
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
『赤い靴』:西門慶の第七・第八夫人が足を切り取られた状態で殺害される。足狂いの来旺児の犯行かと思われたが、第五夫人潘金蓮の足にまつわる恨みが2人の切断の所以とは… 『美女と美童』:西門慶の所にいる美しき童の琴童と画童。美しき童に魅了される西門慶に嫉妬する潘金蓮の恐ろしき計画。童同士が潘金蓮との三角関係かと思えば、潘金蓮の強烈な嫉妬心爆発でゾゾゾ。 『閻魔天女』:西門慶の家に都より第七夫人として朱香蘭がくる。都で朱香蘭と関係のあった陳敬済も共に西門慶家に仕える。西門慶は朱香蘭の声がいいのだとみんなの前で言った所潘金蓮の闘争心に火がつく。フェロモンを利用して男のフリをするとかアリかよと思うが、色情家のパワーは並じゃない。 『西門家の謝肉祭』:知県閣下夫人の林黛玉が西門家を訪れた。西門慶は林夫人の豊満ボディと美しさに魅了されるが、手を出したことがバレると大罪になる。ある夜酔った林夫人が墜落死してしまう。林夫人を探しにきた役人達も現れて絶体絶命。林夫人の姿形が消えて役人達もどうしようかとしてる時に潘金蓮はみんなに焼肉を大盤振る舞いする。死体が消えて突然の大量の焼肉… 『変化牡丹』:画家が西門慶の家に来て肖像画を描くという。画家は楊艶芳を一番に描こうという。描いている途中に牡丹から蜂が出てきて楊艶芳は刺されて顔が腫れ上がり発狂。潘金蓮が蜂を入れたのだと逆上し潘金蓮の髪を切ってしまう。その夜正気を取り戻した楊艶芳はみんなと酒を呑もうとしたら苦しみ出し死ぬ。潘金蓮の一番に描かれないだけで殺す嫉妬の怖さ。 『麝香姫』:同じ香りを持つ女性が西門慶の家に来た時の潘金蓮の嫉妬。「あたしは、たとえ恋するお方ににくまれようと、ほかの女があたしより可愛がられるとにはがまんがならない女なの。愛しさよりも憎しみが先にたつ女なの」との潘金蓮をまさに表した言葉。 『凍る歓喜仏』:西門慶は病気と恨みつらみで衰弱して色恋事が出来なくなる。愛した男の衰退すら許さぬ潘金蓮の謀で西門慶すら死せる。
0投稿日: 2026.02.12
powered by ブクログ『金瓶梅を下敷きに、豪商西門慶の館で妾同士の嫉妬心から次々と起こる猟奇殺人の謎を太鼓持ちの広伯爵が解いていく。謎解きと共にお色気あり、コミカルな場面もあり面白い。最後はちょっとした感動すらも。ミステリー好きならば外せない一冊。
0投稿日: 2025.08.03
powered by ブクログ水滸伝の頃の中国。豪商の西門慶は7人の妻妾と多数の手伝いの者を豪邸に侍らせ、贅沢三昧の日々であった。西門慶の親友である応伯爵」は西の城に入り浸っているが、目にするものは妻たちのドロドロとした人間関係。その中でも最も美しく、力を持ち、様々な問題のきっかけになるのが、淫魔で妖艶な潘金蓮だった…。 長いがこまめに章分けされ、目まぐるしく展開するエログロ歴史小説。序盤から手足を切り落とされるとか、はらわたを切り裂き、という描写もありつつの、一方で要所要所でかなりきつめのエロ要素があるため、かなり読者を選ぶ内容である。 妖術などが出てくる話かと思っていたが、そういう物は特になく、多くの章は謎解きのような探偵小説チックな話である。また、江戸川乱歩や横溝正史のように、悪役もまた固定されているところが読みやすい要因であろう。 ただ、中国名に馴染みが無いため、男女の違いがわかりにくかったり、劉が何人か出てきたりと中盤まで誰がどうしたのかわからないまま読んでいた。 また、文章は現代語が織り交ぜられたりと、かなり砕けた内容にはなっているが、章の終わりくらいには漢詩のようなフレーズを織り交ぜてきたりするので、どっち方面の終わりでいいのかな?と悩むところもあり。 なお、本としては終盤に「えっ?」となる展開となるが、まあそれはそれ、読んでのお楽しみである。 エンターテインメントとしては良作であるものの、やはりエログロの表現が少し現代には合わないかと思うし、読者も選ぶ一冊である。
0投稿日: 2025.07.29
