
『進撃の巨人』最終巻発売記念!世界が注目する終幕を見る前に……イッキ読みで見えてくる新たな発見と綿密に組まれた「諫山ワールド」の面白さ
累計発行部数1億部を超える大人気マンガ『進撃の巨人』が2021年4月、別冊少年マガジン誌上においてついに完結しました。そして、その衝撃の結末を収録した最終34巻がいよいよ本日(2021年6月9日)発売。ここではその完結を記念して、改めて『進撃の巨人』の魅力をふり返り、さまざまな角度からその面白さとヒットの秘密を分析・解説します。もちろん、原則ネタバレなし。これから読もうかなぁと思っている方にも安心してご覧いただけます。
■ 『進撃の巨人』の魅力はどこにある?
『進撃の巨人』は、講談社が2009年9月に立ち上げた「別冊少年マガジン」創刊号から足かけ11年と7か月に渡って全139話が掲載されたダーク・ファンタジー作品です。作者は当時、まだ全く実績のない新人作家であった諫山 創(いさやま はじめ)先生。新人ということもあり作画などにやや粗さがあったものの、作品の持つ圧倒的な熱量はすぐさま読者を魅了し、あっと言う間に雑誌の看板作品の1つに躍り上がりました。その後、2013年に放送されたTVアニメでファン層を大きく拡大し、翌年4月に発売された単行本第13巻は、講談社の最高初版部数記録を26年ぶりに更新する初版275万部を実現しています。
さて、ここで改めて『進撃の巨人』の物語をおさらいしておきましょう。本作の舞台は周囲を3層の高い壁で囲まれた世界。壁の外には人間を喰らう“巨人”たちが徘徊しており、人類はまるで鳥籠のような壁内の土地に閉じ込められていました。ところがある日、これまで見たこともないような超大型巨人が人類を強襲。最外層の壁(ウォール・マリア)が破られ、巨人たちの侵入を許してしまいます。この悲劇によって目の前で母親を喰われた主人公・エレンは巨人への復讐を決意。壁外探索を担う調査兵団の一員となって、志を共にする仲間たちと共に巨人を駆逐する戦いに身を投じます。
そしてその“巨人”がこれです。

連載開始当時「理科室の人体解剖模型かよ!」と盛り上がったのを覚えている方も多いのではないでしょうか。この超大型巨人(全長60m!)以外の巨人も、手足が妙に細く顔は大きかったりとアンバランスな体型でインパクト大。無邪気に人を喰らうさまにまるで知性が感じられないところも恐ろしく、その“キモ怖”ぶりが醸し出す絶望感に多くの読者が震えました。

なお、このキモ怖な巨人などといった基本的なアイデアは、連載開始の3年前、まだ10代だった作者が講談社の漫画賞「マガジングランプリ」に応募した読み切り作品の時点ですでに構想されていたようです。こちら、Webで無料公開されていますので、気になる方はぜひご一読を。この作品の世界観を彩る、アクションシーンに欠かせない立体機動装置こそないものの、カッターナイフのように刃を交換できる武器や壁(大木)に囲まれた居住区など、『進撃の巨人』に継承される多くのエッセンスを感じ取ることができますよ(巨人の正体も……?)。
進撃の巨人★マガジンデビュー
https://debut.shonenmagazine.com/comic/2265
そして、このページの編集者コメントにもあるよう「作者の強い気持ちが伝わってくる絵」であることも本作がヒットした理由の一つであると言えるでしょう。エレンの怒りと憎しみを、正義や平和といった“きれいごと”のフィルターを通さず、プリミティブなままブチまけた表現は、少年マンガとしてはかなり異質なもの。この従来の少年マンガにはあり得なかった「絶望」と「憤怒」のミクスチャーが本作の根源的な魅力なのです。

■ 全34巻イッキ読みで脳汁ドバドバ体験を!!
圧倒的なインパクトで初見から多くの読者を惹きつけた『進撃の巨人』ですが、その背後では著者・諫山先生による“仕込み”も多くなされていました。巨人とはいったい何なのか、そもそもなぜ人類は壁の中に追い込まれているのか、全高50mの壁は誰がどうやって造ったのか、作中に突如描かれる「845」や「850」といった数字は何なのか、第1話タイトル『二千年後の君へ』とは……?

