
総合評価
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powered by ブクログ三十歳 何歳になったからこう生きなくちゃとか、そんな気持ちを持たずにもっと自由に生きていいんだよとエンパワーメントしてくれる作品でした。
0投稿日: 2025.06.28
powered by ブクログ好きな作家・長嶋有さんの作品、久々に読んだことのない作品を…と手に取った本作。 いやぁぁぁーーー、この作品めっちゃ素敵ですねーーー( ̄∇ ̄) 長嶋有さんは何作か読みましたけど、一番最初に読んだ「猛スピードで母は」を読んだときの衝動を思い出させてもらった気がしました… そうそう、長嶋有さんの良さはコレだよなぁ…と。 一言で表すと「もう空気感最高過ぎ」なのかなと…(´∀`) 個人的には「エモ写実主義」ってワードが浮かびました、けっこう気に入ったんだけどどうだろう…(笑) 潔い装飾しすぎない文章、密度が濃すぎず作品全体に漂う程良いヌケ感、けっして現実を美化し過ぎない(自分はそこがとても写実的だなと感じる、現実っちゃこんなもんよねのラインを逸脱しない)、でもそれでいて希望を忘れない前向きな物語…言葉にするとそんなところが好きなのかなぁと。 上記の良さがあるので、短編とはとても相性が良いんではないかな…とも思ったりもしました。 猛スピード…に続く代表作にして良いんじゃないかなと。 最近アウトドア本ばっかりでサボっていたので、読書熱を復活させてくれた長嶋有さんに感謝( ´ ▽ ` )笑 <印象に残った言葉> ・こういうシチュエーションの映画があるな。孤独な男と女の子が旅するような。比べれば現実はいつも垢抜けない。(P29) ・トレイから瀬奈の忘れていったCDが出てきた。ビールを飲みながら改めて聴いてみた。夢は信じるだけじゃ駄目、とかなんとか、聞いたふうなことを歌っていた。(P38) ・あぐらをかく姉をみるのは初めてのように思う。忍び込む姉も金庫やぶりをする姉も初めてなのに、私が感じ入ったのはあぐらだった。(P45) ・弟は階段の途中で立ち止まった。振り向くと今度はジャンパーのポケットから蜜柑を取り出した。弟はその場で皮を剥き、三つに分けると、姉に二つ手渡した。姉は振り向いて私に一つくれた。(P104) ・「そうか」とあっさり納得した。僕に軽く微笑みかけるとまたすぐに目を閉じた。僕は二つ並んだ横顔を横目に、成田までをついに眠らずに過ごした。(P144) ・それから、自分でも信じられないほどの大きな声で叫んだ。声が出尽くすと、また息を吸った、金切り声をだした。声を振り絞ると体がびりびりと震えるのが分かった。手をにぎられて、目と耳が熱くなった瞬間に似ていると思った。はずみで目から涙がぽろぽろと出てきたが、気にせずに叫んだ。悲しいのだから、涙は出てもいいのだ、と秋子は思った。(P216) <内容(「BOOK」データベースより)> 人が一日に八時間働くというのが信じられない。八という数字はどこからきたのだろうか。なんだか、三時間でいいんじゃないかもう……(「夜のあぐら」より)。なぜか隣室の小学生の娘を預かることになった失業中の俺のちぐはぐな一夜を描く表題作。真夜中に実家の金庫を盗むはめになった三姉妹を描く「夜のあぐら」。ロードムービーの味わいの「バルセロナの印象」。そして20代終わりの恋をめぐる「三十歳」。リアルでクールな、芥川賞受賞後初の短篇集。
13投稿日: 2023.08.20
powered by ブクログエリザベス女王が亡くなって頻繁にエジンバラというフレーズを聞いてたタイミングで、あ そうやと思って読んだ。タンノイのエジンバラってそういうこと〜?って表題作読んでなった。四作とも題名が出てくるタイミングが絶妙〜と思った。と同時にそこを題名にするんやおもしろいという感覚にも。
1投稿日: 2022.09.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
短編集。表題作は、隣家の母親から娘を預かる男も、男に預けられた女の子も、どこか緩い。山も谷もないが、一期一会の思い出には十分な一夜の話。「夜のあぐら」愛人、ニート等々、複雑な家庭環境ながら陰湿な感じはなく、三姉弟や父娘の淡泊で不器用なコミュニケーションが目立つ。姉妹が、実家の金庫を盗もうとする様子もどこか笑いを誘う。「バルセロナの印象」弟夫婦と姉のスペイン旅行。「三十歳」哀愁が残る読後感。
1投稿日: 2022.07.26
