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補陀落渡海記 井上靖短篇名作集
補陀落渡海記 井上靖短篇名作集
井上靖/講談社
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総合評価

8件)
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    このレビューはネタバレを含みます。

    最近読んだ木内昇さんの「化物蠟燭」の中の一篇、蛼橋(こおろぎばし)に補陀落渡海(ふだらくとかい)のことがちらっと出てた。 それで思い出した。 たしかこれ、すんごい怖い話だよな〜って。 海上即身仏みたいな? 誰か本で書いてないか調べてみたらピンポイントで出てきた。 「補陀落渡海記」 そのまんまや〜。 井上靖さんか。 「しろばんば」ぐらいなら読んだことがあるようなないような? 短編集でした。 ・波紋   モテモテ大学生の苦悩。 ・雷雨   迷惑爺さん。 ・グウドル氏の手套(てぶくろ)   曾祖父の妾の思い出。 ・姨捨(おばすて)   私と母と妹と。 ・満月   昭和中期の大会社人事。 ・補陀落渡海記   無理矢理浄土行き。 ・小磐梯   明治二十二年磐梯山噴火。 ・鬼の話   そんなんだからあんたは不眠になるんだよって話。 ・道   獣道。犬道。子供道。 いや~文芸だな。 いかにも文芸でした。 文芸とは何かと聞かれたら困るけど、俺のイメージとしては特筆すべき目的のない何も起こらない小説。 殺人は起きない。 幽霊もモンスターも出ない。 タイムスリップも起きなければ超能力も発現しない。 恋愛も謎解きもない。 社会正義なんか訴えない。 悲劇も喜劇もアクションも知ったこっちゃない。 もちろんどんでん返しもカタルシスもなんのその。 私小説多め。 生きるとは、人生とは、みたいなのが主なテーマ。 という印象。 もちろん苦手分野(笑) 本書も補陀落渡海記と小磐梯以外は私小説くさいな〜。 辛いわ。 字もけっこうキツイ。 【物故した】なんて表現わかるのかなー、最近の子は。心配。 まあ文脈でわかるか。 【私は父方の親戚一門の物故者の顔を次々に瞼に載せて行った。】 なんて一文は好きだな。 瞼(まぶた)に載せて、か。 ただの不眠中の話だけど(笑) けっこうフリガナも付いてるけど、漸く(ようやく)とか、亦(また)とか、併し(しかし)なんかも難しいから付ければいいのに。 で、肝心の補陀落渡海記。 補陀落信仰。 すなわち、観音浄土である南方の無垢世界補陀落山に観音菩薩を拝し、その浄土を往生せんと願う者が、熊野の南端の海岸を生きながら船に乗って出ること。 うん。よくわからん(笑) 【船底に固く釘で打ちつけられた一扉すら持たぬ四角な箱にはいり、何日間の僅かな食料と僅かな燈油を用意して、熊野の浦から海上に浮ぶことは、勿論海上に於ての死を約束するものであった。併し、それと同様に息絶えたものの屍は、その者が息絶えると同時に、丁度川瀬を奔る笹舟のように、それを載せた船と共に南方はるか補陀落山を目指して流されて行く。流れ着くところは観音の浄土であり、死者はそこで新しい生命を得てよみがえり、永遠に観音に奉仕することができるのである。熊野の浦からの船出は生命の終焉を約束されていると同時に、宗教的な生をも亦約束されているものであった。】本文抜粋。 つまり、渡海船と呼ばれる小舟に箱詰めにした人を載せて、いってらっしゃーいと海に流す。流してもらう。 そりゃ死ぬね。 はい、こっからネタバレ丸出しです。 いいですか? 小説の主人公である補陀落寺の住職。金光坊さん。御年六十一歳。 覚悟ができてません。 ぶっちゃけ死にたくないのでしょう。 しかし周りの同調圧力に負けるように補陀落渡海を宣言してしまいます。 やっちゃったね。 前任者も、そのまた前任者も同じ年齢でやってるしね〜。 どんどん迫る期日。 ついに金光坊さん乗船させられ、木の箱をすっぽり被せられ、釘を打たれて密閉されて哀れ海の上。 さよ〜なら〜。 しかし金光坊さん頑張った。 死んでたまるかと文字通り命懸けの体当たり。 メキメキっと箱が割れる希望の音。 やったぜ脱出! しかし勢い余ったか小舟からも転げ落ちて海の上。 板子一枚につかまって海にプカプカ浮かびまーす。 そのまま粘り、命からがら島に打ち上げられました。 助かった〜と思いきや、まさかのアゲイン。 救けてくれーの声は小さくとも聞こえていたのですが、かまわずアゲイン。 金光坊さん、紙を手渡され一筆書きます。 書き終わったら箱に入れられ、今度こそはと入念に釘で打ち付けられて船でアゲイン。 はい、おさらばでございます。 こんなんで浄土とやらに行けんのかな? 恐ろしいのはこれ、半分くらい実話。 実際は、補陀落渡海を嫌がったので無理に役人に沈められたらしい。 コエーーー!! 宗教怖いよー!!! 不思議でしょうがないんだけど、なんで宗教って簡単にひとを殺したりすんのかな。 戦争やら、迫害やら、拷問やら、意味わからん。 あ、そうそう。 作中で金光坊さんが書いたという字があるんだけど意味わからんのよ。 【蓬莱身裡十二棲、唯身浄土己心弥陀】本文抜粋 【求観音者 不心補陀 求補陀者 不心海】本文抜粋 わかるような、さっぱりわからんような。 急募! 解読できる方。

