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西遊妖猿伝 大唐篇(1)
西遊妖猿伝 大唐篇(1)
諸星大二郎/講談社
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総合評価

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    諸星大二郎は私にとって全てだ。世界史に興味を持ったのも諸星作品を通してだったし、古墳への関心も、元はといえば『妖怪ハンター』や『海神記』を読み、古代史に興味を持った事から始まっている。ブクログアカウントのアイコンも、私が一番影響を受けた作品『無面目・太公望伝』の表紙から抜粋した。大学時代、サークル活動に利用していた音楽室に無造作に置かれていた『マッドメン』を読んだ事からの縁は未だに続いており、この命尽きるまで私は彼の作品を読み続けるのだろうと思う。なにせ私の人生に与えてきた影響が大きすぎるのだ。古代を扱った漫画家に星野之宣がおり、彼の漫画も好きで何冊か持っているが、愛好度合が諸星を上回ることは絶対にない。私の中で諸星大二郎は、一種の神に近い存在に祀り上げられているのである。 さて、多作な諸星の中でも現在唯一の連載作品とも言ってよい『西遊妖猿伝』だが、玄奘一行が西域に突入し、ソグド人達との交流が密になってきたところで連載中断してしまっている。連載開始はなんと1983年!『ベルセルク』や『ハンターハンター』など目じゃないレベルの長期連載だ。それでもまだ天竺は先の先といった状態で、『ハンターハンター』よりも終わりが見えない作品と言ってよいかもしれない。それでも面白いもんだから飽きたり忘れたりできない。何度でも読み返してしまう。今年も年末が近づいてきた11月頃、急に思い出したように再読し始めたのだが、せっかくブクログにアカウントを持っているのだから、年末までにこれまで誰かに伝えずに溜め込んできた本作品への思いを文章化しようと思って読み進めていった。そんな調子で精読していたら大晦日になってしまったが、一年の終わり且つ、私にとっては記念すべき100冊目のレビューが『西遊妖猿伝』というのもなかなか悪くない。うまくまとめられはしないが、ありったけの思いを電子の海に落とし込みたいと意気込み、今私はうきうきとしながら筆を走らせている。 『西遊妖猿伝』の魅力とは何かと聞かれたら、あまりに多すぎて書いている間に朝になってしまうことだろう。歴史事実をなるべく忠実に取り入れながら話を進めていく誠実さも良いし、動きを最小限に止めつつ迫力のある場面を演出する構図も見事だ。初期でいえば、悟空と金角の最後の戦い、西域では牛魔王と悟空の大立ち回りなど、印象に残るシーンは枚挙に暇がない。中国南部に今も残る蠱毒など、数々の呪術を取り入れながらもリアリティのあるプロットを紡ぎ出す演出力も魅力的だ。金蚕蠱を巡る術師同士の醜い争い、蠱毒に恨みを抱いた農民による血みどろの反乱などの場面は、読んでいて胸を掻きむしられるような気分にさせられる。 こう見ていくと、本書の中で物語を動かしていくのは、やはり人間なんだなぁと実感させられる。破壊の権化ともいえる無支奇にしても人間達の憎しみがなければ動けないし、亡霊達も強い意志のある人間や力のある人間(天が味方した人間と言うべきか)には敵わない。隋の時代、大極殿の地下に密かに造営された森羅殿、そこに潜む石の魔物達は強大な力を持っていたが、一歩も引かず自我の強さを主張した李世民の前に完全に沈黙してしまった。魑魅魍魎が跋扈する『西遊妖猿伝』の世界だが、結局のところ強い意志を持った人間が森羅万象を導いていくのである。 私にとって一番印象深いシーンは、最序盤、船の上で校尉に刃向かった農民がリンチされる場面だ。 拘束され身動きがとれない悟空は、今にも死んでしまいそうな程に凄惨なリンチを受ける農民を見つめる。打擲がひとまず落ち着き、農民はふらふらと立ち上がり、荒れ狂う海を見つめ、こう呟く。 「誰でもいい、俺のこの恨みを晴らしてくれ。晴らしてくれれば、この五臓六腑でもなんでもくれてやるから...。」 この瞬間、農民の中で恨みは自らの命をも超えたのだ。考えてみれば、本作では自らの命を二の次にする人物が多い。代表的なのは悟空の初期の相棒といえる紅孩児で、自らの命を顧みることなく、ひたすら恩人である劉黒闥の仇を討つことを最優先として行動している。他には、ショボイ山賊としか思えなかった金角がいる。こそこそと立ち回る卑怯者で終わるかと思っていたのだが、銀角の仇を討つために、唐の名将李勣率いる部隊に追い詰められ、全身に矢を撃ち込まれようとも立ち上がり、悟空を追っていき壮絶な死を遂げるとは思わなかった。ここにも人の意志が自らの命を超える場面をみることができる。 「恨み」、それが本作において重要なキーワードであることに疑いはないが、ここに玄奘という意志の強い仏教徒が加わることで、物語はより複雑かつ濃厚になっていくのだ。恨み、仇討ちのために死を乗り越えていた人々の中に、「真理への欲求」のために命の恐怖を乗り越える人物が現れる。続いて恩人への愛のために我を乗り越えるものが...。 自死の恐怖を超える欲求、それが『西遊妖猿伝』のメインテーマなのだと私は密かに思っている。強い思い、強い意志、それがポジティブなものであれ、ネガティブなものであれ、死を超える欲求は人の心を突き動かす。うまくいくことがなくても、かの者の存在は多くの人間の心に刻みつけられる。このパワーを得たいがために、私は何度でもこの漫画を読んでしまう。報われない現実を乗り越えていくために。英傑達の強烈な意志から力をもらい、超えられない壁を必死に乗り越えようと努力するために。他の人はどうかしらないが、私はこのエネルギーを『西遊妖猿伝』からしか得ることができないのだ。 悟空の破壊的な強さ、玄奘の柔和な思考、猪悟能の超人間的な欲の深さ、バランスを齎す沙悟浄の冷静さ、対照的な4人が織りなす、意志を追求する旅は果たしてどこへ向かうのか。何年かかろうとも、とりあえず私が死ぬまでに完結してくれればいいなと思う。それよりもまず諸星先生は体調に気をつけて頂いて、これからも長く漫画を描いて頂きたい。『ハンターハンター』で待つことに慣れた私だ、いつまでも再読し、いつまでも続編が出るのを心待ちにしていることにする。

