
総合評価
(27件)| 5 | ||
| 13 | ||
| 7 | ||
| 0 | ||
| 0 |
powered by ブクログ2021年 第71回 芸術選奨文部科学大臣賞 2021年 第34回 柴田錬三郎賞 本日は森鷗外の誕生日。 文久2年1月19日、旧暦のままです。 誕生日当日は、文京区の森鷗外記念館が無料開館となります。今年は残念ですが、鷗外の旧居・観潮楼跡に建てられたこの文学館に行けませんでした。来月には伺う予定にしています。 今年は、その文学館が建てられた観潮楼で育った森鷗外の三男・類を描いた朝井まかてさんの『類』 この小説は、1911年(明治44年)に生まれ、1991年(平成2年)に亡くなるまでの森類の生涯を 本人の視点から描いた作品です。 時代と家と個人が重なり合うこの構成は、大河小説としてよいのではないかと思います。 類さんは、いわゆるイケメンですね。 茉莉さん、杏奴さん、そして類さん。 三人姉弟の母が大変美しい人だったことも、なるほどと腑に落ちるます。 そして鷗外はというと 家では子どもたちに甘い「パッパ」でした。 物語は、パッパ森鷗外の死後、森家に訪れる「あれやこれや」を、類さんの性格を映した、実におっとりとした雰囲気で描かれます。 鷗外は第二章で亡くなり、妻と子どもたちには、多くの資産と、豊潤な人脈が残されます。 それでも、主人を失ったあとの家の不安定さは拭えません。長男の於菟さんは、すでに家族を持っていらして、それなりには気を配っているようなのですが、そこは前妻さんのお子さんというところで 鷗外自身も遠慮がちな関わりになっていたようですね。 鷗外の子として見る社会。 優秀な姉たちの存在。 その間で揺れ動きながら、「何者かになろう」とし続ける類さん。 森家の内情の深さには、ただ驚かされるばかりだが、これほど踏み込んだ描写が可能だったのは、 森類氏のご子息ら、ご家族の理解があってこそ。 この小説で初めて知った森家の話は数多いが、特に印象に残ったのは次の三点ですね。 ⚪︎森鷗外の日記のこと 鷗外の日記のうち、「小倉日記」は長年所在不明とされていた。 松本清張は、この日記を追い求める青年を描いた『或る小倉日記伝』で芥川賞を受賞しました。実際にその日記を見つけたのは、引越し準備をしていた類さん本人だったという事実。 ⚪︎類さんの長女の名付け 類さんは、長女の名を木下杢太郎に頼んでつけてもらった。その名は、森鷗外『渋江抽斎』に登場する妻の名前から取られたものだった。 ……正直なところ、これは少し嫌だったのではないか、とも思ってしまう(笑)。 ⚪︎『半日』と嫁姑 森鷗外の短編『半日』は、嫁と姑の関係を描いた作品だが、モデルとも取られかねない嫁の志げさんは、この作品を鷗外全集に収録することを拒否していたらしい。 文学史の陰に、「生活者の意思」があったことを思わされる。 森鷗外ファンはもちろん、 そうでなくても東京・谷中界隈が好きな方には、 ぜひこの『類』を、急がず、ゆったりと読んでほしい。類さんという方が、あのお二人の才媛を持ちながら 穏やかにちょっと大丈夫かなって感じさえ漂わせながら 浮かびあがります。
122投稿日: 2026.01.19
powered by ブクログ森鴎外の息子、類の人生を辿った物語。何か劇的なことが起こるわけでもなく、ただただ類を中心とした森家の70年を辿っているのだが、全く退屈することなく、この長編を最後までじっくりと味わいながら読むことができた。 大正モダン、鴎外の子煩悩ぶり、戦前の豪邸、芸術家が切磋琢磨するパリ、戦時中の庶民の暮らし、戦後のバラック、「もはや戦後ではない」と言われた昭和の暮らしぶりなどなどの描写が美しく、一つ一つの文から情景や当時の人々の雰囲気が伝わり、実に味わい深い。自分が生まれる前の日本の姿が目に浮かぶようで、このような時代を経て、今の日本があるのかとしみじみ思う。 