
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
創元SF短編賞受賞作「風になるにはまだ」のために借りだし、併せて巻頭の「往信せよ尊勝寺」、表題作の「この光が落ちないように」を読了。 ○「風になるにはまだ」:30になる前に身体を捨て情報人格になり10数年を経た女性が、親友の結婚披露パーティに出席するために生身の体を貸すバイトの女性の身体を借りる。情報人格が過去デザイナーの命綱である目を患って身体を捨てた葛藤が丁寧に書かれていて、最初冷めた気持ちで身体を貸した女性が、情報人格とともにドレスを選びメイクを施し、情報人格に繊細な気遣いをかけられていくうちに自分の気づかなかった価値を感じ取る心の動き。異なる身体性に対する親友の戸惑い、ふれあい、表情の変化、通底するテキスタイルの美しい描写・・・SFというジャンルにとどまらないとてもいい作品だった。巻末の選評に「SFのミニマリズム化」が近年の傾向とのことだがまさにこのような珠玉の作品が生まれているんだと感慨。 P228 「肉体がある人と同じように。食事をして、仕事をして、眠ります」「面倒じゃないですか?ご飯は食べなくてもいいって聞いたことあるんですけど」「水晶はされません。生き物としての人間らしい暮らしをすることが、長く自我を保つのに重要だとされていますから」 P234 わたしは彼女に戻る。短い、極小の死ともいうべき断絶を挟んでのち、肉体感覚が流れ込む。氾濫する雑多な知覚に酔いそうになった P253 「もういいですよ、堪能しました」自分が物質世界を変えうること。新鮮な恐れは快くもあった。永遠にこうして素材と交わっていたい、と思うくらいに。 ○「往信せよ尊勝寺」:過去の同賞の受賞作「天駆せよ法勝寺」が長編化されるにあたり序章として書かれたという作品。これまたこんな面白い作品があるんだと発見。 こちらはミニマルとは真逆の佛理スペクタクル。麻尼車とDJをもじって、2枚の円盤を手で巧みに操作しメタ音楽を生み出しているアフリカ系の僧侶に「これは提定(でいじょう)という技でしょうか」と童子が話しかけるくだりや、「供養逆流(ぎゃくる)か。法壁緊急形成(ぎょうじょう)!」「了解(りょうげ)!」などといったやり取りには思わず笑ってしまった。 P21 佛理学の美点は、信じているか否かに関係なく機能することだ」 ○「この光が落ちないように」:シカを思わせるトマリギと人間の女性のようでもあるウトウ博士、荒廃した地上に残っている老人カリガネと娘のサクラ・・・手塚治虫作品にも着想を得ているであろうディストピア系ファンタジー。
0投稿日: 2025.12.21
powered by ブクログGENESIS、これで終わっちゃってたんだ。いや、正確には年に一度の雑誌『紙魚の手帖 SF特集号』に生まれ変わっていたんだ。あらほんと、創元のホームページ見たら去年の夏に出てる…しかも私の好きな作家さんの名前が並んでいる。買っ…、買っちゃうかも。紙魚の手帖、手を出すとズブズブいきそうだから見て見ぬふりしてきたのに。 佛のやつをのぞいて、易しくやわらかいタイトルが揃った。ついていけないで挫折するものなく全て楽しめた。 ■八島游舷『天駆せよ法勝寺[長編版]序章 応信せよ尊勝寺』 「佛パンク」、物理学ならぬ佛理学の力で九重塔が宇宙へ飛び立つ…というような世界観に、少年の夢や成長や葛藤など。難しいかと思ったが楽しめた。(字面が良い、というか仏教用語に慣れていない身としては、字面くらいでしか味わえない。と、オーディオではない字の本の良さも実感。) ■宮澤伊織『ときときチャンネル#3【家の外なくしてみた】』 あははと読める。作者は冒険企画局所属らしい。 ■菊石まれほ『この光が落ちないように』 私もSF読み慣れてきたのか、世界設定の説明を読み解かねばならない冒頭部分では、あーはいはいそれ系ねみたいなローテンションになるのだが、中盤で意外な場面転換があり、終盤でまさかの真相、読了時にはすっかり目が覚めた。 ■水見稜『星から来た宴』 ある種の音楽がとても好きなんだな、ということは伝わる。時代錯誤かなとは思うが。 ■空木春宵『さよならも言えない』 空木さんの作品を読むのは三作目、いずれもGENESISにて。どれも不思議に好きだったが今回も。「オバ様」という呼び方、いいな。 ■笹原千波『風になるにはまだ』〔第13回創元SF短編賞受賞作〕 ファッションもの、年の離れた二人の女性の交流、という要素がひとつ前の作品とかぶったが、似ているどころか違いが際立って面白かった。一番好きだったかもしれない。
