
総合評価
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powered by ブクログ平坦な道をただ進んでいるような、感情の起伏なく読めてしまう。最近、精神的ダメージが大きい映画を観てたから、ちょうどよかった。 好きなのは、『ひよこトラック』と『ガイド』
2投稿日: 2025.10.05
powered by ブクログ作り直されたマグカップの様な本 読み始めて数ページ。あぁ、小川洋子。染みる沁みる滲みる。どの言葉も当てはまるだろう感情が私に広がり轟く。 目眩とは違う。おしゃぶりの存在を忘れていたのに、目の前に来たら思い出し泣く赤子の様に。必要なのに忘れられるもの。尊き、我が感情。 バタフライ和文タイプ事務所の話が好き。日頃から日本語の漢字に向き合っている人間が、なせる漢字独特の趣きを言葉で表す姿にニマニマが止まらない。 普段から名刺交換や名前を伺う時、漢字に惹きつけられる。好きな漢字が入っている人には何の前触れもなく、この字好きなんですと力説してしまうので少々疎ましいかもしれません。 題名の付いていない記憶は忘れ去られやすい。適切な題名が付いていれば、人々はいつまでもそれを取っておくことができる。 舌先を火傷させてまで飲みたい紅茶の様に、得られるものが支障をきたすものを上回る。困るなぁ。 かと思えば、人肌にまで馴染まされたお茶が食道を用心深くノロノロ過ぎていく。どの緩急も貴方の言葉なら受け止めたい。沸き立つ私の感情が、欲情が湯たんぽと人間の間の温もりを持ちつつ私を包み、解きほぐす。 こね直し、焼き直し、塗り直す。思い出は好きな形にして保存したい。誰かにとって不要でも私にとって必要であるから、自分の価値を軽率に計らないでほしい。
1投稿日: 2025.10.04
powered by ブクログ◼️小川洋子「海」 ちょっとへんてこな設定、成り行き。ファンタジック風味もある小川洋子の国の短編集。 2006年の作品。「博士の愛した数式」の3年後、「猫を抱いて象と泳ぐ」「ことり」より前。表題作「海」のほか「風薫るウィーンの旅六日間」「バタフライ和文タイプ事務所」「銀色のかぎ針」「缶入りドロップ」「ひよこトラック」「ガイド」が収録されている。「かぎ針」「ドロップ」は数ページのスケッチ的な掌編、ほかは40数ページまでの短編。 表題作にはザトウクジラの浮袋で作られ、海風が吹いたら鳴るという鳴鱗琴という楽器が出てくる。「バタフライ」は学生街にある論文をタイプで打つという、なにやらレトロな事務所が舞台で、その奥まった部屋にいる謎めいた「活字管理人」が物語の中核をなす。エンドの「ガイド」には「題名屋」なる職業の男が登場する。 小川作品にはまあ奇人とも言えるヘンな人が出てきて独特の暖かみを残すのがパターン。その風味を短編にしたか、というと小さく正解、みたいな感じかな。 「海」は海近くの女の家に結婚を申し込みに行った男と家族の微妙なぎこちなさに満ちている。「風薫る」はお人好しの珍道中の果て、で乾いたおかしみがある。 「ひよこトラック」はホテルのドアマンの男と、言葉を発しない少女とのエピソード。「ガイド」は女手一つで育てられた息子が母の仕事を助け、その中で成長する。この2つはなんというか、正統派にオチがついている感覚。 かつて長編ばかり読んでいた私は読書の師匠の女史に短編って何を楽しむものか、と質問、女史は「余韻です」と教わった。経験は降り積もり、キレの良さ、この作品たちのようなコンパクトなヘンさ加減や想像に委ねる部分も楽しめている。全部余韻に結局つながるのかとも思うが笑。 ふむふむ、と読める、たぶん小川洋子らしいコント集だった。
1投稿日: 2025.10.02
powered by ブクログ小川洋子先生の作品はいつも既存の型にはめられないものと向き合わせてくれる。その結果社会とそっと決別した人の生き方に心を痛めたり寄る辺なさを勝手に想像して落ち込んだりもするが、この短編集に掲載された作品はどれも登場人物のマイノリティ性を肯定してくれているように思えて清々しい読後感だった。
0投稿日: 2025.09.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
不思議な雰囲気の話が続く。 特に気に入ったのは 「銀色のかぎ針」と「ガイド」 特にガイドの題名屋のおじいさん。 名もない出来事や思い出に名前をつけることで、そのことをより鮮明に覚えることができる。 楽しかったり切なかったり辛かったことも、知らない間に通り過ぎて過去になってしまうから。 覚えたいことには名前をつけると、綺麗に思い出の引き出しにしまっておけて、取り出したい時に取り出して浸ることができるんだろうなぁ。 ただの日常でもそれは振り返れば幸せな思い出なのかもしれない。わたしも日常から、幸せを見つけてたくさん覚えていたいな。 おじいさんと少年のやりとりにとても心が温かくなった。
0投稿日: 2025.09.21
powered by ブクログ『海』読了。 海に行きたくなったからか、夏っぽいタイトルの本だなあと思って買って読みました。 小川洋子さんは記憶にないくらい昔(小学生とか中学生ぐらい)に読んだきりだったので初めましてに近い状態で読みました。その当時は『博士が愛した数式』が流行っていたからと言う理由で読んでみたが幼すぎて難しく感じてしばらく勝手に嫌厭していたけど、、、すごく美しいとしか言いようがない短編集でした。なにを食べたらこんな美しい文章が綴られるんだろう… 表題作も良かったけど「ガイド」が良かったな…少年とおじいさんの不思議な関係性がとても素敵だった。なんだろう、見えない何かで繋がっているような感じ。そして「銀色のかぎ針」今は亡き人見えない誰かを思って編み物をしたりもよかったな。。。夏の情景が浮かびました。 すごく薄い本なのにこんなにも満たされるなんてね。素敵な本に出会えてよかった。また『博士が愛した数式』を読んでみようかな。 2025.7.20(1回目)
9投稿日: 2025.07.20
powered by ブクログ小川洋子の書くお話ってどこかすいすいと夢を見ているようなんだけど、最後のインタビューに「短編は短い妄想」と書いてあって安心した。妄想は最も自発的で積極的な夢といえるからね。「そこにしか居場所がなかった人たち」。そういえば『猫を抱いて象と泳ぐ』もそうだったな。 本当に小川洋子は均衡感覚に優れている。本書でもそう感じさせられた。生と死、理性と感性、温かさと冷たさ、それぞれが拮抗しているラインのたったひとつの交点にその小説がある。それより少し右でも左でも上でも下でもない。文字数もこれ以上多くも少なくもない。この完璧主義的でさえある小説を、なんというか無意識的に書いてそうなところがますます恐ろしい。 「バタフライ和文タイプ事務所」がお気に入り。エロチックとギャグチックってほんの紙一重のところに位置していることを改めて感じさせられた。小川洋子のお話は、景色だけじゃなくて人の顔とか仕草まで、情景があまりにもありありと浮かんでくる。その夢はいつもなんだか切ない。
1投稿日: 2025.05.05
powered by ブクログ短編集。 「バタフライ和文タイプ事務所」は『薬指の標本』の結末と重なるような展開で毒気と淫靡さがあってよかった。