    33
    投稿日: 2025.04.17
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    補陀落渡海記を読みたくて手に取った。 何だろう。 何となく自分の運命が規定されていく感じ。 誰かが強く主張したわけでもなく、明確なルールがあるわけでもない。それなのに死を強要され、受け入れるしかない。ふんわりとした地獄。何だろう。この感じは。塀のない刑務所のような。 言語化が難しいが、現実で見かける風景だ。

    0
    投稿日: 2025.04.01
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    補陀落渡海記が心に滲みる。補陀落寺の住職として、生きながら船に乗って観音浄土を目指す金光坊の心情を描写している。淡々とした描写がリアルだ。十分な悟りをひらいたわけではないのに、こんな状況に追い詰められるのが怖い。井上靖ならではの傑作。

    0
    投稿日: 2025.03.24
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    表題作を読みたくて購入。表題作以外は1作を除いて現代小説でしかも全く面白くない。 表題作はまずまず。最も終わり方をもう少し工夫出来ないものか。それともこれは史実なのか。 もう一つの歴史小説は磐梯山の噴火。凄まじい出来事のようだが、小説は今ひとつ。

    0
    投稿日: 2024.03.09
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    井上靖は日本文学の代表とひとりごちた。 渡海上人の様々なパターンが金光坊を通して綴られ、各人の表情が、シャープに読者の心を抉る。 個人的には、小磐梯が心に残る。吉村昭に通じているドキュメンタリーながら、民俗的な風景と慕情が、読後の印象を最も強めている。

    1
    投稿日: 2019.11.29
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    人生と死に向き合う作品9編。掲題は、既に海に流され死ぬ運命を認めながら、恐怖と葛藤にもがく僧の話。著者の筆力の凄さを感じる。2018.1.13

    0
    投稿日: 2018.01.13
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    やっぱり井上靖の小説は短篇も面白いです。 感想のつづきはブログで… http://pinvill.cocolog-nifty.com/daybooks/2011/08/post-a2c4.html

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    投稿日: 2011.08.10
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    補陀落寺に代々伝わる、渡海上人の慣わし。それは、生きながら海に出て往生を願うというものだった。表題作ほか9編。 決して悪い短編集ではなかったし、井上靖らしい淡々とした清らかさがよく出ていたと思う。しかし、読み終わって日数が経った今になってその内容を思い返そうとすると、どうにも印象が薄いのである。 というわけで、感想を書こうと思っても言葉が出てこない・・・やはり感想を書くのは読んだ直後に限る、と反省したい。

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    投稿日: 2011.07.23