powered by ブクログ長嶋有さんの作品、久々に読んだ。 一番印象的だったのは夜のあぐら。 大人になってからのほどほど距離感のある兄弟関係。父の体調悪化で、実家に来て初めて知る新たな父の愛人など、場面に入り込んでしまう描き方が素敵だ。 最後の三十歳も面白い。ピアノと関係のない仕事がいいと選んだパチンコ屋。そこでの出会い。 ひとつ一つの判断、エピソードが、そう考えることあるなあと思う。淡々としたかきぶりだけど、心地よく読み終わった。
1投稿日: 2022.06.29
powered by ブクログ「バルセロナの印象」 「あれだけが楽しみだった」という、バルセロナオリンピックのキャラクターグッズをめぐるやりとりが面白かった。 手に入れて舞い上がるほどうれしいわけでもなく、失くして塞ぎ込んでしまうほどでもない。 でもそのくらいやってのけたのと同じだけ、連れの二人を奔走させる。 誰の願望も取りこぼしてはならない。悔いが残ってはいけない。せっかくスペインまで来たんだから! この意地こそ、海外旅行の醍醐味なのかもしれないと思った。 大人らしい諦めのよさを大人が手放す数日間。 けろっと日常にもどるところまで想像できて、それも楽しい。
2投稿日: 2022.03.21
powered by ブクログ■きっかけ netflixのthe crownを見ていて、エリザベス女王の旦那フィリップ殿下が「エジンバラ公」と呼ばれてるのを聞いて、突如「タンノイのエジンバラ」という単語を思い出した。 ■概要 突然アパートの隣人の女性から小学生の女の子を預かってほしいと言われた。その子は部屋でタンノイのエジンバラに興味を持っていた ■感想 長嶋有の文書って落ち着くなー。久しぶりに小説読んだけど、なんの特徴もないエピソードをこんなに楽しく読ませるなんてすごい!読後爽やかな気持ちになりました
1投稿日: 2022.03.03
powered by ブクログ長嶋有の短編集。淡々と何が起こってどうしたということが流れるように書かれており、伏線や表現など何も考えなくていい作品。 公園で突然1万円を渡され、隣家の娘を世話するように依頼される。ステーキを焼き、家で一緒に食べ、娘の持ってきたCDを聴いてみる。聴くのは、祖父の遺品のオーディオシステムだ。 短編が4篇。全編にに特徴的なのは表題作のとおり、固有名詞やそれぞれの特徴がこれでもかと描かれていること。小川洋子「原稿零枚日記」のときに感じた、今の小説に不足している点が、固有名詞が少なすぎる問題だが、この作品群に感じることはない。 それぞれの作品で、情景はサラッとではあるがかなり細かく描かれる。逆にそれらが多すぎて、内容が頭に入ってこないという人も多いだろうが、そもそも全部読む必要など無いのだ。 それはそうと、中間の二作(金庫とバルセロナ)は、ちょっと長すぎるんじゃないかと感じる。特に金庫の話は、過去に戻ったんだか現在なんだかがフワフワと不明瞭で、弟の立場がよくわからないのはよろしくない。女なら女の話、男なら男の話にしないとダメなのかなこの人。バルセロナも自分の話なのか、自分を見ている妻の話なのかという不鮮明感がいただけない。その点、表題作はそこまでのものはないので非常に好感。 最後の「三十歳」はこれらの中で、やはり頭一つ分以上飛び抜けた感じを受けた。固有名詞にこだわらず、淡々とした日常と不安と逃避がうまく描かれていたと思える。これだけだと☆4。 オチを求める人には向かない。こういう小説書きたいな。ブログで始めてみようかな。
1投稿日: 2019.11.27
powered by ブクログ「タンノイのエジンバラ」「夜のあぐら」「バルセロナの印象」「三十歳」の4編収録した短編集。 大傑作、とはいかないまでもいずれも秀作揃い。 個人的には「三十歳」が一番好き。 長嶋有の小説は、情景が在り在りと目に浮かぶところがいい。 しかもその情景は何の変哲もない平凡な街だったり建物だったり部屋だったりする。 風景が人の生活や人生と結びつき、情景となる。 「三十歳」に、パチンコ屋の屋上のシーンがあります。 これがいい。 「パラレル」にも屋上の場面があったけど、ビルの屋上という場所は、世間から疎外されているようで離れきれない、むしろ世間を俯瞰して眺めてしまったりする、独特の雰囲気をもった空間で、それが小説の雰囲気とばっちり合っています。 もう一つの特徴は、「家族」が描かれていること。 家族、中でも親子や兄弟姉妹といった、子供のころからひとつ屋根の下暮らしてきて、大人になるにつれ何時の間にか「ずれ」が生じてしまったような、微妙な心理的距離を描くのがとても巧いと思います。
1投稿日: 2019.01.06
powered by ブクログ佐藤正午さんとかこの方とか、作品というより、こういうのを書く「人」として好き。もちろん作品もいい。とても静かで切なくて温かくて、本の中のひとたちと仲良くしたくなる、1冊。装丁も大好きな色、デザイン!
