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総合評価

19件)
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    フィクションとノンフィクションの間のような短編作品集。戦時中から敗戦に至るまでの辺境での話が淡々と描かれる。 この時代では、多くの人があっという間に命を落としてしまい、生きている人も今では考えられないくらい辛い思いをしていた。今の時代がいかに恵まれたものであるかが分かる。

    0
    投稿日: 2025.07.26
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    1970(昭和45)年から1982(昭和57)年に各々発表―初出は雑誌に掲載―されている5つの短篇が収められている一冊である。(1篇が1970年だが、残る4篇は1980年前後ということになる。)読み易いボリュームの各篇を順次読み進めると素早く読了に至る。が、自身の場合は1篇を読んだ後に直ぐ「次の篇は?」という感じになり、頁を繰る手が停められなかった。 5つの篇は、何れも第2次大戦末期から終戦の少し後、1945(昭和20)年頃、場合によってその翌年辺りという時代を背景としている物語だ。 表題作の『脱出』には“稚内町”―稚内が“町”から“市”となるのは1949(昭和24)年だった。―が登場する。樺太に戦禍が起こり、脱出をする人達という物語だ。 『焔髪』は、奈良の東大寺三月堂の仏像を「疎開」させ、他所に運び出したモノをまた戻すようにしたという顛末の物語だ。 『鯛の島』は、瀬戸内海の小さな島、作中に明記はしていないが、山口県と愛媛県との間の海域だと思われる場所で、鯛を釣る漁船で働いた少年を巡って色々と起こるという物語だ。 『他人の城』は、沖縄県から各地へ船で疎開するということになって、船が米艦の攻撃を受けてしまい、生き残る少年が辿る経過という物語である。 『珊瑚礁』は、サイパン島で砂糖黍農園を営んだ一家の少年が、戦禍が起こったサイパン島で辿る経過という物語だ。 何れの作品も、表題作の題名の「脱出」がキーワードになるかもしれない。戦禍に巻き込まれた地域から離れる、他地域から離れて独自な慣行が行われていた地域を離れる、貴重なモノを戦禍の危険から離そうとするというような事柄が、各篇の肝ということになる。 『焔髪』は東大寺の僧侶が視点人物となっている。他の『脱出』、『鯛の島』、『他人の城』、『珊瑚礁』の4篇は、何れも「地元の少年」が視点人物となっている。 「地元の少年」が視点人物となっている各篇の中、『脱出』と『他人の城』とが強く記憶に残る。 『脱出』は、戦争の経過の中で比較的影響が少ない様子が続いた「樺太」で、唐突に戦禍ということになり、沿岸部の村から小さな船で対岸の稚内へ向かうというような話し、そういう船を稚内の海岸で迎えようとする話しである。稚内や、樺太の一部については「現在」の感じが判る場所も作中に多く在り、吉村昭の重厚な筆致で描き出される情景が、何やら沁みた… 『他人の城』は、米艦の攻撃で沈んだ疎開船が実は数の中ではそれ程の割合ではなかったらしい中、攻撃を受けてしまって必死で生きようとする主人公が在る。そして、沖縄から九州各地に入った人達の様々な苦労が在って、戦後に何ヶ月間かを経て沖縄に入ってみると戦禍で変わり果てた様子に出くわすこととなるのだ。 作者の吉村昭は、1980年代位迄は「当時を知る、または知り得る人達」の話しを聴く取材を積極的に展開し、戦時中や終戦直後位の時期に関連する作品を多く発表していたという。本書の各篇も、そうした系譜の作品だと思う。 最近、人の生命を擦り減らすような戦禍というようなモノに心を傷める場面も在るが、過去からそれは何度も繰り返されている。その過去の戦禍の周辺で、時代を目撃した少年の目線で語られるような本書の各篇は「今、読むべき!」というように感じた。そして『焔髪』は、千年も大切にされたような、敬うべきとされる大切なモノが翻弄される様を見詰める僧侶の目線を通じて、戦禍の無情さを静かに訴えているように思った。実は作中に在る東大寺三月堂、その仏像の一部を収めた東大寺ミュージアムを訪ねた経過も在るので、作中に在るモノが少し判る。それで中身が何か迫って来た。 このところは「好い本」または「佳い本」に多く出くわしていると思う。そういうことに感謝せねばなるまい。因みに…本書に関しては、実は「稚内市立図書館の司書の御薦め」ということにもなっている。「(稚内の)御当地モノ」という要素も在る…

