったものの、すぐに深く愛し始めてしまう。 初めて心でも愛することを知ってしまった定は、吉蔵と片時も離れたくなくて、嫉妬心や執着心を爆発させ、次第に狂い始める。 定と吉蔵の出逢いから事件まではたったの3ヶ月。そこには匂いたち声が聴こえてくるような狂愛の物語がある。 小説自体は吉弥が取材をした人物たちによる「阿部定評」と、吉弥が映画監督の友人であるRと関わっていく時間筋、貞が語る生い立ちと事件のこと、そして吉弥と貞が関わる時間筋と色んな筋があって、それがうまく融合して濃密な物語になっている。 物語なのでこれが真実ではないと思うけれど、わりと近いところにあるのではないかと感じた。 恩赦もありたったの5年だった刑期を務めたあと出所した定を待っていたのは『アベサダであること』からは逃れられない人生だった。 それでも自分を殺すことは出来なかった定が向かった先とその後の生き方とは… シンプルに、本当に面白い小説だった。

    2
    投稿日: 2024.06.29
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    なんと言うか…まあ圧巻の作品。阿部定事件の定と吉蔵の物語を息子である吉哉が小説として描いてゆくのだが、、小説たる部分で愛苦しく泣きそうになった。男女二人、行き着くところまで行き着いた果て…描き切る作者の力量が素晴らしいと思う。

    3
    投稿日: 2024.06.28
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    個人的にかなり好きだった。 本当に存在しているかのような石田吉蔵の息子の設定。視点の切り替わりがとても面白かった。この本がきっかけで幾つかある定さんテーマの映画も観てみたくなった。 実際語られている映像を見たが、歳を取っても色気がある素敵な女性だった。

    1
    投稿日: 2024.06.25
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    村山由佳さん好きなんだけど、 読み始めてちょっと間が空いたら なんの話か分からなくなった、長編。 江戸っ子っぽい言い回しも馴染みないし 途中で読むのをやめました。

    1
    投稿日: 2024.06.20
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    "真実"とはどこにあるのか。昭和におきた猟奇殺人「阿部定事件」を描いた評伝小説ということでしたが、描き直そうとした著者の気持ちを強く感じました。 憶測や好奇心で膨らんだ世間の生み出した「アベサダ」ではなく、一人の女としての「阿部定」と対峙する。ページ数はありますが、知りたい欲求をうまく刺激されつつも勝手な想像で暴走させない手綱捌きに誘導され引き摺り込まれるような読書体験でした。 愛の極限を知ってしまったが故に愛に臆病になる、というテーマでも読め、そのもどかしさが逆にどきどきしました。

    2
    投稿日: 2024.06.16
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    子どもの頃この事件のことを知って衝撃を受けた記憶がある『阿部定事件』 読後のこの感じ...なんとも言い難いけど悪くない... 猟奇的な殺人事件だけれど、これが二人の幸せだったんだ!って感じてしまう村山由佳さんの筆力に感心しました。 真実は二人にしかわからない。他人が調べてどんな映画や小説を作っても全てが真実ではない。けれどこの作品は実話を元にしたフィクションとはいえ、全て阿部定が語った真実だと思いこんでしまうくらい生々しい。 共感は全くできないけれど、事件後何十年も忘れず想い愛し続けていた阿部定が本当だとしたら、猟奇的殺人事件の作品ではなく、サディスティックな恋愛小説という目線でも読めてしまう。

    19
    投稿日: 2024.06.16
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    多面的に見ることの大切さと人の愛情の深さを教えてくれる小説。 阿部定事件については、初めて知りました。 事件の内容自体グロエロの内容ですが、一面的に見ると正気の沙汰ではない事件だと思います。でも、多面的に見るととても悲しくて愛に満ち溢れた事件なのではないかと考えさせられました。 この小説の凄いところは、阿部定本人の半生を間近に近くで感じる体験ができるのがすごかったです。昔の時代背景や目の前に感じるぐらいリアルティーのある話でした。 自分自身も一面からではなく多面的に見て、色々な視点も持てる人間になりたいと思います。 いい小説に出会えて感謝です。