「本当の夢は、何も望まず、何も達しようとせず、質素にひっそりと暮らすこと」 という40を過ぎた類の言葉には妙に納得した。生活に困窮しながらも結局最後までどうにかなって、確執のあった姉らともそれなりの交流を保ち続け、文章でも多少は評価され、このうえなく素晴らしい妻を亡くした後60過ぎて再婚した。「ホント、あなたはそういう感じで生きてきて、生きていったよね」と言いたくなる。同時にそんな類から「三つ子の魂百まで」の品位を感じずにはいられない。 類の人生が柱ではあるが、同時に大正から平成にかけてのそれぞれの場所の空気感や、そこに生きる人の雰囲気を、じっくりしみじみと味わった。久々の読み応えある一冊。
0投稿日: 2025.05.27
powered by ブクログ素晴らしかった。 ほんとに素晴らしい本だった。 心にくるものがすごく深く、また大きすぎて、 【素晴らしい】という言葉しか思い浮かばない。 あの描写がよかった、あそこの表現に感動した、 などという、巧い文章にできない。 そういうところは、言葉より音楽を愛していた、 幼い頃の私が出てきてしまう。 文章で表したいのに、言葉にすると、いま感じていることの、とても細かい部分を取りこぼしてしまいそうになってしまい、どうしたらいいのか、私は分からなくなる。 そんなことを発しても、芸術をも愛していた森類氏は、わかってくれるだろうか? 想像してみるのも、また面白く、きっといつか、再度読みたい、森家の人間の人生を垣間見たい、と思うのだろう。
1投稿日: 2025.02.27
powered by ブクログ私だったら『頼むから働いて!』って言っちゃうな。 当時の森家の生活が詳細に描かれてるのは圧巻。 すごいリサーチをしたんだな…と感服。
0投稿日: 2025.01.04
powered by ブクログとにかくすごい。 圧倒的な生々しさ。 きっと、この小説を書くにあたって、ものすごく調査されたんだと思う。 現代を生きる典型的な庶民の私としては、名家に生まれた末子とその家族の苦悩は理解を超えていて、時々、そうじゃないだろぉぉぉぅ・・・っっっ!と言いたくなる。 大して共感できず、時にはイライラしながらも、この人たちがいったいどうして生きていくのか気になってしまって、ついつい付き合ううちに、最終ページまで来てしまった。 他人の一生に、こんなにヤキモキとさせられるなんて、なんと恐ろしい作品・・・っ!笑
0投稿日: 2024.12.25
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
森鴎外の末子、類を主人公とする小説。 評判の良い小説と聞き、内容を全く知らずに読んだが面白かった。 昔の風俗などよく調べ、上質の文章で綴られていると感心しながら読んでいたが、途中でモデル本人たちの著作が多いに下敷きになっているはずと気づいた。 よって、評価はできないが、引き込まれて読んだことは確かだ。 戦後は、お金がないないと貧しい生活に終始した類だが、晩年は別荘地の家を建て替え、後添いをもらって暮らす。一体庶民には真似のできない暮らしぶりだ。どうやって成り立っていたのか、謎のまま終わった。 どんなに貧しくても生まれながらのお坊ちゃんは内面が貴族のままなのであった。 もともと鴎外はあまり好きではないが、やや興味をひかれた。
0投稿日: 2024.10.07
powered by ブクログ親の名と才能に押し潰されながらも、自分という存在をいつまでも探す姿だなと思った。 親が偉大だからと言って子供の才能が開花するわけではない。 でも、自分の姉妹達は親と一緒のように花開いていく。 類はただ背中を見ていくだけだったんだろうなあ。 書いても、描いても、うまくいかない。 自分は何をしたいのだろう、どうしていくべきなのだろう。 それを探すのに費やした人生だったのではないかな。
