Reader Store
「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史
「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史
辻田真佐憲/講談社
作品詳細ページへ戻る

総合評価

43件)
4.2
15
18
5
1
0
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    日本神話が明治以降の天皇制国家構築に度のように利用されてきたのか、を全く知らずで、この本をとても興味深く読み進められた。日本神話の世界はヤマタノオロチや因幡の白兎の話、ヤマトタケルの草薙の剣で火を払うなど、絵本でワクワク読んだものだが、この本での解説を読んでいると、物語が人間社会を構築する、というハラリの論考にもつながって興味深い。

    1
    投稿日: 2025.10.05
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    明治維新〜戦前まで、日本がいかに神話国家になったのか?がよくわかる。(あと、靖国神社も理解できた) 太平洋戦争で、日本がなぜ「我々は神の国だ」なんて変なこと言ってたのかが、よーく理解できた。 「神話」は日本が近代国家を急造するための方便だった。欧米列強に植民地にされないように、強い日本になるために、国民を動かす装置だった。 それは見事に大成功し、日本は幾多の戦争に勝ち抜き、第一次世界大戦時には五大国として君臨した。 これらを成功させた土台には「神話」があった。 理屈はこうだ。神である天照(アマテラス)の子孫の神武天皇から2,600年もの間、万世一系の天皇をいただく日本は神の国である。つまり神の子孫である天皇の言うことを聞けばよいのだと。日本は「神話」により、自国を神の国であると認識していた。 ただこれは、欧米列強に植民地にされまいと、「日本は特別な国でなければいけない」という願望が生み出したものだ。アイデンティティを失うまいと生み出された日本特殊論である。 今のイスラエルみたいなとんでもない思想だなと冷静に思う。(彼らは自分たちを神に選ばれし者と思ってる) 元々は江戸時代にペリーがやってきた際、始まった。うまく欧米列強に対処できない幕府が頼りないため、のちの新政府軍が「元々日本は天皇の国である」と言い出す。 それも当時、メジャーではなかった神武天皇を持ち上げて、神武創業として天皇親政を掲げた。理由は神武天皇の時代の記録なんぞ残っていないため、何か従わせるときに万能にロジックを組める。 例えば服装を洋服に変えるときも、「洋服にしろ」と言っても国民は言うこと聞かない。神武の時代は「武」を大事にしていて、強き者の服装が正義であると。その当時の最強は西洋であるため、服も西洋に合わせるべきだ。というように、西洋化を進めるのに都合のいい口実として神話は使われた。 戦後、GHQによって修身、国史、地理が教育から廃止された。これによって現在の日本人は神話なんて1ミリも知らない。私はこれについて、アメリカに日本らしさを奪われたぐらいの感覚を持っていたが、ともすると神話はあまりに右寄りであり、八紘一宇を履き違えるととんでもない思想になってしまう。 世界と強調し、尊敬される国になった今の日本に至るには、神話を捨てた(アメリカに捨てさせられた)ことは、一定ポジティブに思える。 また、靖国神社への理解が深まった。ペリー以降の日本の戦死者を祀っている。つまり自決や日本の敵はカウントされない。 殉死した乃木希典や、病死した東郷平八郎は祀られてない。それぞれ乃木神社、東郷神社がある。ちなみに西郷隆盛は新政府軍の敵だったため祀られてない。 また、神社には格がある。伊勢神宮は全ての神社を超越した存在としてカウントされてない。1番上のクラスは明治天皇を祀る明治神宮や、桓武天皇を祀る平安神宮など。 靖国神社と似たテイストで全国に護国神社がある。基本的には戦死者が祀られるが、殉職した警察、消防士、自衛隊も護国神社に祀られている。ちなみに神奈川県には、護国神社がないらしい。

    1
    投稿日: 2025.10.05
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    冒頭の歴史を一部の専門家やオタクの専有物にせず、まあ右派や左派の玩具とせずの箇所に著者の矜持を感じる。それ故の森友学園の教育方針コスプレ論には説得力もある。ほぼ無神論者の小生は神話や神社の成り立ちなど、共感は出来ないが昨今ブームのスピリチュアルとは相性も良く支持される理由も分かる。とは言え、ここまで情報化社会だからこそ自分の考えを持つ事が出来るが、戦時中に産まれていたら、流されているんだろうなぁ〜とも。