1投稿日: 2025.04.28
powered by ブクログ様々な物語が収録されているが中でも私がオススメしたいのが『ひよこトラック』 初老のドアマンが元々住んでいたアパートの大家と揉め事になり引っ越す事から物語が始まってゆく、 海老茶色の屋根に煙突が一つある家に住む事になった。 そこには七十の未亡人と無口な少女が住んでいて、1年前に少女の母が亡くなり未亡人が娘の引き取り同居していた。 無口な少女と初老のドアマンが関わっていく中で化学変化が起き、今まで無口だった少女が最後にドアマンにあるプレゼントを贈る。それは読んでからのお楽しみ♪
2投稿日: 2025.04.19
powered by ブクログ全体的に死の気配がなんとなくするのが好きです。強烈じゃないところがまた。ちょっと不思議でやさしくてうつくしくて切ないお話が多かった。あとエロス。とくに好きなお話は「ガイド」「ひよこトラック」「缶入りドロップ」です。自分の思い出に題名をつけてもらうのはわたしもやってもらいたいと思いました。
0投稿日: 2025.04.13
powered by ブクログ短編集。どの短編も生活との地続き感と小川ワールドのスパイス感が絶妙でどれも残る。活字管理人とか元詩人とか鳴鱗琴とか、どれも惹かれるワードじゃない??鳴鱗琴とか聞いてみたいしどんな音色か想像するの楽しい。私は活字管理人がしたい。
3投稿日: 2025.01.31
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
小川洋子さんの本、大好きなんだけど、きちんと受け止めることができないときに、自分にとってもガッカリするので、読み始めるのに勇気がいるのだが、この短編集はどのお話もそれそのものにもどっぷり浸かれるし、その奥にあるものを手にできそうな感覚がたまらなく良かった。
3投稿日: 2024.10.17
powered by ブクログ子供の頃、月を眺めながらいつまでも眠れなかった夏の夜を思い出した。たくさんの人のもう戻らない思い出がたくさんつまっている。
1投稿日: 2024.09.03
powered by ブクログ風薫るウィーンの旅六日間 ひよこトラック ガイド が特に好きだった。 共通点として、年齢差のある登場人物たちが偶然の出会いで心を通わす。 一生懸命お互いに歩み寄ろうとする感じがあたたかい。 また、閉じられた空間だからこその親密感と、どこかに、永遠には続かないんだろうという切なさもある感じが、とても小川洋子さんぽい。
5投稿日: 2024.08.24
powered by ブクログ夢か現か分からなくなる感覚を味わえる文体の作家はそこまで多くない。言葉にならない思いを文字として示し、徐々に空想に浸らしてくれる。 作者久々の短編集はそういった現実で起きているにも関わらず、どこか現実ではない空気感が魅力の物語で、浮遊感を感じた。 表題作『海』、『ガイド』や『風薫るウィーンの旅六日間』等、年齢差を超えた関わり合いはどこか滑稽で、あまりに魅力に満ちている。もう今はない失われてしまった日常を描く作家小川洋子さん、まだまだ読み続けていきたい。
3投稿日: 2024.07.15
powered by ブクログ動物のドキュメンタリーを見なければ眠れない「小さな弟」と海風を受けて初めて音が鳴る鳴鱗琴。表題作「海」を含めた短編7編すべてに散りばめられた小川洋子さんらしい美しい文章が胸に残りました。
0投稿日: 2024.05.04
powered by ブクログ静かで奇妙な7つの短編。 他の作品同様小さな世界や特殊な人たちの描き方が独特。 知らない世界でも実は既に知っていたんじゃないかと思うほど目に浮かんでくる。 著者へのインタビューも充実。 過去の作品の話も知ることができうれしい。
2投稿日: 2024.02.17
powered by ブクログお気に入りの章は 『鳴鱗琴』 『バタフライ和文タイプ事務所』 『缶入りドロップ』 『ひよこトラック』の4章。 どのタイトルも素敵。 普段ボーとしてるときについつい考えたり、ひらめいたりする。でも、自分の頭から外部に出すにはためらってしまうような世界で溢れていて読んでいて心地よい。外で読むにはそわそわする。そんな短編集でした。
1投稿日: 2023.12.24
powered by ブクログ海 小川洋子 読み切り易い。 小川洋子作品デビューにはお勧めしやすい。 官能描写における上品な妖艶さは美術作品に近しい印象を受ける。
0投稿日: 2023.12.03
powered by ブクログどれも印象に残る短編集。好き。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 恋人の家を訪ねた青年が、海からの風が吹いて初めて鳴る〈鳴鱗琴(メイリンキン)〉について、一晩彼女の弟と語り合う表題作、言葉を失った少女と孤独なドアマンの交流を綴る「ひよこトラック」、思い出に題名をつけるという老人と観光ガイドの少年の話「ガイド」など、静謐で妖しくちょっと奇妙な七編。「今は失われてしまった何か」をずっと見続ける小川洋子の真髄。著者インタビューを併録。
0投稿日: 2023.09.21
powered by ブクログ海 風薫るウィーンの旅六日間 バタフライ和文タイプ事務所 銀色のかぎ針 缶入りドロップ ひよこトラック ガイド 不思議な感じがするお話し
0投稿日: 2023.07.31
powered by ブクログ素敵な短編集。 一つひとつの作品世界に引き込まれていきますよ。 「たとえ一瞬でも自分のことを思い出してくれる人がいるなんて、うれしいじゃありませんか。」 本も同じで、私のなかにまた素敵な言葉と物語、作者の想いが刻まれいつでも思い出せる幸せを感じさせてくれました。 ぜひ〜
3投稿日: 2023.07.23
powered by ブクログすべて不思議な短編、 海 バタフライ和文タイプ事務所 銀色のかぎ針 缶入りドロップ ひよこトラック ガイド
0投稿日: 2023.06.27
powered by ブクログ小川洋子さんの短編集を読むのは「妊娠カレンダー」「薬指の標本」に続けて3作目。 最近は小川さんの長編を続けて読んでいたので、箸休め的に読めるものがいいなと思って、書店で何の気なしに手に取ったこの本。 結果として私にとってはとても大事な、何度でも読み返したい本になった。 優しいけどどこか不穏、官能的なのにちょっと笑える、切ないのにどこまでも穏やか。 忘れていた色んな感情を思い出させてくれる、そんな物語のアラカルト。 今の私にはぴったりな作品だったように思う。
1投稿日: 2023.06.11
powered by ブクログ小川さんの作品は、ほっこりの中にほんの少しの毒が入っていて、それがクセになる。その少しの毒が、切なさや不気味さ、可笑しみだったりする。 7つの短編のうち「風薫るウィーンの旅六日間」がお気に入りで、くすっと笑ってしまう毒がしこまれてました。 言葉の組み合わせに透明感があり、その美しさにやられました。特に「ひよこトラック」の夜明け前の表現が大好き。 【闇が東の縁から順々に溶け出し、空が光の予感に染まりはじめる。】 ステキです!
