
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
競馬シリーズ18作目。 「利腕」というタイトルで気が付くべきだった。 ミステリーファンとしては。 障害競馬の元チャンピオンにして、 左腕が義手の探偵ハレーが戻ってきた! 言い訳をさせてもらえば、 この競馬シリーズで今まで主人公が同じ作品は皆無だったので、 全く予想していなかった。 前作「大穴」の最後では、 探偵社を買い取る話になっていたはずだったが、 社長が急死、甥がしゃしゃり出てきて一探偵に戻っていた。 元妻に知らない間に詐欺の片棒を担がせた男を探し、 本命馬が大きなレースで惨敗し、しかも調子を悪くする原因を調査し、 ジョッキィ・クラブの保安部次長を調べ、 と大忙し。 元妻の言動に傷つけられたり、 利腕を奪われる恐怖に打ちのめされるハレーは かなり痛ましい。 馬を調子を悪くする原因が、 豚の病気のワクチンを作るのに馬を利用していた際に 突然変異で発生した菌で、 不活性化したものが研究所だけに存在したという設定は面白かった。 それと、 手掛かりを求めて気球の船長に会いに行ったはずが、 追われて気球に乗り込みレースに参加してしまうところも面白かった。
0投稿日: 2023.05.27
powered by ブクログかつて花形騎手だったシッド。だがレースで事故にあい左手が義手になった。今は相棒のチコと競馬界まわりの探偵稼業をしている。レースに勝つこと、それが第一の目標だったシッド、家庭はその次、それがもとで妻とも離婚してしまった。冷静さと頑強さ、ちょっとフィリップ・マーロウの雰囲気がする。 今回は、競走馬4頭の体調と成績がどうもおかしいと、かつて自分を育ててくれた調教師の妻、競馬シンジケートを持つ人物、当の競馬界の調査委員長から、調査を依頼され、おまけにかつての妻が詐欺に手を貸す羽目になってしまった、とそちらの調査も依頼される。馬の方は驚くべき事実が・・ 妻の方は、だまされた男の正体を突き止める。その間、熱気球に乗るはめになったり、ドラマにしたらさぞおもしろいのでは?という場面が盛りだくさん。 ディック・フランシス、漢字二文字の題名は前から知っていたが、「海外ミステリ・ハンドブック」で”かっこいいヒーロー”の部門であがっていたので初めて読んでみた。これは1979年発表で今から40年前の時間感覚で粛々と物語は進む。訳文がいい。競馬シリーズでは第4作目。「大穴」の続編とも言える作とあり、そちらも読んでみたい。 ☆早川海外ミステリハンドブック2015:かっこいいヒーロー&アンチ・ヒーロー 1979発表 1981.1.31初版(単行本) 図書館
6投稿日: 2022.09.29
powered by ブクログ40年くらい前の作品ですよ すごっ ぜんぜん今読んでも面白いんだけど やっぱりノスタルジックな想いが少し乗っかっている気もします 冷静に考えるとやっぱり今の時代には合ってないのかなと思ったりもして というのは、かっこいい男の基準がやっぱりちょっと違うような気がします 石のような精神力で何ものにも屈しないヒーロー 本編の主人公シッド・ハレーも一度は敵の脅しに屈しそうになりますが、自分の心と会話を交わすうちに精神的な復活を遂げます 今ならきっと自分の弱さを認めつつ、ときには仲間を頼ったりもしながら強さを身に着けていくみたいなヒーロー像のほうが受け入れやすいのかなって思います それにしても我が本棚ながら、凄いバラエティにとんだ本棚になってきたなー
40投稿日: 2022.09.19
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「大穴」より先にこの「利腕」から読んでも面白かった! 身に迫る恐怖に怯えつつも、決して悪にひれ伏すことの無いハレー。小説の中ではずっと彼の姿を追うことができるので、彼の孤独がわかるんですが、もし自分が彼の奥さんだったら…やっぱり一緒にいるのは難しいかも?
