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1R1分34秒(新潮文庫)
1R1分34秒(新潮文庫)
町屋良平/新潮社
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総合評価

24件)
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    日々、生きているといった実感がないまま、靄がかかったような毎日。ヒリヒリしない波風の立たないぬるま湯に浸かった現代の日本に存在している人種。尊敬に値する人種。ボクサー。勝つべきなのは目の前の相手か自分自身か?ボクサーのサクセスストーリーでもなんでもない、この物語。その精神性を垣間見る。普通のどこにでもいそうな若者の主人公とトレーナーのウメキチの奇妙な共感が見どころ。サラッと読めてしまうが内容はなかなかに硬い。

    7
    投稿日: 2025.08.11
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     21歳のプロのボクサーの一人語り。自分の状況を見つめながら、相手を想定しながら、どう戦うのかを思い巡らしながら、ボクサーの日常の生活やトレーニング、減量の方法などを語る。あくまでも戦う姿勢を堅持している。ぼくはデビュー戦でKO勝ちした後は勝てていない。敗者の言葉が連なる。そして、言語化できるものを言語化して表現する。結構タフな文章の構成の仕方がある。戦いのシミュレーションが構築されていく。しかし、勝てない。勝てないが故に、なぜ負けたかを分析する。負けるにはたくさんの原因がある。戦うのは、自分であり、実に孤独な戦いでもある。メンタルは自分で強固にするしかない。ここまで、緻密に語るには、自分の体験がなければできない。  本書の最初の対戦相手は近藤青志。青志を徹底してデータを集め分析する。最初は対戦相手として現れるが、いつの間にやら親友になってしまうようだ。青志くんは「あしたは、がんばろうな。俺のがんばりがお前のがんばりを引き出せて、いい試合ができたら俺はそれでいいんだ」という。勝つことへの執念はないようだ。自分が日本チャンピオンを目指していたのに、いつの間にか下方修正していく。  プロとしての対戦相手との距離感覚。これがきちんと掴めないことが、消耗する。ボディを狙われる。それはスタミナ不足を見抜かれているかだ。恐怖は精神力で克服できない。あるのは圧倒的な技術に対する信心、不信、それに付随する肉体のストレス、そして全身の反射だけだ。気持ちで奮い立たせることができるのは、モチベーションだけだ。実に冷静な分析をする。青志くんはボディがうまいのだ。  「お前は視力を尽くしたのか?」「さいごのさいごまでいっこのボクサーを遂げたのか?」「最後のダウンで、お前は本当に立てなかったのか?」「奇跡の大逆転は本当にあり得なかったのか?」を自問する。負けて、自分いといかける。「視る技術とダッキングウィービングの技術がまだ連動していないかも」とトレーナーから言われる。結局は、足が動かせていないのだ。  そして、トレーナーは、私を見捨てて、去り、先輩のウメキチがトレーナーの代役をする。この梅吉になってから、自分への言葉でなく、ウメキチへの言葉になって、やっと対話がする亩。ウメキチは、よくぼくを見ていた。何が問題かをきちんと分析し、対応する。ウメキチは、「俺をそだてるつもりで付き合ってくれや」という。「なんでお前はボクシングやってんの?」という質問もする。「勝ちたいのか?」そして「考えて。考えるのはお前の欠点じゃない。長所なんだ。」という。  そして、試合の相手が決まる。  友人は、映画を作っていて、ぼくを写し続ける。美術館に連れて行ってくれる。彼氏がいる女が付き合ってくれる。そういう時間を過ごしながら、どう勝つのかを頭の中で考え、ウメキチの練習メニューに従って、信頼のシステムを構築する。  そして、ぼくはきっと勝つ。1ラウンド1分34秒のTKOであっさり勝つのだ。  ボクシングは、ハングリー精神が必要で、ガッツがいるという昭和のボクシングがあったが、明らかに違った視線で、ボクシングに立ち向かっているのが見えてくる。

    0
    投稿日: 2025.06.05
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    負け越してトレーナーに見放されたボクサーが、新しいトレーナーと共に次の試合に向けて、と言うストーリー。話自体は単純だが、主人公はボクサーとしての自分を見失っており、それを取り戻すというのがある。スポーツ小説のようで純文学という感じ。 場面の切り替わりが独特で、少し戸惑ったが面白かった。ページ数も短いのですぐに読める。