13投稿日: 2024.04.12
powered by ブクログSFって面白いんだなと再認識させられるSF短編のアンソロジー。収録作品の「応信せよ尊勝寺」はバカもここまでやれば清々しい感じがする。「家の外なくしてみた」は文字だけでYouTubeを見ている感覚になる不思議な作品。「さよならも言えない」は異星人と外見と世間体みたいなものをSFで描く。常識や自分らしさを異星人世界を通してみることで、現在の自分と周りのことについて考察できる。「風になるにはまだ」は個人的に最も好きな作品だ。バーチャル化した女性が学生時代の友人とパーティーをする。バーチャルな人間は他人の体を借りてパーティーに参加するのだが、その二人の心の描写とバーチャルからの物理世界の描写がリアルで気持ちが良い。
7投稿日: 2024.02.06
powered by ブクログ表紙がキレイで手に取った。 どれくらい振りのSFか?というくらい浦島太郎の気分。 しばらくSF読んでなかったかもな… VRとかテクノロジー寄りなんだな。
0投稿日: 2024.02.03
powered by ブクログGENESIS(創元日本アンソロジー)シリーズが今回の五集目で最後になるという。いや~、実にもったいない、このシリーズとても気に入っていたのになぁ~。特に、表紙の絵(カシワイ作)が好きで毎回楽しみにしていた。まあ、社の方針だからしょうがないのかもしれないけど。私以外の人にはあまり好評ではなかったのだろうか。売り上げも伸びなかったのかな。 最近、帯の呼び込み文句が派手なものが多く、ちょっとこの傾向を懸念していたのだが、この本も首を傾げた。「日本SFを牽引する注目の書き手による最新作6編」って、ちょっと誇大広告でしょう。この6人のうち3人(宮澤・水見・空木)しか知らない。私も最近のSFを勉強してきたつもりだが、それでも勉強し足りないという事なのだろうか。他の3人は実際に牽引した、しているのだろうか、疑問です。しかも、水見稜なんてだいぶ古い世代だし、最近作品を執筆していたのだろうか。そして、裏の帯を見たら「ベテランから日本SFの未来を担う新鋭まで、6人の作家が集結!」だって。ベテランは水見稜のことだが、他の5人は日本SFの未来を担ってくれるのでしょうか?もし本当だったら今後も頑張って欲しいです。 6作品の中で一番高評価だったのが、空木春宵「さよならも言えない」だ。服飾局という設定が話の中核をなし、服装が物事の価値判断の中心となる設定。少々偏った設定というのがSFや伝奇小説にとっては都合が良い。近未来社会と言ってしまえば何でももっともらしく話を展開できる。つまりアイディアが一つありさえすれば、文章構成力がある作家であれば素晴らしい作品を大量生産できるという訳だ。作家と読者のwin-win関係は長く続くだろう。今後も空木春宵には期待している。 その次、二番目の評価は、水見稜「星から来た宴」。懐メロみたいな作品で、すんなり体の中に染み入っていった。昔だったら、幼稚な作品だなと思っていたかもしれなかったが、久々に読んだタイプの作品でもあるためが新鮮に感じた。逆に、この様な作品は現代の若者、現代のSFファンに受け入れられるのか少々疑問である。Z世代とか令和時代の意見を聞いてみたいものだ。もしかしたらコメントすら出ないのではないか。 三番目の評価は、笹原千波「風になるにはまだ」。さすが第13回創元SF短編賞を受賞されるだけのことはある。体の共有化という設定は目新しいものではないが、共有感覚が妙に生々しい、感覚を表現する言葉のセンスも小気味よいのには将来性を感じる。また作品を出すなら是非読んでみたい。
0投稿日: 2023.05.17
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