1投稿日: 2018.12.20
powered by ブクログ「夜のあぐら」の中に”定見が無い”という言葉が出てきます。なるほど、どの作品の主人公も定見が無く、周りに流されていく人々です。同じように”定見が無い”人を良く描く作家として川上弘美さんが居ます。 しかし、この二人の雰囲気は随分違います。川上さんの主人公達は行く先不明のボートに乗っているものの、周りはゆったりとした流れで、波に揺られて暖かくて居心地はなかなか良さそうです。一方、長嶋さんの主人公は、周りの岩にゴツゴツぶつかりながら流されています。なんだか迷惑そうなのですが、かといって必死に抵抗をすることも無く流されているようです。 どうも、川上さんの世界の方が好きですね。 ただ、この長嶋さんも悪くない。もう少し読んで見ましょうかね。
1投稿日: 2017.10.30
powered by ブクログ同じ団地の隣家に住む風変わりな女の子の世話を押しつけられた男と彼女との、ひと晩の交感を描いた「タンノイのエジンバラ」。3人姉弟と義理の母親との確執を描いた「夜のあぐら」。半年前に結婚した主人公と妻、半年前に離婚した主人公の姉の3人組によるバルセロナ観光の物語「バルセロナの印象」。そして、パチンコ屋の景品係としてアルバイトをする主人公女性のバイト仲間との日常にスポットを当てた「三十歳」。現代家族と個人の関係のありようが、長嶋有ならではの独特の視点と状況設定によって描かれる。 作者の筆が描き出すのは、失業中の男と少女の束の間の疑似家族的な関係であり、普段は疎遠の姉弟が目的を達成するためにいっとき結束することから始まるドラマであり、海外という逃げ場のない空間での肉親者同士の緊張関係であり、著者自身の年齢にも重なる30歳という微妙な年齢に達した女性の内面の物語である。
1投稿日: 2017.10.29
powered by ブクログ個人的長嶋さんブーム再来の三冊目。 表題作は読んだことあるようなきがしたんだけど、他のはたぶん読んだことない……。 タイトルのつけ方が本当にすごいと思う。 「タンノイのエジンバラ」なんて、私にはまったくなんのことかわからなかったもん。 「そこ? それをタイトルにしてしまうの?」と思った。 他の話もすべて、タイトルから話が全然想像出来ないし。 話としてはどれも、特に何か大きな事件が起こるわけでもなく、淡々としているんだけど。 でも淡々とした話をおもしろく書ける才能ってすごい。
1投稿日: 2017.01.08
powered by ブクログちょっとダメでうまく世の中に居場所を見つけられない人たちがゆらゆらたゆたう日常物語。なんでもない、何も起こらない日々だというのになんでこうも惹きつけられてしまうのか。 言葉運びと感情の切り取り方に不思議と引き込まれます。ちぐはぐでいびつでだからこそおかしみがこみ上げるような日々。
1投稿日: 2017.01.04
powered by ブクログ4篇とも30歳前後の、人生というマラソンで集団から遅れていて、尚且つその状況を諦めの境地で受け入れている様子の人物が主人公になっている。とても共感できた。この作家は子どもから大人、女から男まで年齢性別を問わず「生身の人間」を描き出すのが本当に上手くて感心してしまう。文字を読んでいるだけで、人物像が確かな肉体を持って浮かび上がるような感じがする。特にその人の歩んできた歴史がありありと感じられるのがすごいと思う。 どの話も面白くて順位をつけるのは難しい。似たような主人公を設定しながら、それぞれ違う味わいがある。けれど強いて言えば『三十歳』が一番好きだろうか。人生における一歩を踏み出す物語がなんだかんだでとても好きなのだが、最も明確に前に一歩進んだのはこの話ではないだろうか。どこか自分のことも他人事のようだった彼女が、最後に思いっきり泣くことができてよかった。
1投稿日: 2016.11.23
powered by ブクログ短編集、どれもたいへんよろしく、読んでるうちはそれが一番おもしろいと思ってたのに、最終的にはぜんぶおもしろい。 自由気ままに生きているような人をたくさんかいておいて、「なんでもかんでも自分の意志で選んで生きてこられたわけがないでしょう」って言うの、お前がゆうなやって怒りたくなるくらい大事な一冊になった。
1投稿日: 2015.12.15