    5
    投稿日: 2025.03.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ボクシングが好きで、読みたいなと常日頃思っていた中一気に読みました。テレビやネットでは勝ち進みスポットライトの当たる成功した選手しか見ていませんが、その裏には当然負ける選手もいる中でそんな選手たちの日常であり非日常を追体験することができました。折々でくすっと笑えるシーンもあり、最後にあっさりといって言いのか分かりませんが、タイトル回収をするのもふふっときました。

    0
    投稿日: 2025.03.06
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    図書館で見かけ、そういえば読めてなかったなと思い読了。ボクサーを題材に、試合に対する負の感情に比重を置いて描かれた作品。主人公の剥き出しの、生身のままの言葉が多く、それがボクサーとしての理想像とのギャップを写実的たらしめていたのが印象的。でもそんなに好みじゃなかった。こればかりは完全に好みの問題( ; ; )

    2
    投稿日: 2025.01.19
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    ウメキチに出会ってから加速的に面白くなった! 主人公が自分自身、ボクシング、勝利に 真正面から向き合っていく姿がかっこいい。 中途半端じゃない真剣だからこその恐怖。 ウメキチも、ガールフレンドも、友人も 最高だったなぁー! 河辺で友人の前でシャドウするシーンと 対戦相手が決まってガールフレンドに恐怖を吐露して次の日、別れを告げるシーンが好き!

    4
    投稿日: 2024.10.05
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    ヒリヒリするボクサーのはなし。 男の物語。 『人生クライマー』をみたばかりなんだけど、それも、誰も登ってない崖を登りたい。 クライマーをやめられない。 ボクサーをやめられない。 町田康の解説がよかった。

    1
    投稿日: 2024.09.12
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    無気力負け組から負け組への脱却 そんな小説だったような気がしました。 ボクシングを題材とした場合、一般的なイメージとしてはギラギラした生とか、(入子型の)自分の存在意義の模索などをストーリー展開に絡めてくるようなものが多い気がします。 「あしたのジョー」とか、寺山修司の「あゝ荒野」「ミリオンダラー・ベイビー」「キッズ・リターン」最近なら「春に散る」 勝ち組と負け組のコントラストがはっきりしていて、その狭間で苦悩する登場人物たちが印象的であったりします。 ただ、主人公のボクは物語の中で、意欲の輪郭もみえないような状態でボクシングをしているところからスタートします。 対戦相手を憎むどころか(一般的なボクシングものは対戦相手もしくは自分と相対的な何かを憎むことが多い)、親友にも近い感情を持ってしまっています。 他人を憎めない者は、勝ち組とか負け組とかそのような仕分けは存在しないのかもしれません。 それはそれで、生きていくモチベーションや羅針盤をおのれの中で作りにくいのかもしれません。 他人を憎むということは、自分を相対化しやすくする効果があると思いますので。 なかなかチャレンジングなことをやってそうな小説だと思いましたが、わたしにはちょっと合いませんでした。

    0
    投稿日: 2024.09.09
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    主人公は21歳のプロボクサー。デビュー戦をKOで飾るが、その後の戦績は思わしくない。やたらと内省的で、彼の思考がぐるぐると、あえての(多分)わかり辛い文章によって、延々と続いていく。 ボクサーってもっと野心家というか、「成り上がってやるぜ」「絶対勝つぜ」みたいなギラギラした目付きの人たちだと思っていたが、もちろんそれは勝手なイメージで、彼のような内省的、考えすぎなキャラだって居るのだろう。負けが込んで、自らの能力の限界が見え始めたら尚さら。 しかし、3敗目を喫し無力感に陥っていた彼の前に新しいトレーナーのウメキチが現れる。このウメキチの関わり方が心地よい。本人を否定しないし、よく見ている。身体の使い方とか、体調とか、食事とか、睡眠のとり方とか。細かい点まで見て理解してくれた上で的確な助言を与え、弁当まで作ってくれる。最初は反発していた彼も次第にウメキチを信頼するようになり、気持ちが変化していく。 ボクサーに限らず、今の若い世代ってきっとこんな先輩を求めているんだろうなと思った。自分を知ってほしい、自分に合ったやり方を丁寧に教えてほしい、上から目線じゃなく対等であってほしい。そして、ウメキチは決して彼に尽くしているわけではなく、自身もボクサーで自分の研究のためにやっているのだ、というところも念が入っている。 生きていれば多かれ少なかれ、試合に臨むボクサーのように、試練とかヤマ場を迎えては何とか乗り越え、ほっとすると次の試練が来て、無理だ、自分はもうダメかもと思ったり、の連続だと思う。日々ぐるぐると内省しながら戦っているのではないか。 最後の最後に、タイトルの「1ラウンド1分34秒」が出てくる。彼の「勝ちたい」気持ちに感動したし、良いラストだなと思った。

