
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
山尾悠子に導かれて興味を持ったが、名久井直子の装丁による、ジョルジュ・バルビエのカバーイラストにも惹かれた。 あとはパッと開いてパラパラめくったときの、ひらがなと漢字とアルファベットの配分、タイポグラフィ的な工夫にも。 小説と現代詩の間の味わい。 以下、誤読、不足ご容赦のメモ。 ■……そしてまた文字を記していると ――チベット 少年。筆写、写本。僧院。砂。兄僧。角を四度曲がって、ずれたところへ。よい砂と悪い砂。宙に放たれた文字たち=砂が世界に。読経。灌頂。母からではなく、多くの僧からいつの間にか生まれたひとり。魔が差す。少女。 ……このボルヘス味は好き。エロチックでもある。読み仮名にアルファベットを配置するなど、いい味。 ■Jiufen の村は九つぶん ――台湾、九份 雨。shitoshitoとbarabaraと。娘、父母、離れに姉。そして、岩陰の家の女と、亭主。と娘には見えるが、実は女は、別人らしい男を迎えた。で、本当の亭主は船から帰ったが、少し離れて観察している。おれはあの男の幽霊なのか。その様子を姉は見ている。分岐路の男やもめは、女が死んで以来、異食をする。幽霊男が訪ねると、その食べているものは金というものらしい。その金で村は栄えるが。 ……皆川博子にありそうな、夢うつつの描写。これもいい。 ■国際友誼 ――日本、京都 ・女子学生……夢。モグラの皮と称する、研究ノート。おもかげノートと呼び直す。図書館の窓から降りたり。故郷の母からメール。古事記の母の国。 ・男子学生……サークルハウスのぬし発案のパーティーの準備。ワンピースの女を見かける。「hirariousu」と「ひらり」。英語は擬音語、擬態語。「おとろっしゃ」と「atrocious」。ソウくんに好意。元恋人を思い出す。 ・留学生(ソウくん)……魚を求める。故郷では暑くても鍋を食べていた。あの友人は変わっているな。 という3人の状況説明が、前半。後半、パーティーで会う。 名前を、日本語→中国語→英語で、インターナショナル・フレンドシップ。国際友誼。その名は、谷崎由衣。 ……なるほどこの作者でしか書けない小説。若干特権的かもしれないが。 ■船は来ない ――インド、コーチン 少年。父が娶った、年若い母への思い。船を待つ。 ……短めだがきりりと。 ■天蓋歩行 ――マレーシア、クアラルンプールほか かつて巨大樹だった私は、今はレストランで女といる。都会は森、私は木だった。そんな話をする。樹木どうしは意思を伝えあっている。記憶の中の女主人。家族だった木たち。憐れんだら、負けなのよ。男主人。ただ、私のこの名前を、あなたのうちへ隠しておいて。私は、プラナカンにはなりえない。森が都会になったように、菌類は端末に。女主人に追放され。偉大なる老貴婦人=油田で働く。採油場には過去、蟻、虹、蛙だった者たち。人である必要がない状態で、女といる。 ……これはすごい! ある土地にインスパイアされているという点で、時空の中で空間は固定されているとはいえ、その空間の時間を経た重ね合わせが。 要は森と都会をダブらせているのだが、その中心にいる?ある?のが一個の樹であったひとりの人物の語りであるという、荒業。 ◇解説 江南亜美子
8投稿日: 2025.06.11
powered by ブクログ擬音語を英語で書いていたり、ふりがなを現地?の言葉にしていたりして面白かった。そのまま日本語で読むよりも、小説の舞台へ入り込むことができた気がする。「……そしてまた文字を記していると」がよかった
0投稿日: 2022.08.24
