
総合評価
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powered by ブクログ最初から最後までひどくふわふわしていて掴みどころのない小説。それは私がこの登場人物に比べて普通な生き方をしているからであって、たぶんこの感覚は泰子が太郎に対して感じる「腑に落ちない部分が怒りに感じる」感覚に似ているのだろうなと思う。そして、文章のみで読者の気持ちをコントロールできる著者の筆力の高さに圧倒させられる。 自分とは違う世界と感じる一方で、「誰かの無意識のきまぐれ」によって自分の人生が大きく左右されていくという感覚はわかる。今自分がいるのも、きっとどこかの誰かが何気なく行動した結果の積み重ねで、その力は時としてとても大きくただ身を委ねる他ない時もある。その力に100%身を委ねて生きてきたのが直子で、一方泰子はその中でも自らの人生の舵を取ろうと決め一歩踏み出す。 「縁」ではなく「誰かの無意識のきまぐれ」という表現があまりに適切すぎて、ふとした時に思い出しそう。
8投稿日: 2025.11.25
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
作中で、智のことを「根無草」と表現した文があった。 それはそうかもしれないけど、そもそも生まれたときから根っこなんてなかった直子・智親子。 正直、「よく生きてこられたなぁ」と思った。随分と「ただれた人生」だったーーー(汗) 感じたことのない感情で胸焼けして、何故か麦茶をガブ飲みしたくなった。 読み進めている最中、直子だけが突出して「モンスター」みたいに錯覚したが、実はこの作品に出てくる女性達、ほぼ全員おかしいと気がついてから、一気にページを捲る手が止まらなくなった。 どこか狂気を孕んでいて、常識という枠なんて最初から知らない・または気付かないふりをしているような気もする。 そして、それぞれの女性達の特徴は、少なからず誰しもが抱く感情・言動だと感じた。 非常識な他人の行いのせいで、人の人生が捻じ曲がるなんて、実はそうそうあることではなく、 むしろそれはただのきっかけにすぎず、本当は自らの選択でいかようにも転がるものなんじゃないか。 作中の泰子の心情にはそう書かれていて、あー作者が言いたいのはここだと思って、共感できた唯一の内容だった。 直子のような根無草人生を羨ましいと思う人は、実は相当数いるんじゃないか。 知らない・考えない・差し伸べられた手は全て掴む…楽だし悩むことなんてなさそうで、実に「簡単」に見えるからだ。 それをしないからこそ、「一人前の大人」だし、自分を律するというのは、一生をかけた努力と習慣の連続なのだと思うからだ。 初の角田光代作品がこれでよかったのだろうかww 次にどんな本を読むべきか、読後感はとても複雑。
0投稿日: 2025.10.12
powered by ブクログなんだろ、毎日人並みにきちっと生活している自分にはなんだか匂いが合わないと、思いながら涼みに入った図書館で一気読み。 こんな人も、いるんだなあ。 直子さんが「はじまったらあとばどんなふうにしても切り抜けなきゃなんない。そして、あんた。どんなふうになっても切り抜けられるもんだ。なんとでもなるもんだよ」そんなもんなかと思うけど。 と、図書館に居たら雷鳴り出してタイムリー過ぎて笑える。 晩御飯なににしようって考える私はなんとでもならない。
20投稿日: 2025.07.20
powered by ブクログ気持ち悪いながらもありそうな。いるよねー、こーいう人、と流されて流されて生活している人を側から見ているつもりだったけど、実は誰でもちょっとした選択で人生がコロッと変わったり決まったりする事があって、始まったら終わらせるしかないのかなと思った。
8投稿日: 2024.12.02
powered by ブクログどの人も目標を持って、前向きに生きてはいないし、流されてしまうことも、意志を持たずにいることもある。 しかし、この話に出てくる人たちの、ダメさ加減にはウンザリしてしまう。でも、惹きつけられる。 タイトルの意味も掴めぬまま、終盤になってわかった。 完璧な人はいないし、流されて生きていくことがダメではなく、そういうところが人間なのだと。 月の、欠けているように見える時間が多いように。 雷の、突然やってくるように。
2投稿日: 2024.09.26
powered by ブクログ歪な家族の物語。 主人公は自分の人生について深く考えず、後先考えず、流れに乗ってなんとかなるだろうと思っている、そんな登場人物たちを見てて危なっかしいなと思いながらもスラスラと読み終えた。 そして親が親なら子も子だと主人公を見て思った。 育った環境ってこうも影響するのか、と。 自分の親を見て嫌悪感を抱いている主人公も、側から見れば嫌悪感を抱いてしまう部分がある。 自分の周りにはいないタイプのひとの物語だったので読んでる途中も読み終えた今も不思議な気持ち。 こうして小説を通していろんな人間を知れるのは面白いなとも思った。
1投稿日: 2024.08.24
powered by ブクログ【2024年119冊目】 幼少期より母親と共に他人の家から家へと移り住んでいた智は、プロポーズをした恋人に「あなたには生活ができないと思うから」と逆に別れを切り出されてしまう。モテはするが、長続きしないことに薄々気づき始めた智は、唐突に子どもの頃一緒に過ごした泰子に会いに行くことを決意する。自らのルールに従って突き動いていく登場人物たちの人生の行方は。 ずーっと、膜に包まれたような感覚で読みました。理解はできるけど理解ができない、みたいな不思議な感覚。登場人物たちの心理と自分があまりにも乖離していて「そうか、私は生活ができる人間なのかもしれない」と思ったり。 かと思えば、智が母親に抱く負の感情に共感してしまい、こちらまで憂鬱、暗い気分になったりもしました。 不思議な雰囲気の小説です。よく映画にしようと思いましたね、かなり難易度高いと思います。単純な家族の小説ではないですから。 あと、お酒飲み過ぎないようにしよ…って思いました。ほどほどに。
0投稿日: 2024.05.29
