
総合評価
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powered by ブクログ図書館。アンソロジーで読んで良かったので。 「猿祈願」と、最後の「正月女」もアンソロジーで読んだことあった。田舎の描写がとてもいい。
7投稿日: 2025.08.26
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
坂東眞砂子氏の怪奇短編集。超常現象を扱っているが、この作家特有の日本古来の土俗的な因習に根差された言伝えや風習を基に綴られた恐怖を描いている。 まず表題作の「屍の聲」は惚けてきたおばあさんを孫の布由子が見殺しにする話。 布由子はおばあさんが時折正気に戻った時に自らの醜態を恥じ、死にたがっていた事を知る。誤って河に落ちたおばあさんを助けようとするが、正気のおばあさんが死にたがっていると信じ、そのまま見殺しにする。しかし葬儀の行われたその夜・・・。 次の「猿祈願」は当時上司だった男と不倫の関係になり、前妻と離婚させ、婚約をした女、里美が夫巧に連れられて夫の故郷秩父を訪れた時の怪事件を扱っている。 里美は巧の親に挨拶に行くため、秩父へ向かった二人は巧の母が勤める霊場で待ち合わせる事になった。そのお腹には巧の子供を宿してもいた。巧が里美を残して母親を探しに行った際、里美は「のぼり猿」を奉る観音堂で一人の老女と出逢う。それは巧の面影を持った老女で里美は件の母親だと判断するのだが。 続く三作目「残り火」は薪の風呂を沸かす妻とその風呂に入る夫との間に交わされる会話を軸に語られる。 房江は人生を夫のために尽くしてきた。娘から旅行の誘いが来、房江は夫秀一にその旨を伝えるが一蹴されてしまう。房江はいつものように夫のために風呂を沸かしていた。話題は次第にかつてひどい仕打ちをされた舅の事へと移る。今の今まで夫の秀一に尽くす事が出来たのは舅に家を追い出された際、隠遁先の温泉宿で出くわした夫の生霊と「戻ってこい」という言葉に支えられてきたと信じてきた房江は夫から意外な告白を聞かされる。 バツイチの美人ホステスを口説き落とし結婚した男が、妻と一緒に引っ越した家にある荒れた畑を開拓している最中にハメという蝮に似た毒蛇に妻が咬まれるシーンで幕を開けるのが「盛夏の毒」。 ハメに咬まれて命を亡くした者が多数いることで夫慎司は必至の思いで街の住民に助けを求める。雑貨屋の電話を借りて病院に電話している際に聞こえてきた住民の話は妻が浮気をしているといった内容だった。駆けつける医者より一足早くハメの毒に苦しむ妻の許へ戻った慎司は妻に噂の真偽を問い詰め、ある決断をする。 父親の死を機に母親の故郷新潟に戻った小学生の孝之を主人公にした「雪蒲団」は子供達の間での噂が発端となっている。 孝之の家の隣にすむ繁さんは独身で親代々から熊を捕って生計を建てていた。しかし孝之の従兄弟達の話では彼が人の肝も取って売っているという噂があった。気になる孝之は学校で喧嘩し、飛び出した際に繁さんの家を覗いてみる。そこで見た光景とはしかしそのどれでもなく・・・。 最後の1編、「正月女」は拡張型心筋症という不治の病に罹った登見子が、最後の正月を過ごすため、夫の家へ帰るという話。 皆が自分の死を期待しているように思える登見子は姑から「正月女」にはなるなと厳命される。その村では元旦に女が死ぬと村から七人の女が道連れにされると言い伝えられていた。登見子の夫保は村中の女性の注目の的であり、自分の死後、誰かの物になるのが登見子には堪らなかった。自分の命が長くない事を悟っていた登見子はあえて「正月女」になって保に近づく女性を道連れにしてやろうかと情念をたぎらすが・・・。 これまでの長編同様、この短編集でも各短編とも人の業が嫌というほど、描かれている。恨み、辛み、妬み、嫉み、欲情、愛情などでは足らない烈情とも云うべき想いが各登場人物には強いのだ。 前にも書いたが、この作家は人間が本来口に出さないながらも持っている一番嫌らしい感情を実に率直に書く。 