    1
    投稿日: 2025.09.28
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    近現代史研究者の著者が明治維新後、列強の脅威に対抗するため日本がその精神的柱として「記紀」を元に作り出した「神武天皇」や「教育勅語」「八紘一宇」はどのように構築されていったのかを考察。 そのカラクリを丁寧に紐解きながら、現代の思想的分断の背景にある安直な解釈に対し警鐘を鳴らした良書。

    1
    投稿日: 2025.09.20
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    特に教育勅語の話が興味深い。いまだに教育勅語の一部分だけを取り上げて肯定する意見があるのには呆れる他ない。戦中の軍国主義への「下からの参加」はなぜ起こったのか。戦前からその下地が着実に形成されていったことを理解するのに大変役立つ一冊。

    1
    投稿日: 2025.09.15
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    「戦前」とはなにか。 僕が受けた、あまり質が良いとは思えない左派小学校教育などでは、「悪い偉い人たちに騙されて、狂っていた時代」的に教えられたように思う。 開国、明治から先の大戦と敗戦から現在。 大体同じ時間が流れた今、戦前とはどのような時代だったか。 改めて考えると。 単純な整理はできないものの、東アジアの端でそれなりにそこに住むもの達を現在までなんとか届けるために、指導者もそこに従うものも様々な努力を重ねてきたんだな、と思った。 そうは言っても、詐術的な指導もあっただろうし、激情的な熱狂に流され、狂ったこともあっただろう。 時代と場所。 人は自らの身体を選んで生まれることもできないが、時代も場所も選べない。 そのときそのとき、最善と思えるものを選ぶしかないのかな、と改めて思った。

    1
    投稿日: 2025.09.11
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    戦前とはなんだったのか。明治政府が国を統治する為に使った天皇家の万世一系の物語。そこから八紘一宇、国体の本義へ、さらにエスカレートして世界征服まで知識人までが言い出した物語。国をまとめるのために物語は必須であるし、物語のない国民国家はあり得ない。ましてや西洋列強の帝国主義が牙を向く世界の中で日本が生き残るために必要な物語だったともいえよう。 当時の国の指導部はそれぞれの考えで必死で日本を守ろうとして破滅なんて求めてなかったはずだが、結果的には破滅に向かった。 現代に生きる我々は知恵に変えないといけない。 政治家やメディアもそれぞれの立場で国の方向を述べる。当然本気で国の将来を憂いての人も多いと思う。ただそこで空気に流される怖さを学ばないと、この本を読んだ意味がない。 今日、自信を失った日本人は物語を求めている。物語こそが人々を勇気づけ国を元気にするもので悪いものではない。 昭和100年の今、歴史に学びこれからどんな物語が必要かじっくり考えてみたい。

    1
    投稿日: 2025.09.02
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    知らなかったことをたくさん知ることができた。戦前の日本。天皇を崇めることで、心のなかでは無茶だとわかっていても、それを無理やりに正当化して。そうやって命を失っていったのは、「八紘一宇」(世界を天皇のもとに一つの家にする)などとうたっている上層の人ではない。まだまだ未来のあった青年や大人たちだ。 君徳(主君としての立派な行ない)の結果の「万世一系」だったはずなのに、「万世一系」を維持するために暴政が行われるという逆転が生ずる。 「世界制覇」なんて言葉が出てくるのもびっくりだ。世間を知らなすぎる。 正直なところ、よくここまで回復したなと思う。 それは平成天皇や皇后のお力が大きかったのではないかと思う。