powered by ブクログ出来事が地味なわけではないのに、静かな印象を与えてくる。 夜のあぐらと三十歳が特に好き。主人公たちが一見淡々としているような語りに読めたせいもあり、ラストの秋子が叫び、泣くシーンはとても胸を突いた。夜のあぐらだと弟が格好良かったのと、姉が金庫を盗めず泣くところにグッときた。 鈍感な主人公、ミネラルウォーターくらいしか入っていない冷蔵庫、など共通している部分がままあったがわざとだろうか。
1投稿日: 2014.11.18
powered by ブクログ【本の内容】 隣家の女の子を押しつけられたり、実家の金庫を盗みに行くはめになったり。 人生には、そんな日がめぐってくるのだ。 話題の芥川賞作家、待望の最新短篇集。 [ 目次 ] [ POP ] 長嶋有さんと川上弘美さんは似ている(もちろん作風がですよ。外見は似ていない)。 と、思う。 ご賛同いただけるでしょうか。 以前川上さんの小説が「俳味がある」と表現されているのを目にした覚えがあるのだが、言い得て妙だわと膝を打った覚えがある(長嶋さんも川上さんも俳句を詠まれるとのことだし)。 解説に「長嶋本のなかでもっともいい」と書かれた本書だが、私もすごく主人公たちに共感した。 彼らの“いろんなことが割とどうでもいい”性格というのが、他人事と思えなかったからだ。 今でこそ、結婚して3人の子の母となり、普段そんな気持ちは無意識に押さえ込まれているわけだが、もしも自分ひとりだったら楽な方へ楽な方へ流れていってしまいたいという誘惑に勝てないような気がする(それが結局はのっぴきならない状況へ追い込まれる結果になったとしても)。 実際にはそうはしません。 しませんが、小説で読むのはオッケーですよね。 [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
1投稿日: 2014.08.29
powered by ブクログ二冊目の長嶋有。短編集。 文体の柔らかさに、男性作家だと分かっていても時折性別を錯覚してしまいそうになる。 淡々とした日常の一部を切り取った作品が多い中、「夜のあぐら」は他の作品と少し毛色が違ってコミカル。でもこの作品の家族にはちょっとついていけず、特に姉の振る舞いには読みながらいらいらさせられた。 好きなのは「タンノイのエジンバラ」と「三十歳」。
1投稿日: 2014.07.10
powered by ブクログ短篇集。 どうも文章が頭に入ってこない。 職安通いをしている主人公(男)が、隣家の女に押し付けられた娘の世話をする一日を描いた表題作がいちばんわかりやすかった。 正統派な純文学なのだろう、こう波長が見事に合わない感。 好きな人は好きなのね、という感じだった。
2投稿日: 2014.03.20
powered by ブクログ中学の頃から、一応オーディオ数寄のつもりなんですが、あまりタンノイが好みでない。一つには、バックロード・ホーンみたいな仕掛けが嫌いなのと、コアキシャルにこだわるが故に2wayにならざるを得ない制約性、さらに、熱心なファンの存在が、ちょっと引くという感じ。だから、エディンバラってどういうモデルだからよく分かってませんが、でも、アパートなんかに置けるの?という印象はあります。これがたとえば、アパートの一室に4350を置くなんていったら、「おいおい」と自信を持って言うでしょう。そうだったらよかったのに。その点では、30歳のグランドピアノも、そういう感じで、本来の価値を発揮できない場所に置かれています。それが、主人公の気分を象徴的に表しているのかも知れません。でも、かならず、それをほめてくれる人……、まあ、高級スピーカーをほめるのが幼女だったり、ピアノをほめるのがホストだったり、ほめるべき人としてちぐはぐではあるのですが、そのちぐはぐぶりも、置き場所の違和感とリンクしているのかも。 全然関係ありませんが、僕だったら、ボロアパートにはスペンドールのBC2でも置きますよ。それも、サランネットが破れちゃったからといって、ハードオフあたりで投げ売りされてた中古で、ならしてみても「これが本来の音なのかどうか不安だなぁ?」くらいの痛み具合のヤツ。
1投稿日: 2013.02.07