表題作の「屍の聲」は惚けたお婆さんの介護への嫌気、「猿祈願」は自分があった仕打ちを相手に末代まで仕返ししようという呪い、「残り火」はどの夫婦にもあるであろう、妻が夫に尽くす事で無くした人生の損失を、「盛夏の毒」は愛情深い故に起きる激しい嫉妬、「雪蒲団」は知らぬ土地で暮らす子供の唯一の拠り所である母親を取られたくないという独占欲、「正月女」は病人が抱く周囲の同情が早く死んでほしいという気持ちの裏返しである事、といった具合である。 あまりに負の感情ばかりなので、この作家は純粋な愛情を知らないのかしらと不審に思うほどである。 どの短編も読み応えあるが、あえてベストを選ぶとすれば「雪蒲団」。 これ以外の短編は従来の作品同様、主人公の動機、怪奇現象の原因などが直截に語られていたが、この作品はそれをせずに描写と台詞だけで、何を孝之は繁さんの家で見たのか、何が繁さんの家であったのか、なぜ孝之は繁さんを殺したのかを読者に悟らせるのである。この効果がもたらす真相の驚き度は強烈だった。 孝之が母親に甘える一行の台詞、この真意が非常に恐ろしい。この作品は今までの坂東作品より一段上の出来である。 あとこの作品には印象に残った文章があるのでちょっと抜き出しておこう。 “「すみません」は魔法の言葉だ。厄介事から解放してくれるが、その魔法を使うたびに、言葉を使った者の体は縮む” 大人は皆そうやって大きくなってきた。しかし子供の目には縮んで見えるのだ。なかなかに面白い。 坂東氏はこの短編集で短編も書ける事を大いに証明した。やはりこの作家はこの路線が非常に合っていると思う。
3投稿日: 2024.06.13
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
呆けて孫のことが分からなくなったお婆ちゃん、でも時々呆けていないお婆ちゃんが出てきてそのお婆ちゃんは死にたがっている...これは孫の気持ちが分かりすぎてキツイ どの話も人間が生きる屍になっている でも同時に燃え上がるような生も感じていて、圧倒された 雪蒲団はどうして繁さんが殺されなければならなかったのかが理解できない あの子はあのときどんな精神状態になったの...?
1投稿日: 2024.03.15
powered by ブクログ相変わらず不気味な小説を書く作家。舞台は四国か。土臭い闇の世界がよぎる坂東のホラーは他の者の追随を許さない。短編集だがテーマとして共通しているのは“迷信”“ことわざ”“いいつたえ”など。これもおどろおどろしい雰囲気をかもしている。中でも、猫が死者を跨ぐと死者が生き返る、何ていうのは本当にあるようで恐い。
1投稿日: 2021.01.26
powered by ブクログ人間の心の中にある妄執、殺意、憎悪などの暗い感情を題材にした物語。主人公たちの抱える闇はは誰もが持っているものであろうが、それが極まると恐ろしい結末を引き起こしてしまうのだろうか。幽霊のゾッとするとは違う、うすら寒いという感覚を覚えた。 幽霊だとああ怖かった。で終るんだけど人間だとすごい気持ちが悪い。後味も悪いし。なんだかんだで人間が一番怖いって言うのはよく言ったもの。 心の中にどろっとした物が溜まった感じ。心が重たくなったみたいなそういう感じの読了感。
1投稿日: 2020.09.21
powered by ブクログ濃密な情念に満ちた重めのホラー短編集。血縁や婚姻による繋がりの中で、しがらみや重圧、自身や他者の欲望によって、心をすり減らしていく人々の物語。怪異が存在する話もそうでない犯罪小説的な話もありますが、人の身勝手さや嫉妬心、伴侶や家族に対する無意識の甘えがストレートに表現されて、ずしりとくるものがあります。 それでいて、どの話もよくまとまっていて、すいすいと読めるのもよかった。
1投稿日: 2017.02.23