    9
    投稿日: 2025.08.29
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    明治維新期に、国民統合の方便として持ち出された記紀神話や天皇。それがいつしか「ネタがベタ」状態になり、「八紘為(一)宇」等の概念を、侵略の正当化の根拠に据えるほどに暴走させてしまったのが「戦前」と言えるだろうか。自国の民族的優位性の主張としては、アーリヤ人至上主義を掲げたナチス・ドイツ、あるいは欧米の黄禍論など、枚挙に暇がないが、日本もまたその例に漏れなかったという事かもしれない。筆者曰く、戦前の(国民統合のための)物語は65点とのことで、意見は分かれるだろうが、個人的にはある程度首肯できる評価かと思う。

    1
    投稿日: 2025.07.23
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    本読み仲間のおすすめ会で、積読のオススメとして紹介された多忙な先輩からお借りした。サイト記事で少し読んでましたが、大変論理的で納得感の高い内容でした。皇室や神話が、西洋化や国民皆兵等を進めるための方便として、その本質や伝統とは違う形で都合良く使われ、それをすべて否定しては、それこそ本質や伝統を見失うことが良く理解できました。 本書では触れられていませんでしたが、笹川良一の「地球は一家、人類は兄弟」は、八紘一宇の言い換えであることに初めて気が付き驚きです。 2025-034

    1
    投稿日: 2025.07.22
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    戦前の日本では愛国の「正体」が神話と絡まり国家と個人の関係を曖昧にした。辻田はその歴史を丹念にほどき愛国がいかに作られたかを描き出す。時に教育やメディアが神話を補強し人々は無自覚にその物語を信じた。  だがその神話は戦争とともに崩れ去る。今私たちは過去の「信じられていたもの」を見直す時期にある。歴史に問いを持ち思考することこそが真の愛国かもしれない。

    1
    投稿日: 2025.05.23
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    戦前に記紀神話がどう整理されて愛国に利用されたのかがまるっと分かる近現代史。面白い。明治初期に作られた器を上手に乗りこなせる人がいなくなっちゃうとこうなるのか……。「ネタがベタになる罠」は上手く料理したら良き創作の種になりそう。

    1
    投稿日: 2025.05.04
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    久しぶりに新書で面白い本を見つけた。 日本の神話と明治初期の国づくり、そこから離れていった昭和初期、そして戦前の見方が分かれてしまった現代へと時代の流れを中立的な視点で考察していて学びが多い。 依拠している古典も具体的に紹介されており、読者自らも検証することができる。 現代の右派、左派の対立がどこから生じているのか学び、考えさせられた。

    0
    投稿日: 2025.02.27
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    国民統治における「物語」の、また、SNSを中心に見られる短絡的な考え方の危険性を感じた。「物語」は功罪どちらもあるものだが、本書においては「物語」の危険性、その「物語」に基礎づけられた戦前の日本が批判的に解説、分析される。 なんかよくわからないものに導かれ、自らとんでもない結末を迎えないためにも、過去を、歴史を学び、うまくバランスを取りながら、今後我々がどうあるべきかを考えていかなければならない。 そうした「冷静さの重要性」を思い起こさせてく、このところの、諸論点に対する右派の理屈付けに違和感を感じていたタイミングで、その違和感を解体して解説くれる本であった。左派を支持するとは言っていない。右か左か、そうした議論も本書の趣旨からすれば無意味なものだろう。単純な、極端な議論にのまれる危険性を改めて感じたと、その意味で読んでよかったなと思いました。

    0
    投稿日: 2025.02.23
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    すごく良いです。 日本は時代の空気やなんとなくの雰囲気に流されやすく「物語」の影響が大。無責任の構造というか、独裁的な牽引力の核がないというか。強みでもあり弱みでもあり、政治も経済も民衆も無自覚にダメ物語スパイラルにハマりやすい。的な感覚があればオススメです。 戦前に詳しくなければ多くの発見が、大学受験で日本史選択程度の知識でも(私)、全然に発見が多数です。 我々が生きる我々の社会を、多くの人にとって少しでもより良いものにするために、健全に盛り上げていこーよと。そのために必要な、空気に流されないスキルの獲得に有用です。我々の物語を適切に上書きして、社会をアップデートしていきたいですね。