powered by ブクログブクログの談話室で「神様のカルテ」や「デッドエンドの思い出」が好きな者にお薦めな作品を伺って、薦めて頂いた作品でした。出会いに感謝!素敵な本、素敵な作家様に出会えました。 何作品か挙げて貰った中で、タイトルの持つ得体の知れなさ、というのか、何というのか、兎に角やたらと癖になる響きに惹かれて、これは読もう!って。その時点では、長嶋有さんのお名前すら知らない状態でしたが、レビュー等を読む限りではこれは行ける!と。 (本屋さんで見つけた順番の関係で、芥川賞作品の「猛スピードで母は」を先に読むことになりましたが) 二つの作品集を読んでみて、長嶋有作品はとりあえず好きになりました。 福永信さんが解説の中で使われていた「居心地の悪さ」が随所に表れているという表現が適当かと思います。それでも、その「居心地の悪さ」と向き合いながら、その場に留まって格闘する人達、、、こういうお話が大好きなのです。極端な悲劇が起きているわけでも無い。スーパーマンが出てくるような、予定調和のハッピーエンドな展開が待ち構えているわけでも無い。下手すれば大したドラマ性も無くて、小説にする程のお話なの?と思う人も出てきそうな、第三者にとってはどうでもいいかもしれないような、個人的なお話が大好きなのです。正義を振りかざすだけの人間も、完全な悪人も出てこなくて、混沌の中で生きている人間だけが出てくる。(本当は、混沌の中に居ても、正しい方向へ向かいたい、だけど正しさって何なんだ、って、そこで格闘している人間の姿が一番好きだけど=つまり「神様のカルテ」のイチさん達のことね) 一つずつを見ていくと、表題作「タンノイのエジンバラ」はリアルなぐだ~っとした、生ぬるそうな空気感がたまらない。研究課題や参考文献以外は、頻繁に読み返すということをするたちでは無いのですが、「タンノイ~」は超短編だし、ちょこちょこ読み返したいと思いました。「三十歳」の持つ倦怠感と登場人物たちの道徳観は私にはついていけないところにあったから、最後に読むんじゃなかったな、と思ってしまった。魅力が無かったわけではないのだけど、、、何だろう。色んなものが足りなさすぎる、よしもとばななの「キッチン」みたいな、、、いや、ちょっと違うな。ただの好みの問題でしょうか。「バルセロナの印象」の主人公の「居心地の悪さ」加減は少し可愛らしい位で、クスッと笑えてしまった。それから、バルセロナのガウディ建築はいつか観に行きたいなーと思っているので、一緒に観光している気分にもなれました。「観光小説」ってやつだ。そして一番好きで、泣けてきそうだったのが、「夜のあぐら」です。お姉さんの、姉という立場故の心労というやつが、なんとなーく分かってしまうものですから、金庫を盗むことが無理だと分かって号泣してしまうお姉さんの気持ちを考えると辛かった。普段はしれっとしていたり、あんな風に号泣してしまったり、というのは、「お兄さん」には無いことで「お姉さん」ならではなんじゃないかな、と思う。だけど、作者は男性なんですよね、、、これが驚き。なんでじゃ! この短編集と「猛スピードで母は」を読んで、次はどの作品を読もうかな。芥川賞作家って敷居が高いわーと思っていた自分はどこへ行ったのやら。最近読みたいと思う作家さんはさりげなく芥川賞作家さんであることが多い。
1投稿日: 2013.01.16
powered by ブクログ長嶋氏の短編集なのだけれど、初期作品のせいか、今一つこじんまりとしているというか、消化不良というか・・・
1投稿日: 2012.12.30
powered by ブクログ拘りがあるのかないのか良く分からない主人公が淡々と生きている様子を描いているだけのようで、妙に気になる不思議な作品です。この微妙な感覚が長嶋氏の持ち味と思っていますが、それだけに共感度も作品ごとにムラが大きい印象です。特に表題作は???でした。
1投稿日: 2012.02.04
powered by ブクログタイトル、ぐっときます。長嶋有の小説に出てくる女の子は、ぼんやりしてるようで、しゅっとしてて、かわいい。
1投稿日: 2012.01.15
powered by ブクログ随所に、ああ、とか、そうそう、っていう場面が現れてどんどん読めます。そういう何気ないことを書くのが極めて上手いですよね~ 大好きな作家さんです。
1投稿日: 2011.12.03