こうした謎を、34巻かけてゆっくりと読み解いていく快感。これもまた『進撃の巨人』の楽しみのひとつ。こういった作品ではいわゆる「投げっぱなしエンド」が起こりがちなのですが、本作については全ての謎がきちんと解消される、あるいは読み解くヒントが提示されるので、読破後にモヤモヤ感が残ることはありません。いくつか読者の想像に委ねられているところもあるのですが、それをファン同士で語り合うのもまた楽し、ですね。すでに連載誌で最後まで読み終わっているという人も、改めて最初から読み直すと多くの発見があるのではないでしょうか。キャラクターの表情や目線など、本当に細かいところにまで伏線が張られているので、ぜひ二度、三度と読み直してもらいたいですね。細かいところは忘れてしまいがちなので、34巻まとめてイッキに読み直すことをおすすめします。

たとえばこのシーン(第5巻21話『開門』より)、なんで中央のアルミンの目線がおかしな方向を向いているのかわかりますか? この謎は比較的早く明かされるのですが、わかった瞬間「そういうことだったのか!」と脳汁がドバドバ流れますよ。新人とは思えぬ諫山先生の構成力には舌を巻くばかりです。
■ 苦悩し成長し続けるライナーはまさに本作の裏主人公
さて、本作の主人公は言うまでもなくエレンですが、彼は物語が進むにつれ超然としていき、徐々に読者が感情移入しにくいキャラクターになっていきます。それまで「巨人を駆逐する」というシンプルな行動原理で動いていたエレンが、まるで別人のように何を考えているのか分からなくなっていくんですよね。それによって、人によってはちょっと読みにくさを感じてしまうかもしれません。

そこで筆者が個人的にオススメしたいのが、感情移入先を別のキャラクターに変えること。実は本作にはもうひとり、裏主人公とでも言うべきキャラクターがいます。それが調査兵団の同期であるライナー。エレンとは同期ではあるものの頼れる兄貴分的存在で、節目節目でエレンに男気のある助言を与えるなどしています。実はライナーには仲間にも明かせない大きな秘密があり、その後ろめたさが彼を徐々に追い詰めていくのですが、その心の揺れ動きや乱れが実に人間的で魅力的なのです。特に改めて読み返すと「こいつこのときこんな気持ちだったのか」というのがわかって、より深く彼の苦悩を理解できるようになるはず。

物語が進むにつれてライナーの置かれる境遇が次々と変わっていくのも飽きさせません。特に物語が後半戦に入り、舞台が大きく広がって以降が本番です。それまでも「戦士」と「兵士」の狭間で揺れ動いていたライナーですが、中盤以降、その立場はさらに複雑化していきます。前半ではその重荷に耐えきれず、物語を大転換させる“事件”を起こしてしまった彼が、後半でどのような成長を見せるのか。少年マンガ的な成長ストーリーを楽しみたいのなら注目すべきは断然ライナーです!(あんなオッサンのどこが少年マンガの主人公かと思われたあなた、ライナーは初登場時17歳ですよ!)
■ 雰囲気ぶち壊し!? ほとばしる諫山ギャグに酔え

そして『進撃の巨人』を語る際に、どうしても外せないものの1つが、先生によって無造作に繰り出される諫山ギャグです。第2話『解散式』の「人類の反撃はこれからだ(いい顔)」からのビュワオワアァ(ぜひ単行本でご覧ください)あたりはキレの良いギャグだと素直に笑っていたのですが、単行本3巻末尾収録のウソ予告あたりから徐々に様相がアレなことに……。