6投稿日: 2023.06.04
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
『海』 小川洋子/新潮文庫 . 短編集。 . 題名の鳴鱗琴奏者である恋人の弟話を筆頭に不思議な雰囲気の短編。 タイプライターの話は言葉遊びをされていると感じた。
1投稿日: 2023.05.28
powered by ブクログ優しい。ありそうでどこにも無い不思議な世界で、人々は誰かと会話する。一つしかない楽器を持つ義弟だったり、言葉を話せない少女だったり。いいな、夢に出てこないかな、こんな世界。個人的には「ガイド」が一番好きだった。題名屋のおじいさんに題名をつけてほしい。
1投稿日: 2023.05.19
powered by ブクログひよこトラック 40年間町で唯一のホテルのドアマンとして働いてきた初老の男性と言葉を失った6歳の少女との交流 あとがきより 小さな場所に生きている人を小説の中心にすえると、物語が動き出す感じがする。 ひとつ世代が抜けている者同士のつながり 年齢を重ねた人は死の気配、匂いを漂わせ、若い人は現実の生々しさを発信している。そのふたりの交流はダイナミックなものになる ほのぼの感も盛り込みつつ、気味の悪さや残酷さといった、どこか死を連想させる差し色を量を加減しながら作品の中に必ず混ぜ込む。死は生に含まれている。今笑っている自分のすぐ隣にも死がある。
0投稿日: 2023.04.27
powered by ブクログ「ガイド」が好き。 巻末のインタビューと解説を読んで、ああ確かに「バタフライ和文タイプ事務所」はコメディーだなあと思う。多分またあれが読みたいなあってこの本を思い出すきっかけになる一遍だった。
1投稿日: 2023.04.10
powered by ブクログいずれの作品も詩を読んでいるような錯覚を覚える。純文学なのにこれだけ引き込まれる作家はいないと思う。
0投稿日: 2023.03.05
powered by ブクログたとえ一瞬でも自分を思い出してくれる人がいるっていいね。外の世界で自分の存在を感じられる瞬間だと思う。 私の人生にも題名をつけて欲しいな
0投稿日: 2023.02.20
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
短編5つ掌編2つ、184頁。この長さ、気負わず楽しめた。 2006年単行本発行。もう少しで20年経つというのに古さがない。スマホはなくても違和感皆無の小川ワールド。 一人ホテルステイのために数冊持参した中でホテルのカフェエリアで読むのに最適な一冊でした。ゆるゆるとした思考の波に漂いながら読み終えました。 「海」 なさそうでありそうな楽器、鳴鱗琴(メイリンキン)、欲しい。 「風薫るウィーンの旅六日間」 「こんな旅の同行者は嫌だ」が穏やかに描かれている…。 「バタフライ和文タイプ事務所」 本書の個人的No.1。タイプライターってパソコンにはない哀愁を備えているなぁ。ひんやりした感じが良い。小川さんの文字に対するこだわりも見えて面白かった。 「銀色のかぎ針」 「缶入りドロップ」 どちらもほんわかした。 「ひよこトラック」 ひよこが積まれたトラック、虫の抜け殻、ドアマンの男と6歳の女の子。慣れ合わない2人の距離感、お互いを尊重している交流の方法はとても居心地が良さそう。 「ガイド」 ママの仕事を手伝う良い息子。『博士の愛した数式』を思い出しました。 著者へのインタビュー 「誰が書いたかなんてこともだんだん分からなくなって、最後に言葉だけが残る。」(P168)という小川さんの理想、その姿勢、潔さがたまらなく好きです。 『ことり』や『博士の愛した数式』が好きな人にはぜひお勧めしたいです
1投稿日: 2023.02.19
powered by ブクログ小川洋子の本って、他にない読み応え 10年以上積んどった本を手に取ったら引き込まれました。 どう進んでいくんだろ、という怖さあるけど、ホラーではないし、読む人にゆだねられてるのを感じる 押し付けられてる感じがしない。 不思議に心地いい ブラフマンの埋葬とともに大切な本になりました。
0投稿日: 2023.01.05
powered by ブクログ著者独特の世界観に浸れた。 あとがきに著者の作品では年の離れた登場人物の交流が描かれることが多いと合ったが、この短編集もそうで、その交流が確かに面白い。
0投稿日: 2022.12.13
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
一番初めの表題作が最も印象に残っている。 海風によって鳴ることのできる不思議な名前の楽器と表紙の海のブルーが合わさって、海の中にいるような静謐さと美しさを感じた。
5投稿日: 2022.10.23
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
短編集形式。 ★バタフライ和文タイプ事務所:が最高だった ・あとがきの後の講評を記載していた人も唸っていた内容で、タイプライターの活字を介して顔の見えない活字の管理人?職人?への慕情を伝えている表現が堪らなかった。 ・「ことり」もそうだが、小川洋子さんの作品の中でも「言葉」や「コミュニケーション」について扱っている作品は、登場人物の会話などが少ない分、それ以外の描写がとても丁寧で、言葉の豊かさをたっぷり味わえる感じがして、読後の満足感がある。 ・どの作品もちょっと変わったチャーミングな登場人物が出てくる。最初のヨーロッパ旅行のおばあちゃんの話も素敵。
1投稿日: 2022.07.30
powered by ブクログ小川洋子さんの短編集。 短編とは思えぬ小川洋子ワールドに浸った。 多くのお話は、主人公が、少し不思議な人たちと交流する。 その交流を通して、主人公の心が少し豊かになる。読んでいる私の心も、あたたかくなるような、少し広がったような、そんな感じがした。 ラフスケッチみたいな3ページ程度の短編も2つ入ってる。 幼稚園バス運転手のドロップのはなしは、ちょっと泣きそうになった。 「ひよこバス」もそうだったけど、大人の男性が子供に向ける優しい眼差しって、心に沁みる。 中年以降の男性が子どもに優しい場面って、多くは父と子、祖父と孫くらいのもので、他人が幼い子を尊重して、こっそり優しくすることって、実は貴重な場面なのではないだろうか。 「ガイド」の少年の頼もしさにも、母の気持ちになって涙腺が熱くなった。 息子を心配して家に一人では置いとけない!と思う母が、息子に助けられている。 親って、そうなんだよ。この話では、息子はまさに大活躍したわけだけど、別に活躍しなくても、子どもがいるだけで親は救われて励まされて支えられているんだよなぁ…なんて思いながら読んだ。 私の中にたしかに存在するのに、気付いてない、もしくは忘れそうだった気持ち、思い出させてもらいました。
8投稿日: 2022.07.15
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
海が眩しい季節になったので選んだ 小川洋子作品はエッセイに次いで2作品目 出てくる子ども達の愛らしいこと! 『海』義理家族との居心地が定まらない感じ 泉さんの年の離れた弟さんとその後の交流はどうなるかしら 『風薫るウィーンの旅六日間』観光できない「私」に気の毒さを感じながらも、どういう結末なのか読み進めた。「そこに立ち会った者だけが引き受けなければならない種類の、痛みがあるようだった。」そうそう、わかるわかると頷いていた。結末は えええ!と前を読み返してしまった。 『バタフライ和文タイプ事務所』文体、会話、漢字だけでこんなに妖艶なるとは! 倉庫の管理人の彼、欠けた活字を埋葬する小箱を手作りするなんて素敵すぎです。「手を焼かせる活字の方が、情が移っていとおしくなるくらいです。」使っていない脳のいろんな場所が活性化されるよう。 『銀色のかぎ針』「編み物をする人はいつでも、自分以外の誰かのために何かを編んでいる。」確かにそうですね! 『ガイド』困ったとき助けてくれる小母さんみたいな存在になりたい。ママの仕事に対する「僕」の敬意に癒される。素敵な旗ができますように。
