
総合評価
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powered by ブクログ作品紹介・あらすじ かつて野良仕事に駆り出された子どもたちの為に用意された架空の友人、言葉人形。それはある恐ろしい出来事から廃れ、今ではこの博物館の片隅にその名残を留めている――表題作ほか、光と星の秘密を追う研究者の実験台となった無垢な娘の運命を綴る残酷な幻想譚「理性の夢」、世界から見捨てられた者たちが身を寄せる幻影の王国が、少女王妃の死から儚く崩壊してゆく「レパラータ宮殿にて」など、世界幻想文学大賞、シャーリイ・ジャクスン賞、ネビュラ賞、MWAなど、数々の賞の受賞歴を誇る、現代幻想小説の巨匠の真骨頂ともいうべき13篇を収録。 ***** ジェフリー・フォードを読むのは二冊目。本書の後に出版された「最後の三角形」を先に読んでおり、順番が逆転してしまったのだけれど、特に支障はなかった。 その「最後の三角形」もかなり面白かったので、本書は期待しながら読んだ。そして期待通りの面白さで、作品によっては期待以上に面白かった。 全般的には幻想文学になるのだろうけれど、ホラーっぽいものやファンタジー、よりリアルに近いもの、ちょっとスラップスティック風のもの、と前作「最後の三角形」と同様にかなり幅広い内容になっている。 「ファンタジー作家の助手」や「レパラータ宮殿にて」はラストにほろりとさせてくれるし、「光の巨匠」は三つの世界が重層的に成り立っており、「べらぼうな犠牲だよ、きみ」と言われた主人公は、本当にべらぼうな犠牲を被ることになる。 「私の分身の分身は私の分身ではありません」はちょっとしたドタバタも含めつつのサスペンス的な展開、「理想の夢」はマッド・サイエンティストが登場するSF的な作品で、嫌な人体実験が行われる。 他の作品もどれも独特で面白いのだけれど、僕が最も好きなのは冒頭に置かれた「創造」。 リアルなのかただの妄想なのか。幼い少年は自分がモンスターを生み出してしまったことに怯える。そして父親に涙ながらに事の深刻さを伝える。すると普段は形而上的な事柄をいっさい信じない父は、「よしわかった」と少年と共に解決に向かう。そして無事に解決される。 数年後、少年も二人の男の子の父親になり、実家に帰省してくる。そして幼い頃の自分が生み出したモンスターの件について年老いた父に訊ねる。その時の父の返答が……。 僕はその返答を読んで、父と息子の愛情溢れる心情が浮かんできて思わず泣きそうになってしまった。ところが、読み方によってはこれほどに背筋がゾゾゾっとくる返答もないんじゃないかと思う。リアルなのかただの妄想なのか。このどちらを選ぶかで大きく変わってくるように思えた。もちろん作者はこういうことだよ、と説明はしてくれない。完全に読者に委ねられている。そういう面白さを含んだ作品だと思う。
0投稿日: 2025.11.06
powered by ブクログ奇妙で幻想的なお話の短編集。 どの登場人物もどんな世界もとても丁寧に描出されていて、引き込まれてしまう。 「創造」が沁みた。 「夢見る風」も丁度夏から秋に移り変わっていくざわつき感がリアルだった。
0投稿日: 2025.10.05
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ジェフリー・フォードの短編集その1。評判の良い「最後の三角形」が読みたくて、まずはこちらから。 非常に幻想味の強い作品が多く。ただ、それでも魅力的なストーリー展開の作品ばかり(いくつかは本当に訳がわからなくて、うーんていうのもあったけど。。。)。 以下、作品ごとの感想。 ◯創造 木の枝や実で人形を作ると翌日にはいなくなっていた。生命を創造してしまったと考える少年の話。ラストの父との余韻が非常に良い。 ◯ファンタジー作家の助手 有名なファンタジー作家の助手となった女の子の話。作家の妄想か、彼女の妄想か。本の世界が具現化する。終わってみれば、優しさに溢れた世界。 ◯〈熱帯〉の一夜 ★おすすめ 昔自分を守ってくれていた二つ上の不良と、思い出深いバーで再開する。不良が歩んできた不思議な人生。冒頭からは全く想像できない意外な展開。かなりおすすめ。 ◯光の巨匠 照明デザイナーの大御所(他に言い方わからない笑)にインタビューすることができた若い記者。幸運に感謝しつつも、聞かされた内容は摩訶不思議で。。。深掘りし始めると色々な発見があるのかもしれないが、結構難しい話。 ◯湖底の下で 墓場の下に鍾乳洞を発見した少年少女の話だが、着地点は思った以上に情念が深い過去の悲劇に繋がっていて。合間合間に入る幻想的な風景も最後には全て繋がる。 ◯私の分身の分身は私の分身ではありません まずは題名よ笑。分身と一緒に分身の分身を倒そう、という話。展開は見え見えだけど、リンのキャラが良かった。 ◯言葉人形 ある地域に伝わる言葉人形という儀式。全編に漂う不気味さ加減が絶妙。ちょっと難しい場面もあるが。 ◯理性の夢 幻想的なSF作品。光の歩みを遅くする実験に人生をかけた研究者の話。意味不明な人体実験が怖いというより、おぞましい。 ◯夢見る風 ★おすすめ 吹けば悪夢のように、色々なものが狂う風が止まる。皆がその風に怯えつつも、吹かなければ吹かないで不安が満ちる。想定外のラストが非常に良い。忘れ難い余韻。 ◯珊瑚の心臓 ★おすすめ まず珊瑚の心臓(コーラル・ハート)が剣の時点でカッコ良すぎる笑。剣を持つ戦士の冒険譚の一幕という体で、色々派生できそう。この短編だけでシリーズ化してほしい。 ◯マンティコアの魔法 ある魔法使いとその弟子、そしておそらく最後のマンティコアの話。良い作品なのだが、良くも悪くも普通で、収録された作品の中では地味な方。 ◯巨人国 ぶっちぎりで幻想味が強い作品。こういうものだと思って酩酊感を味わう作品なのだと思った。 ◯レパラータ宮殿にて ★おすすめ はぐれものたちが身を寄せる王国。王妃が死んで王が悲しみに沈み、王を助けんと魔法使いと呼ばれる者の助力を得るが。。。一瞬の輝きを描いた儚く美しい作品。
9投稿日: 2024.07.30
powered by ブクログ「白い果実」から始まる三部作で知られるジェフリー・フォードの短篇集。噂に違わぬ面白さで、ファンタジーよりは幻想文学の方が好きという人なら必読の書。個人的にはフォードらしいと言われる多重構造で目眩くような作品よりは、どちらかというとストーリー自体は単純な方が好みで、お気に入りは「夢見る風」。三部作の方もいずれ。
0投稿日: 2024.04.22
powered by ブクログ短編集13篇 幻想妄想、夢といった世界が短編の中にギュッと凝縮され鮮やかな世界を表している。「創造」「熱帯の一夜」の少し不思議な物語や「光の巨匠」「巨人国」の入れ子細工的なこんがらがった面白さ、「夢見る風」「珊瑚の心臓」のどこか教訓めいた物語それぞれ違った味わいがあってジェフリーフォードの世界に堪能した。
0投稿日: 2024.03.05
powered by ブクログ〈白い果実〉三部作の著者による、めくるめく奇想とイマジネールに彩られた短篇集。 ジェフリー・フォードの幻想小説はやっぱり唯一無二のヴィジュアルイメージの強さがある。「創造」の冒頭、どんなに注いでもジョッキから溢れないビールのネオンサインと生命のメタファーにはじまり、「光の巨匠」の首だけが浮かんでいる男の額に嵌め込まれたエメラルドの栓だの、「私の分身の分身は私の分身ではありません」のホワイトチョコに漬けられて姿を表す透明ドッペルゲンガーだの、「レパラータ宮殿にて」の小さな雲が浮かびグラスのなかに天気雨が降る〈プリンセス・チャンの涙〉という名のカクテルだの。緻密で妄執的なリチャード・ダッドの妖精画を思わせる読書体験。 『白い果実』のクレイもそうだけど、フォードは医者が嫌いだとしか思えない医者キャラをよくだしてくる。医者のことを絶対に"医術と称して他人に取り返しのつかない傷を残していく奴ら"だと思ってる。作中で科学者キャラが振りかざす似非理論の"オメーは何を言ってんだ"感も読みどころで、「光の巨匠」の心的光学の話は特に印象に残った。 男たちが創造主の真似事をしてさまざまなやらかしをする一方、女たちは男主体の物語に抗い、ともすると小説という構造からすら逃げようとする。「巨人国」は読んでて頭がクラクラした。訳者あとがきで言われているけど、唐突な場面転換が実は同一モチーフの反復になるというフラクタル構造の小説になっている。どこへつれていかれるのか最後までわからない。 ハイファンタジーと騎士道物語を掛け合わせた「珊瑚の心臓」もフェミニズム的に読めて面白かった。半身不随で空飛ぶ椅子生活を強いられている女の創りだした思念体がめちゃくちゃ強いのカッコ良すぎる。美文調の訳文もいい。 最後に置かれた「レパラータ宮殿にて」は、海賊の孫が築いたはぐれ者だけのユートピアが崩壊していく物語。本書で一番ウェットな感じの作品だが、これにも人の耳から芋虫をつっこんで悲しみを食わせるヤバ医者がでてくる。悲しみの繭から生まれた巨大な蛾というモチーフは目新しくないが、道化師や泥棒や娼婦だったアウトサイダーたちが実のない肩書を与えられて平和に暮らしていた王国のイメージは懐かしい人形劇のようで静かな余韻を残す。 どの短篇にも豊富なアイデアが惜しげもなくドバドバと盛り込まれている満足度の高い作品集。パラレルワールドの宇宙物理学を描いた「理性の夢」も面白かったので、SF系の作品も訳されてほしいなぁ。