    0
    投稿日: 2025.01.15
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    知らないことばかり書いてあった。 著者曰く、神武天皇は、いないし、明治時代に、国を進めていくために、都合よく持ち出されたもの。 しっかり、確認できるのは、平安時代から。 戦前は国務法と皇室典範に分かれていた。つまり、帝国議会は、皇室典範に関することは一切干渉できなかった。 三種の神器は、南北朝時代から。 日本は特別な国だという物語がないと、 西洋に追いつくことができないと考えた。

    0
    投稿日: 2025.01.13
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    そもそも、戦前はいつから始まったのか、何故日本は太平洋戦争中、あのような軍国主義国家になったのか、非常に興味があった。 その答えがこの一冊にあった。 なかなか衝撃的な内容である。 有名な童謡の作曲家が国威高揚を目的とした歌をつくっていたり、我々が健在学んでいない事実かたくさんこの本には書かれている。 日の丸、君が代、靖国神社等の問題は、この本の知識なしではよくわからない。 明治維新も、我々が習ったことは随分過不足がある。 なぞだらけである。実は、江戸時代の日本は平和でみな幸福に暮らしていたのではないか。 明治維新から太平洋戦争終戦まで、何か重要なことが隠されているのではないか、という気持ちになる。 色々考えさせられる一冊である。

    0
    投稿日: 2025.01.01
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    わたしの個人的な思想はリベラル寄りで、いわゆる「歴史修正主義」的な動きなど、右派論壇に対してはつねに批判的な視線を向けてきた。関聯する記事などもよく読むのだが、そこでしばしば用いられるのが「戦前」という言葉である。「戦前回帰」といった形で眼にすることも多いが、しかしその実、われわれは「戦前」という言葉をイメージでしか捉えておらず、正しく理解できているとは言いがたい。そこで今回は、正しい「戦前」像を理解するために、「新書大賞2024」で第7位になった本作を読んでみた。内容的には、「創られた『伝統』」という、よく知られた言いまわしがあるが、たとえば「八紘一宇」というキイワードがいかに「創られた」かを解き明かすなど、それほど目新しさはない。それでも知らなかった智識もあってなかなか刺戟的な読書体験であった。とくに、著者は「『ネタ』が『ベタ』になる」と表現しているが、いわゆる「戦前」ムードが形成されるにあたっては、もちろん「上」が「あえて」利用して煽ったことが要因としてはもっとも大きいけれども、「臣民」の側がときにはそれ以上に「暴走」した結果、しだいに天皇の言動にまで影響を与えるほど大きな存在になっていったということは衝撃的であった。著者は「戦前」という言葉が安易に使われすぎていると指摘し、また「戦前」を全否定するような言説にも顔を顰めており、それはそうなのだが、「『ネタ』が『ベタ』になる」危険性を考えてみれば、やはり警鐘を鳴らさずにはいられない。大事なのは本作を読んでただ終わりにするのではなく、現実世界にも確実にある「戦前」の実を摘んでゆくことではないかと切に思った。その理解の第1歩として本作があるのだと思う。

    0
    投稿日: 2024.08.19
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    日本の神話が戦前のプロパガンダにどう使われてきたのか、体系的に整理された良著。明治維新からひもといた点が特筆される。

    1
    投稿日: 2024.07.15
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    神話は実話かどうか実証できない分、良くも悪くも解釈の自由度があり、状況によって利用されがち。 それは日本だけではなく、キリスト教なども同様。

    0
    投稿日: 2024.06.11
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    スタンスの置き方が難しい時代を極めてバランスよく記述してありました。日本の神話って名前が難しくてなんか取っ付きにくかったのですが、ザックリわかり易く纏めてあり、有益。確かに神話を踏まえないと戦前は理解できませんね。架空であるが故に自由度の高い神話をネタとして急速な近代化を進め、その後、逆にこのネタにしばられるようになってしまった日本。物語がないと国民国家はできないが、物語の行き過ぎが自滅をもたらす。歴史は繰り返す。やはり冷静な勉強は大事ですね。良書。