どの話も設定が面白く、ワクワクしながら読めた。 ◆天駆せよ法勝寺 最初から世界観に驚愕させられ、そのままの勢いで最後まで読み切ってしまった。最後、大人が大人であるがため苦渋の選択し、それでも前へ進まないといけないのに対して、主人公の意識が子供から大人へと変わる様子が危うげながらも、頼もしく清々し感じられた。世界観は奇抜だけど、共感できる。 ◆家の外なくしてみた 扉や窓の外が家の中と繋がっている設定は四畳半神話大系と似ているかと思ったが、こちらはだいぶポップ。2人の会話が丁寧なのにテンポが良くて読みやすかった。 ◆この光が落ちないように これも世界観がすごい。 「感情は火と同じ。」と、感情の否定に向かい、すべて焼き払い必要なバックパックだけを持ってサクラに会いにいく様子は今までのウトウ博士との思い出も否定しているようで悲しい。この話が一番印象に残っている。 ◆星から来た宴 主人公達が受け取ったものは、消えた文明が最後に放った音楽で、老師の「滅びた生物の遺言」という言葉が残る。文明はいつかは滅びるものなのかもしれないけれど、最後の声を受け取る人がいることはせめてもの救いになっていて欲しいと思った。 ◆さよならも言えない これは最後、悲しい。結局、ミドリと少女は真逆の人生を歩む。少女が去った後、今まで幸せで美しかった思い出と、残って冷めてしまったコーヒーの味が重なる。最後、ミドリが猫のブローチを自分でつけることで、自分の中で少女にさよならを言っている気がした。 ◆風になるには 最後、ハコの「消えたくないな」という、心の底から無意識にふと漏れたようなセリフにどんな思いがあるのか考えると切なくなる。「死にたくないな」と私たちが思うのとは、違う何か複雑なものがあるのだと思う。 体の貸主と借主の分かりあおうとする気遣いがすれ違ったり、かみ合ったりするところも面白い。ハコの、「あたしの目」をとおして見た物の表現も活き活きしており、目に浮かぶようだった。
0投稿日: 2023.04.30
powered by ブクログ書き下ろし作品のSFアンソロジーですが、第13回創元SF短編賞の発表も兼ねています。第6作の笹原千波「風になるにはまだ」が、受賞作で、選考経過および選評も載っています。 https://www.honzuki.jp/book/313719/review/285789/
0投稿日: 2023.02.02
powered by ブクログとても残念ながら、6編全敗だった つまり、どれも面白いとは感じないってこと。ふりがなが必要な造語を多用する作品が好きではなく、それが冒頭に来ていたから、スタートダッシュに失敗したのかもしれない。 でも、それが割り引いても、どの作品を読んでもなにも感じなかった。歳とったのか?違う気がするな。ただ、本作で最終のGenesisとは合わなかったってことかな。
0投稿日: 2022.12.28
powered by ブクログSF短編アンソロジー 今回が最後のGenesis、以後は紙魚の手帖に移行するそうです 海外作品ばかり読み耽っていた時期に、日本SFを読みたいと創刊号を手に取りました 以来ここで何人もの推し作家様と出会い、珠玉の作品の数々を拝読いたしております 自分の人生の一部であるこのアンソロジーが終了するのは少し寂しい気持ちです 深く感謝申し上げます 『風になるにはまだ』 第13回創元SF短編賞受賞作品 肉体を持たない“情報”として生きている女性が、現実の身体を1日借りるお話です 情報化の女性視点で久しぶりに生身を持った感覚は、まるで自分が体現しているように冴え、没入します 是非皆さま体感なさって下さい タイトルの意味を知ったとき、切なさが込み上げました…新感覚の近未来SF 『応信せよ尊勝寺』 宇宙の森羅万象、物理ならぬ“佛理”により成り立ち、このエネルギーを超能力者の如く操る五百羅漢たちを描く未来SFスペースオペラ長編の序章 佛(ほとけ)の道に沿った独特な名称やアイテムに、背筋がゾクゾクするような期待感がとまりません(こういうのを待ってた) 長編が楽しみです! 『さよならも言えない』 地球から他星系へ植民し遥かなる時が過ぎ、環境に適した進化を辿った人類を描いた未来SF 外見、思想が大きく隔たった人間の社会を円滑に運営するため導入された“スコア”とは…? 真実を知った主人公のとった行動は、現実社会と重なって見え、やるせない 空木先生の世界観に魅了される作品です
1投稿日: 2022.12.03
powered by ブクログSF。短編集。 正直に、苦手な作品が多く、あまり楽しめなかった。 表題作が一番魅力的だったが、シリーズものらしく、この一作だけでは世界観を掴みきれずに消化不良。 好きな作家の宮澤伊織さんも、去年の作品より地味な印象。 やはり短編SFは海外作品のほうが好みか。
1投稿日: 2022.11.29
powered by ブクログ一つ一つが癖のあるSF。 「風になるにはまだ」は、この短編集を読もうと思ったきっかけだった。人の意識をアーカイブ化する技術は新しい哲学を生む土壌だろう。果たしてどこまでが自分なんだろうか?データは欠損しないのか?いつまで持つのか?色々考えると面白い。
0投稿日: 2022.11.19