powered by ブクログ中国の古典を元にした連作ミステリーです。 精力絶倫の大富豪・西門慶とその8人の妾達、周辺人物に起こる奇怪な事件を描きます。 最初は、中国の単語やら地名やらが沢山出て来たので調べながらだと読み進めるのが重かったのですが(内容には余り絡まないので読み飛ばしても良いかも)、中盤過ぎた辺りからグイグイ読める内容になって行きます。 読了後は、本作のミステリ史的な立ち位置とか読み方が分からなかったのですが、"犯人が固定化される事(フーダニットの排除)"、"動機が首尾一貫している事(ワイダニットの排除)"を「物語上の縛り」とし、"どうやって殺したのか?"だけで勝負する、と言う部分が画期的みたいです。僕は一般読者なので、緻密な分析はしながら読まないけど、言われてみれば"この型"のミステリは余り無いですね。 作品自体はボリュームがあるものの佳作です。ちょっと、各種ブック・レビューが"最期で全部繋がる"みたいな感じでかなり煽りが強かったのでハードルが上がり過ぎていたかもしれません。 最後の真珠の章で更に何か起きると予測したのであのエピソードは途中に挟み込んでも良かったかな。
0投稿日: 2023.08.18
powered by ブクログ中国の古典をもとに、美姫たちが織りなす凄惨隠避な怪事件を描く伝奇ミステリー。 読み応えのあるボリュームでしたが、一気に読まされてしまいました。 展開は、探偵もののミステリーという形はとっているものの、それだけだけくくれない、まさに奇書を作者がさらにアレンジして一大奇書に仕上がっていると思います。 形式は連作短編で、どれも淫靡な世界が描かれており、怖いもの見たさから目が離せませんでした。 人間の業の深さを感じずにはいられませんでした。
7投稿日: 2021.09.04
powered by ブクログ明の長編小説「金瓶梅」をもとにして、西門慶と多くの夫人たちの話を連作短編のミステリにしています。夫の寵愛を受けようと密かな戦いが繰り広げられる中、事件は起こり、西門慶の悪友でたいこもちの応伯爵が毎回真相を見抜くのですが…。最初はただただ恐ろしいと思える彼女が、読み進めるにつれ、愛のためならなんでもするとても可愛らしい人になっていきます。ミステリ好きならトリックは楽しめること間違いなし。15編すべて同じように進むかと思ったら、彼らをラストまできちんと書ききっていて、長編としてもとても良かったです。
0投稿日: 2019.06.14
powered by ブクログ山田風太郎ほどジャンルの幅が広く、駄作がなく、いつも見事な語り口で読者を酔わせる作家は他に知りません。中国の4大奇書とされる原作を深く読み込んでいますね。登場人物を自在に操り、金蓮を主人公にした「金瓶梅」を成り立たせています。潘金蓮愛のなせる技を見ました。お見事!
1投稿日: 2018.11.06
powered by ブクログこの趣向で本作以上の作品は出てこないのではないだろうか? 短編それぞれのトリックや動機の凄まじさもさることながら、キャラの魅力が存分に発揮され、後半にかけて特異な物語へ変貌するキーとなっている。味わったことのない深い感情へと誘います。 エログロ盛りだくさんであり本格ミステリ。と一括りには出来ない美しさに気付くのであった。 華文ミステリが身近なこともあるし、ぜひ今のミステリ読者も読むべき。このテーマは現代人にこそ響いてほしい。
1投稿日: 2018.10.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
犯人はヤスならぬ潘金蓮。 浅学菲才の身ゆえ『水滸伝』の武松の名こそは知っていたものの彼の伝で語られる豪商西門慶とその第五夫人潘金蓮はとんと知らず、まして水滸伝と並んで中国四大奇書とされる『金瓶梅』がそのスピンオフ小説でありタイトルの「金」がその潘金蓮の金だと知ったのは本作の読後の事であった。 さて本作はその『金瓶梅』をベースにその官能性を失わぬまま大胆にアレンジした16篇からなる短編連作ミステリーである。 作中で度々「稀代の大淫婦」「妖婦」「毒婦」だの散々な…恐らく水滸伝や金瓶梅そのままの評で呼ばれる潘金蓮が傍から見れば些末な出来事で癇に触れ、その相手を死なせる、死ななくとも酷い目に遭わせ、それを西門慶の幇間であり悪友にして本作の探偵役である応伯爵がトリックを見破りながらも彼女にべた惚れであるがゆえに役人に突き出すような真似はせず見逃し、潘金蓮が婀娜と微笑んで幕を閉じる短編が11と続く。 