
総合評価
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powered by ブクログ作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏。本書は佐藤氏が26歳当時外交官に任官されて2年目の出来事を描いた小説です。佐藤氏と「複合アイデンティティーを持った境界線上を生きる人々」との交流が描かれております。 本書は異能の外交官であり、現在は作家として活躍する佐藤優氏が外交官となって2年目となる26歳当時のことを描いております。ただ…。僕は佐藤氏の作品をよく読んでいるので楽しく読めましたが、本書について深い世界に入っていくには佐藤氏の『宗教改革の物語 近代、民族、国家の起源 (角川ソフィア文庫)』(KADOKAWA)と、『紳士協定: 私のイギリス物語 (新潮文庫)』(新潮社)をお読みになる事をおすすめします。 本書で佐藤氏の「先生」となる人物はチェコは首都プラハにて古本屋を営む亡命チェコ人のマストニーク氏です。本書では若き外交官である佐藤氏とマストニーク氏との「対話」を通して佐藤氏のライフワークであるチェコのプロテスタント神学や、当時の東欧のイデオロギーであった東欧社会主義思想からスラブ民族独特の思考法、さらには国家の存在論から、亡命者の心理まで幅広いテーマが語られるのです。 ほぼ同時期に佐藤氏はロシア語の習得でイギリスはベーコンズフィールドにてスパルタ式のロシア語教育を受けているはずなのですが、よくもまあこんなにも複雑かつ濃い内容を習得できたものだなと(このときのことが後のロシアが以降に役立っているのだが)改めてその「怪物」ぶりに改めて舌を巻いてしまいました。 さらに、ロシア語学校での同級生で、成績が抜群のイギリス海軍中尉のテリーとその恋人でアメリカの少数民族である「ナバホ族」であるクリス。ロシア語教師のブラシェコなど、多彩な人物が複製的に「複合アイデンティティーを持ち、境界線上を生きる」 ことはどういうことなのかを我々に教えてくれるのでした。 本書の最後のほうでは当時佐藤氏と一緒に机を並べて勉強していたキャリア官僚である武藤顕氏とのやり取りが交わされているのですが、後に二人が道を違え訣別すると言う「運命」を知っているものとしては、最後のページをめくり終えると読後の充実感と同時に切なさもこみ上げてくるのでした。 ※追記 本書は2018年1月27日、新潮社より『亡命者の古書店: 続・私のイギリス物語 (新潮文庫)』として改題、文庫化されました。
1投稿日: 2024.09.28
powered by ブクログ「続・私のイギリス物語」というだけあり、「私のイギリス物語」の副題がついた「紳士協定」の続編的著作。「紳士協定」がホームステイ先の少年との交流を中心に描かれておりとても読みやすかったが、この本は、チェコからイギリスへの亡命者の古書店との交流を中心に、思想・哲学的な話が多かったので、前著に比べると少し難解で少し時間がかかった。しかしロンドンでの生活はよく描かれており、興味深い内容であることは間違いない。やはり佐藤優の自叙伝はおもしろい。次に読みたいと思う本が本屋にほとんど置いておらず、何を読もうか思案中だ。
1投稿日: 2021.07.11
powered by ブクログ前作「紳士協定」と同時期の著者の回顧録。 亡命チェコ人の古書店夫婦達との対話・交流を描き、ソ連崩壊前のチェコスロバキア・東欧の空気感を教えてくれる。 前作のイギリス人の少年との付き合い、厳しい語学研修を受けながら、著者のキリスト教の研究資料探していた、著者のバイタリティには驚く。睡眠時間あったのかと? 本論ではないが、チェコ料理、所謂ご当地メシの美味そうな描写が、個人的には好きな個所だが、著者は相当食通だと確信した。
0投稿日: 2018.05.22
powered by ブクログ[図書館] 読始:2018/3/29 読了:2018/4/8 読み終えて最初に思ったのは、やはりこういう一次体験を持つから、あれほど深い洞察ができるのだなぁということ。 ネットに出ている記事や意見だけを読んで世界観を形成している人(多数派なのだが)にはこういう一次体験がないのだから絶対に太刀打ちできないわー。 あと、チェコという国、民族に興味を持った。不思議と共感のようなものを感じた。 p. 90 チェコ人は、自分がいつ消えてしまってもおかしくないと考えているのです。この点がポーランド人と違います。ポーランドは大国です。ポーランドの知識人と話していると、いつも世界の中でポーランドはどのような役割を果たすかという話になります。しかし、チェコ人にはそのような民族主義的感覚がありません。 p. 92 しかし、いくら知識を増やしても、われわれは安心することができない。それは根源的なところでチェコ人が何も信じていないからです。チェコ人は神を信じていないが、共産主義も信じていない。根源的に懐疑論者です。 p. 96 ナチスドイツによる占領、スターリン主義体制、『プラハの春』の鎮圧という三重の挫折が、チェコ人の存在論に影響を与えました。 p. 172 優れた思想家は、いずれも優れた編集者です。過去の資料はそれこそ無限にある。そこから何を選び出し、どうつなぎ合わせるかによって物語が形成される。パラツキーやマサリクのような優れた編集者がいなければ、チェコ民族が成立することもチェコスロバキア国家が建設されることもありませんでした。逆にスターリンのような恐ろしい編集者がいると、ああいう国になってしまう。 p. 231 英国軍人のテリーが語る、「ブリティッシュは北アイルランドのカトリック系アイルランド人にとって自らを指す言葉にならない。英国国籍を持つ全ての人々を一言で表す言葉がない。未だ大英帝国な残滓を引きずっているのでこういうことになる」というのも興味深い。歴代首相の就任演説で必ずEnglish, Welsh, Irish, Scottishと4つ並べるのはこういうわけか、と。 p. 401 「それは、良い日本人やイギリス人、チェコ人を見分けるのと同じ方法です。あなたには人間の心理を理解する力がある。そして、人間の心をつかむことができる。文章の行間や沈黙の意味も理解することができる」 著者に限らず仕事ができる人ってこういう人が多いと思う。読んだ他人の心理を邪悪に利用するかしないかは人それぞれだが…。
1投稿日: 2018.04.08
