
総合評価
(81件)| 18 | ||
| 32 | ||
| 16 | ||
| 7 | ||
| 0 |
powered by ブクログ20年分くらいの物語なので、読んでいてあの出来事から何年も経ってるんだと思う機会が多かった。 その時々の世相が描かれているのでイメージしやすい。
0投稿日: 2025.10.07
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
このとてつもないもやもやというか、胸糞の悪さというか、もはや恐怖みたいなものはどこから来るんだろうと読みながらずっと考えてた なんだかんだ恐怖というのが一番実態に近い気がする 和歌の自己肯定感の低さも、仙太郎の虚勢(のように私には見えた)も、2人のアンバランスな関係性も、和歌の両親の凝り固まった価値観も、全てが私の中のこうしたい、こうありたいの逆を行っていた 一方でただ理解できない、ではなくて怖いと感じるのは多分、自分自身の中にもその片鱗が見えるからだと思う もやもやずーっと考えていて、(言葉を選ばずに言えば)一歩間違えばこういう人生、という感覚が少なからずあることに気がついた、それすらもちょっと嫌 和歌が仙太郎の一挙一動に怯える感情にも共感できてしまうし、最終的には全編通してとても身近な印象 ただ、キーとなる台詞が一貫して「最終的には全て本人の意思」、ということを示唆しているような気がしていて、それだけは同意できない 和歌にとって仙太郎は絶対に悪だったし、タエにとっての師匠もそう 人の才能を潰すことはできると思う
1投稿日: 2025.09.16
powered by ブクログ主人公の母と恋人が不穏すぎて、ビクビクしながら読み進めました。 他者の評価とか自分自身の充足とか、人の成功とか失敗のボーダーってなんだろうって考えちゃいました。
24投稿日: 2025.09.03
powered by ブクログ小説って面白いなあ、、小説の中の女性が、あまりにも私すぎた。タイトル通りじゃないか・・あるいは、どんな女性にもある心理なんだろうか。 小説って読まないとだめだな、と思わされた。得られるものが多すぎる。
1投稿日: 2025.08.14
powered by ブクログ久しぶりの角田さん。 以前読んだ本の内容はすっかり忘れてしまったしまだ若い頃だったので、再挑戦。 こちらは自信のない大学生が、 成功者の彼氏に劣等感を持ち続け、 対等になるべく奮闘する話。 自分の限界を決めるのは自分自身、 みたいなところは良かった。
10投稿日: 2025.03.28
powered by ブクログ背景は昭和後期から平成初期 明治?大正?を生きた作家志望の祖母の面影を追うにつれて、自身も物書きとして生活しようとする主人公和歌 「○○なのにイタイ」「女のくせにがつがつして」「どうして当たり前ができないの」「卑しい顔になった」恋人の態度や母親の言葉がぐさぐさ刺さる読者も多いはず 祖母の「男と張り合おうとするな」の意味に、作者の伝えたかった当時の社会を感じることができました
1投稿日: 2025.02.16
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
仙太郎にイライラした。和歌ちゃんからしたら全てだったんだろね。パクリの言いがかり腹立つ!なんかやり返してほしかった笑
1投稿日: 2024.10.14
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
才能を潰すことは本人にしかできない という言葉にふむ〜確かになあと思った。 けど仙太郎は意識してか無意識か和歌ちゃんの自信喪失させようとしたし、酷い言葉でなじっていて腹立たしい。早く別れろ!和歌ちゃん!と思いながら読んでた。 前向きに生きようと思えたわけでもないけど、なぜか読後感が良い小説でした。ちょっと小説家になりたいと思った。
1投稿日: 2024.08.15
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
大きな出来事や、衝撃的な内容が含まれている訳ではないのに、飽きが来ずスラスラと読めてしまった テーマとして、女性、恋愛、仕事、生活、バブル が挙げられる。 主人公はバブル時代とバブル崩壊を生きる20代女性 20代特有の、少し心配になるような価値観や考え方とか、20代を経験した女性なら共感できる点が多いなと思った 主人公の恋人である仙太郎は、若くしてクリエイティブな仕事で成功を収め、結婚に際して、現実的な仕事をすると言うリアリティーさがあった 20代前半の、仕事である程度の成功を収めた仙太郎の言動がどんどん業界にかぶれていく感じとか、痛さを感じた。 女としての幸せと、仕事での成功を同時に掴む女なんて居るのかね?と言う疑問が生まれた
1投稿日: 2024.06.10
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
現実みがあって丁寧な本だと思います。 日常の出来事1つ1つ丁寧に心情が伝わります。その感情がにハッとさせられ楽しかったです。 大学生から、同棲前、同棲後とバブルを経ながら長い期間の生活がかかれています。 祖母に対する親近感は変わらず、いつもその影が見えます。 読みかけですが、祖母がどのような時代で何を思ったのか、そして和歌がどのように生きるのか、不安まじりで楽しみながら読みたいです。 ー 少し読んだので追記です。 傷つく出来事があっても辛いと思わないようにしているのが痛々しいく思いました。 男性から傷つくこと、妊娠のこと、賞のこと。 大切に思った何かがうまくいかなくなってしまう。周りの所為にしなさすぎるのは少し違うと感じるのだけど、何かを避けようとしてそう思うことも正しいのだと思います。 過去からの経験や感情がその人を作っていてとても面白い本だと思います。 追 私は年を重ねると嫌な部分もわかるし、理解が深まるのが嫌でした。 故意に傷つける側も傷つけられる側の気持ちもわかってしまう気がします。 おそらくタエも傷つけられたのだと想像して憎く思ったりしましたが、 多分そんなことから抜け出してどう生きるかがスタートラインなのだと、読み終わってみるとどちらかと言うと清々しい気持ちになりました。すこし希望が見えた気がして嬉いです。 普段の何気ないことが組み合わさって歪になるのがとても面白かったです。フィクションのような出来事が出てこなくても感情豊かに創作できるのはすごいと思います。
1投稿日: 2024.05.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
‣ 間違った場所に紛れこんだばかりか、間違っていると気づいたまま、間違ったことをし、間違ったことを言い、間違った方向へ進みそうな気がする。でも、どこからかがわからない。どこまで戻れば間違いではないと思えるのか、わからない ‣ 何をしたいのかと考えるより先に、自分に何ができるだろうかと考えると、何も思い浮かばないのだった ‣ まったく相手にもされていない自分、そのことに憤りながら中途半端な笑みを浮かべている自分は、なんとつまらない人間なんだろう ‣ きみは馬鹿だ、何も知らない、小説なんか書けるはずがない、人の営みなんか書けるはずがないって、どうして言い続ける必要があったの?どうしてそこまでして私をコケにしなけりゃならなかったの?それが知りたいだけなの、ねえ、なんでなの? ‣ 私が捏造したんだ、書けないことを何かのせいにするために、この人に自信を奪われたという物語を作ったのだ ‣ 師匠だろうが、編集者だろうが、人は他人の才能を潰すことなんてできないと思っているんですよ。才能を潰せるのは、その才能をもっているその本人だけだと ‣ 書きたいと思う支えがなんであるのか、わからない。それなのに、まだ、書くことにしがみつきたかった。支える必要もないくらい強く、しがみついていたかった。何を書きたくて、何が書けるのか、それすらもわからないのに ‣ だれかと親しくなることは、和歌にとっておそろしい以外のなにものでもなかった。どこへ連れていかれるかわからない。どんなふうに歪むかわからない。そんなふうにしか、人との関係を捉えることができない ‣ 人とかかわることがおそろしいのに、他者の姿を追いかけたい。人の暮らしの近くにありたいのだ ‣ 妄想のなかで生きることと現実で暮らすことは矛盾しない ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ 読み進めるほどに、からっぽな自分を書くことで必死に埋めていこうとする主人公・和歌に惹かれていきました。 彼女を突き動かすものは、「焦がれるような気持ち」。 夢とか、希望とか、情熱という言葉では表せないものもあるんですね。 女性の生き方を改めて考えさせられる物語でした✨
2投稿日: 2024.04.23
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
思いがけず面白そうな本見つけた! 「脚をルの字に折って」って、今まで本読んできて初めて見つけた表現!確かにあの座り方名前ないよね 「分からない」と言う主人公を見て、前まで読んでたのが登場人物みなえらく察しの良すぎるミステリーだったこともあって、理解力の低い人を主人公にして話を書くのはなぜだろうと思った 作者の頭のレベルと主人公の頭のレベルを同じにしなかったら、分からない人の視点に立って書くのってめっちゃ難しいんじゃないのか 主人公の性格によって事象は同じでも感じ方は全然変わってくるし、無数の主人公のお話があると思ったら、作者たちはどうやって主人公を決めてるんだろう〜って頭おかしくなりそう こんなお話描きたい、だけじゃなくてどの視点で話を進めるかって問題まで出てくるのか…大変すぎる 彼女の振る舞い見て君はこうだからこうした方がいいよってアドバイスくれたり、就活しないのに痺れ切らして会社紹介してくれたりって積極的に優しくて彼女にちゃんと興味を持ってるいい彼氏じゃんって思ったけど、別の言い方すればこうすべきって自分の考えを他人にも求めて干渉してくる男であり、彼女にこうあってほしいって理想があったり見返りを求めている男ってことでもあるんだなと思った この人がいい人かどうかって、著者が意図的にどちらか(主人公の味方か否か)に描こうとしてても、たとえ小説の中であっても私が図ろうとしない方がいいなって思った 津村記久子さんのあとがきより「仙太郎が何を考えているのかについては〜、一見肯定的であったり、鷹揚であったり、正論であったりしながら、その下に触れたら切れる紙を忍ばせるような未必の故意がある。」 未必の故意!!まじでやっかいよな 「終盤での仙太郎の振る舞いには、毒気を抜かれると同時に、その場限りで言葉を発する人の空恐ろしさを感じる。」 難しい話だった 自分の人生生きてるのえらいなあ
1投稿日: 2024.04.18
powered by ブクログ盛者必衰とか必衰盛者って感じの話 特にドーンって出来事があるわけでもないのだけれど、仕事と生活、がテーマのお話 「女性」が主人公、テーマの話が読みたくて手に取る なにかsns で誰かが紹介していた気がする 津村記久子さんが解説書いてるから、津村さんかな? 角田さんの作品、まだ読みたい 本が読めるカフェも見つけたい 忙しいぞ
0投稿日: 2024.03.31
powered by ブクログ展開が素晴らしい。 引き込まれて、一気に読んだ。 読みながら、「書きたい」という想いと「才能」の間に あるヒリヒリするような乖離やせめぎあい。 また、人が人と関わり、近くなればなるほどに見せられる あまりに酷い一面。 それを読み止めることなく、一気にラストまで読ませて 苦しい中にも、光る希望を見せてくれるのが 角田さんの凄いところだなぁ、と改めて思う。 何度も何度も読み返すたびに、歳を重ねるごとに 違う味わいを感じさせてくれると思われる 大事な一冊に出会えた。
2投稿日: 2024.02.13
powered by ブクログうわーーー中盤すごく頭が重くなった。 本当にいろんなことを考えながら読むことになった。 これを読んだ大事な人と感想を言い合いたい。 でも大事な人にこの本を読んでもらうのが怖い。 ちょっと自分の考え方が和歌と似てるかも、と思って、 若干の危機感を抱いた。 そんな感覚も、大学生の時の和歌みたいだなと自分で思う。 うわーうわーうわー、面白かった。もう一回読んで、自分の言葉できちんと感想にしたいけど今はこんな言葉たちしか出てこないな。。。
3投稿日: 2023.11.22
powered by ブクログ3日で一気読み!面白かった 対岸の彼女を読んで興味を持った角田さん。角田さんの書く文章は力があって圧倒される。
2投稿日: 2023.10.18
powered by ブクログ目に見えない正しさは曖昧で脆い。多分、ないから。 恋愛は相手がいるからできること。 ではいい彼氏、彼女って? 付き合う期間が長くなってしまったり、関係が近くなればなるほど不満も増えるだろう。 歪んだ解釈をしてしまうこともあるだろう。 間違っているとわかっていても、そちらを選ぶこともあるかもしれない。 そんな自分の醜さに正面から向き合えているか? みっともなくなる度に、気づけているか?