    6
    投稿日: 2024.06.14
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    阿部定事件をモチーフにした作品 なんとなく事件の概要は知っていたつもりだったが、新たに知ることばかりだった 少女の頃から間違った方の道ばかり歩んできた阿部定 結果は良くなかったが 自分がここまで必要とし必要とされてきた人に巡り会えて幸せだったのかな

    0
    投稿日: 2024.06.10
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    彼女の人生をこんなに生々しい文章で読んでしまったら、もうその人生を経験したような気になっちゃって誰かを愛するのが怖くなった。だからと言って一生誰も愛さずに生きていくのも寂しい。じゃあもう生きるのが怖い。愛する人が死ぬ悲しみが増えるのも怖い。八方塞がりじゃん、、私はこれからどうやって生きようか。

    0
    投稿日: 2024.06.09
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    実際にあった阿部定事件をモチーフにした小説。 相当昔の事件なので、単なる猟奇殺人という認識でいたが、この小説を読むとそうではなかったのかなという気が少しした。 主人公は阿部定事件の被害者の愛人の息子で、事件に関わった人達に会って話を聞いていく。 最終的には阿部定自身に会って交流を深めていく。 どの人物にも共感は出来ないが、それぞれの複雑な心のうちを描いている話だと思った。

    8
    投稿日: 2024.05.21
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    不倫やお妾さんがいることが肯定される世界は、私には理解できない世界だから、定さんと吉さんがどれだけ愛し合っていたかが描かれても、なんの感情も湧いてこなかった。 ただ、阿部定を描くとともに、大正から昭和の時代背景、その当時の人たちの生活習慣、226事件や大東亜戦争など歴史的な出来事などが書かれていて、一つの歴史小説を読んでいるようで、そっちの方の興味の方が大きかった。

    1
    投稿日: 2024.05.12
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    読み応えたっぷりの大作でした。私にとっての「アベサダ」はやっぱり猟奇殺人の記号でしかなかった人だけど、この本に出会えて、全く違う印象になりました。読書

    1
    投稿日: 2024.05.07
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    凄いものを読んでしまった…。 有名な阿部定事件。幼少期にTVでチラッと見てあまりの猟奇的事件に恐怖を感じた。阿部定の幼少期から事件後を周りの証言と共に多角的に、事実と虚構を交ぜ描かれている。何故事件は起きたのか…。 現代で言う境界性パーソナリティ障害、愛着障害なんだろうなと感じた。執着、依存。どちらか一人が少しでも冷静でいられたら…出会うべくして出会ってしまった二人。 出会ってから25日であそこまでのめり込み殺してしまうとか。 愛なのか…?

    16
    投稿日: 2024.05.05
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    これだけの情念が持てるとはある意味天晴れとも思ってしまった。「阿部定」という名前とセンセーショナルな事件は頭の片隅にあったものの、その詳細や人となりなどは全然知らずにいた。フィクションとはいえ壮絶な一代記だった。少女時代からませており、愛欲にまみれた人生なのでゴシップ的な興味を満たしてくれつつも下品にはならないのは流石村山さん。単に阿部定を知る人のインタビュー形式というわけではなく、様々な角度から書かれているので構成にも工夫がされていると思った。それでも分厚い本なので流石に後半はもう疲れてきてグッタリ。

    3
    投稿日: 2024.05.02
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    とうとう読み終わりました。 『阿部定事件』を舞台とした小説を書くために取材を続ける吉弥さんのストーリーと取材をした人たちの証言のパートがあり、分かりやすく物語に入り込めました…が、時々これって吉弥さんが書いた物語に入り込んでる??って混乱してしまうところもあり、いつもより時間をかけて読んでしまいました。 読んでみての阿部定さんの印象としては相手を燃え尽くす程の愛情?独占欲?、、、なんとも言葉にし難いものをもつ女性だったんだなと思いました。 実際の阿部定さんの証言なども書かれていたので。 その熱のようなものを持つ一方でズブズブと沈み込むような孤独が根っこにあって抜くことができなかったんだなとも思いました。 本書を読むまでは阿部定さんは『炎』のような人かなって思っていたので、表紙の2人で水に沈み込むような様子が??ってなっていました。 読み終わって納得、2人きりでうんと深いところで、誰にも邪魔をされない世界でずっとって思っていたのかなぁなんて。