powered by ブクログ子供が育つ環境って大事。何が普通かわからずに育った人間は、普通に生きることが難しい。 何かが始まったら終わるってことはない。どんなふうにしてでも切り抜けなければならない。そしてどうとでもなる。 かつて、私もそう思ったな。
1投稿日: 2024.03.23
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「堅実」の真逆をいく生き方が、自分には決してできそうもなく、かと言って羨ましくも可哀想でもなく、そういう人生もあると描かれている。 何かに必死になって生きて行かなくても、ただ流されてもそれもちゃんと生きているんだな、と眼から鱗。 不思議すぎて謎すぎて、でもそれに納得のいく説明なんかもなく。 それをただ受け入れるということ。 こんなに誰にも感情移入できない小説もめずらしい。 でもそれはそれでちゃんと小説として面白いんだよなぁ
2投稿日: 2024.02.12
powered by ブクログこの小説に登場する、「生活」ができない人たち。 なぜそうなってしまってるのか、あれこれと理由を探すのは簡単だし、ともすれば彼らがちゃんと「生活」できるようになるためにはどうすればいいか、なんてことまで考えてしまいそうになる。 でも、彼らは確かに生きている。 彼らが一日一日をちゃんと送っていることは間違いない。 そのことを肯定したいと強く思う一方で、同じ場所に留まり続けて日々を蓄積していくとの重みと尊さもあらためて感じる、そんな読後。
1投稿日: 2024.01.06
powered by ブクログ書き出しから面白くてこれ短編集だったら寂しいなーって思ったら違くて嬉しかったけど後半にかけて面白さ減っていった 家に住ませてくれる人について行って家で何もしない直子とその息子の話 色んな人の家を転々とする不思議な親子 その二人がいっとき暮らしてた家にいた息子と同じ歳の女の子を忘れられず30を超えて探し出して会いに行き子供授かるのもすごい 起こること全部色々常識的におかしいけどまぁあり得ないことでもないことな微妙なラインなのがなんか面白かった こういう普通から少しかけ離れたところに暮らしてる人たちの話 ひたすら直子が謎なのがいい
1投稿日: 2023.02.23
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
幼い頃少しだけ一緒に暮らした智が突然現れる。そこから、「普通」に暮らしていた泰子の生活が変わっていく。 泰子を始め直子、一代。みんなたくましい。 それに比べて、男性陣はみんなほわほわして優しい。 直子はダメダメだけど、どんな時にも誰かに助けてもらえる。何か人を惹きつける不思議な魅力があるんだろうね。 何かが始まったら終わることはない。始まったら切り抜けなければならない。でも、どんなふうにしても切り抜けられる。なんとでもなる。って直子の言葉良かった。
1投稿日: 2023.02.23
powered by ブクログ2023/1/5 人間にとってルールはあった方が生きやすいものなのかな。 毎日お風呂、食事は3回、掃除は綺麗に。 直子がもしルールを守る生き方をしていたら、白髪になるまで生きられなかったんじゃないかな。 「もし」を考えずにただ1日を生きてきた直子。 主人公は直子じゃないけど、直子のことばかり考えてしまう。
0投稿日: 2023.01.07
powered by ブクログ秩序ある生活に息苦しさを感じること。同じ生活感を持つ人と一緒にいる時に自分らしくいられ、心から楽だと思える気持ち。沢山共有できる内容がありました。 人生で人との出会いによって大きな変化や苦難があると思いますが、過去や未来について考えすぎず、直子の様に1日1日を楽しくありのままで生きていきたいと思いました。
0投稿日: 2022.12.03
powered by ブクログ角田光代さんの本は何冊も読んでるけど、この月と雷は読みにくかった。 もっと簡潔に書かれてて、傷の見せ方が上手いイメージでしたが、月と雷は必要以上の説明と表現な気がした。
0投稿日: 2022.10.19
powered by ブクログ何と比べて“普通”なのか。大なり小なり他者とは違うものが内在するのであるが、そのことに違和感を覚えるのか、あぁそうなのね、と感じ入るのか...。ただ、そこにある。そして死んでいく...。 ○○のターンが唐突に、それでいてそこにしかスッポリとハマらないのではないかという絶妙な配置...。流石です。
8投稿日: 2022.06.18
powered by ブクログ父親が誰かもよくわからない息子(智)とその日暮らしの直子。 ご飯作らない、掃除しない、ゴミ捨てしない、一日中焼酎飲んでテレビ見てる。 学校は行ったり行かなかったり。ご飯はお菓子で済ましても平気。そんな親子だけど、なぜか誰かが援助してくれ、住処を提供してくれたり、息子を預かってくれたりする。 だけど、直子は生活を継続することができず、一定期間が過ぎるとふらりと放浪してしまう。 そんな「ふつう」じゃない母子が一時期一緒に暮らしていた父と娘(泰子)。 ある時34歳の智はふっと幼い頃ともに暮らした泰子に会いたくなって、探し回って見つけだす。 近々結婚が決まっていた泰子だったが、智との再会で智との子供を妊娠して結婚は破談に。 泰子もまた「ふつう」ではなかった〜 「ふつう」ってなんだろ? そう言われたら、今の自分の生活が「ふつう」かどうかは分からない。 「もし」とか「たられば」も、考えてもどうしようもないこと。 ただ、こんな人たちもいるんだな〜ってことか。 直子や智、そして泰子たちは「ふつう」じゃないけど、誰かに害を加えるわけでもない。 共感できる人はいないし、わけわかんなくて、読み終わったあと、ちょっとボーっとなった(笑) で、もう一回読んでみたけど、やっぱり理解不能。 直子の『あのとき、とか考えてもどうしようもないだろ』 『今日一日をなんとかして終わらせるんだ、そうすっと明日になるからね』 そりゃそうだ。 という読後感。
0投稿日: 2022.05.24
powered by ブクログどこにもありそうな日常なのに、ありえない親子・男女の倒錯した関係、その出自・運命を描き人間の根源に迫る作品。この作者は女谷崎潤一郎か?