    1
    投稿日: 2024.05.16
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    なんか見たことある主張だなと思ったらプロパガンダ研究の人だ。と気づいたのは読後。「戦前」というキーワードには、様々な思惑により恣意的に加工された産物であり、その正体を捉えるのは難しい。タモリ発言「新しい戦前」という言葉も、プロパガンダ化することで、後乗せサクサクてんこ盛りのバズワードに仕立てたい輩の思惑を感じる。

    0
    投稿日: 2024.05.07
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    大日本帝国を宗教国家として見た時の、奇妙な天皇崇拝はどうやって形作られたのか? 明治からの政府が作った上からの宗教と、草の根的な下からの宗教が結びつく流れが面白かった。 木村鷹太郎、通称キムタカのオカルトとしか言いようのない日本書紀はそもそも世界の話をしていたという解釈は、抱腹絶倒するほどに面白いと同時に、これだけ賢い人がオカルトに傾倒してしまうというオウム真理教の様な怖さがあると感じた。

    0
    投稿日: 2024.03.30
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    タイトルから少し怪しいイメージをしていたが、読んでみたらしっかり分析してあり勉強になった。 初代神武天皇など昔は祀られていなかった人が国威高揚の為、祀られるようになったと言うのが驚きだった

    0
    投稿日: 2024.03.28
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    博識で広範囲の史料からよく拾ったと思うが、ただそれだけで、国家の無能や責任に対する言及は薄く、命を落とした人々に寄り添う内容とは言えない。

    0
    投稿日: 2024.03.17
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    日本神話をほとんど知らなかったので読むのに苦労しましたが、いかに神話が都合よく解釈され、利用されてきたかよく分かります。 東西問わず様々な宗教に共通することですね。

    0
    投稿日: 2024.03.10
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    「戦後民主主義の永続・発展を望むにせよ、21世紀にふさわしい新しい国家像を描くにせよ、自分たちの立場を補強する物語を創出して、普及を図るしか道はない(8頁)」「人権も平等も皇室制度も貨幣も共産主義もすべて虚構であ(8頁)」れば、より良いところを鍛え上げていくための物語が必要。戦前は、国家も国民も神話を利用したことを神話の地に建つ顕彰碑などを含めて知る本でした。

    0
    投稿日: 2024.02.03
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    「上からの統制」だけではなく、「下からの参加」も視野に入れて、神話と国威発揚の結びつきを考える試み。ファシズム論争では西欧は「下から」日本は「上から」と説明されることが多いが、日本において「下から」の視点も描いている点が興味深い。 全体的には文化史的な視点で書かれているような印象を受けるが、「顕教」による「密教」討伐、後期水戸学系の道義国家論(努力論)や国学系の神聖国家論(宿命論)の循環等々、思想史的な視点もあるのも有意義である。 「実証なき物語は妄想であり、物語なき実証は空虚である」という指摘は在野の研究者ならではの発言であり、結論として戦前とは国民的な物語で及第点を出した時代であり、それを超克するのなら、別の国民的な物語を創出するほかはないと論じているが、現在の言論環境で果たしてそれが可能なのかという疑問が残る。

    0
    投稿日: 2024.01.05
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    古事記と日本書紀を中心とした日本の神話の解説本として、それらをうまく編集、組み換えして利用しようとした明治政府等や軍部の話がうまく解説されている。

    0
    投稿日: 2023.12.14
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    日本書紀や古事記に出てくる日本神話が、戦前の拡大路線、対外戦争の中でいかにプロパガンダとして利用されてきたかを分かりやすく辿る一冊。神武天皇の八紘一宇に始まり、イザナギやアマテラスの時代まで遡り、神話の発祥地としての宮崎県と鹿児島県の争いや、軍人に人気を持った竹内巨麿の「竹内文献」など、知らなかった日本の歴史と神話の関係性を網羅できる。特に、神武景気や岩戸景気、いざなぎ景気といった言葉に表れるように、戦後の日本でも神話の教養が人口に膾炙していたことが印象的である。それが、日本という国が世界に晒された時の弱小コンプレックスなのか、日本という国の雰囲気をよく表していることなのか、考えてみたい。