3篇目ともなると事件の動機となる定型化されたやり取りに「あっ…(察し)」となり、案の定な事件が起きてハイハイ犯人は潘金蓮潘金蓮ワロスワロスとなる。フーダニット?ホワイダニット?何それ美味しいの? …が、しかし。12作目から物語は怒涛の展開を見せ始め、短編連作と思われた本作は実は一本の筋の通った長編であり(一本の長編と番外編の短編一作と言っても差し支えない)狂気とエログロはただひたすらな愛情であり、そして愛欲と憎悪が渦巻き果てはソドムとゴモラと化す「金瓶梅」とは潘金蓮だけを指す訳ではなかったのである…。
0投稿日: 2018.10.04
powered by ブクログ山田風太郎『妖異金瓶梅』読了。 今回のシャカミス課題本。初山田風太郎作品だったのだけれど、50年前の作品とは到底思えない読みやすさだった。本作は、中国四大奇書『金瓶梅』を基に、キャラクターと舞台をそのままに連作ミステリとして再構築したもの。しかしすごいな表紙・・・・・・ 後から知ったのだけれど、実はこの文庫は『妖異金瓶梅』とその続編『秘抄金瓶梅』を併録したもののよう。単行本で持っている稀有な方がいたら前半で終わっているかも。読書会メンバー大丈夫かしら。 さて、金瓶梅といえば水滸伝のスピンオフだが、厳密には水滸伝から分岐した違うルートである。 本作はその金瓶梅のシナリオを抑えつつ実は水滸伝のシナリオも重要な要素として機能している。とはいえ、元ネタの知識は不要。奇書繋がりでちょっとだけ知っていた僕は面白かったけれど、僕の知識はWikipediaの粗筋程度なので多分原作知識は要らないでしょう。 元の水滸伝、金瓶梅のキャラが非常にユニークで魅力的なので、当然本作もそのあたりは読んでいて楽しい。探偵役の応伯爵なんてめっちゃ面白いおっさんだし、潘金蓮の妖艶さもこの作品の肝だろう。これだけの数の登場人物がみな違ってみな魅力的なのは驚異的。 ミステリとしては本来は連作では用いない(普通は作品としては崩壊する)ある縛りをあえて使い、その上で成功させている。ハウダニット、フーダニットものの連作短編としても面白いが、連作が「長編化」していく終盤も見事。あまりに壮大で美しく哀しい。
1投稿日: 2018.09.17
powered by ブクログこの全編を支配する淫靡で血生臭くも妖艶な世界観は何なのだ!?! 酒池肉林の渦中に観る凄まじい肉欲と憎悪とそして死・・。 まるで読み耽る自分が七つの大罪を犯しているかの如くに深淵に堕ちていく感覚・・・。 絶世の美女でありながら稀代の大淫婦「藩金蓮」の凄まじい愛と欲望渦巻く妖異譚の傑作。
0投稿日: 2015.05.09
powered by ブクログ読了後、思わずため息がこぼれた。 どこをとっても素晴らしい。 舞台は中国の古書、『金瓶梅』を下敷きとして書いたものらしいのだが、この舞台設定が作品の艶かしさを高めている。 そして登場人物皆が魅力的でいきいきしてるのだ。 手前勝手だが何故か憎めない西大慶。 どうしようもない奴だが、どうしてか周りを惹きつけてしまう応伯爵。 そして美しい妾たち。 中でも潘金蓮の蠱惑的なことと言ったら… 本書はまさに潘金蓮のために書かれたと言っても過言ではないだろう。 そんな中で起こる殺人事件やらなんやら… 冒頭の「赤い靴」で衝撃を受け、それ以降の作品でさらに衝撃を受ける。 なぜならフーダニットとホワイダニットを排除してしまっているのだ。 したがってハウダニットに主眼が置かれるのだが、これがまた毎回驚きを伴っているのだから凄い。 ラストの方はストーリー仕立てになっているのだが、そこで潘金蓮の魅力は最高潮に達する。 そこらの作家が小手先で書いた恋愛小説など霞むレベルの深い「愛」に読者は圧倒されるだろう。 そしてラストを飾る「人魚灯籠」 これがまるで走馬灯のような役割をもたらしなんとも言えない余韻が生まれる。 この上なく贅沢な一冊。 是非読んでみて欲しい。
5投稿日: 2014.09.30