13投稿日: 2022.07.02
powered by ブクログ“そこにしか居場所がなかった人たち”の 静謐で妖しい7つの短編集。 この本、巻末のインタビューと解説がすごいのだ。 小川さんの作品になんとなく惹かれてやまない、 が、なぜ惹かれるのかうまく言語化できない、 という人(まさに私)は、 ぜひ巻末にいっそう力を入れて読んでほしい。 「それです!!」ってなるので。 “気味の悪さや残酷さといった、 どこか死を連想させる“差し色”を適量混ぜ込んだ、 暖色一辺倒でない作品” それです!! “空想の核となる設定や物体の周りに、 文章が結晶して成長し、完成したもの” うおお、それです!!! とまあ、少々ずるいが、 インタビューと解説から抜き出すだけで 最強の感想文ができてしまう。 それだけこの7編が小川さんの作品の魅力を 凝縮したものだからこそ、なせる巻末なのだろう。 小川さんファン、ビギナー(私イマココ)、初読の人にも ぜひ読んで欲しい作品だ。 各人より深みにハマれることでしょう。 このまま巻末抜粋ばかりしていると 全く自分の感想文にならないので、 読んで思い出した 個人的な経験を書き残しておきたい。 少し前に夢を見た。 雨音を鳴らして外を歩き回る 音楽隊に入る夢だった。 雨が降ると5人くらいで1列になって、 それぞれに奇妙な道具を抱えて その日の雨にふさわしい音をたてながら 路地をくまなく歩き回る。 変なんだけど、 多分ないんだけど、そんなものは、 妙に具体的でリアリティがあって、 その存在を信じてしまうような空想。 (実際夢の中の自分は 音楽隊に抜擢されたことをだいぶ喜んでいた。) そんな夢とこの作品はすごく似ていると思った。 知る人ぞ知る、聞いたこともないような秘匿事実 (例えば鳴鱗琴、活字管理人、題名屋)が、 どこかに本当にあると感じさせるような 緻密な設定、丁寧な描写がやっぱりすごい。 それらは隠されているものだから、 ささやかで小さくて、 世界のすみっこにあるんだけど、 その周りには 自分と同じ地べたの人間の生々しい生活があって、 地味だけど力強くて魅力的だ。
4投稿日: 2022.02.23
powered by ブクログガイドが一番好きでした。 個人の思い出に題名をつけてくれるだなんて、なんて理想的なお店、、ぜひ行きたい。
4投稿日: 2022.02.22
powered by ブクログだいぶ古い本ですが、読んでいなかったので手に取りました。 短編集です。 私としては、タイピストを抱える会社の話が印象的でした。 タイプライターのだめになった文字を管理する人、その管理人に恋心を抱くタイピスト、ダメになった文字を含んだ文章・・・ ぎょっとするような文章も、タイピストはすました顔でタイプし続けるのです。 仕事ですから。
2投稿日: 2022.01.03
powered by ブクログ静かに話が進んでいく短編集。 読後もやっとする話が八割を占めていた。 不器用な人が頑張って他人に合わせようとする様になんともいえない居心地の悪さを感じた。 著者作品初読。
0投稿日: 2021.12.24
powered by ブクログ短編が7つ。どの話も好きだけど、私が一番、好きなのは「ガイド」です。働きながら子育てする全てのお母さんを応援しているようなお話ですね。「ひよこトラック」と「缶入りドロップ」も好き。心優しいおじさん?おじいさん?が世の中に増えるといいな。
2投稿日: 2021.09.21
powered by ブクログ情景描写が綺麗な本を読みたくて、繊細な文章を書く作家、とGoogle検索してヒットした作者。さっそく本屋に行って1番初めに目について手に取った本。読んでみて、ヒット上位になるのが納得の本だった。前知識で小川洋子さんの作風は透明感や美しさがありながら、どこか不安で残酷な特徴があると聞いていて、「海」「銀色のかぎ針」は正しく幻想的で綺麗で繊細な話だった。「ひよこトラック」は不安で残酷な特徴、という部分が顕著にあった。話全体でみたら温かい気持ちになるのに、綺麗な情景描写の中に、ひよこの行方の部分や虫や蛇の抜け殻など不穏な、ザワザワした雰囲気が急に出てきて、これか…と皆が言う小川洋子ワールドを少し体感できた。その他にも「風薫るウィーンの旅六日間」「缶入りドロップ」はクスッと笑えたり、「バタフライ和文タイプ事務所」なんかは、最後の展開に思わず「えっ」と声が出たし、2、3回ページをペラペラ読み返しても最終的に官能小説に移行してて、新しいタイプのアハ体験した気持ちになった。短編集だったけど、密度の濃い大満足な本。
1投稿日: 2021.08.30
powered by ブクログいい意味で、不揃いな短編集。短いものはわずか3頁。 全7編 海/風薫るウィーンの旅六日間/バタフライ和文タイプ事務所/銀色のかぎ針/缶入りドロップ/ひよこトラック/ガイド 小川作品はまだあまり読めていなくて、たぶん映画化もされた「博士の愛した数式」以来2作目だと思うのだけれど(私にとって;注、)あらためて、すごくすごく妄想の世界で時間を過ごしてきたひとの生み出す文章だとおもう。不思議で優しい世界を創り、覗くことができるかんじの。すこしへんてこで、思いやりがある、どこにでもいそうでいない、架空のいきもののようなひとたちが住んでるもうひとつの世界、そんな印象が残る。空想好きさんにはおすすめな1冊。
0投稿日: 2021.08.11
powered by ブクログ久々の小川さん。3ページほどのごくごく短いものを含む短編集。小川さんの小説は、通常なら出会わないような組み合わせ、親しく交わらないようなペアが主人公で、どこにでもあるような、同時にファンタジーのようなお話しで不思議な読後感。言葉が頭だけでなく心にも届く感じで、ちょっとさざなみが起こる。どんなに凪いだ海でも、必ず水面に揺れがあるように、嬉しくても悲しくても不思議でも普通でも何かしらの動きがある。それを見逃さないようにしたいなあ。今回の短編集には珍しく官能的な物語もあるので小川ファンは必読。
0投稿日: 2021.07.15
powered by ブクログ短編は短い妄想だと、著者インタビューに書いてあり、その果てを知らない妄想には、私の想像力など全く及ばない。だから、ついつい読み耽ってしまう。 「海」というタイトルを見て、こういう話ではないかと、なんとなく想像してみたが、かすりもしないのは、そりゃそうであって、小川さんの述べる「その世界でしか生きられない人たち」を、「そうではない人」と触れ合うことで生まれる物語は、おそらくささやかな出来事であっても、お互いにとって、大切なものになったのではないかと思ってしまう展開が素晴らしくて、「ひよこトラック」の中年のドアマンと無口な少女もそうだし、「ガイド」の僕と題名屋の老人もそう感じました。ガイドは、タクシーの運転手も良い味出してて好き。 また、それとは別に、「風薫るウィーンの旅六日間」の終わり方がまた印象深く、ものすごく厳かな雰囲気の中に、突如訪れるコメディ的な要素が、何とも言えない感じで良かった。まさかと思ったけれど、これはこれで良かったよねって。 そんな他の人にとって、どうでもいいようなところにも目を向ける小川さんの人柄は、インタビューを読んでもすごく興味深く、下記の言葉が特に心に残りました。 「たとえ本というものが風化して消えていっても、耳の奥で言葉が響いている・・・そんな残り方が、私の理想です」
21投稿日: 2021.07.03
