
総合評価
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厄災も理想も受け容れて美しいアジア
作者は台湾の作家ですが、輸入品の翻訳ではなく、初めから日本の雑誌で連載された作品です。 まずは、美麗な筆致で繰り出される、奇想天外な描写を堪能していただきたい。第2話で、夜市を行く理想王の巨大リムジンに爆笑したら、あなたはたぶん、この漫画のオリジナリティと相性の良い方です。 第1巻では、コミカルな描写や寓話的なエピソードが多く、少々古臭さも感ずるかもしれません。この点は、百兵衛と理想王の戦いが激しくなるにつれて変わります。ぜひ、潰爛王(かいらんおう)が登場する第3巻まで読み進めてみてください。まさにアジアの奥深さを体現する、私の一番好きなキャラクターです。そこまで来たら、もうラストまで目を放すことはできなくなるでしょう。 それにしても、「深く」「美しき」「アジア」とは、よくできたタイトルですね。 英題にあるように、この作品には、マジカルでスーパーな東洋的世界という一面もあります。しかし、日本の同種の作品とは何か違うのです。 たとえば、寺田克也「西遊奇伝大猿王」は、バンドデシネの強い影響下にありますが、比べてみると、やはり日本の漫画です。 理想と美、愛、幸福、善意、法や規律といった価値が複雑に対立し、全てを呑み込む厄災の力が救いの武器となる。終盤の迫力ある展開は、独特の世界観と日本の漫画雑誌スタイルとの融合も感じさせます。台湾の作家が、日本の雑誌で連載したという作品の出自が、そのままテーマになっているともいえるでしょう。 読めば読むほど、「深く美しきアジア」とは素晴らしいタイトルだと感じます。 私の手元には、1992年に刊行された大判のアフタヌーンKCデラックスもあります。数年に一度、なぜだか読み返したくなる、不思議な宝物のような本です。電子版には、口絵や跋(後書き)も全て収録されていますので、ぜひ読んでみてください。 なお、この文を書く直前に、作者の訃報に接しました。命を削って描かれた作品たちが、永く読み継がれることを願います。
1投稿日: 2017.03.28