1投稿日: 2022.03.25
powered by ブクログ生活能力がなく男のところを転々とする母親に育てられた男と、その親子に転がり込まれた家の娘だった女が交錯する話。 もしあの親子が転がり込んでこなければ、もし母親に生活能力があれば。 そう思いつつも現実は流れていく。
0投稿日: 2022.03.07
powered by ブクログ星3つにしたが読むタイミングによって4つや5つになるんだろうと感じた。 感情移入したくなる登場人物が現れない。むしろ「わたしはこうはならない、なりたくない」と感じる人物ばかり現れる。 一方で嫌悪感に近いものがあるにも関わらず物語に惹かれていくのは何故だろう。登場人物たちの改心を求めて? いや彼らは改心しない。このまま生きていく。そうわかっていても惹かれる。何に?怖いもの見たさ? たぶん登場人物たちの行く末が気になる、その一点かもしれない。だからこそ、行く末を知った上でもう一度読み返して時に自分がどう感じるか知りたいと思った。 「ふつう」を知らない人たちとして書かれている登場人物たちの言う「ふつう」。結局は、私たちも「ふつう」とは何かを考えてそれに寄せているのをまざまざと感じさせられてざらっとした気持ちになった。
0投稿日: 2022.03.02
powered by ブクログ一般常識に囚われずに本能のままに生きるってわがままなようで でもよほどの強い信念がないと生きられない。 人の目を気にせず奥深いところでの愛は決して忘れずに自分のやりたいように生きる そんな人は邪念がない。 そんな人に心のどこかで憧れる自分が確実にいる そんなお話だったかな
0投稿日: 2021.12.18
powered by ブクログこの作品を読んでいる途中で、なんとなく村上春樹っぽいなぁと思った。現実には本当はないんだけど、そんな世界をスタイリッシュに描いたような。 女性同士の確執を描いた時はすぐ理解できるんだけれど、男性を描くと何か少し不自然に感じる。 作品としては、これはこれでアリなんだと思うから悪くはないと思うけど、なんとなく入り切れない。 「ふつう」ではない、自分が、と言うのは、自分もそういう人間だとやっぱり思うので、共感はできるんだけれども、なんていうか。
1投稿日: 2021.10.19
powered by ブクログあなたは、『首まわりののびた、色あせた、息子や娘のお下がりらしいTシャツを着て』、『触るなと書いてあるのに桃に触れてやわらかさをたしかめ』、『やっぱり要らないと思った鯵を精肉売場に戻』す女性を目にしたらどのように思うでしょうか? 『年齢より若く見えるどころか老けて見え、若いころはさぞや美しかっただろうなと思わせる面影もない』というその女性。『妻から夫を奪うようには見えず、また、父に恋した女を死に追いやるようにも当然見えない』というその女性。 この記述を読む限り、そんな女性にマイナス感情を抱くことはあっても、プラスの感情を抱くことは普通にはないと思います。しかし、そんなあなたの理解は実は間違っています。なんとそんな女性のことを『困っている』と考え、『助けようと思って』、『食事を奢り酒を飲ませ金を与え』るという男性がこの世にはたくさんいるのだそうです。そして、さらには、妻を『追い出してそこに』彼女を住まわせた、という男性さえいるそうなのです。 さて、この物語は、『人に好かれる能力、もしくは運を引き寄せる能力』が異様に発達したというある女性の生きる力に驚愕する物語。そして、そんな女性とその息子の出現によって『不幸に追いつかれてしまった』、人生を『変えられてしまった』という思いに苛まれる女性が、それでも力強く生きていく様を見る物語です。 『どうやら自分は女にもてるらしいと』『小学生のころに』気づいたのは主人公の東原智(ひがしばら さとる)。中学で『それは確信になり』、高校で『ふつうのことになった』という智は、いつも『ふられる格好で終わったが、べつの相手に乗り換えればすむことだ』という日々を送ります。しかし、『二十代も後半にさしかかったとき、智はふと不安を覚えるようにな』りました。『どうやら自分には関係を持続させる力が欠如している』と気づいた智。結婚を持ちかけても『その話にのってくれる女性はいないばかりか、彼女たちは見てはいけないものを見てしまったかのように逃げ出す』という状況に戸惑う智。そんな中、『三つ年下で、出版社の経理部に勤め』る野崎史恵に『別れたい』と言われた智は理由を聞きます。『ふつうのことがふつうにできないでしょ、あなたは』と言う史恵に、『ふつうのことって何』と訊くと、『生活よ』と答える史恵。『あなたといると生活している気がしないの。そして私は生活がしたいの』と、もう『連絡もしないでね』と離れていった史恵。そして、智は『幼いころのことを思い出し』、『史恵の言ったこと』がわかるような気がすると感じます。『そもそも母親が生活のできない女だったと』考える智。『父親はいなかった』、そして『母、東原直子にも父親がだれであるのかはわからない』のだろうと思う智。『男がいないと精神的にも経済的にも生きられないような女』だったという直子は、『生活能力』が『徹底的に欠落していた』と思う一方で、『人に好かれる能力、もしくは運を引き寄せる能力』が異様に発達していたと考えます。『決まってだれかが助けてくれるから、直子はひとりで立つことを覚えなかった』と断じる智。そして、そんな状況は今も続いていると、『六十歳を過ぎ』ても『五歳年上の男と暮らしている』直子の現状を思います。『一年半ほど前に、妻を亡くしたひとり暮らしのその男に拾われた』という直子。一方で、智は『小学校に上がったばかりのころ、いっときいっしょに暮らし』た泰子のことも思い浮かべます。『直子との交際がばれたのが原因で』出て行った妻に困り果てた辻井の元に転がり込んだ直子と智。そこにいたのが辻井の娘・泰子でした。『泰子ちゃんと子犬のようにじゃれ合って遊んだ』という小学生の智。『素っ裸で布団に入り、たがいの体を撫でさすり合った』というその時代が『三十四年間のうちで最も楽しかった』と振り返る智は、『泰子ちゃんに会いたい』と、唐突に思い立ちます。『あのめちゃくちゃな日々がたしかにあって、あの女の子が空想ではなく実在』することを確認したいと思う智。そして、再開を果たした二人。そして、もう一人の主人公であるそんな泰子の人生が智と直子の出現によって『変えられていく』物語が始まりました。 “どうしようもなくだらしない人物を描かせると右に出る者はいない!“とも言われる角田光代さん。私が今まで読んできた作品の中でも”ダメ親父”が娘を”ユウカイ”して旅をする「キッドナップ・ツアー」、”自分よりもひとまわりも下”の金にだらしない男に貢いで身を滅ぼしてく女性が主人公の「紙の月」、そして、”大人になれない痛い人たち”が”わちゃわちゃとした”関係性を演じていく「三月の招待状」と、登場人物のダメっぷりにイライラさせられる作品が多数存在します。そんな角田さんの作品の中でも、この「月と雷」の主人公三人のダメっぷりには、耐え難いほどのイライラを経験させられました。まずは、『どうやら自分は女にもてるらしい』と小学生の頃から意識してきた智です。複数の女性と関係を持ちながら今日までを生きてきましたが、『あなたには生活ができないと思うから別れたい』とそんな女たちは、結局智の元を離れていきます。理由が分からない智は、その感覚を『一日三回のごはんがお菓子でも平気でしょう』と指摘されます。それが、『生活をできない』という感覚だと知り戸惑う智。片付けができない、という次元を超えたこの指摘。