powered by ブクログ2016年11冊目は1ヶ月の再読期間明け、坂東眞砂子のホラー短編集。全6編。 屍の聲:惚けてしまったおばあちゃんと孫娘の話。ラスト一行で、二通り目の解釈が出来るようになってる。 猿祈願:上司と派遣OLの不倫の果ての話。展開もオチも予想の範囲内ではあったが、30p弱で上手くまとまってる。 残り火:地主一家に嫁いだ嫁の話Pt1。コレはこの中では、一番ベタなんじゃないかな 盛夏の毒:山村で農作業中に毒蛇に咬まれた、新婚夫婦の話。ドロッとした淫靡フレーバーの、ある意味、王道パターン。 雪蒲団:夫の死後、妻の実家へ戻った母子の話。コレは行間に注意しましょう。 正月女:地主一家に嫁いだ嫁の話Pt2。コレも展開&オチは予想の範囲内。 個人的好みは、「屍の聲」「雪蒲団」「盛夏の毒」「正月女」「猿祈願」「残り火」の順かな(?)。 全体として、山村での、土着土俗的な感覚のホラー。短編ながら、伏線が上手くはられている。ただ、それがチョット気付き易いんで、比較的安易に展開やオチが予想出来ちゃうのも事実。その辺で評価伸び悩んで★★★☆☆。 それでも、なかなかで、一晩読了。
1投稿日: 2016.04.05
powered by ブクログ①屍の聲 ボケてしまったおばあちゃんと、その孫のお話。お年寄りの介護って本当に大変。よく、子供や孫が真摯に世話をする様子が描写されるけど、本当に、偉いなぁといつも感じる。介護って、それだけ大変なこと・・・まだ中学生の布由子の抱える負担感は相当なものだ。なんとなく、気持ちもわかってしまうのは、自分への言い訳なのか、単なる同情なのか。 ②猿祈願 安産祈願のお猿さんの人形ってのは、さるぼぼとは違うのかしら・・・でも、奥秩父が舞台だし、岐阜のさるぼぼとは違うのかな?怖い姑がいなくて良かった良かった・・・ ③残り火 奥さんは大事にしよう。こんな風に、昔の風習のなかに、時代感覚の違う人が混じっているとやっぱりしんどいものなのだろうなぁ。何も感じず、考えずに、生きていた方が、時には幸せなのかも・・・しれない・・・ ④盛夏の毒 お盛んなお二人。貞操はいつの時代でも大事・・・と信じたい。 ⑤雪蒲団 母と子とのほっこり物語かと思ったら!嫉妬心は恐ろしい。 ⑥正月女 女の嫉妬!こわ~。 多分・・・だけど、今回読んだの、これ二度目かな? なんとなーく覚えあり。だけど、改めて年取ってから、読むと、それも結婚が決まってから読むと、感じるものも変わってくるんだなぁとしみじみ。
1投稿日: 2016.01.18
powered by ブクログ坂東眞砂子、どんな小説なんだろうと初めて読んだ。短編それぞれ共通するのは、田舎の生活やら風習が底にある都会にはない雰囲気。話の魅力は最後の「正月女」が頭一つ出ていた印象。
1投稿日: 2014.04.28
powered by ブクログ正月の元旦に女の人が死んだら、その村の女を七人引いていくゆうがよ(正月女)…など、田舎の地縁と人の執着心が歪を生み出すバッドエンドなホラー短編集。 方言での会話が作り出す風土風習に絡めとられるような陰の雰囲気に独特のクセがあって、キモ怖くて面白い。 「屍の聲」「猿祈願」「残り火」「盛夏の毒」「雪蒲団」「正月女」の6編。
1投稿日: 2012.09.06
powered by ブクログ最終話は一瞬、自分がどこにいるのか わからなくなるくらいこわかった。 短編集だと大体は「こわい」と思う前に話が 終わってしまうものと思っていたけれど、 どの話もちゃんと出来上がっているのがすごい。 さすが坂東さんです。
1投稿日: 2011.09.16
powered by ブクログこんなに怖いホラー小説は読んだことがない… 各地の民話や伝承に着想を得た怪談ですが、文章が圧倒的にうまいから、どの短編も現実のように感じる。 最近の、なにかゲームの世界のようなホラーとは一線を画する、本物のホラーです。
1投稿日: 2011.07.18
powered by ブクログ田舎の鬱屈した空気の中に燃える情念をテーマにした短編集。 読みやすい中にも,ホラーとしての雰囲気が漂う。 個人的には「屍の聲」,「正月女」が良かった。
1投稿日: 2007.08.23
powered by ブクログ坂東先生は日本社会の閉鎖的かつ土着的、湿った雰囲気を描くのがとても上手だと思います。背筋がぞくりと震えあげるようなホラーは逸品です。
1投稿日: 2005.07.28
