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総合評価

16件)
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    動物短編集という言葉からは想像できないくらい鬱々とした内容。 誰も幸せになってないし、動物たちも非常に可哀想。 最初の数話読んだ時点でああこれは良い方向にいかないだろうなと思って入るけど、最後まで若干の希望を持って読んで、無事打ち砕かれた。 鳩レースや軍鶏はどんなものかよく知らなかったから勉強になった。

    0
    投稿日: 2025.08.05
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    このレビューはネタバレを含みます。

    動物に関連する五編の短編集。 羆(ひぐま) 蘭鋳(らんちゅう) 軍鶏(しゃも) 鳩 ハタハタ 人間の強さや弱さや、動物の不思議さや、動物の命を簡単に奪ってしまう傲慢さや、逆に命を奪われてしまう残酷さや、それぞれ生きるって大変なんだなと、他の命を奪わないと生きていけない動物の宿命と。 羆の主人公がほとんど人間と断絶したような暮らしをしていたのが、結婚したとたんに山に入れなくなってしまった描写、人は強くもさみしい生き物なのだなと、巨大なくまを打つ非情な人間のヒューマニティを感じた。

    0
    投稿日: 2024.11.21
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    短編集全て、吉村さんらしく、描写が克明で実際に合った事件が本当に解りやすいです。その時代やその土地の風習など、驚かされる事が多くて、大変興味深い話ばかりでした。

    0
    投稿日: 2024.10.05
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    熊や鳩、ハタハタなど、生き物に執着し、人生を狂わされていく人達の短編集です。 どの話も最後は嫌な感じで終わり、スカッとはしないのですが、先が気になり読んでしまう、いつもの吉村先生パターンです。どの話もよく取材をされて書かれているのがよくわかります。 やっぱり1番怖いのは人間だと改めて思い知らされました。

    0
    投稿日: 2024.09.01
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    全体的に暗澹たる短編集だった。表題作「羆」は、北海道の土産物店で飼われていたヒグマによって殺された、飼主である銀九郎の妻の火葬から始まる。そして壮絶な復讐劇は、ヒグマの権作の射殺で幕を下ろすが、もしかしたら飼主を忘れなかったのでは? という疑問を残す。畑正憲著『さよならどんべえ』を読んだ自分には、銀九郎に斃されることを悟った行動のように思えてならない。「鳩」では、レース鳩を題材にした少年漫画を思い出した。だが、その漫画は陽、「鳩」が陰である。

    0
    投稿日: 2024.07.02
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    動物をタイトルにした5話ではあるけど、これでもかと人間を描ききった心理小説だった。 それぞれの理由で生き物たちに取り憑かれた男たちの話。どれも共通して閉鎖的な田舎町が舞台で、鬱屈したやるせなさと物悲しさが漂い、つい登場人物に感情移入しながら読み進めた。良くも悪くも親から受け継いだものが共通してるのも印象的。 どこか報われない、世間から少し外れた場所で生活する人間たちが、あらゆる動物を道具や自分の代替として生きがいにしていく。 3篇めの「軍鶏」がまさにそんな感じ。足の悪い自分の代わりに鶏たちを荒々しく闘わせることで日頃閉じ込められたストレスを爆発させている。闘うことしか知らない軍鶏に憧憬を抱く主人公が無垢というか愚かというか。生き物を育てるということは愛情も間違いなくあるんだけど、結局は自己満足の部分が大きくて、自分の喜びの為の道具にしか過ぎないのかなと虚しくなる。 5話すべて暗くてキツイ終わり方だけど不思議と後味の悪さはなくて、彼らの今後に思いを馳せてしまった。

    1
    投稿日: 2022.01.28
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    10/1 読了.動物への異常な執着を見せる主人公ばかりが登場する短編集.動物の命の異様な軽さ、粗末に命を扱う人間の醜さが絡み合って独特の雰囲気が全編に漂っていてなかなかのインパクトだった.

    1
    投稿日: 2021.10.07
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    動物小説集と銘打ってはいるが、これは人間の物語。執念、悲哀、偏愛、劣等感、孤独...。5編全て暗いが結びがそれぞれ秀逸。「蘭鋳」「軍鶏」「鳩」が好み。生き物を育てるのって大変だ。

    5
    投稿日: 2021.03.16
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    表題作の『羆』の他、『蘭鋳』『軍鶏』『鳩』『ハタハタ』とそれぞれの動物の生態をしっかりと調べたうえで、それに関わる人間模様を描いた短編集。 吉村さんは長編よりも短編のほうが筆が鋭く、短いなかに印象的な情景を挿入して、人間心理をえぐるように描ける作家だと思います。 それぞれの小説の時代設定は昔ではあるけれど、久々に文字から景色やにおいを感じる力強いお話を読みました。 心に残る短編集でした。

    1
    投稿日: 2020.09.12
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    このレビューはネタバレを含みます。