powered by ブクログ身近な人とのやり取りが坦々と描かれる同じテンションの短編集。長嶋有は本当に場面描写において会話、しぐさ、気になる固有名詞のミックスが上手すぎる。
1投稿日: 2011.11.21
powered by ブクログ一定のテンションで話が進むイメージ。登場人物のテンションも(特に主人公)なんとなく一定。 でも行動の方は結構アクティブで、文章はつらつらしてるけどきっとこのときのテンションはやばかったんだろうな、とか想像しながら読んだら面白かった。
2投稿日: 2011.11.12
powered by ブクログ表題しか覚えていない。 さらさら流れるような文章。頭の中をさらさら流れていった。 …あんまり引っかかるところがなかったかな~。
1投稿日: 2011.11.09
powered by ブクログ何を考えているのか分からないと人から言われる、 周りの人の空気を読んだ発言が苦手である、 深い理由はないが物事が長く続かない、etc この作家は、そんなちょっとダメな人間を書くのが上手い。 異常に上手いので、ちょっと気持ち悪い。 この短編集の登場人物たちの考え方・心の動きを追っていると、 これは自分のことを書いている? いや寧ろ自分が書いたのではないか?ぐらい、 皮膚感覚と一致した表現がされる。 オエッ
1投稿日: 2011.05.22
powered by ブクログうまいしおもしろい。 長嶋有という作者は強烈なインパクトのある話を書くわけではないけれど、なんかあの作家すきなんだよね、と私の頭に必ず浮かぶ。 この短篇集はそんな作者の長所が盛り込まれている。 まず、説明が少ないところが好き。 情景描写だったり登場人物たちの輪郭からじわじわと話の核を攻めてくる。 そして最終的に読者に不明瞭な点を残さない。 2人の姉と引きこもりの弟の奇妙な話を描いた『夜のあぐら』では特に、そう思った。話の組み立て方のうまさが際立っている。 また、人間の描き方がとてもリアルで、急に気が変わったりする。このキャラクターはこういう人だから、とかそういうセセコマシサがない。キャラクタではなく、まぎれもなく人間。 あとは単純に言葉の選び方が好き。 タンノイのエジンバラを題名にもってくるあたり、相当いい。何度も声にだしたし、現物もネットで調べた。誉めすぎか? 幼少時の些細な記憶とか 思い出した。とくに姉、というキーワードが私にはよかったのかな。 長嶋有をみんなに知ってもらいたいと思う反面 だれも知らなくていいとも思う。
2投稿日: 2011.03.05
powered by ブクログカバーデザインが素晴らしく、思わずジャケ買いした一冊。本当にこれ素敵。「タンノイのエジンバラ」という、聞き慣れない(音楽好きな人は知っているのだろうけど)奇妙なタイトルにもよく合っていて惚れ惚れする。 長嶋さんの書くお話、私が読んだものは今のところ全て「離婚」というキーワードが入っているのだけど、これは長嶋さんが好んで書くテーマなのだろうか。解説にもあったけど、著者の性を感じさせない長嶋さんの文章が好きだ。
1投稿日: 2010.10.12
powered by ブクログやっぱ長嶋有は好きだなーーーと思った 好きだなーーー。 エジンバラもスペインに行くやつも、金庫盗むやつもパチンコ屋で働いてるやつも。 すきだなー
1投稿日: 2010.08.30
powered by ブクログ何がどう面白いか、とても説明が難しいのですが、何かとっても腑に落ちるというか、満足な読後感がある。これは何だ。 私は表題作よりも、「夜のあぐら」と「三十歳」が好きなのだけれど、共感までいかないけど、登場人物が微妙に生きる速度がゆっくり、なのがいいのかも知れない。自分はとてもセカセカしてしまっているので、なんか落ち着く。 純文学系はパワーを持ってかれるので、忙しい最近は意図的に読むのを回避していましたが、この人のは面白いかも知れない。ちょっと他も読んでみよう。
1投稿日: 2010.03.21
