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落語を知らなくても、きっとこの物語の美しさは心に響く(昭和元禄落語心中)

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今回は『昭和元禄落語心中』(雲田 はるこ 著)を取り上げます。

落語を知らなくても、きっとこの物語の美しさは心に響く

昭和元禄落語心中(1)

満期で出所の模範囚。だれが呼んだか名は与太郎(よたろう)。娑婆に放たれ向かった先は、人生うずまく町の寄席。昭和最後の大名人・八雲(やくも)がムショで演った「死神」が忘れられず、生きる道は噺家と心に決めておりました。弟子など取らぬ八雲師匠。惚れて泣きつく与太郎やいかに……!? 昭和元禄落語心中・与太郎放浪篇、いざ幕開け!!

物語の舞台は昭和50年代頃の落語界。

この時代の落語というのは絶頂期をすでに過ぎ、テレビ漫才の時代です。

刑務所から満期で出所した元チンピラの与太郎ですが、慰問で見た八代目八雲の落語に感銘を受け、出所と同時に八代目の弟子入りを志願するところから物語が始まっていきます。

落語の演目や文化を全く知らなくても、きっとこの世界に酔えること間違い無しな作品でした。

落語を知らなくても読める!

『死神』『芝浜』などの古典が多く出てくるので、落語を知っているのならかなり興味を持って読めると思います。

もちろん知っていたほうが楽しめるにきまってますが、落語をしっかりと見たことも聴いたことのない僕でも楽しめました。

漫画の各巻の巻末には、落語の文化などについて分かりやすく解説されている部分もありますし、実際の寄席の楽しみ方なんかも分かります。

物語は落語を中心とした人間ドラマが描かれており、これが一番の見所。

大名跡である『八雲』と運命で結ばれた『助六』という名。

七代目がかつて出会った『助六』という名前が八代目に与えた影響、そして二つの道が交わり一つになる様は圧巻でした。

まさかああいう形で2代目『助六』の願いが叶うとは。

登場人物達が本当に存在していたのではないかと感じるほどリアル

もちろんこの物語はフィクションですが、本当に落語史上にこういう人たちがかつて居て、今まで落語を繋いできたのではないかと思ってしまうほどリアルです。

登場人物達が間違いなく生きてます。

落語を志しながらも噺家にはなれずに別の道で生きる者、才能がありながらも境遇に恵まれなかった者、愛するものに愛されない者、愛した人と別れねばいけない者。

様々な人間の様々な思いが、戦後の落語を支え、現代の落語へと繋がっていきます。

限られた人生の中で、落語の歴史や文化を担うという宿命。

懸命に生きる彼らの人生は、涙なしには見られませんでした。

10巻読み切りで読みやすく、それでいて深い物語

作中にある様々な伏線があっと驚く形で回収されていきます。

最終巻である10巻を読み終えたときに初めて読者の僕らのみが『真実』を理解することができます。

登場人物それぞれは多くを語らないために、彼ら自身はすべてを知りませんが、僕らだけが知れるというのは『粋』ですね。

きっと心がスッとするような愛とラストがあります。

文化を担うということはこれほどまでに偉大なことであり、一人では背負えないものであることが分かるはずです。(守形レイジ)

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