
総合評価
(1件)| 0 | ||
| 0 | ||
| 0 | ||
| 0 | ||
| 0 |
powered by ブクログ〇新書で「コロナ」を読む⑪ 笹沢教一『コロナとWHO』(集英社新書、2021) ・分 野:「コロナ」×「国際社会」 ・目 次: はじめに 第1章 2019年12月31日に何が起きたか 第2章 国際緊急事態(PHEIC)の影響 第3章 パンデミックの波紋 第4章 コロナ禍の世界保健総会 第5章 ワクチンをめぐる攻防 第6章 早期警戒網とオープン化 第7章 WHOとジュネーブ 第8章 テドロス体制の課題 終 章 コロナ危機と国際社会 あとがき ・総 評 本書は、新型コロナウイルス感染症が世界規模で拡大する中、感染症対策を担う国際機関WHO(世界保健機関)と国際社会の動きを分析したものである。著者は読売新聞の記者で、WHOの本部があるジュネーブの支局長を務めた人物である。 コロナ危機が拡大する中、WHOを中心とする国際社会は有効な手立てを打つことはできたのか――そのポイントは以下の3点にまとめられる。 【POINT①】コロナ情報をめぐる攻防戦 WHOがコロナに関する情報を最初に把握したのは2019年12月31日であった。しかし、発祥地の中国はWHO加盟国の義務である「情報の通報」を行っていなかった。米国のトランプ大統領がこの事実を利用して中国を批判したこともあったが、結局、中国の巧みな外交広報やその後のコロナに関する圧倒的な情報量の奔流に助けられ、中国は「情報戦に勝利」したという。その背景には、多くの情報機関がジュネーブからの情報よりも中国や米国といった大国の反応(情報)を重視したことがあると指摘する。 【POINT②】WHOの「さじ加減」の難しさ コロナ危機の中、WHOによるPHEIC(国際緊急事態)の宣言やパンデミックの認定が遅れたことへの批判が高まった。しかし、過去には宣言をめぐって、各国が発生国への「国際交通」を遮断し、医療支援にも支障を来す事態になったことがあったため、運用は慎重にならざるを得なかった。今回の宣言でも、WHOは「国際国通」の維持を訴えたが、大半の国は「国際交通」の停止に踏み切るなど、国際社会は「(WHOの発信に)何かを踏み切るきっかけや口実以上のものは求めていない」と厳しい現状を指摘する。 【POINT③】コロナ危機を通じた中国の台頭 中国は自らワクチン開発に乗り出す一方で、WHOが主導するワクチン分配制度「COVAX」に――米露は不参加だったが――参加を表明した。その背景には、国際協調を重視するワクチン開発国として存在感を発揮するとともに、対立するトランプ政権を批判できるという戦略があった。このように、トランプ政権が国連機関や多国間の枠組みからの脱退を表明する一方で、中国はそれらに様々な方面から接近するなど、国連がどういう組織かを熟知した上で戦略的に影響力を拡大していると指摘する。 コロナ危機の中、ニュースなどでWHOの名前はよく耳にしたが、その実態についてはよく分からないという人も多かったのではないだろうか。本書は、そうした人たちに一連の流れを簡潔に説明してくれる一冊と言える。ただ、ここで論じられるWHOの実態はかなり厳しいものである。数多くの主権国家がそれぞれの思惑で外交戦略を展開する中、国際機関はどのように存在感を発揮できるのか――これはWHOに限った話ではなく、多くの国際機関に共通する課題と言えよう。 (1104字)
0投稿日: 2022.09.17
