
Serendipity ~偶発的な出会い~ vol.33 時代の変化を読むために

朗らかなキャラクターとわかりやすいお天気解説が人気を呼び、テレビやラジオに引っ張りだこの森田正光さん。お天気キャスターとして日本で初めて独立し、気象予報の会社「ウェザーマップ」を設立するなど、その柔軟な活動を通じて、天気予報の世界に新しい風を吹き込んできました。「天気のように世の中も刻々と変わっていく。その変化にどう対応するか」――キャリアを振り返りつつ、森田さんが語ります。
●ラジオの初仕事は24歳。自分にしかできない天気解説を心がけました

僕は高校3年のとき進路に迷い、先生に相談したんです。そこで受けてみたらと薦められたのが、日本気象協会でした。それで、とりあえず1年働いてみて、それから大学に進学するか考えようと思ったんです。ところが気象協会の勤務体制というのが、とても僕の肌に合ってましてね。というのも当時、夜勤をして夕方から翌朝まで出勤すると、明けた日も翌日も休みになるんです。それで僕はその休みに、好きな映画を観まくっていて(笑)。そんな生活が気に入り、辞めずに続けることにしたんです。
ラジオの初仕事は土居まさるさんの番組のお天気コーナーで、24歳のときでした。そのやりとりが、おもしろかったらしいです。たとえば「次の週末(の天気)は?」という質問に、僕は自分のことを聞かれたと思って「野球を観に行きます」とか答えてた(笑)。そんなことや、自分にしかできない個性的な解説を心がけていたこともあって、リスナーからファンレターまでくるようになりました。
テレビには28歳で初出演し、38歳で夕方のニュース番組にレギュラー出演するようになりました。テレビって、すごくおもしろいメディアでね。真面目にやっても伝わらないんだけど、かといっていい加減にやるともっとダメなんです。そんなことを学びながら修正しつつ、「洗濯指数」を考案したり、いろんなことをやりました。それが評判を呼び、仕事が増えてくると、気象協会には居づらくなって。それで42歳で独立し、気象予報士を集めた「ウェザーマップ」という会社をつくりました。今、会社には、40人ほどのお天気キャスターが所属しています。
●変化し続ける時代を生き抜くために、自分も変わらなければいけない

1990年は、僕にとってすごく重要な年なんです。その年、数値予報というコンピュータの予想で、台風が11月30日に紀伊半島に上陸すると出たんですね。それは僕らの常識ではありえないことで、誰もが嘘だと思ったのに、本当にそのとおりになった。そのとき僕は、「これから天気予報はコンピュータがやる時代になる」って確信したんです。ただ、その予報をわかりやすく、なおかつ興味を持ってもらえるように解説するのは、人間の役目なんですよね。それで僕は「気象解説者になろう」と心に決めました。人はどうしても昔の経験とかに拘泥しがちです。でもそうして時代の変化に気付き、自分も変わることが、どんな分野でも大切なことなんですよね。
「天気予報は、なんの役に立つんだ?」という人もいます。なぜかというと、天気は変えられないから。でも天気は変えられないけど、行動は変えることができる。そのために情報があるんだと思います。たとえば、雪が降ることは避けられないけど、その情報があれば、道路に不凍剤をまいたりして、災害を未然に防ぐことができる。台風もそうです。昨年の東日本大震災の津波は避けられませんでしたが……でも、もし今、同じような地震が起きたとしたら、犠牲者の数ははるかに減るでしょう。なぜならあの震災で、誰もが津波の恐ろしさを知ったから。そうして災害から学び、想像力を働かせることが大事なんですよね。僕ら専門家の役割は、その想像力を先取りしてみなさんにお伝えすることだと思っています。天気予報もそうですが、世の中もこれからどんどん変化していく。その変化に対応しなければいけない。それが、すごく重要なことだと思っています。
森田正光さんの紙で味わう一冊
『僕は君たちに武器を配りたい』/ 瀧本 哲史(著)/ 講談社

若い頃は、純文学や海外の人文書のような小難しい本も読んでましたが、ある頃から小説からノンフィクションになり、今は経済と自然科学の本ばかり読むようになりました。最近、一番おもしろかったのが、この経済の本です。著者の瀧本さんは、京大でビジネスやマネジメントを教えている人気講師。この本では、厳しい今の時代を生き抜くために「経済におけるゲリラ戦をやれ、そのために知的な武器を得よ」と説いている。その発想がおもしろいんです。若い人って経済やお金のことに、ほとんど関心がないじゃないですか。かくいう僕も、「経済って大事だ」と気付いたのは30代になってからでした。そんな人が経済のルールを学ぶ最初のガイダンスとして、すごくいい本だと思います。
Profile
森田 正光(まさみつ) お天気キャスター・気象予報士

1950年名古屋市生まれ。個性的な気象解説と、親しみやすいキャラクターが人気を呼び、1992年日本初のフリーのお天気キャスターとなる。同年、民間気象会社(株)ウェザーマップ、2002年には気象予報士受験スクール(株)クリアを設立。代表取締役として活躍するかたわら、全国で講演活動も行っている。主な著書に『大手町は、なぜ金曜に雨が降るのか』『理不尽な気象』など。現在、TBSテレビ「Nスタ」、TBSラジオ「森本毅郎スタンバイ!」出演中。