    10
    投稿日: 2024.04.30
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    村山由佳さんの作品は若い頃によく読んでいた、おいしいコーヒーシリーズ以来。15年以上?ぶり。 普通の恋愛物かと思っていたし、なんの情報も入れずに読んだので、正直驚いた。阿部定事件の事も知らなかったので、なおさら衝撃的。 長編だったけど、長さが気にならないほど面白かった。

    4
    投稿日: 2024.04.25
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    このレビューはネタバレを含みます。

    阿部定事件をベースに定の生涯を描いている。石田吉蔵の妾の子吉弥が本にするためいろんな人に取材し、定の懐にも入りかなり想像をたくましくして最後は吉蔵の語りで締めた。こういう定もあり得たと思う力作だ。 ただ、映画にしてもこの作品にしても阿部定はセックス依存症で精神を病んでいるとしか思えない。グロテスクな事件をなんとか美しい物にしようと頑張ったような作品。 サイドストーリー的な吉弥と映画監督Rの関係の方が面白かった。

    0
    投稿日: 2024.04.20
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    真実は本人しか解らない。 当の本人ですら言葉にすることが、 出来ないこともある。 自分以外の誰かが思わぬ形で 言葉にしてくれることもある。 長編でしたが貪るように読み進めました。 ありがとうございます。

    0
    投稿日: 2024.04.13
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    吉弥が書き綴った阿部定事件の証言者ルポに、強く惹き付けられる。深掘りした人物像、流暢な台詞回しは秀逸。波瀾万丈な生涯を送った定に、穏やかなラストシーン。堪能した。

    0
    投稿日: 2024.04.12
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    モテない奴はこれを読め!! Good Dad(グッドダッド)が Good Genes(グッドジーン)に敵わないとわかるぜ! すみません、訂正です。 わかるだけでモテるようにはなりません

    6
    投稿日: 2024.04.07
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    読み終えて、やはり『風よ、嵐よ』を思い出した。 どちらも激しい。 時代が、知らない過去ではなく、私の人生と重なる時期もあることに、ほーっと思った。 出てくる店などの名称も実在のものだし。 今回の作品はやはり黒ムラヤマかなぁ。 性描写が多すぎて、逆に冷静に読めてしまった。

    1
    投稿日: 2024.04.06
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    世にいう「阿部定事件」の証言を集める男。 「風よあらしよ」で描いた伊藤野枝の生涯も圧巻だったが 今度は本人のみならず様々な人の目を介したことで更に深みを増し迫ってくる。

    2
    投稿日: 2024.04.04
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     定の置かれていた状況とその時々の心情が丁寧に描かれていた。これまで、定が強行に至った動機がよく分からなかったが納得した。  定と吉蔵には、当人同士にしかわからない愛の絆が存在し、縛られずにはいられなかったことが伝わってきた。お互い片時も離れられないくらい愛する人と出会えることは幸せだけれど、維持できなくなるとその苦しみは計り知れないと感じた。

    10
    投稿日: 2024.03.31
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    そう言われると、自分も本当の恋愛を知らないのかもしれない。 なんて思っちゃうから、今が幸せ絶好調の人は、この本から遠ざかった方が良かったりして。 もしくは、敢えて読んでみるとか。

    2
    投稿日: 2024.03.31
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    阿部定は、昔TVの特集かなにかで観た記憶はあるが、詳しくは憶えていない。今回この本を読んでみたくなったのは「二人キリ」というタイトルに惹かれてだ、結局ほんとうのところは当の二人にしかわからないということかもしれない。