powered by ブクログいろんな短編集。すごく短いのもあったり。でもそれぞれの世界観が好きだなあと。ガイドをしている母と息子と老人の話、缶入りの飴をポケットにしのばせる幼稚園バスの運転手の話、和文タイプの話が中でも好きだった。小川さんは日常の断片を物語にするのが上手いなと思う。そこかしこな落ちていそうな小さなものを組み上げてまぶしい物語にするのが上手い。尊いものになる。
1投稿日: 2021.06.06
powered by ブクログ喫茶店で一度読んだことがきっかけで購入、何度か読みましたが、お話一つ一つは短いながら引き込まれる作品でした。
2投稿日: 2021.05.15
powered by ブクログ短篇集。表題作は“小さな弟”の楽器が儚く美しい雰囲気で、波の音が聞こえてきそうだった。『風薫るウィーンの旅六日間』は喜劇的。しんみりする場面が、ある一言で可笑しさに変わった。『バタフライ和文タイプ事務所』は官能表現を楽しめた。『ひよこトラック』はどうにも言葉にできない。『ガイド』は、観光日和に川下りを楽しめるのかと思いきや、そうもいかなかった。不穏な観光名所が現れるのもまた一興。他掌編二作。
1投稿日: 2021.05.08
powered by ブクログ短篇7つ。 この短篇群でも、小川洋子さんの世界が広がる。 じゃあ、「小川洋子さんの世界とは?」と聞かれても、言葉にできないのである。 ある種の静けさ、ある種のはかなさ、ある種の美しさ、いろいろな面を一文にもっているのである。 表題作「海」では、「めいりんきん」という不思議な楽器と恋人の弟の話。 お気に入りは、「バタフライ和文タイプ事務所」「缶入りドロップ」「ガイド」である。 特に、「バタフライ和文タイプ事務所」は、単に「すごいなぁ」という読後感しか出なかった。タイプライターの一文字から、こういう世界観を生み出せるのは、すごいとしかなかった。 「海」 「風薫るウィーンの旅六日間」 「バタフライ和文タイプ事務所」 「銀色のかぎ針」 「缶入りドロップ」 「ひよこトラック」 「ガイド」
1投稿日: 2021.04.25
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
妖しさや奇妙さのある物語が七編収録された短編集。 一つ一つの物語に登場するキャラクターが魅力的でとても好きだった。 歳の離れた人物同士が関わり合いを持つ物語たちに、不思議なわくわく感を抱いた。 『海』では鳴鱗琴(メイリンキン)という作者が創作した楽器が登場するが、それはとても美しく、まるで本当に実在するように思えた。 ラストの主人公の行動が余韻を与えてくれてとても好きだった。 また、主人公にとって「唇」が特別なものであるように見えた。 『バタフライ和文タイプ事務所』では、三階の倉庫にいる活字管理人に会うために、「膣」の文字を傷つけ、持っていく主人公がとても良く、官能的なあやしさを感じた。 管理人が指先で文字をなぞる描写は艶かしく、主人公の欲望が匂い立つようだった。 『ガイド』で登場した「題名屋」、『バタフライ和文タイプ事務所』の「活字管理人」など、小川洋子作品特有の職業がとても好きだ。 現実には存在しないのだろうけど、もしかしたらあるのかもしれないと思ってしまうくらいの生々しさを感じる。 それぞれの物語は短いものだが、魅力が詰まった本だった。 お気に入りの一冊となった。
1投稿日: 2021.01.07
powered by ブクログラジオ深夜便 文芸館朗読「ひよこトラック」 心を寄せれば年齢や立場が違っても 言葉がなくても通じるということを 言葉で表現している小説 映像がなくても通じる 心と耳で聴く朗読ならでは 言葉がいきる
0投稿日: 2020.11.23
powered by ブクログ道徳の時間に出てきそうな話が多い。 めちゃくちゃ軽めな味付けだが『バタフライ和文タイプ事務所』みたいに淫靡な作品もあったりする。
0投稿日: 2020.06.16
powered by ブクログどこかの国の誰かのおはなし 誰が書いたかもわからないけれど 人から人へと語り継がれる 作家本人もどこかで述べていた、 不思議で懐かしくて安心する 生々しくてざわざわする そんな短編たち
0投稿日: 2020.05.05
powered by ブクログスポットライトを浴びるような華やかな場所ではなく、世の中のどこかでひっそりと、ささやかな居場所とか仕事を持つ人の人生の一コマに、優しくそっと光を当てたような7つの短い物語。小川洋子さんの物語は決して俗に言う「泣ける」のを狙って書かれたものではないと思うのだけど、読むと理由もわからず泣いてしまう。表題作の『海』に出てくる架空の楽器〈鳴鱗琴〉は海からの風が吹くと鳴るというのだけれど、この本を開くと私の胸を震わせ響かせるなにかが押し寄せてくるのを感じてやまない。 どのお話しも好みだけれど、『ひよこトラック』はボロボロ泣けてしまった。一番最後の『ガイド』はどことなく『博士の愛した数式』を彷彿とさせるような深い余韻が残る。
1投稿日: 2020.04.26
powered by ブクログとても不思議な世界なのに小川洋子さんの作品は本当に温かいです。疲れた時や安心したい時によく読む本です。
0投稿日: 2020.03.04
powered by ブクログ何年も前から読みたいなと思っていて、結局読んだんだか読んでないんだな分からなくなってしまい賭けで購入。 読み初めて読んでたかもと思ったけれど本棚を探しても見つからない。 これは一体どういった現象なの、と考え込んでしまいそうになるミステリアスな作家さん。
0投稿日: 2020.02.24
powered by ブクログガイドという短編小説が好き。 「あなたの人生にタイトルをつけるとしたら?」というシンプルな問は人生の指針を見つけるのに役立つかもしれない。 この問はある中学校の受験問題らしく、電車の中吊り広告に載ってた。 広告に誘導されたの久々だなー。
0投稿日: 2020.02.06
powered by ブクログ「小川洋子は幻想文学の書き手だ」と、これでやっと得心がいった 学生時代に読んだときはその物語の掴めなさに、不鮮明なシルエットに、やりきれない読後感に、文学少女かぶれだった私はついていけずに不可思議な気持ちにさせられたものだ だが、それらの不可解さが今更ながらやっと繋がったのである そう、小川洋子は幻想文学を書いていたのだ、と 筆致はあくまで冷静で現実的で、どこか味気なくすらあるのだがそれらはすべて計算されたうえでの「幻想」だったのだ 日本女性作家独特の湿り気はありながらも、どこか異文化を感じさせる欧米作家のような素っ気なさを共存させている それが小川洋子なのだ どこか一歩間違えれば、村上春樹氏のようなどこか異界へと繋がる舗装された道路をさまよう気分になるような世界観でありながら、小川洋子の世界観はいうなれば獣道だ 人間もけものも平等に歩くことを強いられる地続きで不可侵の道なのだ そんな感覚を、私は今更ながら実感させられた 「海」異質さも何もかも、受け止めないでいいから、ここにいることだけを気付いてほしい。 「風薫るウィーンの旅六日間」間違っていてもいい。それが正しい。 「バタフライ和文タイプ事務所」官能、感応。 「銀色のかぎ針」この心に残ったものだけが真実。 「缶入りドロップ」ほんの少しの思いやりだけでいい。それがいい。 「ひよこトラック」本質はそう、すぐそばにある。 「ガイド」今回の博士の愛した数式枠。
2投稿日: 2020.01.20
powered by ブクログ七つの短編集。どの短編集の主人公もどこにでもいそうな人。でも他の登場人物にはどこかしら奇妙で不思議な人がいたのが魅力だった。物語全体は、ほのぼのとしてる一方で、毒を含む鋭い視点で人の心の機微が描かれていた。人が心の底でふと抱くような相手を突き放すような冷めた思いも描かれる一方で、結局は相手に親切にしてしまうような人の心の温かさが描かれていた。「海」「風薫るウィーンの旅六日間」「バタフライ和文事務所」「ひよこトラック」が心に残った。「ガイド」の中で題名屋が言った「ありふれた言葉にこそ、真実が宿っているんだ」という言葉には心をつかれた。私はありふれた言葉をどこか軽視してしまうから。