    0
    投稿日: 2024.08.27
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    自分の職業と状況と重なる部分があって読みながら考えさせられた。この試合に勝ったからといって状況は変わらない、でも変えるためには試合をし続けなければならないという可能性と不条理について本当に共感できた。自分を犠牲にしながら戦うことの意味を教えてもらったし、理由はどうであれ難しいことは一切抜きにして目の前のことにひたむきになれた時が人間1番強いなと思った。

    0
    投稿日: 2024.05.21
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    自分の心の葛藤を、下手に綺麗にせず葛藤のまま書かれた文が多く、印象に残った。 爽やかなスポーツ小説といったものではないが、登場人物たち全員に対して、わかるよ、頑張ってくれ、報われてくれ、、と思わずにはいられなかった。 170ページ程度だが、描かれている期間も1年程度(?)と短く、密度の濃い話だと感じた。

    201
    投稿日: 2024.03.12
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    初読みの作家さんで芥川賞受賞作。 正直、ページ数の割に読むのに時間がかかるくらい引っ掛かりの多い作品でした。 ボクシングの描写はリアルに描いているけれど、スポーツ系と言うよりも、さらにその奥にある人生の葛藤や悩み成長を濃く書かれている感じ。 好きで始めたボクシングに対しての感情は、虚無感や目的を見失ってしまう今の自分の生き方にシンクロしてくる感じがあった。だから、この作品がスッと読めなかったのかな。 読了短歌 窓から 見える枝のカゲ 伸びる様子は 葛藤なのか 成長か

    8
    投稿日: 2024.02.27
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    人の心の中の渦巻いている感情をうわぁ〜!っと書き切ったような本だと思った。 だからわりとボクサー用語とか関係なく難しい文章が自分の中であった。 主人公の周りの人達がなかなかに面白い人達だなと思った。 好きだと思っていたことが本当に好きなのかわからなくなるのはわかるから、感情は移入した。 けど、自分と違う部分は多々あるのでそこも面白かった。 人に迷惑かけないで生きるのは無理なんだから、迷惑をかける、というより人を気にしない時期があってもいいんじゃないかなと思った。

    2
    投稿日: 2023.06.12
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    かっこいい、とは言えない負け越し中の4回戦ボクサー。3回TKO負けを喫した前戦後、トレーナーが代わり、練習内容も変わる。トレーナー自身も負けが込んでいるプロボクサーで、彼もその先の自分の勝利ために指導を担当する。 主人公は相手を研究するうち、勝ちたいという思いよりも相手そのものの存在が大きくなり、夢の中で友達になるという性癖を持つ。それでも今回は、階級も経験も上の相手にスパーで負けたり、試合が近づくにつれて減量が激化したりする中で、怒りや涙といった闘争心につながる感情がジリジリと次第に燃えていく姿に、主人公の人間らしさを見た。 スポーツ小説ではなく、どちらかというと人間の内面を描いた叙情的で、観念的な文学作品だった。

    3
    投稿日: 2023.05.04
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    本作はスポーツ小説ではなく、著者渾身の青春文学だ。 解説を入れて182頁と短めの小説だが良い意味でスラスラと読ませてくれなかった。「発見」が沢山あった。今後の糧にしよう。ボクシング知識皆無の私だが、ボクサーの方々の見えない苦悩が少し垣間見えたように思う。