1投稿日: 2023.08.23
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
仙太郎の言動一つ一つが残酷だった。 ただ、最後に、仙太郎が「何言ってんの。きみが仕事をとったんじゃないか。ぼくじゃなくて」と言ったとき、仙太郎はもちろんひどいけれど、もしかしたら彼も寂しかったのかもしれないと思った。 一人で逞しく生きることだけが強いというわけではないけれど、自分の価値を他人に決めさせない、そのための「軸」を持っておくことは大事だと思った。 自分はどう感じるのか、に自信を持ちたい。
1投稿日: 2023.07.11
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
恋人の仙太郎を中心にしていたのにいつのまにか仙太郎を置いて自分で歩けるようになっていた。 最初のいい感じ男子仙太郎がどんどんあれ?あれ?と嫌な奴に見えてくるのは元からそういう人なのか和歌の目線なのか、和歌の目線で一緒にひやっとしたり仙太郎の反応にびくつき、いやでも別れるのはつらいなでも一緒にいるとしんどいなの矛盾。 別れて恨みつらみの小説を書くと編集者にそれは違うと言われて、あれ?となるとこ。 私なの?て気づくとこ。 自分のダメさや勝気なとこ、譲れないとこ、変なのかな?て思うとこそういうのがてんこもりに書かれてる。 上手く言えないけど角田光代めちゃくちゃ面白い。すごい。
1投稿日: 2023.06.10
powered by ブクログ本田和歌はなにも知らない女学生だった。自分と違っていろんなことを知っている学生・仙太郎と付き合いはじめたこと、実家の蔵から祖母が描いたと思われる自主出版小説を見つけたことをきっかけに、和歌は小説を書くようになる。 和歌は仙太郎をむやみに崇拝・尊敬していたけれど、その実彼の作品や彼が作品を通して伝えたいことなど、彼自身についてはさして興味がなかったのかな、とも思う。 仙太郎からすると、和歌はずっと何を考えているかわからない得体のしれない女だったのかもしれない。だから自分の理解できる範疇に置くために、彼女をけなして、レッテルを貼っていたのかな、と考えた。 先に表現の世界へ入っていったのは仙太郎だったのに、気が付いたら自分は現実の世界、地に足をつけた生活を選び取っていた仙太郎。男の人ってずるいよなぁ、と思ったけれど、この仙太郎の行動・選択を「男って」とひとくくりにしちゃうのは違和感がある。うーん。 和歌はずっと仙太郎に対して憧れの気持ちを抱いていたけれど同時に彼に否定されることを恐れてもいて、仙太郎もまた和歌を薄気味悪く思ったり疎ましく思うこともあったはず。お互いに思うところがあったはずの二人が10年以上の月日を共に過ごしていたのは惰性ではないと思うけれど、じゃあ何なのかと考えると難しい。これも恋愛の一種なのだろうか。
3投稿日: 2023.04.12
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
昭和から平成になる頃の時代。 有名になっていく彼 元は作家だった?祖母 その二人をすごく意識してる主人公。 自分もそこから作家を選ぶけど なんだか全部中途半端で。 彼に対して劣等感とかあったり 彼が不在の部屋を楽しんでるのに 結局彼が離れていくと ずっとなぜなぜに囚われて苦しそう。 自分という価値を求めすぎて 終始生き辛いよと思いながら読んだ
1投稿日: 2023.03.06
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
大学在学中にイラストレーターとして活躍し始めた恋人、仙太郎との結婚を夢見ていた和歌が、かつて祖母の書いた小説を見つけたのを機に、自分も小説を書き、作家業を中心にしたい思いと、仙太郎への遠慮との間で常にモヤモヤさながら、自らの道を進み始める物語。 社会で活躍しようとする女性の生き辛さ、表面上は男女平等といいながら、女性に期待する役割についてはまだ昔ながらのものがあると感じる現在の状況も重ね合わせて読むと、和歌の気持ちもわからないわけではないが、和歌は少し病的と言えるほど何かに囚われすぎている感じが否めず、あまり共感できなかった。 一方で、仕事が忙しいと家事が疎かになる点は自分にも思い当たるところがあり、だから自分はダメなのか、と痛い気持ちにもなった。
12投稿日: 2023.01.22
powered by ブクログだんだんとセリフや、「私の中の彼女」という題名の意味がわかってきて面白かったです。 感情移入しすぎてしまって、かなり心にくる作品でした。 生きる時代も異なっていて重なる部分はないけれど、女性としての生き方や時代背景、人間関係に共感できる部分はたくさんありました。 この物語を読んで、「成長した」よりも「昔はあんなに楽しかったのに…」と考えてしまう私はまだ子供だなあと思いまし
2投稿日: 2023.01.21
powered by ブクログやはり俺が尊敬して敬愛する偉大なる作家先生である 角田光代様の作品! とても面白かったです。 読んでいて、どの人物にも自己投影できないんだけど そこは、さすがの文章力でどんどん読み進められました。 なんとも感想を書くのが難しいのですが、 文庫本の最後の解説で津村記久子が書いているのが 本当にその通りと言った感じでございました。 本編を読む前にこの解説を読んでからだと めちゃくちゃ読みたくなるかもしれません… この解説の最後がまさにこの小説を表しているので抜粋します。 「精一杯生きること」よりも価値のあることなんてあるんだろうか。 「自分の人生を生きる」気概とは何か。 この小説は、「生き方を教えてあげる」という本より精細に、どんな先人の知恵よりもフェアに、そのことを教えてくれる。 読む人の心に、小さいが簡単に消えない生きる勇気を灯す。
22投稿日: 2022.10.14
powered by ブクログすごい本を読んでしまった。角田さんは大好きなのに、このタイミングまでこの本を読んでこなかったが、今がそのときだったのだと思った。解説がこれまた大好きな津村記久子さんで、まさに私得。 主人公の和歌が母親に「あんたはおかしい」と言われるところは、自分の昔の記憶と重なって一度ページから目を離す必要があった。 終盤、和歌が歴史的建造物や文化遺産を見ても物足らず、そのはずれの道を行き交う人々や雑多な様子を見て、その土地で暮らす人が見たかった、と気づくシーン。人が怖いくせに人に興味があるもいうのも、最近の私と重なった。 誰かに「あなたは普通だ。大丈夫だ」と言ってほしい、肯定してほしいという願い。おかしくないと言われないと自分が間違っているかもしれないという底知れない恐怖。そんな化け物を内側に飼いながら、それでも人との関わりを辞めずに生きていく。 和歌はこれから誰かと深く関わることができるのだろうか。私もこれから物を書いていきたいが、仙太郎の言葉が呪縛として思い出されることがあるかもしれない。そんなときに、私の支えになるものはなんだろう。 なんとなくで始めたことでも、それが思わぬ方向に導いてくれるることはある。「人は運命を避けようとした道で運命に出会う」というような言葉もある通り、今やっていることに不安を覚えても、目の前にやってきたことには真摯に向き合いたい。
2投稿日: 2022.08.25
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
はじめての角田光代さん。圧巻。 親に“女”らしく生きることを押しつけられ、仙太郎のリアクションに脅え、しかし自分のやりたいことに人生を賭けている和歌。自分と重ねて読んでいたので、憤り、心をえぐられる部分が多々あった。今でこそ女性の社会進出もだいぶ普通かなと思うけど、仕事を選ぶって、こういうことなのか?と自分の行く末も怖くなった。でも“タエ物語”の辿り着いた先が“愛”だったのには、とても救われた。想像は自分の知っている範疇を超えないだろうから、和歌が“愛”を知ったのだろうと。“タエ物語”が和歌の心境によってだんだん形を変えていくのはおもしろかった。その描写もすごいし、人間の弱さや葛藤も細かく描かれていて、一見矛盾したようなごちゃまぜな感情が、リアルだ、と思った。 “妄想と現実は相反しない”とすると、仙太郎が和歌に言った酷い言葉の数々は、和歌の妄想だったのだろうか?仙太郎はこう思うだろうという仮定が妄想になり、和歌の現実に影響を及ぼした、という解釈をしたが、、。“妄想と現実は相反しない”。何かに当てはめると解るような、でもふわっとしか自分の中に落とし込めない難しい言葉。
0投稿日: 2022.08.18
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
面白かった…! 何がとか、どう、とか問われると難しいのだけど 本田和歌の祖母タエは何者なのか 恋人の仙太郎は何者なのか そもそも本田和歌は何者なのか 何かが隠されているようで 入り込んでしまう何かがあった そんなことはっきりとは分からないままで、 それが人生だよなと なんとなく思わされた 有川浩さんのストーリーセラーを読んだ後に 読んだから書く側の人間の作品が続いてソワソワする。 いや、まぁ、書けないのだけれども。
0投稿日: 2022.04.10
powered by ブクログ2022.4.8読了 序盤は和歌の恋人の仙太郎が鼻について読むのが苦痛だった。慣れない場所に連れて行かれて緊張する和歌が自分に重なり、正直見ていられない気持ちになった。その他にも仙太郎の発言が気に障り、和歌はなぜこんなにもいけすかない男とつきあっているのだろうかとイライラしながら読んだ。 和歌が、実家の蔵で祖母の秘密に出会ってからはとても面白くスムーズに読み進めた。 多くはない手掛かりで祖母という人を紐解いていき、ようやくその人を和歌が捕まえることができた時、なんだかホッとしてしまった。