powered by ブクログ面白い話もあったような気もするけど、全体的には退屈であくびが止まらなかった。。 半分も行かずに断念。
0投稿日: 2014.07.31
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
初めて読む、忍法帖シリーズ以外の山風作品。 絶世の美女だけど恐ろしいほど嫉妬深く、あの手この手でライバルたちを葬っていく主人公・潘金蓮。 ただの毒婦かと思いきや、主への愛情は誰よりも深いし、度胸も愛嬌もあって、読むほどに魅力的になっていく。 読み終えた頃にはすっかり虜になって、殺されてもいいからこんな女に会ってみたい!と思ってしまった。 潘金蓮以外の女性もそれぞれが他人には負けないチャームポイントを一つずつ持ってて、色とりどりの愛憎劇が楽しめた。 その上、奇想天外なミステリー小説としても読めて、山風の懐の広さに脱帽。 是非他のミステリー作品も読んでみたい。
0投稿日: 2013.09.06
powered by ブクロググロテスクだが読んで良かったと心から思える本。現実性という意味では無理のあるところもあるが、そんなものもねじ伏せてしまうぐらいの迫力がある。 水滸伝や金瓶梅を読んでいるとより感動が大きいので事前に読んでみるのをおすすめ。
0投稿日: 2013.08.18
powered by ブクログ中国古典『金瓶梅』を元にしたサスペンス・ミステリ長編。 頭休めに「金瓶梅」でも読もうと借りてきたが、あまりに長い本であった。
0投稿日: 2013.08.17
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金瓶梅を種本にしたミステリー。 いつも殺人犯が同じ、というミステリーは見たことがない。きっと書いたとしても妖異金瓶梅のパクリと思われてしまうからだろうと思う。 金蓮のキャラが立ちすぎて怖い。足がでかいと言い返したいがためだけに2人殺したり、いい肌の臭いのする妾をクソまみれにしたりと、全体では自分が勝っているのに、他人に優れた部分がひとつでもあることが我慢できない、まさに女人大魔王。 一番怖いのは、すべての行動の動機は西門慶への純愛から生まれていること。 金瓶梅の原作は途中で投げたが、水滸伝はまた読みたくなってきた。義でつながる異能の悪党どもという話はこころが踊る。それ忍法帳シリーズだった。 もともと水滸伝のスピンオフが金瓶梅と解説を読んで知った。
0投稿日: 2013.06.23
powered by ブクログ恐ろしい一冊。 個人的オールタイムベストランキングに入る。 ミステリとしてこの趣向は考えたことあるけど、それをこれほどの出来で達成する人は他にいるのかしら?
0投稿日: 2013.06.05
powered by ブクログ山田風太郎作品が好きで購入。 己の欲望に忠実に行動する潘金蓮には、最初こそ「嫌な女!」と思わされるのですが、一遍読み終わる頃にはどうやら此方も彼女に魅了されるのか「仕方のない人だなぁ」と応伯爵と一緒に苦笑してしまいます。 応伯爵のキャラクターもとても魅力的で、探偵小説好きとしてはとても楽しめる一冊でした。
0投稿日: 2013.05.16
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忍法帖以外で山田風太郎氏初めての作品、忍法帖があまりに有名であるが、デビュー後はミステリ中心の創作であるし、明治モノとジャンルされる作品群もミステリ要素は強いらしい。この「妖異金瓶梅」は忍法帖への橋渡しとなった作品のようで、忍法帖における氏の作風が垣間見える。 連作短編集であるが、このパターン(後述)の類型は見たことがなかった、そして短編一つ一つがトリックの独創性に優れ、ゾッとする読後感に溢れている。本当にすごい作品であり、1950年代の作品というのが信じられない。 中国4大奇書の一つ「金瓶梅」を下敷きにしているが、登場人物のキャラ立ては山田氏独特の味付けが行われている。何よりヒロイン藩金蓮の美貌とその恐ろしき「愛」の貫き方は今作の中核を成すものであり、彼女を中心としてエロス漂う世界観は忍法帖に通じている。 