
Serendipity ~偶発的な出会い~ vol.19 人間は変わっていくから面白い

2009年惜しまれつつ現役を引退。テニス漬けの生活から一変、現在は、後進の育成を中心に、雑誌やテレビなどで幅広く活躍する杉山 愛さん。そんな彼女が今、夢中になっているのが“断捨離”。「日々変化する自分に興味津々」と話す杉山さんが、断捨離を通して学んだこととは?
“捨てる”ことは、今の自分と向き合うこと
ちょっとブームに乗り遅れた感はありますが、今、断捨離に夢中なんです。ずっと興味はあったもののなかなか本を手に取る機会がなく、先日ようやく購入して読み始めたら、あっという間に読破!財布の中身や紙袋、洋服の処分など、せっせと実行しています。領収書やポイントカードでパンパンになっていた財布は、すっかりスリムに。「カワイイし、丈夫だし、使うかも…」と女子的につい集めてしまう紙袋も潔く処分しました。苦労したのは洋服。1度しか着ていなくても「いつか着るかも」と捨てられなくて。きっと、買ったとき「これは着る」と判断した自分を、今の自分が否定する気がして納得できないんでしょうね。なのに突然、時計の針が午前0時をまわった瞬間「よし、捨てよう!」と急にふんぎりがついたり。“断捨離スイッチ”って、いったいどこにあるんでしょうか?(笑)
モノも暮らしもシンプルだった現役時代

テニス漬けの毎日を送っていた現役時代は、溜め込むタイプではなかったと思います。1年のうち250日は海外での遠征生活だったため、荷物は極力コンパクトに。ウエアはシーズンごとにモデルが変わり、シューズは消耗するので溜まることはないし、私服を着る機会も少ない。必然的に持ち物は少なくなります。生活スタイルも同様で、当時は移動・練習・試合・自分の時間と線引きが明確。練習や試合など"勝負師"である時間以外は、心身のメンテナンスのために使う。ある意味、とてもシンプルな暮らしでした。
歴史小説から筋肉図鑑まで。遠征のお供は本10冊
そんな現役時代のいちばんのリラックス法は、読書。移動やオフの日などまとまった時間ができると、ひとりでじっくり本を読んでいました。調子がいいときは、プレーに自信があるので自分自身に迷いがないんです。そういうときは、群ようこさんの軽快なエッセイや宮本輝さんの小説を思い切り楽しむ。逆に、調子が悪くて負けが続いているときは、何がいけなかったのかとテニスのことばかり考えてしまうため、司馬遼太郎さんの歴史小説の世界にどっぷり浸って、テニスからいったん離れる。あるいは、筋肉の図鑑をボーっと眺めたり(笑)、野球選手のイチローさんや将棋の羽生善治さんの本を読みふけったり…。遠征前は必ず本屋に行って、10冊ほど調達するのがひとつの儀式でした。
本屋大好き! 本は心のバロメーター

昔から、本屋に行くのが好きなんです。いろいろなコーナーをぶらぶらしながら、気になった本を手に取る。ベストセラーを買うこともあれば、“ジャケ買い”することも。不思議なことに、その日選んだ本で自分の精神状態がわかるんです。疲れ切っているときは文字の少ない写真集やほっこりする絵本を、元気なときは恋愛小説やミステリーを選びがち。本は私の心のバロメーターとも言えます。
自分を知り、変化を知る。それが楽しいんです!
だから今、“断捨離”の本を手に取ったのは意味があることだと思います。“捨てる”ためには、自分としっかり向き合わないといけない。今何が必要でこれからどう生きたいのか。ただモノを捨てるだけではないんですよね。今の自分を知ることができるんです。現役を引退してから約2年。引退後しばらくは、何もかもが新しく、とまどうことばかりでした。まだまだ模索中ではありますが、自分のやりたいこと、やるべきことが少しずつ見えてきました。選手時代と引退直後、そして今とでは、洋服や身の回りのものはもちろん、時間の使い方や気持ちの切り替え方も変化しています。人間は変われるし、変わっていくからこそ面白い。断捨離を通して、そんな自分の変化に気づけたことがいちばんの収穫です。
杉山 愛 さんの紙で味わう一冊
『新・片づけ術 断捨離』/やました ひでこ(著)/マガジンハウス
『夢をかなえるゾウ』/水野敬也(著)/飛鳥新社

多方面で活躍中の杉山さんにとって、大好きな歴史小説をじっくり読めるくらいまとまった時間がとれないのが目下の悩み。最近は、自己啓発本やビジネス書を読むことが多いそう。「『断捨離』は何度読んでも新しい発見がありますね。『夢をかなえるゾウ』は、現役時代に母に勧められて以来、大好きな1冊。ゾウの姿をした神様“ガネーシャ”がベタベタの関西弁で成功するためのうんちくを語るのですが、そのアドバイスとは結局 “あたり前のことを積み重ねていくことの大切さ”。現役時代と今とではアプローチは違えど、私自身、いつも心がけていることのひとつです」
杉山愛さんの本棚

杉山さんの手帳には、「読みたい本リスト」がズラリ。書評や友人との会話の中で「読んでみたい!」と思ったら、すぐにタイトルと著者名を書き込むそう。
Profile
杉山 愛 (すぎやまあい) 元プロテニスプレイヤー

1975年生まれ。4歳でテニスを始め、15歳で日本人初の世界ジュニアランキング1位に。17歳でプロに転向後、グランドスラムで4度のダブルス優勝を果たす。最高世界ランクはシングルス8位、ダブルス1位。グランドスラム62大会連続出場のギネス記録をもつ。'09年10月現役を引退。ジュニア育成プロジェクト 「Road to Grand Slam」 を主宰するほか、スポーツキャスターやクリニークのCBO(チーフ・ビューティー・オフィサー)などさまざまな分野で活躍中。