たった一言でなるほど、と納得させる角田さんの言葉選びは流石だと思いました。しかし、そんな智は、その原因が母親の直子にあると責任転嫁します。普通なら、さらに智を見下す一言になりますが、母親・直子のダメっぷりは想像を絶するものでした。男の元をただひたすらに転々とする生活を送ってきた直子。それは六十歳を超えても変わらないというある意味の奇跡。どこにそんな魅力が隠されているのか?読者はそれを読み取ろうと必死になります。しかし、そこに描かれる直子の姿は、一日中じっと部屋の同じ場所に座ったまま酒をただただ飲み続けるだけのだらしない女性の姿でした。さらにたまに作るというカレーの表現は強烈です。『市販のカレールーを使っているにもかかわらず、まずかった』というそのカレー。『生煮えのじゃが芋と、大量のモヤシと、「安かったから」という理由で豚のモツ肉が下処理をされないまま入っていた』と、しばらくカレーを食べる気が失せるような気持ち悪さにリアルな吐き気に襲われました。そして、そんな智と直子と暮らすようになった泰子。彼女だけは…、という一縷の望みも虚しく、『結婚するんだよ』と、婚約者の話をしつつも『泰子は智の性器を自分の内に導くように入れていた』と堕ちていってしまいます。そして、そんな三人の生活風景の描写はさらに強烈です。『洗濯物が畳まれなくても、所定の位置にしまわれなくても、綿埃が野球ボール大になっても、風呂場の排水口にもずく状に髪の毛がたまっても、人は、難なく生きていかれるのだった』と安堵する泰子。生活能力がない人間が集まった先にどんな生活が繰り広げられるのか、そのある意味での恐ろしさを垣間見る一方で、泰子が言うように、それでも『難なく生きていかれる』、それが人間なんだ、と人間のある意味での生命力の強さに不思議な納得感を感じました。 そんなこの物語は、作品後半になってだらしなさに対する嫌悪感を上回るように、角田さんらしい人の内面に向き合うような言葉が頻出する中に展開していきます。それは、智視点と、泰子視点に切り替わりながら展開していた物語がまさかの直子視点に切り替わることが一つの起点となるものでした。様々な小説で奇妙奇天烈な設定がされた人物が描かれることはよくあります。あまりに強烈な性格の人物、やることなすこと意味不明とも思える人物、そんな人物にも心というものはあるはずですが、そんな人物の心の内に踏み込む作品はあまりないと思います。この作品では直子がまさしくその位置を占める人物です。そんな直子に視点が移動するという衝撃。怖いもの見たさという言葉の先に進んでしまったその視点の移動。しかし、そこに読者が見るのは、奇妙奇天烈な人物の狂った精神世界などではありませんでした。どこか淋しげに、どこか世の中を俯瞰しているようなそんな直子の内面を垣間見ることのできるその視点の移動。そして、直子は語ります。『あのとき、とかね、いくら考えてもどうしようもないだろ、だったらそんなことを考えないで、今日一日をなんとかして終わらせるんだ、そうすっと明日になるからね、私はさ、そういうふうにしか考えたことがないから』というその独白。そんな直子は『直子さん、いつから直子さんは直子さんだったんだと思う?』と聞かれてこんな風にも答えます。『直子だろうが直子じゃなかろうが、東京にこようが父親がいなくなろうが、逃げようが追いかけようが、はじまったらあとはどんなふうにしてもそこを切り抜けなきゃなんないってこと、そしてね、あんた、どんなふうにしたって切り抜けられるものなんだよ、なんとでもなるもんなんだよ』。直子という奇妙奇天烈で正体不明な人物の生き様を感じさせるようなこの表現。そして、物語は、予想外な、それでいて予想通りの展開の中に幕を下ろします。こんな生き方はしたくないし、身近に接するのも嫌になる、でもその一方でこんな風に生きる人生というのも、それはそれでありなのかもしれない。自由に生きる、生きたいように生きるという生き方を体現しているような直子。決してあんな風にはなりたくないと強烈な拒絶反応を感じる一方で、直子の自由さを羨む思いを感じながら本を閉じました。 『ふつう、人は…自身の現実を変えないよう、変えさせられないよう、他人の現実を変えないように、注意して生きている。でも、この母子はそうではない』という強烈なキャラクターの存在が物語を強引に牽引していくこの作品。『生きていくというのは、他人の人生に闖入し、一変させ、とりかえしのつかないことを次々と起こし、後片づけを放ってまたそこを出ていく、そういうものだと思っている』という母と子が他人の人生の有り様を次々と変えていく様を見るこの作品。 一見、どうしようもないとしか思えない人物たちの内面を垣間見る物語の中に、『ふつう』とは何なのだろう、という疑問とともに、人の生き方の多様さと、それでも生きていける人間のたくましさをそこに見た、そんな作品でした。
84投稿日: 2021.09.06
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「普通」の感覚で読んでいると、智や直子によって人生をねじ曲げられた人(智、直子も含め)に同情してしまい、読んでる期間ずっと喉の奥に何かが詰まっている感覚になっていた。(苦しいから早く読み終わるかもう読むのやめたいとも思った) しかし「普通の感覚」を持っている人はともかく、智や直子はそれが当たり前であるからなんとも思わない、というのには自分の感覚を無意識に他人に押し付けてるなと気づいた。 最終的に泰子は、人生は他人によってねじ曲げられるものではなく自分の選択の積み重ねだと受け入れていたけど、それは一種の諦めでもあると思う。 私自身も人生は自分が選択した結果だと思っている。だってそう思わなければ辛すぎる。他人のせいにしたところでどうにもならないから。 読んでる間、心の拠り所は太郎さんだったけど、太郎さんがただのいい人ではなくてよかったと思った。 シングルマザーは大変だとしか聞かないけどそれは普通の感覚で生きている人の意見であり泰子がどう感じるかはわたしにはわからない。ただ、勢いで出来てしまった子の人生を責任取れるのかなとはどうしても思ってしまう。
0投稿日: 2021.05.22
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
―自分の人生が一時停止させられているとふと思うのだった。結婚話は進まず、そもそも結婚したいのかもわからず、―仕事は順調だがそもそもパートが順調であってもどこか先に進むわけではない。すべてが止まっている。
0投稿日: 2021.04.23
powered by ブクログこの小説にはいわゆる世間一般の「ふつう」とはかけ離れた登場人物が3人登場します。 母・直子、その息子の智、そして幼い頃、智と一緒に住んでいて後に智の妻となる泰子 現実離れした生活を送る人達、読んでいて決して心地よい気持ちにはなれませんが何故だか先が気になって読み続けてしまう魅力がありました。 それぞれの登場人物の設定がしっかりしていてその心理描写も巧みで脳内映像で絶えず動いていました。 感動出来る類の小説ではないけれど人間模様の面白さを感じた1冊です。
4投稿日: 2021.01.26
powered by ブクログー直子は最初から直子だったのか。それとも直子は直子になったのか。 この問いがずっとぐるぐるグルグルと頭の中をめぐっている。
3投稿日: 2021.01.17
