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平山夢明の「読んではいけないホラー小説」その2

代表作『 DINER 』 『メルキオールの惨劇 』のほか、『「超」怖い話』シリーズなど数多くの大ヒット作を手がけ、小説にとどまらず、映画監督など幅広く活躍する作家・平山夢明氏が厳選してお届けする「読んではいけないホラー小説」第2回。

 

冬の寒空の下、少し違った悪寒と恐怖を体験をしてみては……!?

平山夢明(ひらやま ゆめあき)

 

神奈川県出身。

1994年『異常快楽殺人』(角川書店)で作家デビュー。

2006年、短編「独白するユニバーサル横メルカトル」が日本推理作家協会短編賞、『DINER』で2010年に日本冒険小説協会大賞、11年に大藪春彦賞を受賞。近著に『サイコパス解剖学』(春日武彦氏との共著)『大江戸怪談どたんばたん(土壇場譚)魂豆腐』『ヤギより上、猿より下』、実話怪談『怪談遺産』『東京伝説 自選コレクション 溶解する街の怖い話』などがある。

¥704

(税込)

¥815

(税込)

さてさて、冬の寒空の下、少し違った悪寒と恐怖を……第2回。

ということで、前回に引き続き、作家・平山夢明先生に「読んではいけないホラー小説」として、少し変わった恐怖を味わえる作品をピックアップしていただきます。

  

ではさっそく、平山先生おすすめの「読んではいけない」恐怖の数々をご紹介いただきましょう!

2004年公開の映画「日野日出志のザ・ホラー怪奇劇場」の原作にもなった初期名作短編『地獄の子守唄』『胎児異変 わたしの赤ちゃん』『恐怖列車』『蔵六の奇病』の4本を収録した日野日出志ベストセレクション!雑誌掲載時には巻頭8ページが2色だった『地獄の子守唄』の巻頭を4色カラーで掲載!

僕はこれ小学校の頃、『少年キング』っていう雑誌の連載で読んだんですよ。話は全く売れない漫画家がいて実はその男は小さい頃から頭の狂った母親から虐待に次ぐ虐待を受けたために腐乱死体や動物を殺すことにしか快感を得なくなっていて、完全におかしな人なわけです。そいつが今まで自分を苦しめた人間に呪いで復讐するという独白なんですが、まあ、この画の恐ろしいことといったら当時の少年漫画の範疇を遙かに超えてましたね。焼売が潰れたような顔の少年が同じような顔の母親からロープで逆さづりにされた上、指に針を打ち込まれるという……なんでしょうか?これは!というもの。特にラストのページの凄まじさは当時の小学生を失神させていましたね。傑作ですよ。

楳図先生は枚挙に暇がないくらいにホラーの傑作を物していますよね。『猫目小僧』『漂流教室』なんかがそうですけれど、僕は敢えてこの人間心理をベースにした『おろち』を是非、読んで戴きたい。話は筒井先生の『家族八景』同様にお手伝いの少女が様々な家庭に入り込むことで怖ろしい出来事が起こるんですが、普通のホラーと違うのは<おろち>は、どうやら普通の人ではないのです。超能力は使うし、突然、深い眠りに襲われたりもする。なのでこの作品は彼女が<人間という種の愚かさ、悲しさ>を傍観するというものになっています。またそれだけに容赦がない憎しみの連鎖などが、とてもリアリティをもって迫ってきます。特にお勧めは<姉妹>ハリウッド作品の『何がジェーンに起こったか』を彷彿させますが、こちらのほうも数段怖いです。

1958年の夏。当時、12歳のわたし(デイヴィッド)は、隣の家に引っ越してきた美しい少女メグと出会い、一瞬にして、心を奪われる。隣家の少女に心躍らせるわたしはある日、姉妹がせっかんされている場面に出合いショックを受けるが、ただ傍観しているだけだった。ルースの虐待は日に日にひどくなり、やがてメグは地下室に監禁されさらに残酷な暴行を―――。キングが絶賛する伝説の名作!