以下ネタバレ ミステリの定石として探偵と犯人の存在があり、魅力溢れる探偵の創造に作家は腐心することであろうが、魅力的な犯人というのも創作上の大きな問題であろう、犯人は探偵と違い使いまわせない、犯罪が暴かれた後は退場するしかないのだが、この「妖異金瓶梅」ではこのジレンマを完全に払拭した独特の世界観を創りあげているのだ。オリジナル金瓶梅ではほんの脇役であった応伯爵が今作では探偵役であり、ヒロイン藩金蓮が常に犯人役である。様々な事件が発生し、ほとんどが殺人である。真相を暴けば全て藩金蓮の企みであり、応伯爵はそ知らぬフリで金蓮を見逃すのだ。その代償として切なく儚いご褒美を当の金蓮からいただく、というのが一連のパターンである。 しかしながら犯人と探偵が常に固定されているという特殊な世界において、ミステリ性も「なぜ?」「どうやって?」に限定されるのだが、その足枷が物語を逆に面白くドラマティックに仕上げているように思える。これは妖しくもエロス溢れる世界観の中での限定的現象なのだろうが、ただただ山田風太郎氏の創作の勝利と言えるのだろう。 これでもか!と叩き込まれる金蓮の悪巧みも、その本質は純粋過ぎるがゆえの強烈な「愛」によって生まれるものであり、垣間見える彼女の顔も恐ろしかったりかわいらしかったりする。読者は報われない思いを持って金蓮と接する応伯爵目線に立って物語に入り込むだろう。類希なる美貌の金蓮に心奪われながらも、その思いの強さゆえの悪逆非道を見せ付けられ、彼女に近づけないのだ。このもどかしさは自分自身強く感じた。 このようなことも全て解説で述べられていたことであり、読了し大いに納得したことである。解説には高木彬光氏、有栖川有栖氏、綾辻行人氏などのビッグネームの書評、対談などが記載されている。有栖川、綾辻対談における「究極の愛の物語」に強い感銘を受けた。エロ、首切り、足切り、カニバリズム、同性愛、血生臭い殺しの果てに累々たる屍の山を見せつけておいて、最後に「愛」を感じることができた自分であった。 エンタ性抜群の作品であった。
2投稿日: 2012.10.03
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中国四大奇書のひとつ「金瓶梅」を基にした連作短編ミステリー。 怠惰で醜悪で妖艶な欲望渦巻く魅惑の世界で、ユニークなトリックが披露される良質な一冊です。 探偵役が決まっているだけでなく、本作では犯人役も毎回同じ人物に決まっているのがおもしろい。 同じ人物が事件のきっかけを作り、同じ立場の人間が被害者となり、同じ犯人が罪を犯し、同じ探偵役が真相を見抜くという展開の繰り返しですが、毎回凝ったトリックとエロティックな展開がおもしろく飽きやマンネリはありませんでした。 最後は作者にまんまとしてやられて脱帽。 【赤い靴】どろどろとした女たちの愛憎劇も楽しいですが、両足を切断された二人の死体、足フェチの男、夢遊病の女と事件も不気味で楽しいです。見取り図が添えられたロジカルで良質なミステリー。しかし何よりも動機が凄い。 【美童と美女】濃厚すぎて胃もたれしそうなエロティシズム。女同士、男女だけでなく男同士の嫉妬も絡まって愛憎、欲望がぷんぷんと臭いたってます。西門慶は本当に最低な人間なのですけれど、どこまでも欲望に忠実な姿に何故か憎めない。 【閻魔天女】このトリックで西門慶のアレを利用したのにはびっくりしました。そんなばかな。西門慶って凄いんだな。 【西門家の謝肉祭】色欲に溢れかえっていた西門家に食欲まで加わって欲望の濃密さにむせ返ります。なんとなく予想できた展開ですが、食道楽の夫人の旺盛な食欲を思い出すと、豚とか牛とかを連想してなんとも言えない気持ちになりました。 【変化牡丹】金蓮が体張ってます。入れ替えトリックは他にもありましたが、これが一番無理やり。 【銭鬼】色欲、食欲と出て金銭欲です。あんな殺され方は嫌だな。 【麝香姫】今度の相手をどうするかと思えばよりによってあんな方法をとるとは…。西門慶可哀そう…。「わたしは悪い女なのかも」とかいってる金蓮が可愛いです。 【漆絵の美女】意気消沈している西門慶に一人づつ声をかけている場面がおもしろいです。