0投稿日: 2024.09.08
powered by ブクログ森鴎外の第4子の生涯を描くお話。これまで知らなかった森鴎外の姿、後妻志げ、森於莵、茉莉、杏奴、類の家族像が垣間見られる本格的大著。ではあるがこれまでのまかてさんの諧謔にあふれた展開がみられないまま終わってしまった。研究者本であればそれも仕方がないだろうが、まかてさんならではの脚色がないのは残念だった。
0投稿日: 2024.08.21
powered by ブクログ森鴎外の末子、森類が大正から昭和、平成を生き抜く物語。 偉人の息子として生まれた森類の煌びやかな少年時代と、偉大すぎる親を持った故の懊悩を描いている。 類は森鴎外の事をパッパと呼ぶ。 それだけで、当時の森類の生活レベルが分かるようだ。 大正時代に海外文化を生活に積極的に取り入れ、食事や芸術を楽しんでいる森家の雰囲気がなんともモダンで、読んでいるとなんだか羨ましくなる。 現代のように日本の生活と海外の文化が混ざり合っておらず、それぞれを大事にし、意識を持って向き合い大切にしている空気に、この時代特有の豊かさを感じた。 誰もが名前を知っている森鴎外という作家の人間像も温かく描かれる。 妻と子供達を愛し、死の間際までプライドをもって仕事に励む森鴎外の熱い生き様が、物語序盤に関わらず明治の男の姿を心に読者に焼き付ける。 独特な感性と文章力を持ち、自分のペースで人生を謳歌する長女、森茉莉。 一家を支える精神的な強さと優しさに溢れ、絵や文学にも才能を発揮する、森杏奴。 二人の姉も個性豊かに描かれており、長編の小説にも関わらず、飽きずに読めた。 作品を通して、実在する人の一生を追体験すると、いつも言葉にできない感慨を覚える。 朝井まかて作品の中では、1、2を争うレベルで好きだった。
3投稿日: 2024.04.10
powered by ブクログ森鴎外の家系を知るには面白い。ただ、主人公の類は最期まで自分の才能を客観的に捉えることのできない不器用な生き方をしているので読んでて疲れる。 まかてさんの表現もやや冗長であるため、読みづらさもある。 兄弟であった森茉莉さんや森杏奴さんの作品を読んでみたい!との興味は抱く。
0投稿日: 2024.03.30
powered by ブクログ森鴎外の末子、明治時代のお坊ちゃんである森類の生涯。 550頁超の読み応えだが、類さんの名前も知らなかったくらいなので、どのような展開になるのかがわからなくて、ずっと面白い。こういう人の小説こそ読みたい。 甘ったれで勉強ができず、社会に出て苦労したことがなく、パッパのような何者かになろうとするが、画家としても作家としてもなかなか芽が出ない。贅沢をして煙草ばかり喫んでいる。 森家の財産を食いつぶしていく様子、特に鴎外の版権が切れた後、戦後は読んでいて恐い。それでも、お坊ちゃん特有のおおらかさ、無邪気さ、善良さのため、どこか話が深刻にならないのがおかしい。 「役に立つ立たないじゃないんですよ。あなたのような人が生きること自体が、現代では無理なんです」(40過ぎで初めて働いた出版社の編集部員) 「威張るんじゃない」「いいか、肝に銘じておきたまえ。鴎外が偉いんであって、君が偉いんじゃない」(小林勇) 「僕にはこれしかない、死んででもやり抜くという決意、あなたにはそれがないのよ」(妻) 彼らの言い分は正しい。子どもが4人もいるなら尚更だ。 しかし、正しいと感じる分だけ、姉森茉莉が体現していた「底抜けの善良さ」や戦前の東京にあった社会の余裕が失われてしまったことが悲しい。 森茉莉、杏奴との姉弟関係が変化していく様子、当時のその場所に居合わせたような感覚になれるのも楽しい。
0投稿日: 2024.03.15