    1
    投稿日: 2024.03.27
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    昭和11年に実際に起きた「阿部定事件」を題材とした村山由佳さんの最新作。 阿部定に殺された吉藏の妾腹の息子・吉弥が、事件の顛末を小説として出版するために、阿部定本人をはじめ関係各者にインタビューをして当時の真相、〈定と吉藏の二人の間になにがあったのか〉を追究していく構成になっている。 読み応えたっぷりだった。阿部定という女性のことは全く知らなかったけれど、百年ほども昔の日本でこんな事件が実際にあったのだという事実は、随分と衝撃的である。 現実であれフィクションであれ、私がこうした男女の関係性を好きなのは、「不倫」という言葉でまとめてしまえば陳腐で滑稽でふしだらでありきたりなのに、でもそこには当人にしか分かり得ない、簡単に分かってもらっちゃたまらない唯一無二の純粋さがあるからなんですよ。 倫理に悖る当人と、騒ぎ立てる外野、そこにある言説はつねに表裏一体だからこそ興味深いし、ままならない感情とむき出しの本能がとても魅力的に映る。 やっぱり不倫の愛って、お互いが死んで初めて結実するのだろうか。彼らが希求したのは離婚して再婚すれば手に入る類いの幸せではないような気がするし、それしかないのだろうか。

    4
    投稿日: 2024.03.27
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    このレビューはネタバレを含みます。

    二人キリ 著者:村山由佳 発行;2024年1月30日 集英社 初出:「小説すばる」2022年10月号~2023年10月号 阿部定について書いた評伝小説。作家の波多野吉弥は7歳年下の映画監督Rと仕事をしている。今も映画を撮っているが、次は阿部定事件を扱った「定吉二人」に向けて吉弥が書いている。しかし、脚本ではなく小説を書いている。Rは完成を待ち望んでいる。小説でいい。脚本はRが書けば映画は撮れる。映画と小説の同時公開を狙う。 阿部定事件が起きたのは、吉弥が子供の頃、昭和11年。彼はその時から阿部定に興味を持ち、あらゆる切り抜きなどの資料を暗記するほど読んでいた。そして、若いころから関係者へのインタビューを行っていた。幼なじみ、定が働いていた店の関係者、定とできていた男たち・・・など。そして、吉弥は40代のときに初めて定を訪ねてインタビューを試みる。 話の中で明かされるが、吉弥は殺された石田吉蔵の息子だった。吉蔵の妾だった小春が母親。この千枚級(本は500頁弱)の大作は、吉弥が書いている評伝小説そのものになっている。小説の中には、14の証言(インタビューした人たちの話)が紹介されていて、それに加えて小説部分がある。14の証言は、阿部定が3回出て来ているので12人ということになるが、最後は死んだ吉蔵なので、これは架空ということになる。 評伝小説なので、あらかたの部分は評伝、すなわちノンフィクションに近い。いろいろなものが実名で出てくる。書き上がった小説は、本になる前に定に読んでもらった。締めくくりは、定の失踪。そして、読んだ定も本当に失踪する。しかし、小説を読んだから真似をしたのではなく、その前から消えようと思っていて、準備もしていたのだった。 長かったが面白かった。5つ星評価で★★★★☆。やや甘めだけれど、★★★☆☆よりは面白い本だった。

    0
    投稿日: 2024.03.26
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    阿部定という奔放な美しい女性が、なぜ愛人を殺害し、男性器を切り取り持ち去ったのか。 彼女は愛人を独り占めしたかったからそのような行動に及んだのだと思う。 自分は片時も離れたくない、と思っているのに、相手は本宅へ帰ろうとしていることも、定の感情を駆り立てた一因だ。 一緒に居た期間は短かったものの、定と吉蔵の燃えるような数日間は凄まじかった。これほど互いを求め合う者達をこれまでに見たことがない。 吉弥も自分の父親を殺されているのにも関わらず、定の魅力に浸かっていく様子が分かる。(性的な意味では無い。) 定を知っている者の証言を読んでいくと、定を悪く言う人、良い印象を持っている人、悪く言いながらもどこか憎めない人など様々で、彼女の人間的魅力に感服する。 定が吉蔵との関係を「悲恋ではない」と言うシーンが好きだ。全力で愛したからこそ、後悔がないのだと思う。 吉蔵は死ぬ時に、大して抵抗しなかったように思う。まるで定になら殺されてしまっても良いと言うように、あっけなく逝ってしまった。 吉蔵がそのまま生き続けていたとしたら、2人の関係はどうなっただろうと考えると、別れる運命しか思い浮かばない。やはり、定はああするのがきっと良かったのだろう。