     動物と人間の濃い接点を描き出す短編集。   「蘭鋳」 ランチュウの飼育を家業とする義理の兄。その父の後添いだった母。その連れ子でまだ少年である息子の視点で描かれる家庭ドラマ。鑑賞のために奇形的に作られた魚の生育を背景に、大人たちのエゴが逆巻く。ラストの少年の逃げ場のなさはそのまま水槽の中の飼われているランチュウと重なり、読む者の心を引き裂くような読み味。   「羆」 母を殺した羆を倒し、その仔熊を飼う熊撃ちの男。3年後に起きる悲劇。飾り気を排した文体の気味のよさと、場面に淡くにじむ感情の影。ラストの寂しい味わいは格別。   「軍鶏」 簡潔な文体で、どこか満たされない青年が闘鶏にかける姿を描く。手を掛けて育てられても、戦いでいずれ命を落とすか盲目になっていった銘鶏、嵐、正宗、黒駒の3羽が忘れられなくなる。  「鳩」 鳩レースにのめりこみ破滅する青年の話。君子という同好の恋人もいたはずが、暗雲が立ち込めていくばかりで結末へ。『..君子や弟の鳩に対する熱意は、世俗的なものにひきずられてくつがえるような脆弱なものだったらしい。かれらは、初めから鳩を飼う資格に欠けていたのだ。父は、家産をかたむけ、妻に失踪されても鳩を飼うことはやめなかった。...それがレース鳩飼育者の本質であり、自分も父と同じような人間でありたかった。…』(P190)クズだ。  「ハタハタ」小さな子供たちまでもが不漁を心底心配する漁村で、遭難事故が起き、遺体捜索が終わらないうちにハタハタ豊漁が訪れ、父の遺体が見つからない少年はやがて、遭難遺体が長く留まる港が豊漁になるという迷信により漁村の人々が父の死と長い不明を喜んでいるという会話を耳にする。父を失った少年の家庭は豊漁の恩恵は一切受けることない。母は少年の村を出ようという嘆きを聞いても貧窮と労苦の中で少年と弟妹達を育てる日常を変える様子はない...という小説だった。  乾いた文体でバランスよく悲惨さがかかれる為それほど負担感はなく読み終えた。

    2
    投稿日: 2017.11.23
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    多くの人が指摘しているが、どれもこれも悲惨な話なのだが、読後感はそんなに悪くない。 動物小説集とうたってあるが、やはりこれは人間を描いている小説集である。これらの作品が書かれた時点では、オタクなる言葉はなかったと思うが、登場する人物は究極のオタクといってもいいかもしれない。明るい気分にはなれないが、小説としては面白い、

    4
    投稿日: 2016.10.31
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    羆、蘭鋳、軍鶏、鳩、ハタハタをテーマに繰り広げられる人間模様が描かれている短編集。嗚呼、暗い。何て暗いんだ。この人の作品を読むと必ず頭の中の映像化は曇天でモノクロ色に染められてしまう。人生の喪失感や悲哀が淡々と語られ、読後のむず痒い程のやるせなさはいつまでも尾を引く。動物に携わる人間達の生き甲斐や息苦しい程の嫉妬、卑屈感、劣等感がひしひしと読み手に伝わり心は鉛の様に重くなる。そしてラストで一瞬光がさし始める予感を感じさせる演出が堪らない。やっぱり吉村昭は面白い。そして凄い。

    2
    投稿日: 2016.09.22
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    このレビューはネタバレを含みます。

    羆、蘭鋳、軍鶏、鳩、ハタハタ 人と獣の織成す5編。人が動物をひきまわしているのか、動物が人をもてあそんでいるのか?人と獣の間には、人間社会という重い空気が流れる。少年も老人も、男も女もそれぞれの動機ときっかけで獣と関わりあい、それぞれの結末に直面する。筆致は硬質で上品だが、どの作品もセックスとバイオレンスに満ち満ちたノワールで情容赦ない傑作短編集。

    2
    投稿日: 2016.07.12
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    動物をテーマにし、動物と関わる人間の内面を描いた短編小説集。『羆』『蘭鋳』『軍鶏』『鳩』『ハタハタ』の5編を収録。 5編ともに動物をタイトルにしているが、描かれるのは人びとの様々な人間模様と心情である。従って、登場する動物たちは脇役に過ぎぬのだが、動物たちは常に人間の営みを見つめているのだ。こうした客観的な極めて冷静な視点が面白い。

    1
    投稿日: 2015.06.02
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    このレビューはネタバレを含みます。

    動物に関する短編が5編,収録されています。 と,いってもファンシーでチャーミングでキュートな話ではありません。 最愛の妻を飼っていたヒグマに殺されてその復讐をする男の話。 蘭鋳(らんちゅう:頭がぼこぼこしてる金魚)の飼育に異常なまでに夢中になる兄とその兄を取り巻く人間関係を子どもの視点から書いた話。 軍鶏(しゃも)という攻撃的な鳥を育てて、戦わせる軍鶏師として軍鶏に夢中になる男の話。 鳩の長距離レースに夢中になる男の話。 そして東北地方のある時期に押し寄せるというハタハタという魚と,その地域にすむ家族が排除されていく話。 どれも,人間として何かが欠けている人たちが登場して,その埋め合わせに動物の世界に没頭しているような感じです。(最初の羆と,最後のハタハタはちょっと毛色が違いますが。) 特に「鳩」の救われなさがすごく好きでした。この主人公はこのあとどうやって生きていくんだろう,鳩レースは辞めるんだろうか?という自由な想像の余地が存分にあり,それを考えるだけでも楽しめる本。 吉村昭はきっとこの動物の世界も綿密に調べて書いたんだと思いますが,どれもこれも私にとっては馴染みのない異世界ばかりで,すべてに興味が惹きつけられました。 動物を育てて競わせる世界がこんなに色々あったとは。それだけでも読む価値があります。驚愕。 とても面白い短編集で,大当たりだった!と歓喜したんですが,このあと「羆嵐」と「破船」を読んで,意識は完全に持って行かれましたw でもこれはこれですごく面白かったです。絶版なのがたいへん惜しいです。

    1
    投稿日: 2011.11.13
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    「羆」吉村昭。短編集。「羆」は悲しい物語。「蘭鋳」はなんだかエロティック。「軍鶏」は暗い。「鳩」もっと暗い。絶望。「ハタハタ」これまた暗い。前に読んだのも暗かったから暗い話が多いのかな。 #dokusho posted at 02:14:28

    1
    投稿日: 2011.09.25