0投稿日: 2023.12.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ジェフリー・フォードの短編を読むのは初めてのはず(長編は『シャルビューク夫人の肖像』を読んだが例によって何も憶えていない)。訳者があとがきに書いているように《現実的なものから幻想的なものへ》と配列された作品のうち、後のほうの「珊瑚の心臓(コーラル・ハート)」や「巨人国」「レパラータ宮殿にて」などが面白かった。より奇想小説ふうの作品群からはエリック・マコーマックを思い出した。いずれにしても、物語は忘れても、特徴あるイメージがきれぎれのままおそらく長く私の頭に残ってときどきよみがえったりするだろう。一冊通して読んで、なんとなくこの著者らしい世界の感じはつかめたと思う。そのうえで、名高い長編三部作などは自分にはおそらく重すぎてしんどいだろうなという気がする。『シャルビューク夫人…』はどんなだったかしら、若くて気力体力のある時分に読んだから…
0投稿日: 2023.08.22
powered by ブクログ海外文学の幻想小説ってやっぱり土地勘??とか文化歴史??に弱いからやっぱり難しい…うううん、まだ早いか…
0投稿日: 2023.05.27
powered by ブクログ「白い果実」のジェフリー・フォード。なので、短編とはいえ、重層的で目の眩む、読み応えある物語たち。読み始め、あれ?ジェフリー・フォード?と思ったけれど、あ、やっぱりジェフリー・フォード、になっていく、グラデーションある物語の並び。足元がぐらぐらするところに立つような不穏な感じ。熱があるときに見る夢だ。
1投稿日: 2020.01.23
powered by ブクログ数年前に何冊か読んでとても引き込まれ、SFに触れたいと思ったきっかけになった気がする。その後ディックなど手に取るが実はサッパリ。今回はファンタジーが強く、ほぼSF色は見当たらす、とてもディープな世界に連れていかれた。幾度か寝落ちしながら読み、また再開。ほんとうに夢を見てるような、何か山の一軒家で木の椅子に座らされて、お爺さんがしみじみ本を読んでくれてるような、懐かしいような静かで不思議で美しい時間を過ごした。お爺さんはその後、猟銃で捕らえた動物のシチューを振る舞ってくれるのだった。肉は残すよ。
0投稿日: 2019.06.04
powered by ブクログ『白い果実』は震災前に、『記憶の書』と『緑のヴェール』は震災後図書館再開後に読んだのを思い出した。そういう意味でも忘れ難い作家。 山尾悠子さんや中野善夫さんが翻訳を手がける作家だもの、好きになるに決まってる。 ドッペルゲンガーの扱いが面白い。 語り手の一人称表記が<わたし>だと女性、<私>だと男性という風に訳者の方は分けているのだろうか? 「珊瑚の心臓」はこの短編集随一の悲恋。
0投稿日: 2019.05.11
powered by ブクログSFでもなくただ不思議なことが起こるという意味合いの「ファンタジー」でもなく、本当に「幻想文学」という言葉が相応しい作品。ストーリーに時間や空間の捻れが生じ、気がつけばそれに絡め取られているような感覚に陥る。これまで発表されてきた著者の作品を集めた短編集だが、徐々にファンタジー色が強くなっていく構造が見事。個人的には『レパラータ宮殿にて』が一番好み。
0投稿日: 2019.02.09
powered by ブクログ好きだったのは『ファンタジー作家の助手』と『巨人国』の2つ。 作家になる素質を物語のなかの人たちとファンタジー作家が見いだしてくれるなんて、最高
0投稿日: 2019.02.08
powered by ブクログジェフリー・フォードの久しぶりの邦訳は、日本オリジナル編集の短編集。 『傑作選』とある通り、どれも著者らしい短篇だった。 巻末の訳者あとがきによると、最後の邦訳は2008年で、以降、日本でフォードの本は出ていなかったようだ。これは是非、2冊目3冊目の短篇選集を出して欲しいところ。
0投稿日: 2018.12.24