    10
    投稿日: 2024.03.25
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    最初はちょっと読みにくく感じたけれど、すぐに慣れて物語の中に引き摺り込まれた感じ。 阿部定事件は名前とざっくりした内容しか知らなかったので、興味が湧いてしまいこれから調べようと思う。 2人は純愛だったのかど変態だったのか。 今となってはわからないだろうけど、定のおにぎり食べてみたかったな。 読み応えがあったのでまだ阿部定の濃厚な余韻がムンムンする。

    14
    投稿日: 2024.03.24
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    村山由佳さんの作品には、盆地にある狭い畳の部屋に夏の湿気が溜まっているような、むせ返るような性欲を感じて大好きなんだけど、 二人キリではもうまさにそれがむわっとすごい湿度で描かれている感じでした。 度々ある「におい」の描写がなんとも生々しい… そしてなんといっても、描かれた男性の鯔背な立ち居振る舞いが、ありありと目に浮かんで、これがたまらんのだ。

    0
    投稿日: 2024.03.24
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    実在の阿部定事件のフィクション。定に関わった幼少期からの人物、金の付き合いの男達も含めて相当な厚みの内容だった。主人公は定に局部を切り取られた妾の息子が裁判記録や定の関わりに直接インタビューした記録と言う形をとっている。 内容がだけにエロい箇所は多いが、それ以上に人間の脆さと、壊れる前に踏みとどまる人間の対比が哀しく描かれている。

    20
    投稿日: 2024.03.23
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    フィクションなんだろうけど、ノンフィクションなのではと思わせるほどの細部にわたっていろんな角度から(証言、14歳の時に強姦されたと言われてる慶大生、幼なじみ、娼館時代の同僚、腐れ縁で親代わりの男、最後の愛人市議会議員、吉田屋の女将(吉蔵の妻)、満佐喜屋の従業員) があって読み応えはじゅうぶん。 それにしてもこんな性欲の強い女性がそれに呼応できる唯一無二の男と出会ってしまったんだね。 あのまま、校長先生(議員さん)のお妾さんで小料理屋でも持って静かに一生を終えた道もあったろうに。 いや定のことだからまた浮気して捨てられてってことを繰り返していたかもしれない。 でもこんな猟奇的な殺人事件が起こさずにすんだじゃないのかな。 血で書いた”定吉二人きり”がまた効いている。 とにかく最後は連泊連泊でお金も底をつき、お金の無心に愛人に会いにいってそれで飲んだり食べたり、もう終わってるよね。 最後は行方不明のなって(もうとっくに亡くなっていると思うけど)晩節を汚すよりあのイチモツを抱えたまま自死したほうが伝説になった気もする。 けど阿部サダはやはりああゆうふうにしか生きられなかったんだろな。 監督のR(男性)と小説家の吉弥(吉蔵とお妾さんの間に息子)お互い惚れ合っているのは最初からなんとなくわかった。

    1
    投稿日: 2024.03.23
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    このレビューはネタバレを含みます。

     実は、隠れ村山由佳ファン。新作が「阿部定事件」とあり、ことの全貌は知らなかったので約500ページを読了しました。  お相手の石田吉蔵の息子が、当初は映画の脚本のため、やがては小説のためにと、阿部定事件の真相を追うという建付けになっています。BBCのドキュメンタリー番組に出てくるような関係者のインタビューを各章に盛り込みながら、その生涯から事件、そしてその後を描いています(インタビュー記録は本当に目の前で喋っているよう)。猟奇事件という印象が強く、不幸な生い立ちからおどろおどろしい場面を想像したのですがいい意味で裏切られました。やはり村山由佳に男女の機微を書かせると一級品になります(よくぞ男性側の心理もわかるものだと感心)。  阿部定本人は、日本中を転々としており、Wikiなどで確認しながら読み進めました。ゆかりの地も多く、旅行の際には気を留めてみようと思います。