人間の心の悪を極限まで描ききった秀作。話は家庭の事情からルースという女の元に預けられた姉妹がいまして、妹は少し障害がある。姉はそんな妹を常に守り、優しく接している利発な娘。ところが利発すぎるが故に横暴なルースの態度に抵抗します。人生を絶望した女はそれを自分に対する否定的な攻撃だと受け止め、いつしか姉を徹底的に虐待し始めるのです。一人前の大人の女が年端もいかぬ幼い少女を徹底的にいじめ抜き、虐待し、蹂躙することで彼女の<善なる魂>を屈服させようとするのです。小説は彼女の隣の家にいる少年の目を通して語られていきます。怖ろしいことにこの作品はインディアナ州で起きた『シルヴィア・ライケンス殺害事件』という実話がベース。傑作です。

座敷女

雷のなる深夜、森ヒロシはドンドンという音で目が覚めた。外を覗(のぞ)いてみると、隣の部屋の前に、ロングコートにロングヘアー、紙袋とバッグを提げた異様な大女が立っていた。翌日から、突如その大女に付きまとわれるようになった森。サチコと名乗る女の行動は次第に異常さを増してきた。彼女の目的は何? そして彼女は何者!? ひたひたと迫りくる恐怖に、あなたは耐えられるか? 望月峯太郎の傑作ホラー!

まあ平成ホラー漫画の代表作といえばこれでしょう。まだストーカーという言葉がいまほど一般的ではなかった時代にここまで描き切ったのですから恐るべしモチズキミネタロウという他ありません。話は大学生の森君が住むアパートに深夜、隣の部屋のドアをどんどん殴りつける大女が出現します。女は人間らしい感情は一切ないようで<電話を貸してくれ>というので森君は貸してやります。それが最期でした。女は森君を自分の恋人だと思い込み、延々と延々とあらゆる手段を使って彼と彼の人生を破壊するような行動に出るのです。画がことさら怖いものではないのに次から次へと巻き起こる女の奇行とそれに翻弄されてしまう森君の恐怖の感情が実にリアルです。

敗戦から1年あまり。ぼろぼろに焼け落ちた東京で、酒浸りの暮らしをしていた川島徳太郎は、かつて死線を共にした戦友・黒田門松に再会し・・・・・・。その非凡なる画力に、同業者からも熱烈な賛辞を受ける、異色の漫画家・山田参助が挑む初の長編作。闇市、パンパンガール、戦災孤児、進駐軍用慰安施設など、戦後日本のアンダーワールドの日常を、匂い立つような筆致で生々しく猥雑に描き出す、敗戦焼け跡グラフティ、開幕。

これはジャンルとしては決してホラーじゃないんです。戦争直後の帰還兵たちのその後を描いたモノなんですけれどね。ところが折々、回想されていく戦地での体験が実にすごい。死を目前とした人間の明けっ広げな姿もさることながら、その描写のことごとくが手抜きなし、手加減なし、おまえらこういうことなんだぞ!と読者に突きつけてくる迫力がある。こんな場所でこんな形で死ぬんだ。日本兵はこんなことまでやらされたんだ!やってしまったんだ!と安穏と暮らしている自分の姿と重なったとき、背筋が凍ります。そんな中でも戦い続け、正気を保ち続けなければならないこの恐怖。画餅やお為ごかしではない戦争についての真の批判精神が息づいている傑作です。

DINER ダイナー 1

漫然と生きてきた25歳の大場加奈子は、ある日、小銭欲しさから闇サイトのバイトへ足を踏み入れる。犯罪へと巻き込まれ、絶体絶命の窮地に陥った時、謎の男・ボンベロに、その身を買われ命拾いをする。だが、安堵したのも束の間、辿り着いたのは、殺し屋専用の会員制ダイナー(定食屋)だった。冷徹な料理人・ボンベロと凶暴な殺し屋(客)の狭間で、加奈子の残酷なウェイトレス人生が幕を開けた――!!

漫画原作ってのは初めて本格的にやったんですけど、はっきり小説とは違うベクトルを求められるんですね。それは簡単に説明するとキャラクターの作り込みなんですね。小説ではなんといっても主人公とストーリーが最優先。脇役というのは主人公を別の角度から説明するという役割ですが、漫画の場合にはサブキャラ自体が力を持つことが多々あるし、またそうでなければ面白いとは云えないようです。とても勉強になりました、はい。というわけで話は小説同様に人生を舐めきっていた女性が殺し屋専用のダイナーに放り込まれ、そこで命の駆け引きを目の当たりにすることで人生の意味を再度、掴み直すというモノですが、原作では死んだ奴が生きたり、死にかけた奴が更に酷いことになっていたりもします。 

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