0投稿日: 2020.01.09
powered by ブクログ短編集。『ガイド』がダントツで好み。思い出に題名をつけるという老人と観光ガイドの少年の物語。 「題名のついていない記憶は、忘れ去られやすい。反対に、適切な題名がついていれば、人々はいつまでもそれを取っておくことができる。仕舞っておく場所を、心の中に確保できるのさ。生涯もう二度と、思い出さないかもしれない記憶だとしても、そこにちゃんと引き出しあって、ラベルが貼ってあるというだけで、皆安心するんだ」(本文より)
0投稿日: 2019.03.25
powered by ブクログ平凡に見えて実は凄い人達の味わい深い7つの人生の物語集。『海』海風が吹くと鳴る楽器「鳴鱗琴」の音を聴いてみたい。『風薫るウィーンの旅六日間』異国の地へと昔の恋人の老人を訪ねた老女・琴子さんの珍体験。『バタフライ和文タイプ事務所』漢字を愛する活字管理人さん。『銀色のかぎ針』編み物が得意だった祖母の思い出。『缶入りドロップ』ベテランのバス運転手の裏技。『ひよこトラック』ドアマンの男と物言わぬ6歳少女との心の交流。『ガイド』熟練ガイドの母親と不完全なシャツ屋の小母さんと思い出に名を付ける題名屋さんの心温まる話。
0投稿日: 2019.01.23
powered by ブクログ妙にリアルで、でも実際はどこにもないような風景ばかり出てくる。 個人的に印象に残ったのは鳴鱗琴という楽器と、杖をついた題名屋が言った『思い出を持たない人間はいない』という言葉。
1投稿日: 2018.12.06
powered by ブクログ小川洋子さんの短編集。現実味のある世界の中でどこか幻想的な要素が自然に馴染んでいる。「題名屋」「活字管理人」「鳴鱗琴」など、どれもありそうでないが自然な響きで、スッと読めました。
0投稿日: 2018.11.27
powered by ブクログさらさらと読めます。 静かで不思議な世界ですが、現実世界とどこか地続きの気がしました。この世の片隅に、本当にありそうな世界です。 「ひよこトラック」が一番好きです。トラックから溢れたひよこの色彩と、声を発した少女の情景が浮かびます。 「バタフライ和文タイプ事務所」も好き。小川洋子さんの手にかかると、官能表現はこうなるのか、と思いました。上品な言葉遊び。解説に、「薬指の標本」を思わせる終盤、とあって、そうか!となりました。また読みたくなります。 好きな短編集です。
0投稿日: 2018.04.23
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
4冊目。裏表紙にあるとおり、「静謐」という言葉が似合う小説ばかりで、それでいてしっかりと心に爪痕を残している不思議さ。 なかでも、「海」「ひよこトラック」の、人と人との距離感の優しさ、「風薫るウィーンの旅六日間」「ガイド」の不条理さは随一。取るにたりないもの、マイノリティ、無駄と言われてしまいそうなものに焦点が合い、それが美化されるわけでもなく、語らうストーリーがとても楽しいのだ。
0投稿日: 2018.02.04
powered by ブクログ7篇からなる短編小説。中には、2頁や4頁しかない作品が併録されている。凡てに共通する主題は”忘れ難い人の温もり”だろうか。 現代社会に於いて、これだけの温もりのある人物像はあまりみかけないだろう。自分がよければそれでよい・・広くても家族までだろう。大きな盛り上がりがあるわけではないが、どの作品も心温まる作品であることは違いない。
0投稿日: 2018.01.02
powered by ブクログ読めば必ず私のイマジネーションを刺激してくれる小川洋子。表題作以下7編から成る本作もそう。彼女がもちいる言葉のひとつひとつが大好きです。現実にはありそうにない話であっても、なぜか物語の光景はありありと思い浮かべることができます。 不思議な楽器「鳴鱗琴(メイリンキン)」が出てくる表題作も良いですが、私が特に気に入ったのは「バタフライ和文タイプ事務所」、「ひよこトラック」、「ガイド」。「バタフライ〜」の主人公は、和文タイプ事務所に勤める女性が興味を引かれる活字管理人。顔の見えない彼に妄想が膨らむ膨らむ。エロティックな妄想が滑稽なぐらい。「ひよこトラック」は、ホテルのドアマンを務める男やもめが、転居先の管理人の孫娘になつかれる。といっても、その少女は両親を亡くしてから言葉をいっさい発さない。子どもとの関わり方がわからず、黙ったまま過ごすようになった男と少女。「ガイド」は、母子家庭の少年が主人公。観光ガイドで収入を得る母親は、少年の都合などまるで無視。野球をしたかったその日もツアーに付き合わされる。そこで知り合った老人の職業が“題名屋”だという。 どれもこれも、小川洋子ならではの世界。引き込まれます。思い出を持たない人間はいない。心に残る言葉です。
0投稿日: 2017.04.28
powered by ブクログ初めて読んだ小川洋子作品。 勝手ながら、群ようこさんのような、 なんてことない日常が描かれているのかな と思っていましたが、もっと違う、 ありそうでない日常が描かれていました。 特に印象的だったのは、 タイプライターの事務所で働く活字管理人や 人の思い出に題名をつける題名屋、 へんてこなシャツばかり売るシャツ屋など、 ありそうで見たことない職業の人物たち。 作品を読んですごいなと思ったのは、 非日常的な要素が盛り込まれていながら、 まったくリアルじゃないわけじゃない。 それはきっと、登場する人々が、 それぞれの世界の中で、 リアルな世界の読者と同じように 悩んだり苦悶したりしているからだと思う。
0投稿日: 2017.02.16
powered by ブクログ軽いの読みたいな―と思って古本屋で買った。さらっと読める純文学読みたくて。 バタフライのタイプ事務所が面白かった。ただ、あからさまにあからさまなあれな話やのにインタビューが見当違いすぎてなえた。 ウィーンのもよかったかな。 缶入りドロップは国語の問題になっとるのを見たことがあったけど、ほのぼのしとっていいよね。 銀色のかぎ針は、作者があれやしめっちゃ地元の話やったけんふふってなった。
0投稿日: 2016.12.11
powered by ブクログ『題名のない思い出に名前を』 小さいものと、古いものが、交わる時。そこにどんな世界が生まれるのか。少ない言葉で紡がれる物語は、幾重にも重なって小さな海を作り上げていく。 美しいものはとても残酷で、温かいものはいつもここにはなかった。だけど、そこにしかいられない人々の生活は、外にいる人には触れることさえできないだろう。触れようとするかどうかも私にはわからないが。 言葉は意味よりも大切な何かを伝えているように感じた。海が青いだけでないように。
0投稿日: 2016.06.12
powered by ブクログ7編の中で好きだったのは、「風薫るウィーンの旅六日間」「缶入りドロップ」「ガイド」でした。小川さんの小説にはいつも変わった職業の人たちが出てきますが、この小説の中にもシャツ屋さんに題名屋さん活字管理人など面白い職業の方たちが登場します。小川さんの本を読むときは今回はどんな人たちが出てくるんだろうといつも楽しみです。
0投稿日: 2016.06.08
powered by ブクログ身体的欠損のある人物が出てこないぶん前回の短編集『まぶた』よりはマイルドに感じた。どっぷり浸かるには物足りないが、あのふわふわした読後感がなんども味わえるのは短編集ならでは。別々のお話ではなくどこか遠くの国の風景の切り抜きを集めた写真集のようだった。ただバタフライ和文タイプ事務所だけは女性を強く意識させる異色の作風で、それはきっと扱われる活字とですます調の文体のせいだろう。表題作の海と最後のガイドが好きで特にガイドで僕が男を迎えに行くところから涙ぐんで読んだ。