    2
    投稿日: 2023.06.17
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    終戦前後の脱出に関する短編5編。樺太から、沖縄から、サイパンからの脱出。架空の主人公だろうが、まるでノンフィクションのよう。

    6
    投稿日: 2022.08.01
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    戦中,戦後の混乱期における脱出に関する5つの短編. 「脱出」は終戦直後の樺太からの脱出, 「焔髪」は東大寺の仏像の疎開, 「鯛の島」は瀬戸内の島で長年行なわれていた漁船での丁稚奉公制度がGHQが持ち込んだ民主主義に翻弄される話, 「他人の城」は沖縄からの疎開民を満載した対馬丸が撃沈されたことによって起こる悲劇, 「珊瑚礁」はサイパン陥落と島民の逃避行.

    1
    投稿日: 2021.10.30
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    このレビューはネタバレを含みます。

    我ながら渋いチョイス。渋過ぎる。  戦時モノだけど、舞台は戦場でなくていわゆる銃後。そして東京やら京都やらの中心地ではなく、樺太や沖縄といった辺境の地。おそらくここに書かれていることは完全なフィクションてはなく、限りなく事実に近いんだろう。同じ戦時中でも場所によって全然扱いや状況も違ったと思われ。 しかしホント、ヒトの命や人権が大切にされるようになったのって、ごくごく最近なんだよね。 気になったのは、戦時中の囚人の扱い。戦争に行かずに済み、食糧難の内地で食事を保証される。それでも「じゃあ悪事を働いて服役しちゃれ」なんて輩がいないのは、誇り高き大和魂が健在の時代だった証…と夫君に指摘され、ハッとした次第。菊と刀ですな。

    0
    投稿日: 2020.01.19
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    戦争に関する記録文学。 戦争という現代の我々からすると非日常なできごとについて、描き方が上手い。死体などの「死」との対面については、丁寧な描き方がされており、ぐいぐいと引き込まれてしまう。

    2
    投稿日: 2019.01.19
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    太平洋戦争末期の日本を、少年の目を通じて描いた5篇からなる短篇集。舞台となっているのは、樺太、瀬戸内海、沖縄、サイパンなど、辺境の地である。これまで戦争とは縁がなかった地域が突然、最前線となり、日常と戦争との境目が極めて曖昧で紙一重である状況が描かれている。普通の生活を送っていて、突然戦争の影がそこに忍び寄っても誰もがそれを目の前に迫る来る現実的な危機とは捉えることが出来ずにいる様がそこにはあった。そして、自分や家族がどのようにするかという判断のほんの少しの些細な差が、生と死を分ける無情な結果がその先に待っているのである。戦争と日常が背中合わせである中、誰もがそれを現実として受け止められないままいつの間にか戦場のど真ん中に引きずり込まれた様子を通じて、作者は当時の日本中の空気感を描きたかったのかと思う。

    0
    投稿日: 2018.10.08
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    はじめの「脱出」を読んで、素晴らしく良いとは感じなかったので表題作がこれくらいでは、他もそんなに大したことないのかも…と思いつつ読み進めると、この本のコンセプトが「脱出」というタイトルに象徴されていることがわかり、様々な人々を描きながら、一本の太い棒のようなものが貫かれていることに感心する。バラバラに読むよりまとめて読んだ方が、作者の言わんとすることがよくわかる。そういう意味で良い短編集である。  戦中戦後に、直接戦闘にはかかわらなかった子どもや僧がたとえ命は失わなかったにしてもどのように心身に傷を負ったかが、情緒を排した文章で描かれる。  特に児童労働と、労働させる人々を描いた「鯛の島」、生き残った人々の海上でのサバイバルがすさまじい、対馬丸を描いた「他人の城」が印象に残った。  感情移入してすらすら読める本ではないが、日本文学として若い人にも読んでほしい作品。こういう作品を読む力が近年著しく失われているのではないかと感じているので。