    0
    投稿日: 2023.10.27
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    「戦前」を日本神話との関係で読み解く本。 なるほどのところが多かった。 もちろん、戦後の日本が、天皇を政治的に利用したとか、その際に日本神話を活用したというのを批判することは簡単ではないにしろ、可能である。 が、著者は、そうした後付けの批判だけでなく、物語の重要性を認識した上で、それとどう使い合うか、より良い方向にどう使っていくかという観点があることに共感した。

    0
    投稿日: 2023.09.23
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    なんとなく知っていた内容ではあったが、それぞれの思想の成立過程など“戦前”が構築され現在に繋がる様子を知るには良書。

    0
    投稿日: 2023.09.01
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    明治維新から77年で敗戦。敗戦から77年が昨年2022年。我々はいまだ明治政府に縛られている。いやそれどころか、亡霊のようにつきまとい、肥大化してさえいる。 欧米列強と闘うためには西洋化が必須。 江戸幕府にとってかわった薩長明治政府は天皇を担ぐ。 しかし天皇は和服、では西洋化のシンボルにならない。 古事記日本書紀に遡れば神武天皇は闘う天皇。 神武天皇以来万世一系の天皇こそ闘う天皇。 天皇陛下の下で富国強兵だ! みたいな絵を書いて、そのために、それまでは存在を忘れられていた神武天皇を担ぎ出し、 その肖像画は明治天皇に似せて作り、、 その明治天皇の肖像も元は東洋顔だったのが、それでは弱いと西洋風の顔にしたもの。 何から何まで虚構。 神武天皇のエピソードを膨らませる中で「八紘一宇」も生まれる。 天皇は平和裏に世界をひとつにしようとしていた、と。 今の政治で自由民主党に在籍する議員の多くは、 この明治政府が作った虚構をまるまる信じているのだろうか。 それともわかっていて、あえてそういう発言をして、 国民を扇動しようとしているのだろうか。 「八紘一宇」質問の三原じゅん子議員などは心から信じているように映るが。 もはや天皇を担ぐのでなく、アメリカを仰いでいるはずなのだが、、、 天皇家は男系で2600年続いている、なんてことを信じて、 男子が残っている旧宮家を復活させ天皇におむかえしろ、 なんて言っている青山繁晴議員は、学識ある方と思うんだけどなー。 私は今の天皇家の祖先は26代継体天皇と理解している。 15代応神天皇の五世の孫。 でもそれじゃぶちこわしだから、青山先生などは一切そういうことは言わない。 だいたい、楠木正成を忠義の武士というが、彼は南朝後醍醐天皇に仕えた。 今の天皇は北朝。そこからして変。 そういうことに全部目をつぶって、物語を作って、国民を動かそうとしている。 そして当初は物語とわかっていたものが、皆ホントの話と思い込む。 危ない。 だいたい誰が国を動かすのだろう。 明治政府では薩長、いまは官僚と自民公明となるのか? なんだかなー。 戦前、近現代史を見つめ直したこの新書。名著だ。

    0
    投稿日: 2023.08.31
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    本書では明治維新から大東亜戦争まで、日本の神話がどのように利用されてきたかが解説され、それに関連するエピソードも紹介されている。そうすることで日本神話の入門書となり、また近現代史書にもなっている。さらに昨今の神話プームではびこる神武天皇実在論に対しても誤った考えであることを示唆する。 国体の精華と教育勅語 日本では、天照大神が「天壌無窮の神勅」および「宝鏡奉斎の神勅」により、忠孝の道を打ち立てた。歴代の天皇および臣民は、この忠孝の道徳をしっかり守り、忠孝の四角形は一度たりとも崩れなかった。そのため、易姓革命は起こらず、天皇家は万世一系を保っている。 教育勅語の背景にはこのような国体思想がある。 以前自民党右派の政治家が、教育勅語を肯定する発言をしたが、ただ前述の一部分を切り出してきて、「親孝行の部分は現代にも通じる」などと論じても意味がない。 敗戦受け入れを決めるかどうかにあたり、当時の昭和天皇が国民の命のことより、三種の神器の無事を優先させて決断しようとしていたのは意外だった。 またその三種の神器は、古事記、日本書紀には皇位の象徴とは書かれておらず、その言葉の初出も壇之浦の戦いで安徳天皇が入水したことを伝える「平家物語」であることも。 明治維新に、それまでの江戸時代の政治体制の在り方を、完全に否定して、早く人臣を統制させるために神話を取り込み、いわばマインドコントロールしてきたか、そしていつの間にか、コントロールしていた方が、目に見えないものにコントロールされるに至ったか と言う風に思えた。 未だに復古主義的な政治家やジャーナリストがいることには注意も必要かな。