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    投稿日: 2025.12.31
  • 歴史に残るマンガ

    中国の歴史が好きな人にオススメです。 物語は有名な西遊記がベースなのですが、多数のオリジナル要素のおかげで とても新鮮に楽しむことができると思います。 正直、最初は画風が好みじゃなかったんですが、 気がついたらこの絵だからこそ出る世界観にハマってました。 作者の諸星大二郎さんは数多くの漫画家、アニメ作家、 映画監督に影響を与えた方だそうで、なるほど納得しました。

    1
    投稿日: 2014.11.02
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    諸星作品群で、最初に出会った作品。 大学の寮の勉強室に先輩の遺産としておいてあった。 当時は途中で終わっていたような。。でも強烈な印象が残りました。 あれから20年近く。 再び読んでも、まったく色あせない作品です。

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    投稿日: 2011.05.10
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    実家に別バージョンがあるんだけど…。懐かしくもいい加減忘れていて新鮮。伏線がたくさんあるから序盤はしっかり頭に入れねば。

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    投稿日: 2009.10.31
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    面白いよ〜!意外と原作に忠実で、昔読んだ西遊記と、かなりリンクしてます。大二郎先生のヒルコハンター的な要素もあり。むいむい的には悟空萌え★(大二郎に萌える日が来るとは・・・)

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    投稿日: 2009.06.07
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    3度目の「西遊妖猿伝」です。といいつつ、2度目のものは、まだ読んでなかったりします。だから、読んだのは、最初の「大唐篇」だけなのです。 だから、最初の「大唐篇」は、読んだはずなのですが、けっこう、内容憶えてないです。 竜児女とかは、印象だけが、強烈に残っているので、もっと後半まで活躍したかと思っていたのですが、1巻だけだったんですね。 多分、以前読んでいたときよりも、今の方が、おもしろかったです。

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    投稿日: 2009.02.11
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    カウント外ですが、次作以降も読み続けていきます。 以前から気になってはいましたが、良いタイミングで出てきた感。

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    投稿日: 2009.02.08