powered by ブクログ結局今の自分を作っているのは自分。 環境のせいにしたくなるのも自分、ひねくれた思い込みは自分で解ける呪いなのだなと。面白かった。 そして、はじまったらもう以前には戻れないこと はじまったら終わるってことはなくて、なんとしても切り抜けなきゃいけなくて、しかしどうにでも切り抜けられるということ 直子の生き方は「どうにでも切り抜けられる」と考えている人のそれそのもので、それに私は少しばかり勇気づけられたように思う。 泰子が、どうか幸せになりますように。
5投稿日: 2021.01.12
powered by ブクログ自分だけがおかしい、ひねくれてる…なんて悩みは周りを知らないだけなんだと思った。 みんな、同じように悩んでるし、失敗しちゃうし、望む方向と違う方に進む羽目になったりする。 でもそれが人生なんだろうなぁ。 進み出したら、毎日乗り切っていくしかなくって、明日の為に今日を過ごして。 とても人間らしくて、主人公達に共感できてしまう。 日々を精一杯過ごすって人それぞれだけど、どんな形であれ素敵だなと思う。 でも、関係なくなると意外と人間関係ってあっさりしていたり。 平凡って思ってる人達の中にも日々の心の揺れや変化ってあるんだなぁ。 そして個人の背景にはいろんな人が存在しているって気づくとなんだか大切さに気付ける気がする。
8投稿日: 2020.10.06
powered by ブクログ2020.10.05.読了 運命や人生には、必ず岐路がある。 でも それはもともと決められたものなのか? 誰かのせいなのか? 受け入れざるを得ないものなのか? そう考えること自体が無意味。 過去を振り返ってっも何も応えはでない。 人生は必ずなんとか乗り切ることができるから身を任せてみろ!と言われたような気がする。
0投稿日: 2020.10.06
powered by ブクログ奔放な母と放浪のような生活をして大人になった智。妻が出ていった家に残された娘の泰子と一時期一緒に暮らしていた。 大人になった智が会いにやってきた事から、泰子の生活は変わりだす。 解説の小池昌代さんの、直子の自由に一瞬嫉妬する。そして多くの女は、そんな直子に育てられた不幸の色気を持つ智に惹かれるのだ。に物凄く共感。 普通の生活が、一番難しいのかも。
12投稿日: 2020.09.04
powered by ブクログ久しぶりの角田光代さん。 人生初って、こういう感じでいつの間にかこうなってた、みたいな、この人のせいでとかじゃなくてみたいなところってあると思わされた。 面白かった。
0投稿日: 2020.06.17
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
結局「業」には逆らえないのかもしれない。 こうなりたくないと意識しすぎることで逆にその結末を呼んでいるのではないか、そんな風に思えた。
0投稿日: 2020.06.12
powered by ブクログドラマ化するなら、智は岡田将生さんのイメージだ。そのイメージでずっと読んでしまったね。 泰子や智はきっとどこかに居る!と思わされる、具体的にイメージがぶわぁと描ける、そんな作品でした。
0投稿日: 2020.06.05
powered by ブクログ自分が取った行動で波紋のように、道ができ、人を巻き込む。時に人の人生も変えてしまう。 奥深い小説だった。
0投稿日: 2020.05.21
powered by ブクログ幼いころ暮らしをともにした見知らぬ女と男の子。再び現れた二人を前に、泰子の今の幸せが揺さぶられる。偶然がもたらす人生の変転を描く長編小説。 "一期一会"という言葉がある。本来は良い意味で用いられる言葉だが、泰子の不幸な人生も一期一会なのかも。これほどまでに周囲の人間たちに翻弄される人生って何なのか。また、悪魔のように他人の人生を狂わす直子の存在感に圧倒される。法律上罪を犯していないだけの悪人というのは、現実にもたくさん存在する。
0投稿日: 2020.05.14
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
特別なことはいらない、当たり前を続けることが生活をつくりあげる。 「一緒にいたい」「この人となら生きていける」と互いが思うには、「生活を一緒に、一生続けていけるかどうか」。 幼い時から人当たりがよく、いわゆるモテるとされて来た男性を軸に展開される話。数年つきあってきて、そろそろ結婚しようかと思った矢先振られた言葉は、「怖くなってきた。普通の生活が普通じゃない」と言われる。その意味がわからず、仲のいい女性に相談しその解を聞くと納得すると同時に、自分の過去の家庭環境のせいだと振り返る。「例えば人が3食ご飯をとることが普通と思ってても、あなたは毎日お菓子でも平気でしょう?そういうのが怖いって感じる」。男の母親は住まいを転々として生きるために男頼りに暮らしてきた。そのため「続ける」「積み上げる」ことは重要でないという価値観が生まれてしまった。 「普通に生活する」ということは、個々人全く異なる。育った環境が違う性格が違う2人が、一生一緒に暮らしていくには、地味で華やかでなくても、普通と互いが思う生活を繰り返していけるかどうか。特別な日に特別なことをするよりも、日常を心地よく暮らしていける方が、幸せに近いのかと思った。
1投稿日: 2020.05.05
powered by ブクログ他人、特に男の力を借りて生きてきた母に育てられた智と、幼少期に智親子により人生を変えられたと思っている泰子。 大人になった2人が再会した。… 至って普通に生きている自分には理解できない、と言うよりは嫌悪感を感じる人達の話でした。 その中で泰子は、普通に生きたいと思う気持ちが強いようだったのですが、実母のその後を知って、みんな自分で道を決めているんだということに気づき、自分も普通でない生き方になるかもしれないという方向に舵を切りながら終わってしまいました。 自分が決めたのなら、それが正しいんです、仕方がない。 タイトルの描写は文中に出てきましたが、今ひとつピンと来ませんでした。
0投稿日: 2020.02.09
powered by ブクログ家庭、子育ての環境の「普通」というのは人それぞれの価値観があると思うけど、ここに出てくる人たちは「負(不)」の連鎖から逃げられてないのは間違いない。 いやだいやだと言いながら、自分も逃れられず逃れようともしない。「血」なのかなと思ってしまう。
0投稿日: 2019.12.08
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
もっと丁寧に読めば味わい深く感じられたかもしれない。ちょっと急いで読みすぎた気がする。 なんというか…泰子は「あの時父親が直子と出会っていなければ」って、人生のボタンが掛け違った瞬間みたいなことについてずっと思い・考え続けていたけど、実際のところ、実の母親も割と自分勝手な人間だったし、だから歪んでいたのは泰子だけじゃないし、泰子が当たり前の幸せみたいなものに違和感を覚えるのは後天的なものじゃなかったというか、一代の血なのだ、ということでわたしは解釈したんだけど、泰子自身がそれに気づいた(と思しき?焦って読んでしまったので解釈が微妙かも)瞬間がすごく鮮烈で、爽快だった。 なんであの時智とセックスしたのかな、と思った。あの流れならわたしもするだろうか。泰子から見た智がいつも子どもじみているのが気になった。実際子どもなのかもしれないけど、現在の智に過去の姿を見ていたんだろうか。
0投稿日: 2019.10.04