    1
    投稿日: 2023.08.16
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    明治〜昭和初期にかけての、日本書紀や古事記を元にした引用が、読み辛いなと流していた。 戦前〜戦中にかけて、分かりやすく勇ましく、読みやすくなって怖くなった。 良い本だった。

    1
    投稿日: 2023.08.12
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    明治維新から太平洋戦争敗戦まで77年。戦後から2022年まで77年。戦前と戦後が並び、現代史が近代史を凌駕しようとしている、われわれはいま新しい時代のとば口に立っているのだ、と始まる。ああ、そうなのか。なにかというと、「戦前は・・」という言葉が躍り、よかった、悪かった、人それぞれの思い込みで「戦前」を語っている。そこで、一体「戦前」とはどういう実態だったのか、それを説く。 明治新政府は自身を正当化し西洋近代社会に追いつくため、それ以前の中世から近世武家社会を否定するところから始まった。それには天皇を押しいだき、「日本神話」から連なる、という、天皇の系譜を利用したという。 しかし政府だけが神話をもとに旗振りをしたわけではなく、それに乗り儲けようとするジャーナリズムや民衆の力もあったのだ、とする。たとえば、軍歌などは、「プロパガンダをしたい」当局と、「時局で儲けたい」企業と、「戦争の熱狂を楽しみたい」消費者、三者が絡み合ったという。 やがて国体論というネタがベタになり、政府をも拘束するようになった、この「神話国家の興亡」こそ、戦前の正体だった、というのが氏の見立てである。その構成要素の教育勅語や軍事儀礼をバラバラにみて、「日本スゴイ」、「戦前回帰だ」というのは生産的な議論ではない。 戦前の物語にあえて点数をつければ65点だという。100かゼロの視点では、マイナス要素が出ると瓦解する。 日本神話を「日本書紀」「古事記」からわかりやすく説明してくれたのもよかった。ほとんど分かっていなかったのがわかった。 メモ 宗教の否定は醜悪な疑似宗教を生み出す(フランス革命における最高存在の祭典や、ソ連におけるレーニンの遺体保存やスターリンの個人崇拝)ように、物語の否定は戦前的な物語の劣化コピーを生成する。物語は排除ではなく、上書きされるべき。 また教育勅語は「忠孝の四角形」が根底にあり、それを踏まえるべきという。歴代の臣民(国民)は、歴代の天皇に忠を尽くしてきた、当代の臣民も当代の天皇に忠を尽くしている。またこれまでの臣民は自らの祖先に孝を尽くしている。また当代の天皇も過去の天皇に孝を尽くしている。 この忠孝の四角形は日本にしか永続しておらず、他の国は君主が倒され臣民が新しい君主になっていて、忠が崩壊している。日本は忠孝が保たれているので、万世一系が保たれている、という世界観を教育勅語は「国体の精華」と呼んでいる。 2023.5.20第1刷 図書館

    7
    投稿日: 2023.08.02
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    筆者の掘り下げる専門分野はなかなかのニッチにあると思うが、それ故に戦前という一種の暗部を紐解くにあたって一縷の光として機能しているのだろう。

    0
    投稿日: 2023.07.30
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    いままで古事記と皇室の関係が「そんなわけなくね?」と不思議だったので、なるほどだった。 「ネタがベタになるリスク」 無批判に物語を受け入れる人って多いし、世間の空気がそっちの方向に行ったら逆らえなくなってしまう。あるある。 私は100%否定になりがちなので、「あえて曖昧なままにしておく」は今後意識しておきたい。