4投稿日: 2022.04.08
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
様々な場面で強く心を揺さぶられた。最後まで恋人への執着がすごかった。常に意識の根底に恋人の存在があって、主人公はずっと振り回されているけど、だんだん実像ではなく、自分の中の恋人像に振り回されていったような気もした。大切にしていたものと、小さなズレを感じて(いつもの感じじゃない)少しずつ不安になっていくところと、自分の衝動との葛藤が読んでいてとてもどきどきした。 主人公の執着もすごいけど、恋人のつけ離し方も恐ろしい。安心していた存在から、牙をむかれる感覚が恐ろしかった。「あんな汚い生活してるから」には鳥肌が立った。 強い淋しさを、静かな怒りで返していたのかもしれないけど、受け入れられないものを傷つける人間にはなりたくないと思った。 母の「醜女」とまで呼んだ祖母に対する軽蔑のような思いも、執着なように感じた。自分は絶対に母のようにはならない、という思いが読んでいて苦しかった。 人は受け入れられないことがあると、何かのせいにして、自分を守ろうとするのかもしれない。手放せた方がきっと楽なのに。端から見るとそう思ってしまう。自分の中にも手放せないものたくさんありそう。 母や恋人に何度も言葉で傷つけられても、”ただしい”と思うのは、打ちのめされすぎて立ち上がれないから?自分を責めることでしか自分を守れなかったのかな。 怒りは、人の心を守るものなのだと思った。 書きたい衝動を猛獣と表現しているところが好き。振り回されながらも追いかけずにはいられない。そんな体験してみたい。 術後のシーンでは何度も心が揺さぶられた。手術して初めて「1人じゃなかった」と感じること、なんとしても賞をとらなければという思い、全てから解放されたのに感じるむなしさ、自分の本音に耳をふさぎたくなる思い。どれも痛いほど伝わってきた。
4投稿日: 2022.02.25
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
田舎から出てきた平凡な大学生の和歌。1つ年上の仙太郎という初彼氏がいる。仙太郎は都会っ子で、バブルの趨勢も手伝って、在学中にイラストレーターとしてブレイク。和歌には物書きをしていたと考えられる祖母がいた。母はその祖母を嫌い、和歌に普通の女性の幸せを望む。就活もしないでいた仙太郎に勧められ、ひとまず就活し、仙太郎と祖母の影響を受けて、小説を書き、ブレイクする。本人には言わないものの就活前後は仙太郎との結婚を望み、ブレイクしたら同棲を誘われ始める。書くことに夢中になると家内は荒み、妊娠、流産。 和歌より先にブレイクし、同じようなことを経験し、生活リズムもしっかりしている仙太郎。長い仙太郎との生活は終わりを迎え、仙太郎は別の人と結婚し子供が2人。 和歌視点で書かれているので、仙太郎の気持ちは読者の想像となる。 和歌は仙太郎から大きく影響を受け、無意識にも後を追いかけるように頑張ってたんだと思う。仙太郎に甘えていた部分もあったとは思うけど、タイミングは合ってないし、それを素直に言わないから、尚更ズレていったんだと思う。言えない性格なんだろうとは思うけど。 ストーリーはありきたりに思われるかもしれないけど、続きが気になった。モヤモヤした気持ちを文章にできるのが凄いと思う。
0投稿日: 2022.02.17
powered by ブクログ仙太郎の和歌への態度が変わっていくのは、自身にものを作り続けるための土台がないことに無意識か意識があってか感じていたからではないかと思った。和歌も仙太郎も無意識に男女の力関係に囚われていて、はっとさせられる。
0投稿日: 2022.02.11
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
10代からの長い付き合いである彼氏の影響って本当に強い。 私も10代で初めて付き合った人と10年近く続いたけど、そこが自分の常識だった。 別れた後は何もかもが驚きであった。 和歌にとっての仙太郎は永遠のライバルであり物事の基準的存在。 恋人というより仙太郎が全ての目盛りだったのかも。 仙太郎は言うほど悪い人では無いと思った。 和歌と普通に向き合って人生を共にしていきたかっただけでしかない。 和歌が思うほど仙太郎は特別な人間では無かっただけ。どこにでもいる、あたたかい家庭の幸せを求める普通の人だったのだと思う。 攻められてる気持ちになるのは、和歌自身が自分の足りない部分への劣等感が強かったんじゃないかな。 和歌は自分の為に生きる人。 ある意味ワガママ。 仙太郎は周りを気にしながら気を遣い生きる人。 だから、相手の行動も目につくのかなと思う。 子供が本当に楽しみだったのが伝わってきたから、そこはとても悲しかった。 和歌が家族にも話していなかった事を知った時の仙太郎の気持ちはなんとなくわかった。 仙太郎の気持ちが離れたきっかけにもなったと思う。
1投稿日: 2021.10.20
powered by ブクログ本田和歌 わたしは彼女を、この物語の主人公である彼女を、自分の感情に誠実な女性だと思った。 この作品の時代背景は、ちょうどわたしが産まれた頃。 P11「1985年、200人いる和歌の学年で東京の四大に進学したのは、推薦入学をのぞくと28人だった」時代。 男女雇用機会均等法が成立した頃。 しかしまだまだ、女性が寿退社をするのが当たり前の時代。 物語を追うにつれ、『オウム真理教による地下鉄サリン事件』『阪神・淡路大震災』『酒鬼薔薇聖事件』など、実際の出来事も登場し、その時代背景を強化する。 のめり込むように読んだ。 解説で津村記久子さんがおっしゃるように、この作品の面白さ、内容を人に伝えようとすると、P389「どうも普通だな、というような内容になってしまう」。 わたしはだから、「どうも普通だな」というレビューにならないよう、慎重に、作品の言葉をお借りしながら、この作品の面白さを伝えていきたい。 この作品は、本田和歌という一人の女性の、生きた証である。 この作品はフィクションであり、実在の人物や団体とは関係ないかもしれない。けれど、これをフィクションとして片付けられる根拠も、実在した人物ではないという根拠も、どこにも存在しないのだ。 和歌の恋人・仙太郎を好きになれなかった。 P22「贔屓目でなくとも仙太郎は同世代の男の子たちよりは様子がいい。昨今もてはやされている醤油系統の顔立ちで、スタイルもよく服のセンスも悪くない」。 P24「ああ、本当に仙太郎は手の届かないところにいったと和歌はやけに強く実感した。今はただ、遠い存在のはずの人が隣にいることが奇妙に思えてならなかった」。 こういう人は、憧れの人、尊敬できる人として距離をとっておくのがわたしにはちょうどいい。 そして和歌は徐々に、仙太郎がいる場所へ向かってゆく。 P122「仙太郎と対等になれると和歌は思った。もう仙太郎をまぶしく見上げなくてもいい。うっすらといつも感じていた劣等感を脱ぎ捨てたところで向かい合うことが、きっとできる」。 この、憧れの感情がない交ぜになっている恋人と並べたような瞬間は、とても嬉しい。 しかし彼は、並ぼうとしてくる和歌に対して、棘の刺さったボールを投げてくる。ボールの速さは速すぎず、変化球でもない。普通のボールなら受け取れるそのボールは、よく見るとトゲトゲしていて、和歌は受け取る瞬間いつも、取りこぼしてしまう。指に刺さった棘は、いつまでも抜けないし、いつまでも痛い。 (解説ではそれが「未必の故意」という言葉で表現されていて、さすが津村さんの解説は素晴らしい!) だから和歌は、P210「安堵の必要なほどの緊張を、何に対してしているのだろう?」と思ったし、P200「会社を辞めようかと、その日、和歌は思った。辞めれば、受けた依頼の仕事をこなす時間も増える。(中略)けれど、それを仙太郎に告げることを思うと、億劫だった」のである。 角田さんは、恋人間の、毒を孕んだ関係性を描くのがとても上手な方で、この作品においても、それが冴えわたっている。 こんなにも、人と人というのは分かり合えないものなのか。 毒親って言葉も、デートDVって言葉もない時代。 たぶん、これらは和歌のような人が必死に言葉を紡いできたからこそ生まれた言葉なんだろう。 P332「自分は母親を、未だこわがっている。叱られることを、認めてもらえないことを、罵倒されることを、まるで母親に置いてきぼりにされた幼児のようにおそれ、こわがっている」。 P337「恋人の機嫌をうかがい、笑っていれば安堵し、不機嫌なら不安になり、自分の言葉、行動、返答、笑い、何かが暴力の起爆剤になるのではないかと終始気を張り巡らせている語り手の気持ちを、和歌は知り尽くしていた」。 言葉がなかっただけで、存在していた毒親とデートDVを、一生懸命受け止めながら、生きていくということ。 P393「『精一杯生きること』よりも価値のあることなんてあるんだろうか。『自分の人生を生きる』気概とは何か。この小説は、どんな『生き方を教えてあげる』という本よりも精細に、どんな先人の知恵よりもフェアに、そのことを教えてくれる」。 とても苦しい時代だったと思う。 とても生きづらかったと思う。 そこで時代を切り開いていく芯の強さ。その芯を奪う者の存在。 時代が変わろうとする時、そこで苦しむのは、いつだって社会の最前線にいる若者だ。 社会の最前線で、時代を切り開いてくれた方々に、和歌のような女性たちに、わたしは心から感謝を申し上げたい。
67投稿日: 2021.10.17
powered by ブクログ物語の中で時間が進んでいるのに、主人公だけ大学生あたりで止まっているような感覚。カレから離れることができて初めて時間が進んだように感じた。
2投稿日: 2021.08.16