0投稿日: 2015.02.28
powered by ブクログ何度目かわからないけどまた読了。本当に素晴らしい。 銀の霧雨が細く降るラストシーンのうつくしさは、何度読んでも胸が熱くなる。
0投稿日: 2014.11.17
powered by ブクログ今作の主人公は、ディック・フランシス競馬シリーズの中では珍しく2回目登場のシッド・ハレー。 前作で生ける屍だった彼は絶望の中から自分を取り戻し、今作ではフリーの敏腕調査員となっている。とはいえ、やはり輝かしい騎手時代への未練は捨てきれないようだ。 次々とレース生命を絶たれていく競走馬&競走馬のシンジケートに関する不正を追う中で、凶暴な悪党から壮絶な脅迫を受けるハレー。本作はそんなハレーの恐怖を軸にストーリーが展開していく。 なぜタイトルが「利腕」なのかを理解できた時、ページを読み進める手が進まなくなるほど恐ろしかった。 なんと、本作では不屈のヒーロー・ハレーが恐怖におののき悪党から一度は尻尾を巻いて逃亡してしまうのだ。 屈辱、自己憐憫、罪悪感、精神的基盤の崩壊…。前作よりも深い奈落の底からいかにしてハレーが這い上がってくるのかが、本作の見どころである。 「自分が永遠に対応できない、耐えられないこと…ようやく、鮮明、確実に理解できた…それは自己蔑視である。」 この決意とともにハレーが完全復活する瞬間は、まさに鳥肌もの。 他の登場人物も細やかに描写されており、陽気で頼りになる相棒チコがいい味を出しているのは勿論、これまでハレーに辛く当たってきた元妻ジェニイの知られざる本音や、ジェニイの父チャールズとの変わらない友情など実に味わい深い。 ちなみに、結末はあのジェフリー・ディーヴァーも真っ青のどんでん返し!! この発想はなかった。改めてフランシスの技量に脱帽。ラスト1ページまで気を抜けず、手に汗握る素晴らしい作品であった。
1投稿日: 2014.08.04
powered by ブクログ再読了。 ディック・フランシス作品の初心者は、この作品から入らない方が良い。 今作の評判がいかに高かろうとも、せめて4作目の「大穴」を読み終えてから手を出す方が良い。 これは再生の物語である。ペシャンコに破壊された男が、雄々しく立ち上がる物語である。震えながら、怯えながら、汗まみれ傷まみれで掴む自尊心の物語である。 読めば気合が入る。そんな本はなかなか無いが、これはそんな稀有な一冊だと思う。
0投稿日: 2011.04.05
powered by ブクログ競馬シリーズっていう名前に腰が引けてしまう人もいるかもしれないけれど、競馬にまったく興味のない人も楽しめる。食わず嫌いは損だっていう代表みたいな本だ。 ミステリに分類されるから、事件があって探偵がいて、犯人を突き止めるって話なわけだけど、この本の魅力はそんなことにはない(もちろん推理小説としても水準以上の出来だけど)。作者が描き出す人物が、ただひたすらかっこいいのだ。ただかっこいいと言っても、スーパーマン的なものではない。自分の弱さに悩み、傷つきながらそれを克服していく姿が、圧倒的に感動なのだ。 事故で片腕を失った主人公が、ねばり強く犯人を追いつめていく物語だけど、特にラストシーン、最後の一行にうならされる。ミステリなんて好きじゃないっていう人にこそ、読んで欲しいと思う本だ。
0投稿日: 2010.08.15
powered by ブクログ調査員になった元ジョッキー、義手のシド・ハーレーの元に依頼がよせられる。本命馬が続々と敗れていく。彼の元妻が罪を被せられ詐欺で訴えられそうだ。レースで不正が行われているのではと考える馬主。調べていく内に彼と相棒のチコは脅迫と暴力の中に巻き込まれていく。 おもしろいんだけど重いんだよね。このシリーズって。人間の根底にある悪意があばかれていくというか。
0投稿日: 2010.07.11
powered by ブクログディック・フランシスの小説にはかつては同じ主人公が出てこないことになっていたが、シッド・ハレーだけが例外だった。初期の作品『大穴』に出てきたあと、この『利腕』に登場した。 その後、キット・フィールディング君が二作続けて登場したが、そのあと『好敵手』でシッド君が三度目の登場となり、やはりフランシス作品のなかの存在感ナンバー1の座を印象付けた。で、このあと、最愛の妻を亡くして一度は引退したフランシスが息子の応援を得て書いた『再起』も、やはり一番人気のシッド君に登場してもらったので、シッド君は都合四回出てきたことになる。 さて、4回の登場中、もっとも好きなのがやっぱり『利腕』。 初回に登場したとき、すでに競馬の事故で右腕を怪我していたシッドだけどそれをものとせずにかっこいいところを見せつけた。 