    0
    投稿日: 2024.03.15
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    猟奇的殺人犯でありながら逮捕直後の写真では、にこやかな笑みを浮かべる阿部定。 掴みどころのない阿部定が、村山由佳アレンジで令和に蘇る。 近所で評判の美少女は早熟で男好き。 殺害された石田吉蔵の妾の子である吉弥が、定と関わりのあった人物から集めた数々の証言から、彼女の実像が浮かび上がって来る。 吉蔵と出逢ってからの定の立ち振る舞いは目を見張る。 独占欲も執着心も包み隠さず、自らの欲望の赴くまま、狂ったように繰り返す性交。 吉蔵を殺害後に刻んだ「定」の名と、残した「定吉二人キリ」の血文字。 愛と狂気は表裏一体だと確信する。

    7
    投稿日: 2024.03.03
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    実在する事件をもとにした作品。 それを知らずに読んでいて、なんか妙に現実味があるなと思い、巻末を確認して実話をもとにしていると知った。 途中から証言を書き連ねるという書き方になったとき、こんな一言一句書き起こせないだろと心が離れかけたけど、最後まで読んだあとだと、合点がいく。 作中で主人公が書き上げた本は最高の出来と評されているけど、全文登場していないとはいえ、最高と書く勇気はすごいと思った。

    1
    投稿日: 2024.02.26
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    ブクログで見つけて読んでみることに。 阿部定事件が題材になっているとあったが 私自身阿部定事件もぼんやり知っているだけ だったが、一日で読了!!! あまりにも完成度が高過ぎて もう、他の本が読みたくないです!! タイトルの二人キリも 割と序盤で納得してしまいました。 こんなにも、圧倒されるとは 思いませんでした。 吉さんと阿部定が狂うほど 頭おかしくなるほど恋焦がれてしまうところに 不覚にも共感してしまいました。

    2
    投稿日: 2024.02.26
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    このレビューはネタバレを含みます。

    2024/01/26リクエスト 5 定と吉の関係に究極を見た 肉体を伴う恋が、人をどれほど狂わせるか 逮捕後、定の持っていたイチモツはアルコール漬けにされる それを公判中に見せられてどう思うか聞かれ 非常に懐かしく思っております と答える そう答えられる定を心のなかでは羨む人も多いだろうな。 大まかな筋は真実だろうけど、その周りの肉付けはこの著者ならでは。定の語っている感情の起伏が泣けるくらい素敵に感じた。こんな人と巡り会える人生は、素晴らしいものだろうな。

    1
    投稿日: 2024.02.25
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    題材的にエログロではあるし、卑猥な単語も赤裸々にふんだんに使われてあるのだが、人間の深部を奥へ奥へと掘り下げるようなアプローチに引き込まれて、すごい読書体験だったなと満足度が高い。 特殊な猟奇的事件から、かえって愛欲の普遍性みたいなものまで見せられて、、、澄まして日常生活を営む普通の人が、なんか卑怯にすら思える。

    5
    投稿日: 2024.02.12
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    うわー、これまたすごい本を読んだな。 有名な「阿部定事件」を題材にした本作。 フィクションなんだけど、これが事実のような気がしてしまう。 226事件の同じ年にあった事件だったのか。 恩赦で5年で出てきたとか、坂口安吾がインダビューしたとか、今とは当たり前だけど時代が違うのだなぁと。 定を知る人の証言の読んでると、彼女の悋気に辟易し、なんて嫌な人なんだろうと思っていたのに後半は、彼女にやっぱり共感は出来ないんだけど、ちょっと愛しく思えてくるから不思議だ。 ほんのひと時の恋というか大恋愛が一生を変えてしまい思いもよらない所に来てしまった感じが怖くもあり運命だったのかなとも思う。 ただ14歳のときに無理やり処女を奪われたとなってるけど、無理やりなのか?仕掛けたのは定からなのでは?そこだけ被害者ぶられるのがちょっとだけ微妙。

    11
    投稿日: 2024.02.07