powered by ブクログ表題作を含む4つの短編集。 長嶋有の小説は好きなのだが、どこがどういう風に、とレビューとして書くのは、いつも難しい。 何か大きな事件が起きる訳でもなく、何かを暗示するような象徴的な出来事がある訳でもなく、その登場人物たちの日常に起きたちょっとした事(このちょっとした事というのが重要なのだが)が丹念に描かれているように思う。 私が一番好きなのは、『三十歳』という話。 上司との不倫で、勤めていたピアノ教室を辞めた秋子は、せまい部屋にグランドピアノを置いている。そして働き始めたのはパチンコ屋の景品係。そこで年下の安藤という男と親しくなっていく。 この秋子の激昂するでもない、淡々とした感情が、不思議とリアリティがあるように思う。
1投稿日: 2010.01.12
powered by ブクログ表題作/夜のあぐら/バルセロナの印象/三十歳、の四篇。 路傍に潜む心の引っ掛かりは、あるものとして、在り続ける。「どこか」を、目を開いたまま無意識に渇望する常態。 かすめるのは、漫画について思わず判を押したように反応してしまう世代感だったり、聞きなれない電化製品のネーミングとの距離感だったり、何かを発する人や土地と居場所へ腑に落ちるまでの時間だったり、人の少しだけずれた行動に気がついた時のひそやかさが逆に安定させる高揚だったり。 やっぱり好きだなぁ、長嶋さんの文章。描かれた佇まいがふんわり浮かぶ。それはきっと人それぞれで。さらりとしてるのに切実。零れ落ちるものたちの、容赦なさと優しさ。呆然と泰然と、どこか持て余している生理。その生々しさに驚かされます。
1投稿日: 2009.12.23
powered by ブクログ性別も年齢も超えて、何にだってなれる作家、長嶋有。静かなんだけど、静かだからこそ、ガーッて心が大きく揺れるときの表現は、もう読んでてヒリヒリ響いてくる。
1投稿日: 2009.10.12
powered by ブクログ再読...。のはず 表題作には記憶がありましたが、他の3編には全く記憶がない!これにびっくり! でも、なかなか良かった。特に真ん中の2編「夜のあぐら」「バルセロナの印象」が好き。「バルセロナ〜」は行った後に読んだので、作品に対する印象も変わった気がする。街の描写にとても親しみがもてた。そうそう!みたいな。話もおしづけがましくない素敵なお話だった。こういう風に、その時の経験値によって、本に対する印象って変わるから、読書っておもしろいな〜と思いました!
1投稿日: 2009.07.13
powered by ブクログこれまだ2冊目の短編集なんだ、すでに、たとえば固有名詞の使い方が絶妙。「バルセロナの印象」の主人公は、ガウディの死後も建設の続いているサグラダ・ファミリア教会について「山田康夫の死後も物まね芸人を使って放映を続けるルパン三世のようなものかと思う」なんて言ったりする。主人公の興味やいい加減さなんてのがこれ一発で伝わってしまう。表題作、SPEEDとかアムロとか固有名詞先に振っておいて、みごとなラストにつながっていく。
1投稿日: 2009.05.14
powered by ブクログ『三十歳』がいちばん好き。トランスワールドは実在するのかどうか気になってしまった。著者とは年代が近いので、様々な固有名詞がツボに入る。「今の若い人達はSMAPの森くんとか知らないだろうなぁ」などと考えては悦に入ってみたりする。
1投稿日: 2009.04.24
powered by ブクログもうね、この人の本は、ベストジーニストのキムタクみたいに殿堂入りさせようかってくらいいちいち響いてくるんだよね。 別格です。 だからあえてもうこの人の本には5つ星はつけずに4つ星にしときます。 誰もが、本人すら気づかないような痛みをかかえて生きている。 本人が気づかないように強がっている痛みを抱えている。 でも、時にはそっとその無理を吐き出させて上げないといけない。 いつのまにか、その無理が心で抑える間もなくあふれ出てしまう瞬間がある。 ただ、それはそもそも抑えるべきものではなく、人間の心の自然の発散作用。 だからなすがままにするのがよいんだ。
2投稿日: 2009.01.10
powered by ブクログ主人公が男であろうが女であろうが完全にその人になりきった描き方ができていることにオドロキ。 短編なのに、すぐ切り替えて次のハナシに入れるのはそのお陰。
1投稿日: 2008.09.01