    1
    投稿日: 2023.01.12
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    70〜90分ほどで読み終われる。主人公の葛藤、内面がよく書き出されてて入り込みやすい。 淡々と進んでいくストーリーだが退屈しない。 最後も良かった。

    1
    投稿日: 2022.10.19
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    ボクシング経験者としては共感できる部分も多くあった。勝敗どうこうよりもその道程を人間臭く描くのは純文学らしい。 ボクサーとは純粋な生き物だと思う。曖昧な世の中に対比させるとなんとも悲哀を感じる。 生きているのか生かされているのかわからなくなる。そんな感覚を思い出した。

    3
    投稿日: 2022.05.07
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    タイザン5が好きとインタビューでいっていたので読了 日常のたった何ヶ月かの一コマ 量も短く、文章も読みやすかった!

    0
    投稿日: 2022.05.06
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    強さとは優しさとは何か。オードリーの若林さんがボクサーをしたらこんな感じになるだろう。優しさと甘さに片足をツッコミ勝負に勝てない主人公。ウメキチとの出合いで変わっていく。

    2
    投稿日: 2022.02.23
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    久々に、引き込まれる作品。一般人にとっては想像もできないボクサーの日常。その感情や、こだわりやこだわりのなさや、執着や無頓着やさまざまなものがリアリティを持って、生きている感じがしたんだと思う。文章もなんだかボクサーのダッキングを思わせる流れ方で、よかった。

    3
    投稿日: 2022.02.05
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    生の拳にグローブをはめて、決闘をするように。 消えてしまいそうな主人公の自我にボクシングのストーリーをはめて、語られている。 ここにある言葉に、破壊的なアッパーカットなんてない。気づけば自らの弱さを投影してしまうほど、柔らかな水面のような言葉がある。

    2
    投稿日: 2022.01.30
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     小心者の駆け出しボクサーの心情の推移を描く。           ◇  自分の才能への懐疑や負けることへの恐怖を小手先でごまかそうとしていた小心な「ぼく」だったが、ある日、先輩ボクサーのウメキチが「ぼく」のトレーナーに就任する。  半信半疑でウメキチの組んだメニューをこなしていったところ……。  2019年芥川賞受賞作品。       * * * * *  小心者のボクサーだったはずの「ぼく」が、ウメキチという先輩ボクサーとの出会いによって変わっていく様子が面白い。  トレーナー・ウメキチのトレーニングメニュー。「ぼく」用に考えられたものではあるのだけれど、がむしゃらに取り組む気になれない「ぼく」は、ただ淡々とこなしていました。  すると、どうしたことか、試合が近付くにつれ、まるで薄皮が1枚ずつ剥がれるように小心な「ぼく」が薄れていき、半ば狂気を孕んだ不遜な姿が現れてくるのです。  映画『ロッキー』とはかけ離れたボクサーの姿でまったく格好よくないのですが、不思議に説得力がありました。  試合の行方が気になります。

    2
    投稿日: 2022.01.11
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    自分を見失ってしまっていたボクサーが自らを掴み直す。 何もないように見えるほどカラになっていたようで、その実、閉ざし、なにものかを抱えこみ過ぎていた主人公。 おかしなトレーナーの出現で、自らを取り巻く色々なものを捉え直す。

    2
    投稿日: 2022.01.03
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    町屋さん、芥川賞受賞のボクシング小説 プロボクシングの試合って、独特だ 何ヶ月も準備して、命を文字通り削って試合をして、それまでの準備の全てが、たった数分の試合で試される だからこそ、負けの記憶は全ての否定として残る だからこそ、勝負に上がることはとても怖い その全てを、曖昧化した主人公の一人称で描き切った筆力 気がついたらのめり飲まされるリズムよい筆致 ウメキチや友達との奇妙な関係の魅力 なにより、「ぼく」自身の弱さと強さ これはボクシングなんてやったこともない読者を問答無用でリングにあがらせ、己の生き方を問わせる(こういう比喩をすると友達に怒られる!)暴力的な作品 なんと曖昧で鮮やかなんだろう

    3
    投稿日: 2021.12.26