    1
    投稿日: 2017.02.26
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    このレビューはネタバレを含みます。

    吉村昭の3冊目。 硬質な文章であると思うのだけれど、自然の描写が美しく……、その美しさ故に、描かれている時代の悲惨が、より際立ってくる・・・。 「鯛の島」 ・・・なんともやるせない。敗色濃厚な戦況が国民には隠されていたということ自体は、歴史に疎い自分にも周知の知識ではあったけれど、その隠蔽のためにあんなことが・・・。 「他人の城」 ・・・巻末解説文で「神の名によって許されさえする」と描かれた、極限状態での選択……。 生き残った後に心を保てるのかどうか? ・・・自分だったら?・・・ 平成日本に生きる我々には、想像すらできないな。 「珊瑚礁」 ・・・その“地獄”を生き延びた人達が実在したのだよね。 ・・・その彼ら、彼女らが、高度経済成長に浮かれる日本を、どんな気持ちで生きたのだろうか。そして、平成日本をどう見るだろうか。 ★4つ、8ポイント。 2016.12.27.古。 ※子供の頃、夏になると「火垂の墓」などを授業で見せられた記憶が。金曜ロードショー等でも、夏になるとよく流れていたかと。たしか中学生くらいの頃だったかと…。 中学生に「火垂の墓」も、、、まあいいけど、、、、 本書を、高校生の必読図書指定してもよかろうかと思った。

    1
    投稿日: 2016.12.27
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    第二次世界大戦、終戦ごろを舞台にした、民間人の生と死を描いている。 小説だけれど、この5つの短篇に描かれていることは、本当にあったかもしれない。 あるいは、筆者が人から見聞きした、または筆者自ら実際に 見聞きし、肌で感じたことが大いにあるだろう。 特に「玉音放送」の前と後の人々の感情のありようは、戦争を知らない世代にとって、知らないことばかりだった。 個人的には、沖縄が舞台の「他人の城」、サイパンが舞台の「珊瑚礁」が胸に刺さる。

    1
    投稿日: 2016.09.13
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    第二次大戦において民間人の生と死の修羅場を描いた5つの短編。屍体を物としか感じず、他人のことをお構いなく般若となる。取材による事実なのだろう。後世に残すべき小説。2016.1.31

    1
    投稿日: 2016.01.31
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    「脱出」「焰髪」「鯛の島」「他人の城」「珊瑚礁」を収録。離島で戦争にあった少年たちの戦争体験記、といったようなもの。 しかし、単なる体験記にとどまらないのが、吉村昭の作品の見事なところ。 戦争の影響が比較的少ない場合が多かった離島にありながらも、戦争に段々と巻き込まれていった少年たちの姿が見事に描かれている。

    0
    投稿日: 2013.09.21
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    住民を巻き込んで戦場となった場所もあれば、 「鯛の島」のように取り立てて被害のない場所があったことにはちょっと驚きでした。 島に連れて来られた少年たちはその理不尽さを目の当たりにしたのだと思うと その行き場のない憤りが伝わってくるようでした。 本書はどの話を読んでも「日本の敗戦」という事実から目を逸らせなくなります。

    0
    投稿日: 2013.09.19
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    淡々としているからこそ、恐ろしい。 自分だったらどうなるのだろうとつい考える。 気づけば自分も登場人物たちと同じ時間軸に立ってしまっている。