この頃はまだ物語の谷間や単行本巻末への収録だったため、安心して読むことができたのですが、中盤以降になると、諫山先生独特の振り切りまくった表現がシリアスなシーンにもあふれ出すようになります。

……パ、パッキャオ??(おそらく掲載当時に引退騒動で話題になったプロボクサー、マニー・パッキャオ選手のこと)
ほかにも常人の理解及ばぬ謎擬音は中盤から最終巻までブレーキを踏むことなく描かれ続けます。シリアスシーンの緊張を緩和する一服の清涼剤という枠を超え、遅効性の毒薬のように読者の視界から脳内へ静かに滑り込んでいく謎擬音。読み返す際には、ぜひともこれらについても探してみてください。感動的なシーンだからといって油断してはいけません……。
しかし、このギャグセンスは唯一無二とも言えますね。諫山先生の次回作がまさかのナンセンスギャグという線もある……かも?
なお『進撃の巨人』にはスピンオフとして『進撃!巨人中学校』『進撃!巨人高校 ~青春! となりのマーレ学園~』『寸劇の巨人』といったギャグ作品もリリースされています(著者は諫山先生ではありません)。進撃キャラによる笑いに興味がある方はこちらもぜひ。
■ イッキ読みでこそ理解が深まる『進撃の巨人』全34巻
最終巻で開示される謎の伏線が第1話に貼られているなど、描き始めた時点でかなり緻密な設定を練り上げていたであろう『進撃の巨人』。それだけに連載を欠かさず読んでいたという熱心な読者でも忘れてしまっている謎がたくさんありそうです。また、本当に細かいところまで作り込まれているため、うっかり見落としまったなんてこともあるでしょう。ですので、すでに結末まで知っているというファンの方にも、最終巻発売を機にもう一度最初から読み直して見ることを強くおすすめします。
今回、筆者もこの記事の執筆依頼を受けたタイミングで改めて読み直してみたのですが、思った以上に新しい発見が多く、実に新鮮な気持ちで楽しく読めました(土曜の朝から読み始め、夜までかけて1日で読み終えてしまいました)。エレンがなぜあのような判断をするに至ったのか、ミカサの結論が●●●を救ったのはなぜなのか、物語のギミック的な“謎”の解明はもちろんのこと、それぞれのキャラクターの心の揺れ動きや決断といった“想い”を深く理解するという意味でもイッキ読みしてほしいところ。むしろイッキ読みしないと理解しきれないのではないかというくらい深い作品に仕上がっているので、いまだに続くステイホームのお供にぜひご一読を。皆さんのレビュー投稿も楽しみにしています。
構成・文/山下達也(ジアスワークス)
プレゼントは終了しました

●プレゼント内容
『進撃の巨人』諫山創(講談社)全34巻(5名様)
●応募期間
2021年6月9日(水)0:00~2021年6月24日(木)23:59
●応募条件
・「Reader Store」のメールマガジンの受信設定をONにされている方。
※ご応募には、Reader Storeへのサインインが必要です。
●当選発表について
当選者の方へは、登録されているメールアドレス宛に2021年7月2日(金)にご連絡いたします。
(当選発表日は都合により、前後する場合がございます)
落選された方へのご連絡はございません。あらかじめご了承ください。
●ご注意事項
・お一人様1回のみのご応募となります。
『進撃の巨人』最終巻&既刊情報
完結34巻は特装版が2種類同時発売! 特装版Beginningは、幻の第1話&第2話のネームを収録した小冊子付き!2009年、別冊少年マガジン創刊時の連載会議に提出されたネームを収録。会議の結果連載は決定したが、諫山創自ら内容修正を希望。このバージョンが完成原稿として世に出ることは無かった。
34巻は特装版が2種類同時発売! 特装版Endingは、圧巻の第138話&第139話(最終話)のネームを収録した小冊子付き!連載開始から11年7か月。そのクライマックスである最終話(139話)と138話のネームを収録。一部、完成原稿とは異なる部分も。