0投稿日: 2015.12.15
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
大好きな作家さんです。 彼女の言葉は沁み渡っていく感じがします。 鳴麟琴の音を聞こうと思わず耳をそばだてる自分。 ひよこトラックを見て、声をあげる少女と共に息をのむ自分。 和文タイピストと共に、ひそかな思いに身もだえする自分。 そんな風に本の世界にすっと導いてくれる、素晴らしい本・作家だと思います。
1投稿日: 2015.12.06
powered by ブクログ「ひよこトラック」と「ガイド」が好き。博士の愛した数式を思わせる、世代の離れた子供と老人とかの組み合わせが何かほっとする。どの短編も登場人物が、それぞれの物に一途で、奇妙な場面も不思議な魅力と感じます。
0投稿日: 2015.12.05
powered by ブクログ見えない空間を、言葉で捉えていくような物語。 ひとつのものをじっくり観察した先に見えてくる世界を描いているなあと。
2投稿日: 2015.10.17
powered by ブクログおなじみ、想像力のサーカス( ´ ▽ ` )ノ。 まあ、そろそろ幻想だけじゃ飽きるなぁ〜と思いかけてたところで、本書には現実にかなり沿った物語が増えていたんで良かった( ´ ▽ ` )ノ。 ガイドがいいな( ´ ▽ ` )ノ。 女流の人がよく書く話ではあるんだけど( ´ ▽ ` )ノ。 シャツ屋とか記憶屋とかは、はっきり言って邪魔な設定だったけど( ´ ▽ ` )ノ。 2015.4.15
0投稿日: 2015.04.15
powered by ブクログ「海」と「ひよこトラック」がすごくよかった。小川洋子さんの短編は露悪的じゃないのに、さらりととんでもない秘密を暴露されるような静かな尖りを感じるのですが、この短編集は比較的ユーモラス、そしてひたすら美しいピースが揃った短編集でした。「ひよこトラック」は結末じゃないところで泣きました。
0投稿日: 2014.12.23
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
なんとなく読みたい本が見当たらない時は小川さんに頼ってしまいます。 ひとつひとつのお話はつながっていないのですが、この収録順が素晴らしい。間で小休止のように入ってくる「缶入りドロップ」の優しさ、最後の物語「ガイド」の中での題名のプレゼントが また嬉しい。読後感も爽やかで、とても良かった。
2投稿日: 2014.11.08
powered by ブクログこういう本を評価している人が居るというのが、一番勉強になった。 熱を感じない。彼女には自分を削ってまで表現したいものがあるのかどうか。小説を書くために小説があるわけじゃない。個人的にはこれは致命的だと思う。おれは積極的に読もうと思わない。 ただし、アイデアは面白いし、表現も、あとひよこトラックの生理的なトリハダ感は尋常じゃない。 繰り返すが、惜しいのはそれが空っぽに感じられてしまうところだ。とはいえそれはおれの個人的な小説観。というわけで4個!
1投稿日: 2014.06.11
powered by ブクログどの作品もすごく素敵だったが表題作と風薫るウィーンの旅六日間・バタフライ和文タイプ事務所が特に好き。クスッとくる話から読者を物語の世界に引き込む話など、一冊でいろいろな見方が出来る話ばかり。小川洋子の文章の表現は上手い。読者を捕らえて離さない(良い意味で)
0投稿日: 2014.05.19
powered by ブクログ旅行用薄い文庫本。岡山行くので岡山出身小川洋子の短編集。瀬戸内の海に似合う小さな、でも豊かな物語たち。
0投稿日: 2014.04.13
powered by ブクログ和文タイプ・・・は 手元に置いて何度も何度も読みたい。 小川さんの聡明さが、短編の中にも 有り余るほどちりばめられています
0投稿日: 2014.03.07
powered by ブクログああワタシ、小川洋子さん作品の読者として初心者だなぁ。 と、あらためて思ってしまった。 お年始参りに親戚の家へ電車で往復約3時間。 その時にお供として持って出たのがこの本。 薄いし短編集だし、読むのが遅くてもほぼ読みきれるだろうと。 とんでもない。初心者ならではの誤算。 もう、一篇目の表題作『海』から、流れる時間がとてもゆっくりになった。 ゆっくりゆっくり、文字を追い、光景を思い浮かべ、気付けばその世界の住人になっている。 小さな弟の奏でる架空の楽器「鳴鱗琴」・皺くちゃの50シリング札・蝶のように活字を探す手の動き・きらきら光を反射するかぎ針・カタカタと鳴るドロップ缶・様々な抜け殻とふわふわひよこ・不完全なシャツ屋に、記憶の題名屋。 見た事のあるものも、見た事のないものも、すべてそこにある。 小川さんの書く世界は不思議だ。 「温かいのか冷たいのか、よく分かりません。心地よく温かいからか、あるいは逆にあまりにも冷たいからか、いずれにしても感覚が痺れてしまっているようなのです。」(80ページ) 以前から小川作品に感じていた温度はまさにこれ。 温かいような、ひんやりとしているような、でも振れ具合はどちらも激しくはなく、まるで人肌のよう。 時折、無性に、この体温のような世界に浸りたくなるのです。
16投稿日: 2014.02.04
powered by ブクログエロティックな表現から温かい眼差しまで、小川さんの魅力が満載の短編集だと思った。 朗らかだったり、静謐だったり、濃密だったり、懐かしかったり。 雰囲気は異なるし、筆致も多様だが、どれも「ああ、小川さんだ」としみじみ感じる。 人と人との関わり、その時間と空気を、大切に大切に慈しんで描いている感じ。
0投稿日: 2013.11.23
powered by ブクログ小川洋子氏の短編集。解説にもあるように多くの主人公は長い時間自分の小さな仕事の世界をひっそりと守り続けた人々。題名屋や活字管理人など不思議な職業でなかったとしても、職業というのは、その職業についていない人からはわからない謎の小世界を常に含む。たとえば、職人の手技、見たこともない道具の数々。短編小説一編ごとが小さな世界を含むように。若い頃一つの職業のワクに自分を嵌めて、その形の人間になりたいと願っていたのを思い出した。小さくとも自分の世界が欲しかったのかもしれない。どの世界も素敵だけれど、最も印象に残ったのはやはり表題作の海。小さな弟の美しい小世界。
2投稿日: 2013.09.30
powered by ブクログ小川洋子さんのように世界を見ることが出来たなら…。 見慣れていると思っている、聞き飽きていると思っている世界の中にはこんな物語がきっとあるんだ。 隣で耳を澄ませないと聞こえない音楽、声、言葉たち。 じっくり見つめないと見つけられない光、色、模様。 それはイヤホンを耳に突っ込んで歩いていては聞こえないかもしれない。 本から目を上げないと見えないかもしれない。 私は自分で目と耳を塞いでいるのかもしれない。 目と耳を塞いだままいったい何を探しているんだろう。 どこに向かって歩いているんだろう。 何も分からないままフラフラと迷って、時に開き直りながら歩いている。 そんな状態でよく歩けるものだ。 でも立ち止まっても周りの景色は動いている。 怖くて、焦って、急がなきゃなんて思って。 硬いものにぶつかって痛い思いをしないように。 汚いものを踏まないように。 そんなことを心配している。 この物語の中の世界は私の目に映る世界とは違うように思う。大切なものが。決定的に。 命は決して清潔ではない。 そして、こんなにも美しい。 この物語に書かれている人たちは特別に美しい存在ではないはず。 美しいことに条件なんてないのだ。きっと。
19投稿日: 2013.09.28