powered by ブクログ登場人物は少ないものの、その人物描写たるや圧巻です。 主人公、和歌、同居人であり彼である仙太郎、和歌の父、母、祖母に至って全ての登場人物が絶えず脳内映像で動いていました。 大学から会社勤め~そして小説家へと悩みながら決断し、その時々で様々な葛藤があり、心が潰れそうになる時の和歌の気持ちに共感出来ました。 客観的な意見が欲しい、自分ではどうしようもない そんな経験がある方は大なり小なり和歌の気持ちに寄り添える様な気がします。 スッキリとして無駄な部分がないのも著者の作品の魅力です
4投稿日: 2021.01.27
powered by ブクログこれまでの作品よりも「角田光代らしさ」が際立っている。 もやもや感が強く、イライラもするくらい。 それがまた彼女の作風のいいところでもあるのだけれど。 現実ってほとんどいつもそんな感じだから。 ただ、もうちょっと何とかできたんじゃないか?? 祖母をめぐるミステリーはあまり興味深い展開を見せず、イヤミな彼氏もただイヤミなだけで…深みを感じない。 知らぬ間に自分を縛りつけ抑え込む彼らを、主人公が心理的に乗り越えていく過程にあんまりリアリティがないなぁと感じて、共感できなかった。 作者の自伝みたいな感じなのかな? 秘境を旅する展開なんかは本人の体験を元にしているっぽい気がする。 角田光代に低評価はつけたくないが…。
2投稿日: 2020.12.22
powered by ブクログあなたが現在の職業に就くと決めたのはいつのことでしょうか?それはどんなきっかけだったでしょうか? どんな職業に就いたとしても、どこかにそのきっかけは必ずあります。今の仕事が好きかどうかは別にして、応募したのはどこまでいってもあなた自身です。 ここに小説家という職業があります。そして、ここに小説家になりたいという一人の女性がいます。その女性は『書いてみたい』と言います。『何かしたいという漠然としたものではなく、はっきり、書いてみたい』と言います。それは『脚本でもない、ドキュメントでもない、フィクションだ。架空の話』だと言います。そして『この先ぜったいに知りようがない』のであれば『自分で作ればいい』と言います。『だれでもない、ともかく自分がそれを読んでみたい』と言います。 小説家はなりたいと思ってなれる職業でしょうか?そう、この小説はある時、ある瞬間に小説家になりたいと思い、すべてを捧げて小説家の道を邁進していく一人の女性の物語です。 『祖母は醜女だった』と幼い頃からくり返し聞かされてきた主人公の本田和歌。『六歳のときに亡くなった祖母の容姿をはっきりと覚えてはいない』という和歌。そんな和歌は『母がさほど美しくないのと同様、自分も客観的に見ればそんなにかわいいわけではない』と感じます。そんな『十八歳の和歌は、内村仙太郎に幾度』もそんな話をします。『和歌がはじめて肉体関係込みで交際をしている恋人である』仙太郎は『いや、かわいいよ和歌は』と返します。『親しくなったのが仙太郎でよかった』という和歌は『仙太郎は扉だった。開けるたび未知の世界が拡張していく扉を、彼は幾つも持っていた』という自分の知らない世界をたくさん知る仙太郎に魅了されていきます。そんな仙太郎は仕事を始めます。『週刊漫画誌での連載』を持ち『雑誌に書かれた肩書きは「アーティスト」』という仙太郎。『連載がはじまったのが十月、そうして十二月には、別の雑誌から仙太郎に仕事の依頼がきていた』と仕事が増えます。一方で『三年の終わりごろになっても、和歌は就職についていっさい考えなかった』という一方で『すでに仕事があり就職するつもりのない仙太郎』という二人。やむなく『大学院進学』を匂わす和歌の本音は『仙太郎と結婚したかった』と、とにかく就職しなければならない現実に向き合いません。『自分を含まない世のなかは、和歌のすぐ近くまでやってきた』という大学四年となり『みな次々と就職を決めていた。銀行に出版社に、広告代理店にメーカー』と同級生と差が開く和歌。そんな和歌に『就職したほうがいいと強く言った』仙太郎は『仕事はまったく途切れることなく、増え続けて』いるという状況。しかし『仙太郎が自筆で書く言葉はたいてい意味がない。「トトラトラ、ほらそこに、トトラトラ、二日続けて雨だって」』という内容に『正直をいえば和歌には何がおもしろいのか』と理解できないでいる和歌。しかし『学食で昼飯を食べていると「内村さんですよね」と男女にかかわらず仙太郎に声をかけてくる学生がいた』と有名になっていく仙太郎。オートロック付きの立派なマンションに引っ越した仙太郎に『同棲を持ちかけてくれるのではないかと期待していたが、そんな話は仙太郎の口から出なかった』とどんどん追い詰められる和歌。『和歌はさ、就職するつもり、ないの。結局、逃げてるだけだろ。漫然とやりたいことが向こうからやってくるなんてことはないんだからさ』と心配してくれる仙太郎。『就職なんてまるきりしたくない』、でも『そうしなくてはいけないような気になってくる』という和歌。そんな中『リクルートスーツは買ったものの、なかなか動き出さない和歌にしびれを切らした』仙太郎は、『知り合いを紹介すると言いだし』ます。そして、仙太郎にも後押しされる和歌の就職活動が始まりました。 実の娘が『醜女』と言う祖母、物書きを志し、そして何故かその道を捨てたというそんな祖母が残した「うららかな実」という本を見つけた和歌が、祖母の人生に隠された真実を探し求めるなかで、自らの人生をそこに絶妙にオーバーラップさせながら展開するこの作品。小説内小説として登場する「うららかな実」という作品は概要は語られますが、詳細が描かれるわけではありません。それよりもこの作品では小説家を志した祖母、そしてその人生をもとに小説を書こうとする和歌、という小説の中で小説を書く小説家の姿が描かれるのが特徴的です。それは角田さんなりの一つの小説家像ではないかと当然に考えてしまいます。そんな中で一番興味深かったのは初めての小説を和歌が書き始めて出来上がるまでのこんな描写でした。場面が1990年代初頭ということもあり『ボーナスがでると、和歌はそれでワープロを買った』というはじまり。『文字の配列を覚えるために意味のない文章を打ち続けた。そうしながら、小説にすべくストーリーを考えた』とウォーミングアップしながら小説に取り掛かる和歌。『祖母のことを書こうとしていた和歌だが、すぐに無理だと気づいた』と早々に自身の今の力量を知る和歌。『ならば、と、時代設定を現代にして、祖母ではない主人公を作り上げた』と試行錯誤する和歌。『高校卒業後、親のツテで腰掛け的に就職し、見合い結婚ですぐさま家庭に入った専業主婦を主人公と決めた』と基本設定を完了すると、『ワープロに打ち込む文章は、意味をなさないものから、その主人公の言葉に変わっていった』とどんどん小説世界に気持ちが入り始めていきます。そして『そのうち、彼女が自分に向かって語りかけているように和歌には感じられるようになった』という和歌は、『ときどき、聞き取ったことをワープロで打つのが間に合わず、和歌はあわてて学生時代に使っていたノートを引っ張り出して、空白のページに乱暴に書き殴った』というリアルな創作の舞台裏が描かれます。そして『打ち込んでは消し、打ち込んでは消しをくり返し』という作業により書き上がった『小説もどき』。初めての小説に苦労しながらも一生懸命取り組む和歌の姿がとても初々しく描かれていく名シーンだと思いました。また、このシーンが、和歌という主人公を読者に強く印象付けた、そのようにも感じました。 小説家を志す人が、いつの頃からその職業を意識し出すのかはわかりません。結局のところ人それぞれだとも思います。この作品の主人公である和歌はそもそも将来の自分の姿が思い描けないまま、就職活動からも逃げ、親からも逃げ、と現実から逃げ回った人生を歩んできました。そんな中に偶然にも見つけたのが、祖母が確かに生きた足跡でした。人生を生きる中で、自分の身近な人が歩んだ人生というのはやはりとても気になるものです。人が生きていく中では『何が欲しいのか。何なら手に入るのか。それを手に入れるためには何を手放さなければならないのか。何なら手放せるのか』というような問答をずっと続けなければなりません。そして、そんな選択に迷った時、身近な人はどうしたのだろう、どう選択したのだろうか、と先達の答えを参考にしたくなるのは当然のこととも言えます。そんな中で、結果として祖母がかつて目指した小説家の道を歩み出した和歌。そして『仙太郎と対等になれると和歌は思った』という和歌は、大学時代から一番身近な存在であった仙太郎が歩む人生をも強く意識していたことに気づきます。『もう仙太郎をまぶしく見上げなくてもいい。うっすらといつも感じていた劣等感を脱ぎ捨てたところで向かい合うことが、きっとできる』と捉える和歌。それに対して『ふつうの暮らしができない人間に、人の心に届く小説は書けないんじゃないか』と言う仙太郎。和歌と仙太郎の微妙な気持ちのズレ、そしてそれがかつて同じ道を生きようとした祖母の人生にオーバーラップしていく構成のこの作品。そしてさらに、和歌と生年が重なることもあってこの作品の作者である角田光代さんの人生がさらに複層に重なっているのではないかと見えてしまう絶妙感。もしかして…が倍増させる読書はいろんな思いに囚われ、想像力を飛躍させてくれる読書でもあります。ただ、当の角田さんは自身との重なりを明確に否定されているので、あくまでこれはこの作品の中で閉じた物語ではありますが、その生活風景が頭に浮かんでくるようなリアルな小説家の日常生活の描写により、普段接することのない本の向こう側にいる小説家を”一人の人間”として、ぐっと身近に感じることができました。 『文字を打ちこんでいると、たしかに、何ものかがゆっくりと頭をもたげ、蠢きはじめるのが感じられた』、そして『書く高揚にもいろいろあるのだと、和歌ははじめて恋をした時のような気持ちで思った』など、小説家が主人公のこの作品では、小説家という職業を生業にすることの喜びと悲しみ、そして苦しみをリアルに感じることができました。『祖母は醜女だった』というなんとも言えない冒頭からはじまるこの作品。和歌が解き明かしたその真実の姿は読者の中の『醜女』というイメージを違うものへと変えました。自分の人生を生きた祖母、そして自分の人生を歩み始めた和歌。そんな和歌が書く次の小説を是非読んでみたい、そう感じた作品でした。