powered by ブクログ皆、被害者なのかもしれない。 そして同じくらい加害者なのかもしれない。 誰が誰の人生にどれだけの影響を与えたか。 結果的に良い影響だった場合もあるし、 悲惨な結果になってしまうことだってあるのだろう。 誰かのせいにすることは、簡単なことだ。 ふつうとは? 当たり前とは? そんな問いが繰り返される物語でした。
0投稿日: 2019.05.20
powered by ブクログ仕事をせず結婚をせず定住せず都市を転々としつつ男に支えられながら生きてきた女と、その息子、かつて一時その親子と暮らした女。様々な分岐点を経ながら人生は流れて行くがその流れのきっかけを他人のせいにしては苦しくなる。これだけ共感したくないキャラ設定でありながら引き込まれる不思議な筆力。
0投稿日: 2018.10.09
powered by ブクログ明日花がうまれたとき、やれやれと思った。 ?・・・・ やれやれ? どっかで聞いたような、 確かに聞いたな
0投稿日: 2018.07.30
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
*幼いころ、泰子の家でいっとき暮らしをともにした見知らぬ女と男の子。まっとうとは言い難いあの母子との日々を忘れたことはない泰子だが、ふたたび現れた二人を前に、今の「しあわせ」が否応もなく揺さぶられて―水面に広がる波紋にも似た、偶然がもたらす人生の変転を、著者ならではの筆致で丹念に描く力作長編小説* 「ふつうの生活」…って難しい。ここまでかけ離れている人もいないと思うけど。 と思うのも、自分の「ふつう」が言わせてるんだろうな。
1投稿日: 2018.07.05
powered by ブクログふつうって、なんだろう。 かぞくって、なんだろう。 解説の破壊していく女たち、という表現が絶妙で好き。
0投稿日: 2018.03.27
powered by ブクログ読んでいて登場人物のだらしなさが目立って、この人たちとは一緒に暮らせないな~と思った。 最初の方の主人公は智だったが、智とその母親直子と、直子の恋人辻井とその娘の泰子が出てくると、泰子が主人公になってゆく。 智と直子が来なかったら、私泰子と父と母一代は離婚しなかったのではないのか?私は普通の家庭で過ごせたのではないのか?その日暮らしのフリーアルバイターのようになってはいなかったのではないか?と思っているところへ、智が泰子を訪ねてくる。智も普通に結婚して家庭をもつものだと恋人にプロポーズしたら『私は生活がしたい』と言って振られてしまったので泰子を訪ねてきたのだ。 それには母親の直子に連絡を取って、泰子の住所を聞いたのだが、母親はネコか犬のように定期的に誰かに拾われて暮らしていた。 泰子は不幸に追いつかれた、と思った。 だが、いつも誰かのせいで不幸になる、と思っていたのだが、最後の最後にそれは偶然であろうと必然であろうと、自分が自ら選び取った選択なのだと、気付く。 本当の意味で泰子が自由になるという終わり方で、少しは救われた。
0投稿日: 2018.03.14
powered by ブクログ誰かのせいにしたり、不本意だけど流されただけだと思うことも多いが、何だかんだで自分で選んでいる。そのことにハッとさせられた。
0投稿日: 2018.01.10
powered by ブクログ人生全ての出来事は他人がどうという訳でなく、自分の足が向いた方へ動いていたということ とても良かった
0投稿日: 2017.12.15
powered by ブクログ直子のような人間に負けたくなくて、自分なりに精一杯頑張って、誇れるものを手に入れたと思っても、彼女はそんなものに興味がない。そして、なんとかなる、と、その日を閉じていくことだけを考えて人生を歩み続ける直子には到底およばないことにうっすら気づきはじめる。 不幸に追いつかれた、と泰子が感じるのは、真っ当な道を外れていったからではない。はたからみれば不幸に見える暮らしや生き方が、ちっともそんなことはないと自覚してしまうことなのだ。
0投稿日: 2017.11.21
powered by ブクログ2017/11/15 全ては繋がっているというところに共感。 単に父親と母親が出会ったから子どもが生まれたのではない。 父親・母親が出会った人たち、環境、第三者、それぞれが繋がって今があるのだ。
0投稿日: 2017.11.15
powered by ブクログ読み損ねてた角田光代さんの長編。書店でみかけて唐突に気になって読んだのですが、すごく良かったです。 泰子が「不幸に追いつかれてしまった」と感じたのは、かつてのいっとき共に暮らしていた男だった。 父と不倫し、母親を追い出し、そうして家にやってきた直子と智。 まっとうとは言い難い母子との日々を忘れたことはない泰子だが、ふたたび現れた智を前にまた今の「しあわせ」が揺さぶられだす。 根無し草、って表現いい。智は根無し草だ。およそ生活というものができなくて、ひとところに留まることができずふらふらふらふらと漂い続ける。 そんな智と、その母親の智とふたたび関わっていくことで得た泰子の知見が、そのまんま私のものになった。 「もし」とは思わずにいられない過去。もし別の道を選んでいたら。もしあの人たちと出会わなければ。 そうやって今の自分の不幸の根をみつけ、誰かの、何かのせいにしたかった。なんて無意味なことか。 はじまってしまったことは、ただはじまり続けるだけだ。それは自らの足で踏み出された波紋で、決して誰かに追い出されたとか、せき立てられたとか、連れていかれたとか、そういうものではいっさいないのだ、とすこんと分かった。 直子も、泰子の母も、太郎も、和田屋のりえちゃんも、明日花も、みんな。みんな自分の足で波紋を無数に広げ続けている。 そしてそれは月と雷ほどのたしかさと、相容れなさで、どこまでもどこまでも独立している。 知ってたけど、ぜったいに認めたくはなかったその事実も、角田光代さんの小説と言葉でなら否が応でも納得して腑に落ちてしまう。 心底不思議だなぁといつも思います。
0投稿日: 2017.10.27
powered by ブクログこんな初期衝動みたいな、強い勢いの本。。。すごい。。。 誰かには耐えられないような散らかしっぷりを自分もしているんだよな。。。
0投稿日: 2017.10.02
powered by ブクログ居候をしながら転々と住むところを変えて生きる直子と、その子供の智の描写から、「普通に生きるとは」ということを考えさせられる一冊。人生には様々な選択肢が存在するが、結局は皆、自分が望む方向へ、自分の意志で生きている訳か・・と気づかされました。
0投稿日: 2017.09.03
powered by ブクログ久しぶりに心が大きく揺さぶられる物語だった。 自分の生い立ちとかぶる所がたくさんあり読みながらどんどん小さい頃の記憶が蘇えってきた。 自分に当てはめてしまうと、過去、生い立ちに対する劣等感や肯定感や虚無感、もう色んなものがごちゃ混ぜになり読後頭の中はまさにカオス、の一言だ。 この世に生を受けた時から全ての人間が「袖触れ合うも多生の縁」の連続で人生を歩んでいく。 運命だから仕方ない⇔努力は報われる だらしない生活⇔きちんとした生活、白と黒…生きるという事は常に両者を往き来し、もがき葛藤するはずなのに、主人公の泰子、智、智の母、直子はそんな観念とはまた別の次元で、まるで言葉を持たないピテカントロプスのような人生を歩んでいるようだ。皆がどこかでタガが外れてしまい、それが良き事なのか悪い事なのかの判断もつかずつけようという発想もなく垂れ流しの日々を過ごすのである。現代社会の負の産物なのか。 ただ人間は本来そういうものだったのかと妙に腑に落ちた。