powered by ブクログ明治の終わり、森鷗外の末子として生まれた類。愛情豊かな父と美しい母、ふたりの姉と、何不自由なく華やかに暮らした少年期。父の死という喪失を抱えながら画家を志し、パリへ遊学した青年期。戦後の困窮から心機一転、書店を開業。やがて文筆家の道へ。文豪の子という宿命を背負い、何者かであろうと懸命に生きた彼の、切なくも愛すべき生涯を描いた大作。著者による講演「鷗外夫人の恋」も載録。 森茉莉の大ファンとしては読まずにいられなかった。朝井まかてさんの作品は初めて読むけれど、すごい下調べしたんだろうなあと思う細やかな描写です。やや冗長な印象もあるけれどちょっとした植物や風景の描写があるから重厚な作品になるんだろうな。類はぽやっとした子で、鴎外とはイメージが違いますが、ある意味茉莉と似ていた部分があるんだろうな。でも当時は男女でかなり求められるものも違っただろうから大変さが伝わってくる。茉莉に助けを乞うところなんて泣けてくるよ・・・。書店をやっていたこととか全く知らなかったのでびっくりした。奥さんに支えられたわりにあっさり再婚に走るところは女性としては微妙な心持ちになった(苦笑)
0投稿日: 2024.03.03
powered by ブクログ舞姫のエリスとは結ばれなかったが、子供達にドイツ風の名前をつけた森鴎外。於菟(おと)、茉莉(まり)、杏奴(あんぬ)、類(るい)。偉大なる父鴎外亡き後の森家の様子が、不肖の薬子を自覚する類の目を通して描かれる。。類と茉莉、杏奴との葛藤の中で小説とは何かについて考えさせられる。
0投稿日: 2024.01.31
powered by ブクログ充分に読み応えありました。長編多いけど飽きない恐るべし朝井まかてさん!ウイキペディアを開いて全部が実話で事細かに正確なのは驚くって事。晩年の千葉県移住もそうだし!森茉莉ではなく類なんだね、偉人伝でもない初めて知る人なので吸い込まれる程の夢中にならない ただ鴎外のパッパぶりやズバズバ言う茂げ、エッセイの森茉莉さん中でもアンナの行き方が好感触ですね。初めて就職した社長に言われたあなたのような人が生きるのが無理だと 自信がないけどここまで役に立たない人間だと思わなかったと自身を語る場面で好きになり好感が持てた。
8投稿日: 2024.01.16
powered by ブクログ歴史系小説と朝井まかてにハマるきっかけになりそう。好きな部分→でもパッパ、パッパがいないと花の名を教えてくれる人がぼくにはいません。
0投稿日: 2023.11.26
powered by ブクログ偉大な父鴎外没後、森一家の半生を末っ子「類」の目線で描いた作品です。主人公の類は、日がな一日を思うままに過ごせればそれで良しの、いわゆるおぼっちゃま。苦しみは遠ざけ、すべき苦労は周りに任せ、ピンチになれば「鴎外」と書かれた印籠を掲げてその場を凌ぐ。生活が困窮すれど変わることのないこのスタイル。本人に一切の悪気無し。そんな穀潰しのダメ男を支え続ける妻と姉、そして子供たち。あぁ、なんという人生。なんと腹立たしい所業の数々。だが、正直羨ましい。 検査入院した妻美穂との会話。病室で放つ美穂の言葉一つ一つが類の本質を的確に捉えて心を抉る。聞かされる方は逃げ場なくコーナーに追い詰められる。ノックアウト寸前。そして最後の一言が・・・。そして類はマットに沈むのでした。 良妻賢母美穂さん亡き後、60歳半ばを過ぎての再婚。おいおい、お前さんというやつは一体なんなのか。と思いつつ、だが羨ましい。 本書は、苦労もなく育った子供たちが、支えをなくした後、社会の荒波に揉まれながら人生の海原を渡る様を描いたアドベンチャーストーリーとも言えます。 姉茉莉さんの家でトーストを馳走されるくだりを読み終えた後、わざわざ厚切りの食パンを買いに行きました。その後バターを塗りまくった厚切りトーストを美味しく頂いたことは言うまでもありません。 ごちそうさまでした。
0投稿日: 2023.11.23