42投稿日: 2020.08.20
powered by ブクログ「妄想のなかで生きることと現実を暮らすことは矛盾しない」 繰り返しの内省と自問自答のなかでもがき、自分の出した結論に更に疑問を投げかけ、妄想と現実のなかで自らの軸としての祖母が自ら選んだ道を歩んだという妄想に現実の希望を見出していく・・・ 複雑ですっきりと入ってくる話ではありませんでしたがじわじわと心に染みるお話でした。
4投稿日: 2020.07.19
powered by ブクログこれは、非常に重い。なかなか、生々しいお話。しかし同世代の女性に勧めたい一冊。 憧れの恋人を追いかける姿とか、周りが見えなくなる感じとか、彼が大した男ではなかった、と認めるのも辛いし、生きづらいんだな。。 結果、自分は自分、と生きて行く姿はかっこよかった。
4投稿日: 2020.04.22
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
特に何が盛り上がるわけでもなく、自分でも「なんだかなあ」と思ってるんだけど、読むのをやめられなくて、かなり夜更かしして読んだ本です。不思議。 仙太郎が怖い。 結局、自分の庇護のもとにいたはずの和歌が活躍していくのが許せなかっただけじゃないの? どうやら自分はたいしたことなかったっぽいし。 解説の津村さんの仙太郎評に納得。 祖母が作家だったかもしれなくて、でも母はあまり祖母について話してくれなくて……って設定はおもしろいんだけど、和歌の性格がよくつかめなかった。
3投稿日: 2020.03.05
powered by ブクログ思い通りにはいかない人生をもがきながら進んでいく。おばあちゃんと仙太郎を追いかけて。仙太郎のことは、追い越してしまったのだと思う。
1投稿日: 2020.03.01
powered by ブクログうまく良さを表現できないが、面白い作品だった。主人公・和歌の目線でストーリーが展開していく。大学生から40代まで、信頼、尊敬、依存、自立、挫折を経て再生していくが、うまく祖母の存在が軸となり、ストーリーが整理される。途中がなかなかの泥沼感で不安になるが、最後まで読んで納得の終わり方だった。いろいろなことを考えさせられる作品だった。
1投稿日: 2020.02.16
powered by ブクログ引き込まれる本 作者が 一気に書かれたのではないかと思うほど 1人の女性の 学生から 大人への 人生の分岐点を 多くも 少なくも 表現されていた 残るページ数が 少なくなるにつれ 主人公の行く末が 気になり 本が手放せなくなる 迷いや不安が多く あまり 多くを語らないところも 読み応えがある本
1投稿日: 2019.12.29
powered by ブクログとても面白かった。こういう小説は初めて読んだ。角田光代さんの一部なのかなぁと思いながら。日常の人の暮らしを見たいってすごく分かる。旅って大事。
2投稿日: 2019.11.27
powered by ブクログ角田光代という作家を好きになった、 もっと言えば、読書が好きになった一冊。 女と男、働く女性、全部全部興味深かった。
1投稿日: 2019.08.31
powered by ブクログ空中庭園と違い、1人の主人公の視点で物語が語られ続ける。それは大学生に始まり、15年に渡るものとなっている。 小説家を目指していたという祖母の思いへの考察を脳の片隅に置きながらも、自身も小説を書くことに、ものすごく傾倒していく。 彼女が女性であるからこそ、家事や自身の体への気遣いよりも優先して書くことに執着する暮らしぶりを見て、周りの恋人や親は軽蔑にも近いような態度を取る。 アーティストやクリエイターの生き方を垣間見たように感じた。 勝手ながらも私の母と重なる部分が多いと感じながら読んだ。
2投稿日: 2019.05.17
powered by ブクログ再読。角田ファンなのだが、これはド忘れしていたので購入。学生ながらクリエイターとして活躍する仙太郎。彼氏仙太郎に憧れ、就職も勉強もしたくない、お嫁さんになりたい和歌。そんな和歌が『祖母が物書きだった』という事実を知り、書くことに興味を持ち始めてから、徐々に二人の関係性に変化がー。仙太郎と和歌、両方悪い。仙太郎のさりげなさを装った、巧妙に攻撃的なトゲが嫌。和歌の無自覚な自分本位、卑屈なところが嫌。毎度ながら、角田さんはそういう表現が本当に上手だなと感心する。リアリティのある15年だった。この作品は好き。
2投稿日: 2019.05.13
powered by ブクログこんなドロドロした気持ち、気分悪い。 鬱陶しくて、洗い流したくて。 13年もどうしてくれるの。つらい。 和歌と仙太郎、うまくいかないって思った。 わたしでも気づくのに、なんで一緒にいるの(笑 書きたい想い、仙太郎の抑圧、祖母のストーリー‥‥。 和歌は祖母に感化され過ぎたのかもしれない。 仙太郎は和歌を深く思いやっていたのかも。 和歌より傷ついていたのかも‥。 いい思い出にしようと、無理矢理考える。 でも、やっぱり嫌いだ。ムカつく仙太郎。 いっぱい憎めばいい。 出会ったことも後悔すればいい。 なんもかんも捨ててやればいいんだ。 とことん腐って、蔑んでやりゃあいいんだ。 そしたら、飽きるかな。 仙太郎のこと。 忘れられるかな。 今から。 今からなんだよね。まだまだ人生長いし。 読むのが苦しかった。 和歌に気持ち、同調して。 でもこの作品が角田さんの本でいちばん好きだ。
1投稿日: 2019.01.22
powered by ブクログ女子大生和歌。彼氏がバブルに乗って学生時代から時の人となり言われるがまま何となく就職して暮らす中、亡き祖母の遺品の中に小説見つけ書きたい気持ちが芽生えてくる。仕事、結婚、出産、そして何より男に振り回されつつ自分を見出していく過程があり得なそうでもリアル。
1投稿日: 2018.10.09
powered by ブクログ18歳の時から1歳年上の同じ大学の仙太郎と ずっと付き合ってる和歌。 仙太郎の感性は飛び抜けていて、それなのに どうして、ごくごく「普通」の自分となんか付き合うのか。 ちっとも自信のモテない和歌は、ときに劣等感を抱きながら 仙太郎の言うことがすべてとばかりに 完全に崇拝していた。 大学生でありながら、イラストレーターとして 大成功をする仙太郎。 メディアにも出るようになり、いつしか置いていかれるんじゃないかと思いながらも ずっと、仙太郎は和歌のそばにいた。 仙太郎が、いつでも、「上」の生活を見せてくれた。 そんな和歌は、仙太郎の世話をしながらお嫁さんになりたいというごくごく平凡な夢を見ていたのだけれど 和歌の醜女と呼ばれた祖母の書いた著書を 取り壊すことになった「蔵」から見つけたときから 和歌の心に、何かが目覚め始める。 ごくごく普通な女の子。 と思いきや。 読んでいくにつれ、全然そうではないことが分かっていく。 おそらく、仙太郎もそんな和歌のちょっと変わった感性に惹かれてずっと一緒にいたんだと思うし 和歌が気づいていないだけで、和歌には静かに燃える才能がくすぶっていたのだ。 それが、じょじょに目覚めていく様子もみごとに描かれ 和歌の根底に、祖母の生き様の想像や実際に分かっていくものが影響して大きく成長していく。 「汚い生活」と仙太郎に言われるような、いつか夢見た仙太郎のお嫁さんとは、真逆の生活を送るようになるとは和歌じしんも想像すらしてなかったに違いない。 その変貌ぶりは、徹底してて逆に気持ちいいくらい。 こんな女だって、いるのだ。 そんなふうにも聞こえてくる。 仙太郎が、本当はどんなことを考えていたのかは和歌からの主観でしか書かれていないので 分からないけれど、とてもとても魅力のある仙太郎が 次は、どんなことをするのか。 どんなことを言うのか、読み進めていくのが楽しみでもあった。 まっすぐじゃない普通そうで普通じゃない人を書かせたら天下一品の角田光代作品の私の物語。 いやな女だけど、ものすごく魅力的な和歌。 とってもオモシロカッた。
4投稿日: 2018.05.22
powered by ブクログいっときのなぐさめを口にしただけかもしれない。けれど和歌は考えてもいなかったのだ、自分に「今から」があるなんて。(和歌) 仙太郎の嫉妬が怖かった。
2投稿日: 2018.04.12
powered by ブクログ仙太郎が海外にしばらく行くと和歌に話す時の言葉 「自分の時間を自分のために使うことしかできなくて、他人を思いやる想像力を持てなくて、自分の汚した皿を自分で洗うのも、誰かにそうさせられているって思っていやいや洗う、そういうことしかできないんじゃないかな」 仙太郎は 和歌に対してとても大人に対応で 普通の男性なら声を荒げて怒るようなことも 穏やかに和歌に伝えていて 和歌はやはり同居に向かないという気がする
1投稿日: 2018.01.04
powered by ブクログ久々に夢中で読んだ 何だろうこの感覚は… 和歌の感覚や感情にすごく入り込んでいくというか、 心理描写がうまいのか、 自分も和歌と同じ気持ちになって読み進めてしまう。 仙太郎みたいなオトコって結構多いと思う。 彼の場合はまだちゃんと成功や実績があったけども。 角田光代はじめて読んだけどハマりそう
1投稿日: 2017.12.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