0投稿日: 2017.06.28
powered by ブクログ普通とは、より多くあること って聞いたことがある。 多いものが普通になっていく、ということだ。 普通から外れれば不幸なのか。いや、それはイコールでない。多数に属するのか、少数に属するのか。それらは幸、不幸とは 本来は 関係ない。 関係ないはずなのに、普通を維持し、時には追い求め、不幸(になるかどうかなんて誰もわからないのに、さも不幸になるかのようになぜか私たちは思いこんでしまう)に陥らないように、時に必死になってしまう。 それは、普通であること が 人生の幸・不幸と分かち難く結び付けられていると 薄くしかし長く刷り込まれ続けているからなのだと思う。 あるいはそれは、多数派から少数派への、目に見える・見えない諸々の圧力という形を取ることもあるだろう。その圧力を内在化して自らを縛りつけていることもあるだろう。 直子は、普通でない ことが 不幸 に結びつくわけではないを体現した存在なのだと思った。もしかしたら、不幸とか幸せとか、その価値基準すら彼女の中にはないのかもしれないけれど…。 泰子と智を中心とした 普通じゃない人 に人生狂わされた男女の物語として成立させることもできたのだろうけど、直子という存在を、後半でドーンと出しているっていうのが一味違う。
0投稿日: 2017.06.01
powered by ブクログこれを読んでしっくりくる人、こない人、それだけでもかなりの価値観バロメーターになりそうなお話だった。角田さんの人間スペクトルの広さ光る非常に面白い作品でした。映画化とかするのかなぁ〜。
0投稿日: 2017.04.06
powered by ブクログ母親に連れられて出会った人たちのところを転々としながら育った息子が、大きくなって結婚を考えたり母親と暮らしたりする話。 うーん、読み終わっても全然なにも残ってないかも。。
0投稿日: 2017.02.14
powered by ブクログ読後気分が高揚するわけでもなく、希望が見出せるわけでもない。けれどページをめくる手が止まらなかった。
0投稿日: 2016.08.02
powered by ブクログ普通ってぬるま湯なのかもしれない。当たり前にぬるま湯に浸かればいいものを、あえて、なんの引力かルールによらないものに引き寄せられてしまう。物語は、過去ある母子が自分の家に転がり込んできたことから、家庭が壊されてしまったと感じる奏子の話。突然現れた過去の同居人に心は許さないも、自ら過去の淡い体験を重ねてしまった(この時点で心も許してしまっていたのかもしれない)。自分自身、この著作の様な行動はとれないんだけど、刺激を求めてしまう気持ちも分からなくもない。うーん、吸い込まれる様に一気に読んでしまった。
0投稿日: 2016.07.04
powered by ブクログ角田氏の描写はいつも鮮明なのですが特に終盤の病院でのやりとりがすばらしかったです。小池昌代の解説も秀逸でした。
0投稿日: 2016.04.19
powered by ブクログ人は美しいものに心引かれるが、同様に醜いものにも心引かれる。 つい見てしまう。 気になって仕方がない。 見たあとに、嫌な顔をして、そして目をそらす。 生活における醜さは怠惰と近しいところにあるかもしれないが、それは受け入れてしまえばなんとなく安心感がある。 ふつうとかきちんとしてる人も、きっとそういうの理解できるはず。 不思議な話だけど、 読み始めたら、終わりなんかない。 着実に少しずつ、進めていくこと。
0投稿日: 2016.03.27
powered by ブクログ常識的に言えば、酷い家庭で育った二人。「家庭」と言えるのかすらわからない。そんな二人が大人になり、再会して一緒に暮らし始める。親と子の関係も、男女の関係も、始まればいつかは終わるもの。そしてその相手との関係が無かったら今の自分は無い。そんなことを淡々と語りかけてくるような小説でした。
1投稿日: 2016.02.05
powered by ブクログ何とも気持ちの悪い本だった。 人生に何の希望も、夢も見いだせなくて、ただ流されるように生きている人たち。 読んでいて気持ちがすさんでくるような。 だからといって、ページをめくる手はとまらず、あっという間に読み進めてしまった。
0投稿日: 2015.11.20
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ダメだ、智は道ですれ違っても目を合わせたくない、嫌いなタイプのチャラ男。 もう、一刻も早く読み終わってしまうしかない。 しかし、そこに泰子の視点が加わると、やはり興味をひかれてしまう。 一番すごいのは智の母の直子。 子ども一人とボストンバッグ一つを携え、日本列島どこともかまわず、男の元を転々として歩く。 そうして、どこまでも直子を貫き、直子を完成させて生涯を終わった。 ワイドショーの再現ドラマを見ているようなストーリーである。 しかし、再現ドラマが「なんて悲惨な」「可哀そう」「やりきれない」という感想を視聴者から引きだそうと目論んでいるのとは違い、智には悲劇を感じない。 直子はもちろん、泰子も図太い限りである。 世の中には常識という名のルールが存在し、そこに当てはまらない人たちに対して、私たちのような凡人は、「ルールから外れた人」というレッテルを貼る。 しかし泰子は、ルールが一つなら混乱もないのにねと思いつつも、『世の中にはいくつものルールがあり、もしくはまるきりそんなものはない』と心の中で確信する。 …そういう物語だ。 ここに書かれていることは真実で、世の中からルールは消えかかっているのかもしれない、と戦慄した。
0投稿日: 2015.11.15
powered by ブクログ逃げ果せたと思っても、身勝手な都合で現れる智と直子に絶望を覚えた。飲み込まれてしまう恐怖。 それでも、最後には一筋の光が見えた。人は、生き抜く図太さを持っている。
0投稿日: 2015.11.07
powered by ブクログ私には絶対に無縁の話だろうけど、なぜか自分のことのように恐ろしくなってしまう。 そこが、角田光代さんの作品らしい。 私はどこへ向かっているのか、あてもない場所へ向かっている。でもきっとそこへ行く運命なのだろう。何気なく過ぎていく毎日は、そうなるようにできているのだ、と思わされ、今自分が進んでいる方向が、自分の意志でなくても、そうなるようにできているのだ、と不思議に納得させられてしまう。 山信太郎と泰子が子連れで再会するシーン。 太郎が泰子と別れていなければ、実は生まれていない。泰子が智に再会して、明日花が生まれたから、実が生まれた。もっともっと遡ればキリがないけど、1人の人間が生まれてくるのはいろんな人のつながりや縁がもたらすものなんだって、当たり前なんだけど、ものすごいことだなって思ったら、涙が止まらなかった。 私は私の人生を辿るようにできている。 見えない縁に結ばれて、私はたくさんの人に出会っている。 改めて、たくさんの偶然に感謝して、前を向いて生きていこう。
0投稿日: 2015.10.11孤独で、弱くて、幸せではないつもりだけれど、じつは強い女性の話。
角田節といいますか、いつもの筆致のいつもの角田さんの小説という印象です。つまり、現実にはあり得なさそうなことが、なぜかリアリティをもって違和感なく読めます。 いつもの角田さんが読みたくなって読みましたが、その意味では期待通りでした。 泰子は「なぜ、こうなってしまったのか」と、自分の不幸の犯人探しのようなことを考え続けます。 でもじつは、不幸だけでなく幸せも誰かのせい。誰もが影響しあって生きている。つまり、誰もが誰かのせい(おかげ)で生を受け、いま生きている、という話です。 孤独で、弱くて、幸せではないかもしれないけれど、じつは強い女性の話です。