powered by ブクログ全体にやや軽めの短編集なのだが、例えば表題作「海」に登場する「鳴鱗琴」のように、随所に着想の煌きを見ることができる。しかも、それはキラキラ光るといったような煌きではなく、しっとりと、ほのかな輝きを見せるのであり、まことに小川洋子らしいのである。篇中では「バタフライ和文タイプ事務所」が秀逸。「睾丸」の「睾」が、この言葉だけのためにあるという発見も面白いし、「膣」の文字が、いつしか実態に変容してゆくかのような感覚に捉えられる幻妙さも実に巧みだ。巻末の「ガイド」は、残念ながらエンディングに余韻が乏しいか。
0投稿日: 2013.09.24
powered by ブクログ「博士の愛した数式」から小川ワールドに。色々な人間模様が7編。今回の作品集は現実にありそうであったらいいな・・。みたいな作品でした。最後の「ガイド」は博士と子供の関係によく似ている。今年の夏はクソ暑いにで避暑的清涼感を味わうには良い作品集だと思う。
0投稿日: 2013.08.11
powered by ブクログ小川さんの作品は、どれもこれも不思議な要素をもっているけど、何だか優しい。 それは奇妙なものを受け入れる寛容さがあるからだと思う。 そして文章には、静かでゆったりとした空気がいつも流れている。 短編集なので、少しづつ違った趣の妄想に浸ることができた。 特に「バタフライ和文タイプ事務所」のような、小川さん独特の官能的な世界が好きです。
15投稿日: 2013.08.10
powered by ブクログ2006年に刊行された小川洋子の短編集。「妊娠カレンダー」「夜明けの縁をさ迷う人々」に続いて、小川さんの短編の魅力にどんどん引き込まれていって、一気に読んだ。「夜明けの」が一編一編の長さが同じくらいで、それぞれが別個に同レベルの強烈な個性があった濃厚な印象なのに対し、本書はその表題の通り、静謐でどちらかというと透明感のあるような優しい作品が多くまた作品の長さもそれぞれであっり、この二つの本の対比が面白い。今回も登場人物達の職業が魅力的。また、この作品についての小川さんへのインタビューが最後にあったことで、より作品を味わうことができた。特に小川さんのインタビューの中で以下の答えにまた彼女とその作品たちの魅力を再確認した。 「彼らは、自分たちのささやかな世界>を守りながら生きている。私は子供のころ、顕微鏡を覗くのが大好きだったんですが、ちいちゃな世界の中に存在する果てのない世界にすごく魅力を感じていて、多分今も、小さなものに対する好奇心が捨てきれないでいるんだと思います。小さな場所に生きている人を小説の中心にすえると、物語が動き出す感じがします(p.163-164)」←小川さんの、世界の片隅で、どんな小さな仕事でもそれを誠実に丁寧に続ける人への視線の暖かさを感じる。 「あぁこれは小川洋子だな、って分かるような特徴や癖などはなくて、歴史的、時間的な積み重ねを経ながら、繰り返しいろんな世代にわたって読み継がれ、誰かが書いたかなんてこともだんだん分からなくなって、最後に言葉だけが残る。たとえ本というものが風化して消えていっても、耳の奥で言葉が響いている…そんな残り方が、私の理想です(p.168-169)」←謙虚さの中に記憶や失われていくものに対するこだわりを感じる。また、物語の普遍性を求めてるあたりがユング心理学的で興味深い。
1投稿日: 2013.07.14
powered by ブクログ一番好きなのは、バタフライ和文タイプ事務所。上質なエロスってきっとこういう事ではなかろうか?銀色のかぎ針も好き。小川洋子の作品は全て好き。
0投稿日: 2013.06.12
powered by ブクログすっかり小川ワールドの不思議世界に入ってしまいました。気持ち良いか悪いのかもはっきりしないです。が、やはり一気に読むのが心地よいのです。カラーひよこ好きなのはよーくわかりました(^^)
0投稿日: 2013.06.12
powered by ブクログバタフライ和文タイプ事務所、缶入りドロップ、ひよこトラックが好きです。静かでやさしい文章のなかに流されていくような感覚。
1投稿日: 2013.05.20
powered by ブクログ僕が読んだことのある、それほど多くない小川洋子の著作の中で、彼女は、いくつかのテーマを繰り返し描いている。 おそらくその一つは、小さなものを大事にする、ということだろう。 年端もいかない子ども、老い先の短い老人、金銭的価値の低いガラクタ、意味をなさない記憶。 華々しさも、仰々しさもない人や物のことを、どうして大事にするのか、論理的な理由など分からない。 しかし、何はともあれ、文章を通じて、描かれたそれらの人や物に心が惹かれてしまうとしたら、それはまさに、彼女が描こうとしたものを、彼女が描こうとしたように、受け取ることができたからだろう。 千野帽子が解説の中で、以下のように書いている。 「<見たこともない誰か>にもあった日常生活を、なんとしても、だれかが覚えていなければならない。忘却に対する執拗な抵抗の方法を、小川洋子は空想しつづけて、『密やかな結晶』を書き、『薬指の標本』を書き、『沈黙博物館』を書いて、そして「ガイド」を書いたのでした。」(P.174-175) どこかにきっと、あったかもしれない、人や物に対する想像力は、ある種の倫理を支える基になるんじゃないか。
0投稿日: 2013.05.02
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
久々に読んだ小川洋子さん。 お気に入りは『バタフライ和文タイプ事務所』、『缶入りドロップ』、『ガイド』です。 『バタフライ和文タイプ事務所』はすごい官能的で、でもどこかコメディチック。薄水色のシャツと手、声くらいしかわからない「活字管理人」に妄想が膨らみます・・・!「活字」と肉体が混同してきて、えろい・・・ 『缶入りドロップ』は優しい気持ちになりました。 『銀色のかぎ針』は珍しく地名がはっきりしててエッセイのような感じでした。自分の身近な土地や乗り物だぁと思ったら終わっていました(笑) 『ガイド』は、『博士の愛した数式』とは違うけど、おじいさんと少年っていう組み合わせがなんか好きででした。「題名屋」って素敵。終わり方が思いのほか優しかったです。 日本のような外国のような、どこかにある街で繰り広げられる人間模様。 本当にあるのかないのかわからない(たぶんない 笑)職業や、楽器が魅力的です。
6投稿日: 2013.02.11
powered by ブクログこれが小川洋子作品初読。ふわっとしているような、でもじわじわと心に響いてきます。明確な単語で表現できないひそやかな心の動きを、言葉で見事に表現するんだなと。
1投稿日: 2013.02.03
powered by ブクログこれは読んでいただきたい。是非。短編集です。 本自体は薄いんですけど、全てのお話が濃密で読みごたえがあります。小川さんのインタビューも非常に興味深い。 「缶入りドロップ」なんてほんっと短いのになんで泣きたくなるほど心が暖かくなるんだろう。「バタフライ和文タイプ事務所」はにやにやしてしまいます。エロスなんだけど真面目でそこが面白い。解説でも述べられてますが『薬指の標本』みたいな話です。日本のようで日本っぽくない話が多くて、「ガイド」は異国情緒に溢れてます。城塞とか武器庫とか言われてもあんまり戦国時代っぽくないとこが不思議。 どれも心にそっと響く作品です。
0投稿日: 2013.01.25
powered by ブクログ読んでる最中はそうでもないのですが、読み終わって暫くしても「抜けて来ない」、そんな感じのする作品です。 私にとって特に印象に残ったのが『バタフライ和文タイプ事務所』。大学の医学部の論文を主に扱う和文タイプのタイピストの話ですが、論文に出て来る睾とか膣などの文字と現実が奇妙に融合した、淫靡な雰囲気のある作品です。 どの作品に強い印象を持つかは人によって異なるようです。ただ、全編を通し、小川さんらしい静謐な非現実感が漂っています。
0投稿日: 2013.01.11