ところが、この作品では悪者に追い詰められて、その怪我した右腕をさらに痛めつけられてしまう。 さしもの好漢、シッド・ハレーも、右腕を失うかもしれない恐怖には勝てず、一度は悪者に屈してしまうのだ。 このへんの心理描写はじつに巧み。 読んでいるこちらのハートが試されているかのようだ。 フランシスの描く主人公はつねに冷静沈着、誇りを重んじ、それを貫く強さを持っている。 しかし、そんな主人公の心のなかで起きている葛藤を見事に描いて、彼らの本当の姿を浮かび上がらせることに成功したのがこの作品が頭ひとつ飛びぬけているポイントだ。 もうひとつ『度胸』という作品も同様のテーマで、「度胸とは何か?自尊心とは何か?」ということを描いている。 それでいつもどっちがどっちだったかわかんなくなっちゃう。
2投稿日: 2010.05.04
powered by ブクログ元花形ジョッキーだったシッド・ハレー。 事故で左腕を失い義肢となり、今は競馬界の不正を暴く調査員として生計を立てている。 新たな依頼でも核心に迫っていたのだが、「残った利腕を吹き飛ばす」という脅迫に屈し、言われるがまま逃避する。 そこに元妻ジェニーも絡み、物語は進行していく。 徐々にこの選択が残された腕より、大事なものを失う事に気が付いていく。 「自分が永遠に対応できない、耐えられないこと・・・それは自己蔑視である」(T_T)(T_T)(T_T) 普通の人の自己破壊・自己蔑視からの再生のストーリー。 必見です。
0投稿日: 2010.01.19
powered by ブクログシッド・ハレー物第2作。 フランシスの作品は競馬シリーズといっても基本的には単発で、すべて一作ごとに完結しています。主人公の中で、3作描かれているのは彼だけ。 それだけ登場した時の印象が強く、意志の強さや勘の良さは典型的でもあります。性格は冷静なようでも内面は激しく、孤独がちなほうで、それだけにヒーローっぽいんですね。 元は競馬のトップ騎手で、落馬事故で手を痛め、深い心の傷を負っていました。前回の事件で精神的には立ち直ったものの、手の方はついに切断していますが、最先端の義手を試している時期ですね。 離婚した妻との葛藤とうらはらに、義父とは離婚後も親しく、最初は娘にふさわしくない相手と全く存在価値を認めなかった義父との関係が深まっていくのも面白いところ。 1981年、MWA最優秀長篇賞受賞作。
1投稿日: 2009.09.26
powered by ブクログ18 シッド・ハレー再登場 アメリカ探偵作家クラブ賞 英国推理作家協会賞受賞作 傑作です。 詐欺に巻き込まれた元妻を救うために頑張るシッドに、ジョッキイ倶楽部の保安部長からも依頼が入る。 襲われ、傷つけられたシッドとその傷に気がついた元妻の会話が白眉です。 「…あなたの自分本位な考え方、頑固さ。勝つための決意勝つためなら、あなたはどんなことでもするわ。あなたはつねに勝たなければ気がすまないのよ。すごく厳しいわ。自分に対して厳しい。自分に対して冷酷だわ。わたしはそれが我慢できなかったのよ。誰だって我慢できないわ。女は慰めを求めて自分のところのくる男が必要なのよ。お前が必要だ、助けてくれ、慰めてくれ、接吻で悩みをふりはらってくれ。でもあなたは……あなたにはそれができない。あなたはいつも壁を造って、今と同じように、無言のうちに自分のトラブルに対処する。それに、どこも痛くないといっても無駄よ。わたしはいやというほど見てるんだから。あなたは、自分の首の傾きを隠すことはできない、今回はとてもひどいことがわたしには一目で判るわ。でも、あなたは絶対にいわない、そうでしょう、ジェニィ、抱いてくれ、助けてくれ、おれは泣きたいんだ、と?」 言葉を切って、その後に続いた沈黙の中でわずかに手を動かして悲しそうな身振りをした。 「判った?あなたはいえない、そうでしょう?」 長い沈黙の後で、私がいった、「いえない」 ――― 「さよなら、シッド」 「さよなら」私は、ジェニィ、抱いてくれ、助けてくれ、俺はなきたいんだ、といいたかった――しかし、いえなかった。」
0投稿日: 2006.09.09
powered by ブクログ片腕探偵シッド・ハレーが競馬界の不正に立ち向かう中で恐怖に打ち勝とうと奮闘する様にやられる。特に最後の一行!自分にとってすべての小説で最高のラストシーン!!
0投稿日: 2006.01.19
powered by ブクログディック・フランシスでハードボイルドと言えるのはこの小説だけでは。別にハードボイルドの人じゃないけど。
0投稿日: 2005.11.26