うむむむむ、流石さすがの角田光代。今回も、お見事でした。大変に、お見事でした。面白いです。怖いです。辛いです。でも面白いです。うむむむむ、お見事です。何故に角田さんの小説は、こんなに、切実に、感じられるのかなあ。スッと入ってくるのだろうかなあ。そしてこれほどまでに、グッとくるのだろうかなあ。不思議な事よなあ。 変な言い方かもしれませんが、この小説の内容だったら、シンプルに、良い話、良い物語、にすることも、できると思うんですよね。常に追いかけ続けるような存在である、尊敬できる彼氏を持った女の子が、自分というものに目覚め、小説家を志し、それを彼氏は応援し、女の子は、様々な困難に直面しながらも、着実に成長し、彼氏とも色々ありつつもその困難を共に乗り越え、公私ともにハッピーエンドに向かう、的な。非常に良くできた、なんといいますか、誰もが安心して楽しめる、ハラハラドキドキの良質ドラマ、というか良質小説。そんな展開にも、絶対、できるはず、ハズ。 なのに、角田さんは、全然、そんな感じに、しない。それはもう、角田さんにとっては「それは私の担当じゃない」という思いを、しっかりと持っているのだろうなあ。「こういうものを書くのが自分なのだ」という、確かなものが、あるのだろうなあ、いや、確かでもなんでもなく、角田さんもやっぱ、迷いながら悩みながら書いているのだろうか、どうなんだろうか。でもそれは、きっと、とてもなんといいますか、素敵だなあ、とかね、思うのです。なんか、よおわかりませんが。 ちなみに、自分が男だからかもしれませんが、仙太郎、好きですね。こういうキャラ。良い人だと、、、思うんだけどなあ。叶うならば、全く同じ内容の小説で、全ての視点を仙太郎側から観た作品を、読んでみたい、とか思ってしまうのだった。仙太郎目線からでは、この物語は、どのような形で語られるのだろうか?仙太郎から見た、和歌という女性は、どんな女性なのだろうか?ううう、気になるなあ。読んでみたいなあ、そんなんも。 まあしかし、なにしろ面白い小説でした。やっぱ、角田さんの本は、好きですね。間違いなく、好きです、うん。
4投稿日: 2017.12.10
powered by ブクログ読んでいて涙が出てくる。女であることの呪い。男から自分より格下であるよう言外に求められマウンティングされる窮屈さ。
1投稿日: 2017.10.23
powered by ブクログ久しぶりの角田さん。 のめりこむように一気に読了。 ここまで気持ちを掘り下げて、何度も繰り返し繰り返し見つめなおす作業は、私ならきっと途中で投げ出すだろうなと… 微妙に、賞の候補になったことや妊娠したことを伝えない気持ちがわかる気がして、それにこだわる仙太郎がちょっと面倒な存在に思える。 実家に電話したこと黙ってたのに…なんて、私がけんかしているような気になった… 和歌も仙太郎も言葉を使う仕事をしながら、言葉が足りないからこうなるんだわ…とか思いつつ、私なら自分がしていない家事をこなす彼との同居は無理と… 無期限の海外旅行に行った時点で、中途半端な浮気なんかせずにさっさと出ていけばいいのに… 何年かぶりに出会った時の仙太郎の反応に若干イラついた… と、すっかり参加してしまった作品でした。
2投稿日: 2017.06.19
powered by ブクログ17/06/09 (43) 読み始めてすぐに、あれ?これ前にも読んだことあるっぽいぞ、と気づく。調べたら15年4月に読んでたハードカバーのほうを。2年前の読んだときよりも主人公のもがきながら生きる姿にじりじりしてしまった。なんにも知らない女の子だったのにね。仙太郎のお嫁さんになることを夢見てた女の子だったのにね。いつのまにか気づいたら自分はこんなとこにいるっていう感覚。じりじり。 ・「でもぼくはね、師匠だろうが編集者だろうが、人は他人の才能を潰すことなんてできないと思っているんですよ。才能を潰せるのは、その才能を持っているその本人だけだと」(P357)
1投稿日: 2017.06.10
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
・初対面のあの人と私は言葉ではなく何で話していたんだろうと和歌は思う。どのような方法で何を共有したのだろうかと。 ・自分たちがいるのはあの事件のように不可解な、現実よりはフィクションに近いような今で、その今は今つかまえないととたんに今ではなくなるというような気分が、言葉にならずとも和歌の内にあった。 ・いつからかはわからない、でも、なぜかはわかる。つまらなく思えてくるのだ。候補に残った、新聞社の取材を受けた。そう興奮して伝えたとしても、それは彼がすでに通った道のどこかでしかなく、ちっともたいしたことではないのだと、思い知らされるからだ。舞い上がったり、喜んだり、騒いでいる自分が馬鹿みたいに思えるからだ。 ・小説に没頭していると、忘れたいことを忘れることができた。忘れたいことなど、起きなかったようにすら思えた。 ・きみと見たかったです。きみに見てもらいたいです。ものを創る人間の、底力になる何かがここにはあるよ、たしかに。 ・「どうしてちゃんとできないの。どうしてちゃんとしてくれないの。どうして人並みのことが、だれでもできることができないの。あんたはおかしい。どこかおかしい。どこまでゆがんでいるの。私が悪いのかもしれない」 ・自分がほんとうに何を欲しがっていたのか、今、和歌にはわからなくなっている。そしてそんなことわからなくていっこうにかまわないと和歌は思うのだった。 何が欲しいのか。何なら手に入るのか。それを手に入れるためには何を手放さなければならないのか。何なら手放せるのか。 ・けれど、自分の人生を生きた。だれかに強要されるのでもなく邪魔されるのでもなく、どこに向かうかさだめ、その方向にしっかりと足を踏み出した。 ・「でも、千年とか二千年とかいう言葉を聞いてると、一瞬に思えてきますね」 思ったことをそのまま口に出した。 「だけど千年、二千年を体感できるわけじゃないから、やっぱり二十年は途方もなく長いよ」
1投稿日: 2017.05.15
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「妄想の中で生きることと現実を暮らすことは矛盾しない」 小説を書きながら、自ら妄想と現実の区別のない場所に入り込み、そこから抜け出すためにはやはり書くしかないと思う和歌。 和歌は角田作品の主人公としては典型的なタイプのちょっとダメな女の子。あまりパッとしない存在。ちょっとだらしなくて、あまり深く考えない、自分の意思を持たないぼやっとした大学生。 そんな彼女が実家の蔵の解体をきっかけに祖母の過去を知り、また恋人との生活で少しずつ自分の道を歩き出す。 祖母の過去、母親との関係、叔母の存在、恋人との生活と仕事 そこに行き交う言葉 同じ体験があるわけでもないのに、なぜか和歌の気持ちが自分のことのように感じられ、母や恋人の言葉に、和歌といっしょに傷つき打ちのめされる気がしました。 自分の時間を自分のためにしかつかうことができない そんな言葉を浴びせられ、自分の存在意義を疑い、何がいけなかったのか、どこで間違えたのかと、それでもまだことばを探し求めてしまう和歌。 初めは自分を励まし導いてくれた恋人の言葉が、いつしか自分を傷つける刃となる。立ち直れないほど激しく傷つき、闇のなかでもがく和歌の背中をそっと押してくれたのも、またある人の何気ない言葉でした。和歌の視界に薄い、でも確かな光が射して、きっと前を向いて歩いていけると思った瞬間を目撃した気がしました。 私の中にも彼女がいました。
4投稿日: 2017.04.26
powered by ブクログすごい小説だった。 自分と和歌が重なって、苦しいところも多かった。 最後まで仙太郎は好きになれなかった。 母とのやり取りは辛かった。
1投稿日: 2017.04.10
powered by ブクログ女の人が書く小説ってやっぱりいいな。面白かった。 大学時代から付き合って、いる仙太郎と和歌。 仙太郎はバブルの波に乗りイラストレーターとして、在学中から売れっ子になっていく。 それを間近で見ている平凡な女の子、和歌。 仙太郎は売れっ子になっても変わらず、驕らず、地に足がついた態度で、和歌とも付き合い続ける。 和歌は実家の蔵で祖母が訳ありの作家だった痕跡を見つけ、詳細を調べていくのと並行して、自分も作家になりたいと思い、文学賞に応募する。そして徐々に売れっ子になっていく。 和歌が売れっ子になっていく過程で、仙太郎が家事を請け負ったり献身的にサポートしているように見え、最初はなんていい男なんだ!と思った。 しかし、他の人のレビューやあとがきを読むとこいつ、無意識に女の進路を邪魔しようとしてる?と気づいた。 嫌味ともとれることを言うが爽やかに誤魔化したり、彼女が売れっ子になり始めたら避妊を拒否したり。 和歌は和歌で、生活がどんどん自堕落になり、愛想を尽かされても仕方のない状況になる。母親との関係や自分の心を縛る呪詛に悩み、終いには自分の人生がうまくいかないことを全て仙太郎のせいにする。 初めは仙太郎と和歌の付き合い方ってすごくいいな、と思って見ていたが、どうもそうではないらしい。 何か解決するわけでもなく終わる小説なのだが、男女どちらにも非があるような気がしている。 しかし、その非が、一度なぞっただけでは私にはわからなかった。 読みながら、また、読み終わってから、噛み締めると、じわじわと嫌〜な感じのする小説だ。
1投稿日: 2017.02.21
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
作家だったかもしれない祖母、イラストレーターの彼氏の影響を受けつつ、自分の生き方と向き合いながら作家として歩んでいく女の子の話。 女性っていうより、年齢はいっていても考え方は女の子って感じでした。 卒業とか卒論のタイミングで恩師から1対1で送られた言葉って何年経っても残るし指標になるし、自意識過剰な悩みも共感したし、でもあんなに霧中になれるものが私にはないなと悲しくなったけれど、そうよねでも私も生きていく!と思いました。 往復の電車で読み終わらなくて、夜更かししてベッドで一気読みするくらい、今の気持ちにぴったりでした。