3投稿日: 2015.09.11
powered by ブクログ子供時代の出来事にどうやって折り合いをつけるか、とても悩みます。 客観的に物事を観れるようになっても、心と頭はまるで別だから。 ストンと何かが気持ちよく収まる日を皆どこかで待っているのだと思います。 H27.8.29~9.3読了。
0投稿日: 2015.09.03
powered by ブクログ浮き草のような智の母親、直子。 家事もやらない、 カレーもまともに作れない。 アル中。 放浪しても必ず男が助けてくれる。 ただの年くったくたびれたおばさんなのに。 「逃げようが追いかけようがはじまったらあとはどんなふうにしてもそこを切り抜けなきゃなんないってこと。どんなふうにしたって切り抜けられるものなんだよ。なんとでもなるもんだよ。」 このセリフが唯一、直子のまともな言葉であり 私の胸に突き刺さった。
0投稿日: 2015.08.27
powered by ブクログなんかビミョーかなあ。 人並みの幸せっていうのはなんだろうね。 形のない理想は、絵に描いた餅と一緒なんだな。
0投稿日: 2015.08.15
powered by ブクログ我が家の常識は世間の非常識ということは往々にしてあると思う。みんなが思う普通がすべて当てはまる家庭というのも、ないよね、きっと。
0投稿日: 2015.08.02
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「ふつう」って何だろね。 お父さんがいてお母さんがいて兄弟がいて自分がいて、お父さんが働いてお母さんが家事をして?うちはこういう家庭だったかもしれないけど、「ふつう」の家庭だと思ったことはないな。それなりに波乱万丈。だから、答えがないのに「ふつう」を追い求めて生きていくのかも。ないものねだり。 共感はできなかったけど泰子の想いは胸が痛む。でも智よりは地に足がついている。「ふつう」じゃないかもしれないけど、何とか生きていけそう。
0投稿日: 2015.07.30
powered by ブクログ直子が怖いなー。 泰子や智が、「直子はいつから直子なのか」と思いたくなる気持ちもわかる。 見た目普通のおばさんなのに、助けてあげたくなるってどんな人だろう。想像つかない。 自分の生き方が、間接的に他の誰かに影響してるって、少なからずあるかも。 私の人生も、影響してるかしら……。
0投稿日: 2015.07.24
powered by ブクログ角田光代さんの文体が、肌に合う感じがする。 ふつうがどこにあるのか掴めないまま、漂っているのは、彼らだけではない気がする。 どこに出口があるわけではなくても、みんな今日をひたすら生きて行く。
0投稿日: 2015.07.02
powered by ブクログ物心つく前から母の直子について日本中を転々としていた智。恋人に、ふつうの生活ができない人、と指摘され、改めて自分の過去を振り返ったとき、ある一人 少女の記憶が甦った。 その少女泰子もまた結婚を目前にし、ふつうの生活を始めようとすることに躊躇していた。 二人が再会するところから物語は始まる。ふつうの生活を求めているようで、それを積極的に目指そうとするわけではない。自分たちがこうなったそのルーツである直子の内面を解き明かそうとするが、結局はあるがままの自分の位置で暮らしていくしかないのだと、最後は諦めでも悟りでもなく、なんとなく収束していく。一見特殊な人々を描きながら、人生を納得させられる。
0投稿日: 2015.06.27
powered by ブクログ皆が放っておけないものを持っているせいでそれに甘えてしまい、他人の普通の生活を次々と壊してしまうアル中の直子と、昔から女に不自由しないものの関係を持続させることができない息子の智。かつてこの二人と一緒に生活し、「普通の幸せ」を掴もうとしていた泰子の前に智が再び現れることで物語が動き出す。 他人の思いなど全く気にせず、面倒くさいことに目を背けることを何とも思わない自分勝手な智と直子に中盤までは胸くそ悪くなる一方なのだけれど、いつの間にか二人の持つ自由さにある種の羨望を抱いてしまうところが面白かった。著者の熟練の筆致だからこそなせる技でしょう。 ストーリー自体は割とあっさりしているというか、例えば傑作『八日目の蝉』『森に眠る魚』のような凄みはないけれど、これはこれで十分楽しめました。
0投稿日: 2015.06.21
powered by ブクログ智と泰子はふつうの生活を知らない。家族が向き合わない、家族という形になっていない生活。人にも物事にも向き合えず逃げてしまう、そのせいで世間一般的なしあわせを掴めない。 直子も智もなんだか憎めず面白いキャラクターだけど、身近には絶対いてほしくないタイプだなーと…。社会にうまく組み込めていない感じがやるせなかった。
0投稿日: 2015.06.20
powered by ブクログ角田さんの家族ものが好きなのは、自分の記憶を辿らせる力があるからかな。私も根無し草が安心するという奇妙なたちを少なからず持ち合わせているので、転勤族だった影響とか、なんかいろいろ考えてしまった。 これからどうなるかなんてわかんないけど、どうにかなる、どうにかするものだというくだりがすとんと落ちた。
0投稿日: 2015.06.19
powered by ブクログ智の母親の直子は、捨て猫のようにいろいろな男のところを転々とする暮らし。一時一緒に暮らした泰子と再会し。。。
0投稿日: 2015.06.13
powered by ブクログ彼らの様に生きることが出来る人を私は知らない。でも、誰もがほんのわずかな部分は、そんな生き方をしたいと思っていたりそんな生き方をしているんじゃあないかと思える。普通じゃない、真面目じゃない、きちんとしていない、流れている、流されている生き方を。ホームレスさん達のような生活になっても案外平気で生きて行けるかもしれないと、陽炎のような思いが浮かんだ時があったのを思い出した。
0投稿日: 2015.06.11
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
赤城くんが読んでそうだと思い、購入(なんでだよ) 想像していたのはつらつらと考えを語る系だったけど、展開展開また展開と意外にもさくさく引き込まれていく感じ。主人公は乙女ゲーの中にいそうだなあと思った。「始まってしまえば、もう元には戻れない。ただ終わりに向かうのだ」(だっけ?)は私の教訓。
0投稿日: 2015.06.06
powered by ブクログ文庫版のカバーイラストと帯とあらすじを見て、一目ぼれしました。想像とちょっと違った話でした。 一般的に言われる普通の生活ではなくて、それより少し下の生活を送ってきた智と母直子、そして、泰子。関わったことにより生活がふつうではなくなってしまったのか、それともふつうとはいったい何なのか、そんなお話でした。 始まってしまえば、なんとかなって乗り切っていくものなんだよっていう直子の言葉が印象的でした。 普通の生活がわからなくて、逃げ出してしまう智、普通の生活がわからなくて、結婚から逃げてしまう泰子だけれど、泰子の方が地に足がついている感じがした。
0投稿日: 2015.06.03