powered by ブクログ森鴎外の息子である類氏の生涯の物語である。 父鴎外をパッパと呼んで愛し、なに不自由なく少年期を過ごし、父を失ったあと、画家を志してパリへ進学した青年期。そして戦争に終戦の昭和と、明治から平成の日本を生きた物語。 類はずばぬけた画才も文才もないけれど、どちらの世界にも手を伸ばしたいと願い続けるけれども華々しい花が咲くことはない。けれどときどき原稿依頼などあるのであきらめきれずに生涯とりかかる。 彼の生きた明治から令和まで。その克明な描写が全体をかたどった作品だ。 キャラクターというより、その人が生きた背景を楽しむのに目がないかたにオススメです。
0投稿日: 2023.11.12
powered by ブクログ団子坂が徒歩圏内にあるので手に取った。 森類さんの生き方にかなりモヤモヤして、奥様が「働いてくれ」と懇願するシーンではよく言った!と思うくらいだったのだけど、森類さんがクビになった出版社の同僚が言っていた、生きる時代が違ったのだ、という趣旨の一言になるほどとなった。 明治時代は高等遊民と呼ばれる人がいたし、昭和の国民皆が貧しい時代に突入しなければ、森類さんはそのありのままの生き方で生計を立てることもできたのだろう。 森鴎外が日露戦争から凱旋して、志げさんの元に会いに行くシーンはとてもロマンティックで印象的だった。
1投稿日: 2023.10.28
powered by ブクログ中盤までなかなか読み進められず苦戦していましたが、類が困窮し、苦労し、人間味が増してからはスピードが急に加速。結論としてはとても面白かったです。 結婚後、妻が老けたり、痩せたり太ったりするのは、夫の甲斐性のせい・・・ってことは逆も然り・・・ いろいろ考えるところがありました。 志げさん、好きです。茉莉さんも。美穂さんも。
1投稿日: 2023.09.30
powered by ブクログああ、読み終わってしまった 残りが少なくなるのを感じる度にあともう少しで終わってしまうと寂しくなった 私は不勉強で、森鴎外氏も森類氏も詳しく知らない 何となく、「椿姫」の人だったよなぁ位の知識だったため どんな人生だったのか、ネタバレもなく話しに入り込んでいった 庭の描写では花が浮かび、食事の描写では色が浮かび パリの場面では一緒に歩いているような気さえした 1人の青年の人生を読むというよりは 近所で見ていた位の気持ち じっくりしっかりしみじみ読める一冊
22投稿日: 2023.09.24
powered by ブクログ森鴎外の末子 類 を中心に、両親や兄姉が描かれる。雲の上の家族が少し近づいた感じ。 今より”家”が重い時代、同じ家に生まれたいとは思わないなぁ私は。
2投稿日: 2023.09.21
powered by ブクログタイトルの類とは森鷗外の末っ子、森類(1911~1991)を指す。偉大なる文豪を父に持つ子の、その人生は「波乱万丈」と言うまでにはいかないかもしれないが、何とも起伏に富んだ生きざまといってよく、幼いころに死に別れた父鷗外への思いに加え、独特の感性を持ち類に影響を与えたであろう母志げ、およびそれぞれとてもユニークで個性的で、かつ才能もあった姉茉莉および杏奴(あんぬ)、さらには伴侶として類と子どもを支え続けた妻美穂との、それぞれの関わりを通じての化学反応的な類への作用が描かれていく。 当初予想していた“偉大な父に対するプレッシャーに苦しむその息子”といったものはほとんどない。父の暖かさを思い出しながら、“自分は自分”として、類はマイペースに青年時代を謳歌していく。しかし年を経るにつれ、目指すところの画家あるいは作家としてなかなか芽が出ずにいる、その焦りが全編を包んでいく。ただそうした苦しみも、何かどん底でもがき苦しむ、といったところまではなく、上流階級の出身ゆえの“のんびりさ”のようなものが、通奏低音のように流れている。それが、この物語に現実性をもたらしているといってよい。 明治、大正、昭和そして平成と、時代や社会の価値観がめまぐるしく変わる中で、自分の人生を模索し、日々を生きていった類。何か大きなことを成し遂げなくとも、時に「どうして何もしないで、ただ風に吹かれて生きていてはいけないだろう」といった思いにとらわれながらも、しかし確実に“自分としての人生”を生き切ったその姿に、静かな感動を覚えずにはいられない。