    0
    投稿日: 2023.07.28
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    昭和40年代半ば(1970年代)に小学生だった私の感覚では、戦争とは「第二次世界大戦」のことであり、それ以前のことは歴史の教科書やドラマなどで印象的なものは知ってるつもりだったけれど‥先ずは「戦前」の「戦」がどれなのかを定めないと話が混乱するし先に進まないという大事なことに気付かされる。それにしてもいい大人になるまで天皇と神話の関係を深く考えた事もなく、近・現代史をいかに学んでこなかったかに気付いて愕然とするばかり。(本筋とは違うのだけど)本書を読んだら、ますます町田康さんの『古事記』読むのが楽しみになってきた。

    2
    投稿日: 2023.07.26
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    明治維新後、新しく国を統一するために神話が利用され、それが暴走していった経過がよくわかった。 非常に興味深い切り口だった。 中国やロシア、北朝鮮等の語る身勝手で誇大妄想的な物語が、つい数十年前の日本でも語られていたことを再認識した。 非常に中立的に書かれているように感じながら読んだが、日本によって戦場にされた国々への言及がほとんどないので、あくまでも日本視点で見た分析だと思う。

    0
    投稿日: 2023.07.07
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    昨今、警告のように言われる戦前への回帰。 「教育勅語」や「八紘一宇」という言葉に秘められた理念を、敗戦によってその真の価値が歪められたものとして、復活を叫ぶ人たちもいる。 筆者はその意見に与するでもなく、また頭ごなしに批判するでもなく、その言葉がどのようにして生まれ、どのような目的のもとに発せられたのかを解き明かす。

    5
    投稿日: 2023.06.18
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    題名に強く惹かれ、入手して紐解き始めると、なかなかに愉しかった。出逢えて善かったと思える一冊だ。 研究成果や論考を、幅広い読者に向けて判り易く説くという、「新書」らしい感じの一冊だ。題名から受ける、少し厳めしい感じでもない。6つの章が在るが、各章での話題は何れも面白い。 第2次大戦の前後で「戦前」、「戦後」という言い方を広くしていると思う。両者は、何となく「別」であるかのように感じさせられているかもしれないようにも思う。「戦前」の範疇に産れた人達の人生が「戦後」にも続いている例は多く、「戦前」に定着したようなモノが「戦後」に在り続けている例も多いであろう。更に「戦後」の中だけでも、様々な変遷が在って、「そう言えば以前はもっと様子が異なった?」も多々在るのだと思う。漫然とそういうような問題意識も在ったので、本書で取上げている話題は何れも非常に興味深かった。 明治期以降、「中世」を「キャンセル」して、神武天皇に起源を有する古い時代の「神話」を半ば創出し、それに依拠した考え方を推し進めたと言える面が在るのだと本書は説く。そしてその「神話」の扱いを巡って様々な展開が在る。色々と言われるように、国家が様々な事柄を主導しようとした一面は在るが、「下からの」とでも呼ぶべき、民間から起こった動きが国家の中に採り入れられたというような事柄も在る。「国家が打ち出した物語」とでも呼ぶべき「神話」が時代を牽引していたような様子を「戦前」とすべきなのかもしれない。そういう柱で、幾つかの話題が展開しているのが本書であると思う。 「戦前」というモノは、強い批判という目線で取り沙汰される場合も在れば、大いに賞賛、称揚するという目線で取り沙汰される場合も在る。が、両者の何れにしても、少し考えてみると「本当は?」というような、考える余地が大いに残るかもしれないというのが、本書で論じられている数々の内容だ。言わば「大いに誤解されているのかもしれない“戦前”なるもの」というようなことが、一口で言う本書の主題かもしれない。 或いは、本書のようなテーマを考えてみるということが、「歴史を学ぶ」という上で有益であり、求められることなのかもしれない。非常に興味深い一冊なので、広く御薦めしたい。

    1
    投稿日: 2023.06.07
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    筆者が得意とする「歌」を引用した部分が、民意への影響として大変分かりやすい。「国体」について、そうだったのか、と思わされるところが多く、非常に勉強になった。

    2
    投稿日: 2023.05.30