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    投稿日: 2013.08.17
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    終戦直前から終戦直後の戦いの中の少年を掌編で纏めた一冊。スタートは樺太の住民の少年がロシア軍の進行で北海道にたどり着き苦労しながら生きていくさま。中でも沖縄からの疎開船対馬丸に乗り、母・弟・妹ともに潜水艦の攻撃で沈没。死の海の中を弟とともに生き延び、戦後沖縄に戻る少年の姿は痛ましい。まず沖縄で戦闘要員として戦っている中学の同級生達に引け目を感じ船に乗り込み、攻撃を受け沈没での人間性(自分だけの気持ち)、疎開先の宮崎での地元住民からの蔑視。沖縄に帰ってからの米軍の好き放題。結構読み応えがあった。

    0
    投稿日: 2013.07.24
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    戦時から戦後にかけての、戦争に翻弄された若者たちの物語である。5つの物語は、北は樺太から南はサイパンに至る。吉村昭の淡々とした筆運びが臨場感を増す。民間人しかも若者の戦争による悲劇を描く。まさに日常の延長の戦争であり、何気ない平凡な日常から、ある日突然戦争を意識しだし、悲劇に巻き込まれていく様子が恐ろしい。

    0
    投稿日: 2013.03.16
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    このレビューはネタバレを含みます。

    終戦という転換期を様々な場所で,かたちで,生きた人々の短編集。 全体として,たとえば燃え尽きた都会で玉音放送を聞いて・・・という感じではなく,どちらかというとあまり戦争らしい戦争を経験しないで終戦を迎えて,時代の急激な移り変わりを虚ろな目で見つめる,と言った感じ。 終戦と一言に言っても,色々な終戦があったのだなと思わされました。 「脱出」「焔髪」「鯛の島」「他人の城」「珊瑚礁」の五編が収録されているのですが,私の印象に残ったのは「他人の城」と「珊瑚礁」。もちろん他の作品もとてもよかったですが。 「他人の城」は,沖縄からの学童疎開船「対馬丸」に乗船していた中学生の話。 学童疎開船である対馬丸・亜米利加丸の沈没・・・民間人の多くが犠牲になったそうです。疎開船が沈没なんて,気の毒過ぎます。気の毒の一言じゃ済みませんが,乗っている船が沈没したらもう,為す術がないですね・・・。 対馬丸に乗っていて,沈没して,たくましく漂流して救助されるところまででも十分ドラマチックですが,さらにこの小説の魅力は,本土に残った学友たちが沖縄戦を闘い,散っていたことに対して主人公が負い目を感じていること。 疎開船が沈没するというだけで十分な被害者ですが,やっぱり本人の感情としてはそれだけでは済まされない。そういう葛藤が描いてあるのが良かったです。 そして改めて沖縄戦の悲惨さを思い知りました。日本で唯一決戦の地となり,10万人以上の人々の命が失われた沖縄戦。私の実感として,戦争と言えば沖縄戦,として語られることがあまりないように思うのですが(戦後生まれ,本州在住として),もっと学ばれて然るべきだと思いました。 「珊瑚礁」はサイパン島に住んでいた日本人が,米軍上陸によって山中を逃げ惑い,家族を失いつつ,捕虜になり,戦後を迎える話。 敵を恐れて家族で山中を逃げ惑う。うう。怖い。こんな生活耐えられないよなーとつくづく思いました。 毎日安心して布団で寝られる幸せよ。 昭和の転換点・・・とても興味深い短編集でした。 事実の悲惨さやむごさのようなものが中心に描かれるのではなく,主に少年の心の移り変わりのようなものが中心に描かれていて,そこが良かったです。

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    投稿日: 2011.11.23
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    少年たちが投げ出された戦場。南樺太の寒村・奈良の東大寺・瀬戸内海の漁村・本土への疎開を目指す対馬丸・サイパンの砂糖黍の町。

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    投稿日: 2011.08.13
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    実際に起こった事件をもとにかかれている小説です。なにがすごいって、吉田先生がこんなとこまで調査しているのがすごい。 中篇が数本収録されています。

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    投稿日: 2007.06.12