あんなに女がいながら真に心に寄り添って慰めたのが伯爵で、我らが金蓮は何を言うのかと思えば爆弾発言しました。かっこいい。「美童と美女」が悲惨な話だったのでここで救いがあるかなと思いきや、もっと後味が悪かった。 【妖瞳記】これはトリックは分かりやすいですが、それよりも品のある美しい女性の秘密の趣味というのが良いです。麗華さん好き。 【邪淫の烙印】ゾオラ姫がかわいい。このトリックはおもしろい。怪僧との対決も楽しいです。 【黒い乳房】このへんにくるとあの人の存在感が大きくなって信用できませんのでトリックは気付きやすい。西門慶が聴覚や嗅覚もコントロール出来る超人になってて笑いました。 【凍る歓喜仏】愛する男にこの策略を巡らせた金蓮は凄い。西門慶がああすることを見通していたということを気にも留めないほどの愛情ですが、純愛と同時に利己愛です。西門慶は最後まで彼らしくて良かった。 【女人大魔王】このトリックはすごいです。状況をも巧みに利用し全て自分の思い通りに事を運ぶ。金蓮の執着と怜悧さが際立っています。 【蓮華往生】淫婦と呼ばれた金蓮がこんなにも愛に殉じた最後を遂げるとは。金蓮と伯爵の二人が主要な役割を務めてきた展開であったのに、この二人の関係がこんな形で終わったことに胸が痛みます。 【死せる藩金蓮】春梅の真の姿と金蓮との関係は分かっていたつもりでしたが、その情念の深さには驚きました。一つの街を滅ぼすほどの動機、その方法、共にとんでもないです。 「死せる藩金蓮」というタイトルながら、彼女を愛した誰もが死んだ彼女を「生きている」としているのが金蓮の凄さを物語っていたようです。 金蓮には多くの人物が想いを寄せていますが、その中でも武松という豪快な男は金蓮の相手としては遜色ないです。しかしあえてこのビッグカップルではなく伯爵を中心に据えているのが、金蓮を取り巻く人間模様を俯瞰的に見せ、かつ哀愁漂う切ない幕切れを演出しました。 他の何を犠牲にしても欲しいものを手に入れようとした金蓮と、結局誰も犠牲に出来ず何も手に入れられなかった伯爵という二人の愛し方は全く正反対であったように思います。 連れ去られる金蓮を見送るときの、自由人である伯爵には似合わない執着と愛情が哀しすぎる。 これだけ欲望にまみれたばかばかしくも凄まじい男と女の愛憎劇で、淫婦・藩金蓮という強烈なキャラクターを描きながらも、最後には一人の男の一途な愛情で締めて感動させてしまう作者の手腕に敬服です。 【人魚燈籠】登場人物が違いますが「邪印の烙印」と同じ真珠盗難事件です。しかし別の展開をみせており、わたしはこちらの方が好きでした。
0投稿日: 2012.08.30
powered by ブクログ全部は読んでいないものの山田風太郎作品が好きで手に取った本。忍法シリーズが基準だったので文体が「普通」。でも、読み応えはありました。 金瓶梅といえば中国の古典らしいですが、金蓮が悪女な一方、真っ当。むしろイッちゃってるのは西門慶。 そして応伯爵が悲しい!! ざくざく人は死にますが、忍法ではなく、「嫉妬」というのが話としては好感が持てました。 また、この本を知る大分前には【異説金瓶梅】という舞台を観まして、登場人物が役者さんたちのイメージで読めたのも、この本にのめり込んでしまった理由かと思います。
0投稿日: 2012.07.21
powered by ブクログ自分の欲望の為なら殺しも厭わない、欲望に果てが無くて、底無しに愛を欲する女魔王。 にも関わらず男女問わずに、その心を捕らえて離さない、非常に蠱惑的な魅力を持つ潘金蓮に飲まれた~。 飲まれた胃の腑から這い上がれないよ。 その金蓮に囚われの放蕩物な応伯爵が探偵役と言うのも、面白かった。 決して、外に漏らさない代わりに欲を少しだけ満たしてもらう。 だから、彼は欲を満たして欲しくて、また謎を問いてしまう。 凄い蟻地獄。 何回読んでも、その度に囚われてしまうんだろう。 あぁ~面白かった。
0投稿日: 2012.06.30
powered by ブクログアクロバティックなミステリの極致。潘金蓮をめぐる武松、鳳春梅、そして応伯爵の「愛」のかたち。なんど読んでも、読むほどに、うちのめされる。
0投稿日: 2012.06.26