powered by ブクログ最近、ちょっとブームな長嶋有の作品。飛行機のお供で購入。 ・あらすじ 突然、隣家の娘を預かることになった失業中の男を描いた表題作や、実家の金庫を盗むハメになった三姉弟を描く『夜のあぐら』など、夜の気配を感じさせる三篇。 やっぱりいい感じの長嶋有。 この静かに淡々と流れていくストーリーと、それを単調にさせない文章力は素敵だなぁと思います。テーマというか、観点も好きなタイプの作家さんです。 個人的には『三十歳』が好きだったかもしれません。一人暮らしの家にグランドピアノを持ち、パチンコ屋でアルバイトをする女性と、自転車で通ってくる不思議な新人アルバイトの話。なんだか自転車をこいでいるイメージがほんわか楽しい。 やっぱり長嶋有、好きなタイプ、好みのタイプです。
1投稿日: 2008.08.21
powered by ブクログ隣家の女の子を押しつけられたり、実家の金庫を盗みに行くはめになったり。人生には、そんな日がめぐってくるのだ。話題の芥川賞作家、待望の最新短篇集。
1投稿日: 2008.07.02
powered by ブクログ長嶋さんの本を読むのはこれで4冊目。はじめて読んだ短編集。 どのお話も、日常のささやかな出来事を切り取り、静かに淡々と描いている。 今まで読んだ長嶋さんの小説はあまり好みじゃなかったのだけど、この短編はどれもわりと好み。 どこか浮世離れしているような登場人物たちの、力の抜け具合が心地いい。
1投稿日: 2008.05.13
powered by ブクログ巧い。よく考えると淡々と日々を綴っているだけのようなのに、何故こんなに面白いんだろう。表題作は長嶋作品で一番好き。
1投稿日: 2007.02.18
powered by ブクログ2006/12購入。2007/1読了。隣の女児の面倒を見る羽目になる失業中の男の話「タンノイのエジンバラ」、三人姉弟の、それぞれの境遇を描きながら、なぜか実家の金庫を盗みに入る羽目になる「夜のあぐら」、姉を元気づけるために、妻と姉とでバルセロナへ旅をする「バルセロナの印象」、元ピアノ講師、現在パチ屋アルバイトの女性と、同僚の若者の恋と突然の幕切れを描いた「三十歳」の4作を収録。 いかにも現代の作者、という感じで読みやすい。流行なのかどうかはわからないけど、物語が進行していく上で、何かあからさまに思想がしめされているわけではない。けれど、すっとするわけではなくて、複雑なものがしっかり残る。バルセロナというおしゃれな舞台で、どこか面倒そうな主人公が常に印象に残る「バルセロナの印象」が好き。表題作はコミカルながら、やはりいろいろ思うところあり。
1投稿日: 2007.01.12
powered by ブクログ文庫版のシンプルな装丁に魅かれたので、長嶋有という作家のことも、彼が芥川賞を受賞していることも、もちろんこの短編集のことも、全く何も知らなかったのです。不勉強を恥じなくては。 個人的には、もう少しキリっとしている方が好きですが、なかなか読み易い文章ですね。固有名詞が上手に配置してあって、そこはかとなく現実感を感じさせてくれます。もっと悲惨になってもおかしくない話なんだけど、まあ、その辺は短編の妙とでも言いましょうか、さりげなく仕上げられていて、それはそれで良いのでしょう。 ただ、あまりにありがちな話をありがちに語られちゃうと、上手いとか下手とかよりも、小説としての存在理由みたいなのに疑問を感じてくる。長いのとか、(短くても)もっと寓意に溢れたものを読んでみたいですね、この人の。 期待してます。
1投稿日: 2006.11.11
powered by ブクログ大好き!!すごくしっとりしていて、美味しいケーキでも食べているかのような幸福感。文字と言葉の一つ一つに満たされていく感じ。「三十歳」が一番好き☆
1投稿日: 2006.09.22
powered by ブクログ4編とも方向性は結構バラバラだが 言葉の端々に重みや含みがあり 幸せな話とも限らないのだが、読後感は爽やか 酸っぱく、ほんのり甘く、苦く、香り高く、大人びている 例えるなら”すだちのジャム”
1投稿日: 2006.03.31
powered by ブクログ純文学という定義はよくわからなかった。小難しくて一般人には意味のない勉強のような気がしていたけども、長嶋有は好きだ。日常に起こりうるがめったに起こらない時間を、小さな驚きを感じながら読める。妙齢の女性、少女、おっさん。相反するような視点をもって描かれる短編集。
1投稿日: 2006.02.16