0投稿日: 2023.09.18
powered by ブクログ森鴎外の家族のことは全く知りませんでした。父親の死後もお金には不自由なく生活していたのに戦争後は一転食うに困る困窮生活。こんな人もいたのかと驚き とともに晩年は苦労しながらも家族には恵まれてホッコリさせられる話でした。個性的な2人の姉の茉莉と杏奴の話も面白く、今度茉莉の本も読んでみたくなりました。
0投稿日: 2023.09.18
powered by ブクログこの作家さん、 以前は他の作品を読み進められなかったのにこれは面白かった。 昔森茉莉教みたいになってたことがあり、 彼女から見た他の兄弟は知っていたものの 視点が変わるとこうも違うのか。 母親の志げさんは 前妻さんが産んだ長男との確執もあり、 自分が産んだ男の子こそ長男のようであり、 可愛い末っ子であり、で うーん、親御さんの教育が?だったのかな‥?
0投稿日: 2023.09.17
powered by ブクログなんだか先が気になって、読み進めてしまった。 きっと、一人では生きてはいけないんじゃないかというくらい、頼りない主人公。 でも不思議とどこかから手が差し伸べられて、手を引かれながら、歩んでいく感じ。 類の考え方に「どうして〜」と歯痒く思いながらも、嫌な感じはなくついつい弟を見るような目で見守るように読んだ。 どこまで史実に忠実なのかわからないけど、類の一番の幸運は、奥様の美穂さんと結婚して子宝に恵まれたことだろうなぁ、と思う。美穂さんはまさしく良妻賢母。自分も生まれの良いお嬢様のはずなのに、あの状況で家計をやりくりし(そもそもまともな収入ないのに…お金に無頓着な夫なのに…)家族に美味しいものを食べさせる努力を惜しまず、子供達を育て上げ、さらには夫が一人で贅沢をしていることを過度に咎めないなんて(一度本気で怒ってたけど)同じ主婦として尊敬しかない。と同時にこれがほんの数十年前までは、嫁に行った女性の当たり前の姿だったのかなぁ、とせつなくなり、「森類!もうちょっと美穂さんを気遣って!頑張って!」と声をかけたい気持ちになった。 そして美穂さん亡き後は、子供達がかわりに父、森類を気にかけ、晩年まで支えている。 どこか放っておけない人だったのかなぁ。 あと、面白かったのは、そこかしこに出てくる草花の名前、昔ながらの色の呼び方、着物の柄など。 全然わからないからネットで調べながら読んだんだけど、とても色彩豊かで楽しかった。
1投稿日: 2023.09.14
powered by ブクログ森鴎外の末っ子類さんの話。 何不自由ない上流の生まれながら、気の毒なほど甲斐性が無い。 しかし金銭的には苦労しながらも、余徳で何となくそのまま生きて行けたのはなかなか凄い事ではなかろうか。 何かで成功するとか、モノになる人生を人は目指しがちだが、類さんは全くその反対。 生まれ育ちが良いせいか、本人の気質のせいか不明だが。 歳をとってもデニムにレモンイエローの手編みのセーターを着こなして晴れやかに笑う。 何をもって良い生き方というのかよく分からないが、新たな視点を開かれたような気がした。 そして、森家の人々の文章を読みたくなった。
0投稿日: 2023.09.11
powered by ブクログ森鴎外のことなんて何も知らなかったから凄く面白かった。 類ちゃんの気持ち凄くよく分かる。 お茉莉さんとは仲が戻って良かった。 2人の書いた本読みたいな。
0投稿日: 2023.07.31