1投稿日: 2017.02.09
powered by ブクログ角田光代さんの小説をたまに読むと、この方の小説が映像化されることが多い理由が分かる気がする。 時系列をあまりいじらないから流れが分かりやすいし、人物像とか画がイメージしやすい。 あと、主人公が善い人間過ぎないところがいい。ずるかったりだらしなかったり、たまにどす黒い感情を表に出すこともあったり。そうだからこそ、共感も出来るのかも知れない。 スタート時点で、主人公の和歌は大学生。1つ歳上である恋人の仙太郎は尊敬すべき人物で、自分の知らないことを何でも教えてくれる存在だった。 バブルの波に乗って、仙太郎は大学生のうちに売れっ子イラストレーターになり、和歌はそんな彼と結婚する夢を見つつ卒業後は小さな出版社に就職する。 そうして過ごすうち、和歌のなかにも「書きたい」という衝動が芽生え、初めて書いた小説がとある賞を受賞し、プロの小説家になった頃から仙太郎との関係がいびつに姿を変えていく。 2つの大きなラインがある小説で、上に書いたあらすじが1本、そしてもう1本は和歌の祖母について。 和歌自身は祖母についてはほとんど知らないが、和歌の母からは「おばあちゃんは醜女だった」とだけ聞かされていた。 取り壊すことになった実家の蔵から見つけた様々な物を見て、祖母がどうやら物書きを志した人物だということを知り、自分が小説家になったのちも時間をかけて祖母について追っていく。というのが、もう1本のライン。 タイトルの「私のなかの彼女」の“彼女”は恐らく祖母のことで、和歌の人生の流れがどことなく和歌の祖母が辿ったものとも重なるように見えてくる。 男とともにいることを拠り所にしていた女が、自らが何かの力や才能を得た途端、パワーバランスが崩れてしまうことはよくある。 自信を得て自分の足で歩くことの楽しさを知ってしまった女の影響もあるし、自信を得てしまった女を面白くなく思う男の影響もある。 何も知らない馬鹿な女だったから可愛いと思えたのに、そうじゃなくなった瞬間、感情が嫉妬に振り切れる。 才能と才能が同じ場所に在り続ける、というのはとても困難なのかもしれない。スタートが同じじゃない場合は尚のこと。 和歌と長いこと恋人であり続けた仙太郎にも、次第にそういう感情が垣間見え始める。 付き合い始めた頃は、無知な和歌のことが可愛くて本当に好きだったのだろうけど、常に自分が一歩前にいたのがそうではなくなったときから同じ風には思えなくなり、次第に嫉妬に変わって、刺のあることも言い出すようになる。 それと同時に和歌も、仙太郎に対する尊敬を徐々に手離し始めてしまう。 離れるのは辛いから一緒にいるはずなのに、一緒にいるときの空気がだんだんと気詰まりになっていく。 ぎくしゃくした雰囲気が、読んでいても辛い。 スタートから20年を経たあたりで物語は終わるのだけど、まだ人生の途中なので、だらしなくずるい面を持つ和歌もまた発展途上で終わる。 すべて、感情やら人間関係やらを、すっきりと都合よく終わらせていないところに現実味がある。 でも、それなのに不思議な爽快感があるところが、角田さんの小説の持ち味だと思う。 「痛いところ突かれちゃったな」と、自分と主人公に重なるところが全然なくても、思ってしまったりする。 小説家が描く小説家の物語だからこそ書けるのだろう、と思えるところもたくさんあって面白い。 流れがシンプルでドラマ性があって痛くて爽快で…やはり映像向きだ、と思ったのであった。
4投稿日: 2017.01.07
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
バブル期に大学生だった彼女の、それ以降の二十年間。 時代は変わり、年齢も変わり、家族や恋人との関係も変わる。 友人も変わるし、遊びや飲み方も変わる。 そんな中で少しずつ、自分自身も少しずつ変わっていくところが、とても丁寧に描かれていると思う。 劇的ではなく、さりげなく、細かく描写されている。 彼女の心もとても丁寧に表現されている。 相手の言葉のウラに隠されたニュアンスを読み取ろうとして、気を回しすぎて自爆して、勝手に傷ついて。 尊敬とか畏敬とか憧れとか愛情とか、 そんなのがないまぜになった感情を抱く相手との生活の、ちょっとした挙動に対する緊張感とか。 胸の中に湧いた一つの方向性が、徐々に膨らんでいってわくわくざわざわする胸の高鳴りとか。 そんな丁寧で細やかな表現にとても好感が持てた。 だけどストーリーは別に面白くない(と私は感じた)。 読み進めたくなるような魅力もない(と私は感じた)。 主題とか身に迫る何かとかよく分からない。 ただその長期スパンの変化の丁寧な描写が面白くて、 その細やかさを少しも逃したくなかったので一気に読みました。 が、別に面白くはなかったです。 でもこの長期スパンの変化の描写は一気読みじゃないと分からないし、 かいつまんで読んでも理解できないので、 読むしか無い。どうしようもない。 ひとつ、テーマらしきものを感じたとすれば、 「私のなかの彼女」というタイトルに関して。 彼女の祖母がどのような人物であったのか、真実は分からない。 彼女の母親は、母親なりの「祖母像」を持っていて、 彼女自身もまた、彼女なりの「祖母像」を持っている。 しかし今生きて相対している人も同様なんだろうなと思った。 彼女の恋人も、序盤と終盤とで全く違う人物像に見える。 それは彼も彼女と同じく、時代や年齢の変化の中で生きてきたから。 それもあるが、私たちが読んでいる彼の「像」は、 彼女の目から見た彼である。 私が今現実で対面している人も、私なりのその人像である。 その人自身と全くイコールではない。 誰もが皆、各人のなかの各人として存在している。 彼女は彼の影響を受けて動いていたと思っていたが、 実際には彼女のなかの彼の影響を受けていたんだろう。 現実でもそうだ。各人が、各人の中の各人によって動かされている。 世界なんてそんなもんだなあ
1投稿日: 2016.12.30
powered by ブクログなんとだらしのない女なんだ。書くことがもともと大好きだったのはわかる。ある程度の才能があったことも認めよう。…しかーし、洗い物を流しに積み上げ、洗濯物を溜め、部屋の隅には埃の玉、口にするのはコンビニ弁当とは嘆かわしい。かつては大好きだった彼(仙太郎)の好意に甘えて家事一切を預け、そのくせ彼が不機嫌になってないかビクビク顔色を窺う。最低。しかも書く作品はどれも中途半端じゃないか。 かと言って、彼のほうも褒められたもんではない。文句があるならその場その場で言えっちゅうの。いいよいいよと家事を受け入れてる風な態度を取りながら、時々ちくりと嫌味を言う。和歌が会社を辞めた時も、実際は怒ってるくせに「じゃ飲みに行く?」とはぐらかしたり、子供を流してしまったときも、「あやまることじゃない」と言っときながら、裏で和歌の母親に電話して泣き言を言ったりする。女々しい男だ。 だらしない女と女々しい男の物語。一番イラつくのは、別れてから何年も経つのに、自分の人生がいびつになったのは仙太郎のせいで、二十年前に彼を好きにならなければ、今自分がいるところはもっと普通の場所だったはずだと考えていること。いびつの原因は自分にあるとは思っていない。なにが普通でなにがいびつかなんて人の価値観によって変わってくる。結局彼女は家庭を築くことよりも作家になる道を選んだのだ。それが彼女にとっての普通の道だったんじゃないの。 彼女(和歌)の祖母が結婚前に作家を目指していたというせっかくの設定が死んでしまうほど、つまらない恋愛話だった。…でもこんなカップル、今の時代いっぱい存在するんでしょうね。片づけられない女と言えない(言わない)男ね。
1投稿日: 2016.12.29
powered by ブクログ物書きを目指しながら、普通の専業主婦として一生を終えた祖母のことを知った和歌。母の呪詛、恋人の抑圧、仕事の壁。大切な何かを探し求めて自分の道へ踏み出す彼女を投影する私たち自身の物語。 置かれた立場や設定が他人事ではない。男女の枠を越えて、家族や職場の掟やしがらみに縛られて、日々を過ごしている私たちの現在過去未来の話である。おそらく『自分探しの旅』では発見できない自らが進むべき道。平坦なときもあれば、茨の道もある。でもそれは自らが選んだ道である。どんな時でも進むしかない。
1投稿日: 2016.09.04
powered by ブクログ2016/8/31 登場人物が全然好きになれず、かといって全否定もできず、なのにすごく引き込まれてあっというまに読んだ。おもしろかった。 何も知らなくていちいちびっくりしてくれて尊敬してくれる彼女を庇護する愛しかた。自分は早々に成功し有名になる。 その後は、彼女のほうが成功し始め、彼は落ちぶれていく。 ここまで読めば、当然、落ちぶれた彼が卑屈になるとか、立場が逆転するのかと思えばそうでもなくて。 彼女も、呪縛のような彼の言葉や態度から解放されて独り立ちするのかと思えば、最後までそうでもなくて。 彼の言葉は立派なモラルハラスメントだ。でもそういう描かれ方してないから、読んでるほうも一緒に傷つく感じがした。 でも、最後まですがりつく彼女にも同情できない。 死の直前まで娘を責めて傷つける母親にもびっくりするし、全然救われないままなのが辛いなあ。 すっきりはしないけど、ずっと記憶に残りそうな作品。
4投稿日: 2016.09.02
powered by ブクログ将来の夢は特になく、「若くて無知な自分」を可愛いと言ってくれる、頭の良い彼氏との結婚生活に憧れる女子大生、和歌。 ある日、祖母が小説を書いていたという事実を知って、自身も小説を書くようになる。 小説家の仕事に没頭する中で、和歌は彼氏や母親の批判的な言動を気にしながらも、書きたいという欲求を仕事にぶつけていく。 「きれいな生活」を捨ててまで仕事をした結果、彼女に残ったものとは… 彼氏の顔色を伺いながら、仕事や生活をしていく和歌。 家事を放棄してまで仕事に没頭する自分に罪悪感を感じながらも、書きたいと思える和歌が羨ましい。 物語の最終部、和歌は、祖母の生き方を、今までとは違う視点で捉える。 それまでは、男によって才能を潰されたために、小説を諦めたと思っていたが、実は祖母が、祖父を愛したが故の選択だったのでは?? たとえ望んでいた道を歩めなくても、 救いは、自分で選択して進んだ道であるということ。 自分の選択が間違っていたのでは…と、事あるごとに不安になっていた和歌に、やっと救いが見えた。
1投稿日: 2016.08.31
powered by ブクログいい作品です。親子間・男女間のすれ違いや軋轢、女性の自立、男の変化、主人公の成長物語、自分探し、主人公と祖母の人生とのリンク、作家とは何ぞやetc、いろいろな読み方ができるところが素晴らしいと思いました。実際、新聞や雑誌の書評をいくつか読みましたが、どれも異なるポイント・解釈で評されているようです。 私が面白かったのは、主人公の和歌は私を含めた読者の共感を得にくいタイプのように思えるにもかかわらず、物語が終盤に差し掛かるにつれて彼女の個性にすっかり引き込まれて応援している自分がいたことです。まさに著者の筆致だからこそなせる技だと思いました。
1投稿日: 2016.08.16
powered by ブクログ読んでて胃が痛くなるような気分だった。走って走って何にも残らないだろうなという、主人公の孤独に当てられたんだと思う。 どうがんばっても人と分かり合えないこの感じ。 欲望、欲望、欲望。完全なる善人が出てこない話だった。怖かった。すごく怖かった。途中で心が折れそうになるほど泣いてしまった。 みんな有罪だ、それでも生きているんだ、とうすら寒い気持ちで思った。
1投稿日: 2016.07.29
powered by ブクログまず、題名に興味をそそられてこの本を手に取った。誰しも二人の自分に葛藤するときがあり、そういった描写がつづられているのかと思ったが、読んでみると以外にも主人公の彼氏の考え方に関心がいった。仙太郎批判が多いのはなぜだろう。女性の読者が多いからであろうか。 和歌に共感もするのだが、仙太郎の考え方にも共感するところが多かった。だんだん仙太郎が気の毒になった。はじめは和歌が感じていたように仙太郎が大人な人かと思ったが、少し身を引いて客観的にみると、チクっと与えるかと思えば、遠慮したり、自分で勝手に判断し、はっきり言わないところもあり、不器用な部分もあるのだと思う。が、和歌に対して優しさもあるのだと何度か感じた。そういったのも含めて読みながら私は、’彼の中の彼’も自然に探していた気がする。和歌を目にしていた仙太郎になって考えると、和歌を離れざるをも得なかったと思う。二人を客観的にみて仙太郎の気持ちを考えたからか、二回目に読んだときは不思議に仙太郎の言葉に嫌味を感じなかった。 要は考え方なのだろうか。恋愛も考え方次第でうまくいくのだろうか。相手の言葉が嫌味に聞こえたとき、それで相手を嫌になりそうなとき、もう一度考えなおそうと思った。
1投稿日: 2016.07.27
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
何だか読んでて辛かった。上手く行っているようで行っていない和歌の20年。仙太郎との別れ。 学生時代からのカップルって、仕事を始めて環境が変わって友達も変わって、そしたら自分も変わってて、結果すれ違うってパターン多いのかな。変わっていくのは自分だけじゃないけど。その辺の描写はさすがでした。
1投稿日: 2016.07.12
powered by ブクログ読んでいるとどうしても主人公に角田光代先生のイメージが入り込んできて、何とか重ならないように努力するのに必死でした。 読み進めていくうちにそれは克服でき、久々に面白い小説でした。何より文章力が凄い。解説が津村記久子先生なのもまた魅力の一冊。
1投稿日: 2016.07.02
powered by ブクログ人のせいにしない。自分と、起こった出来事を、ただニュートラルな視点で見られるようになりたい。いい・悪いではなくて、ただ冷静に、受け止められる器の大きい人になりたい。
1投稿日: 2016.06.26
powered by ブクログ18歳の和歌は将来のビジョンも夢ももたない世間知らずの大学生だ。一つ年上の仙太郎は和歌のそんなところを気に入ってか、何かと導いてくれる。 独特なイラストであっという間に有名なアーティストとなった仙太郎と結婚し、彼をサポートするのが唯一の夢といえば夢であった和歌だが、あるとき実家の蔵で祖母の書いた小説を見つけ、生まれて初めて「書きたい」という能動的な衝動を感じる…。 祖母の足跡を辿るうちに自分のルーツを知り人生を見つめなおす、という単純な物語かと思ったがいい意味で裏切られた。 和歌の変化に合わせて仙太郎の心が揺らぐさまが腹立たしくもあり、哀れでもあり。しかしこれは仙太郎が変わったのではなく、おそらく和歌の仙太郎を見る目が変わったのだろうと思う。
1投稿日: 2016.06.19
powered by ブクログ私ってどんな人? 何が出来る? 好きなものは? 苦手なことは? やりたい事は? そして、明日の私は? 自分の事なのによくわからない。 外からの刺激で内側が変わり、内面の変化で刺激の受け取り方が変わる。流動的というか、変化し続けているというか、定型でない私がいる。良くわからないままに楽しめるのが不思議。
1投稿日: 2016.06.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
小説を読んでいるという感覚を忘れた。 活字を目で追って、頭で文章を理解して、感じる…という過程をすっ飛ばして、直接本から何か吸い上げて、それが体中に行きわたっているような。 ヒロイン・和歌に自分が取り憑いていて、仙太郎のひと言ひと言や行動に、振り回される。 「こうした方がいいのに」と思っても、自分は取り憑いているだけで実体がないから思うように行動できない。 「もう一緒に住むのが気が進まないならやめておけばいいのに。きっと売れなくなってきて家賃が払えないからたかる気なんだよ!」 「昼間仕事してるとか嘘なんじゃない?後ろめたいから家事やってるんじゃないの?」 「ほら、出版社の人たち、みんな名前知らないじゃない。仙太郎はもう終わってるんだよ」 「ゴム着けないのは、子供作って、あんたが仕事できないようにするつもりなんだよ!」 勘ぐり放題な私であった。 作家同士の夫婦とか何組かいるけれど、どうやって折り合いをつけているのだろうか? 家事の分担も、書けない時の感情のやり場も、相手の仕事ぶりに対する関心も、気にならないわけはないだろう。 和歌は、本当にやりたいことを続けていけるのだろうか。 この先も、生きている限り迷いは尽きないと思うけれど、自由に羽ばたいてほしい。 バブル期の様子が、懐かしく、ばかばかしい時代だったよね…と思い出に浸ったりもした。
1投稿日: 2016.06.16
powered by ブクログ対等な関係ってものはこの世に存在しないのかもしれない。 自分の優位性を保つために相手を言葉で貶める。 恋人 仙太郎との結婚を夢見る平凡な大学生だった和歌が、自分の足で小説家の道を歩き始めた時、仙太郎や母親から投げつけられる言葉の数々がまさにそれだ。 和歌は小説家を目指していたであろう祖母の多栄の生き方を紐解き、時に自分と重ね合わせながら、どんなに傷つきながらも書くことを選び取っていく。 主人公はバブル期に大学時代を過ごし、バブル崩壊とともに就職して以降の20年が描かれていて、それと全く同時代を生きてきた自分としては、時代とともに変化していく働く女性に対する社会の風潮や雰囲気みたいなものにとても共感した。 どんな時代であっても、何を選びとり、何を手放していくのか。 これは主人公だけのストーリーではないのだと作者が私に問いかけてくる。
1投稿日: 2016.05.22
powered by ブクログなりたいものもなくて、好奇心旺盛な方じゃなくて、いたって平凡な女だった和歌が、書くことで変わっていく話。ハッピーエンドともバッドエンドともつかないところが良いな。 近しい人の社会的地位の変化に対する反応の男女の違いとか、女性の生き方に対する社会的な空気など、繊細な感情の動きと、微妙な空気感の描写がうまい。 自分にとって幸せな生き方とは何なのか、何を共有できる人と過ごすことが自分にとって心地良いのか、目を背けがちな問題について考えこんでしまった。 具体的な指示はなかったにも関わらず編集者と分かり合えた時の和歌の興奮が印象に残った。私は言葉を大切にし過ぎる。気持ちに即した言葉を紡げなくて、溜め込んで溜め込んでどんどん話せなくなっていくけれど、言葉以外の何かを共有することで分かり合える可能性もあるんだと、ただ驚いた。
1投稿日: 2016.05.11
powered by ブクログGW、帰りの新幹線の中で読むべく駅の書店で購入。 何だか不思議なお話で、解説にもあるように粗筋を語れば何とも陳腐な感じとなり、主人公の和香のように良く言えば奔放、悪く言えば小汚いのも平気、仕事に没頭したら何も見えないという女性に、私としてはそれ程魅力も感じないし、その気持ちも、またそれに寄り添う仙太郎の心持ちも、一定でなく掴み難い。 にも拘らず、作中で和香が惹かれる香港やエジプトの市井の生活の猥雑さや作家を目指した和香の祖母の不思議な行動力に似て、結構ずいずいと物語を読まされてしまうところは有り。
1投稿日: 2016.05.08
powered by ブクログ実に女性らしい、複雑な焦りと依存と人とは違う感の主人公。共感は出来ないものの、こんな女性多いねと思える。 それをよく捉えていると感心しつつ、つい角田さん作品に期待してしまう爽快感は得られなかった。
1投稿日: 2016.05.05
