tameさんのレビュー
参考にされた数
116
このユーザーのレビュー
-
ローウェル骨董店の事件簿
椹野道流 / 角川文庫
登場人物が魅力的
6
第一次世界対戦の数年後のお話。
顔に傷持つイケメン検死官に持ち込まれた遺体をめぐり、妖精のように可愛いと評判の友人であり担当刑事であるエミールと、事件を追うサスペンス形式のお話ですが、ライトノベルのよ…うな気軽さで読めます。暴力や大量に血が出るのが苦手な私には安心して読み進められました。
推量小説のタグが付いていますが作者が重きを置いているのは戦争で生き方が変わってしまって疎遠になった兄弟が、友人や養子の少年に助けられながら再び心を通わせ合う事だと思いました。
登場人物の描写がイキイキとしていて物語に入っていきやすいです。
兄の骨董店店主デューイは穏やかな中に意志の強さを秘めた美男で、弟の検死官デリックは従軍で出来た顔の傷が素敵に見えるほどのやんちゃな雰囲気のイケメン。二人の不仲になったいきさつを理解している可愛い容姿のエミール刑事は心もたたずまいも優しい人。
3人だけでなく全ての登場人物の会話や表情がイキイキと描かれていて読んでいて楽しいのです。
戦争と言うのは沢山の人生を狂わせてしまう罪深いものだ、絶対にあってはいけないと改めて思いました。
続きの巻ではもっと心を通わせ会う事ができるのでしょう。読んでみたいと思います。
ただ、事件の被害者の若くて美しい女性が死んだいきさつが解かれた時に、どうしようもない憤りとモヤモヤを感じたので☆4にしました。
続きを読む投稿日:2016.12.04
-
時をかける眼鏡 医学生と、王の死の謎
椹野道流, 南野ましろ / 集英社オレンジ文庫
法医学生のタイムスリップミステリー
6
医学生の遊馬は、母の故郷のマーキス島で自分が知ってる世界史とは少し時空が違う過去へ飛ばされてしまう。そこで殺人の罪を着せられそうになった少女を法医学的に弁護し、助けた事から王家の事件に巻き込まれていく…。
遊馬は自分の法医学の知識を使って王子達や、若い補佐官と事件の真相を暴いていく。
といっても、簡単に真相にたどり着くものではなく、ハラハラする場面も、冒険もある。
登場人物達がそれぞれ魅力的だが、特に私のお気に入りは第三王子として生まれたが、美しい姫として育てられたヴィクトリアだ。
彼は自分の成すべき事を冷静に捉えて王家の困難に立ち向かう。
頭の回転が良く行動力もあって会話も楽しい。
昔から愛読している作者さんがオレンジ文庫創刊に出した本書は読みやすくて、困難な状況でも前向きで明るい雰囲気。
基本に人間の良心と正義感と兄弟愛が流れている。
人は生きていく場所で自分の勤めを果たさなければならないと、優しく判らせてくれる。
このレビューを書いている時点で電子書籍では3巻まで出て読了している。
元の世界に遊馬が無事に戻るまで続くのだろうけれど、私としては戻って欲しくないような。
いつまでも読み続けたいシリーズだ。
続きを読む投稿日:2016.10.23
-
アンデッドガール・マーダーファルス 1
青崎有吾 / 講談社タイガ
怪物専門の探偵たちは斬新
7
怪物が絡んだ事件でも、きちんとした推理ものです。
書籍説明を読んで、ホラーや、オカルトと勘違いされるかもしれませんが、著者の青崎さんは本格的な推理作家さんで、私も大好きな作家さんのお一人です。
怪物…には人間と比べて能力や、力の強さだけでなく、弱点もあって、そこを切り崩したり、証拠としてあげたりするところが、とても面白いと思いました。
物語の雰囲気はお堅いものではありません。探偵役の鵺夜と鳥籠を持つ男の津軽の微妙に不毛な会話に失笑する事しきりで。
津軽はトリニティブラッドのアベルのような雰囲気を感じたと書いたら解りやすいでしょうか?
もちろん、全然違うとお叱りを受けるかも知れませんが。
怪物と対峙するときの暴れ方と普段のオチャメな言動が落差があって面白いです。
反対に、鵺夜姐さんの美しさ、強さ、かっこよさに惚れてしまいました(///∇///)
メイドの静句はとても強いみたいですが、まだ1巻では存分にその力を発揮していない様子。2巻以降に暴れてくれることを期待します。 続きを読む投稿日:2016.10.19
-
十角館の殺人〈新装改訂版〉
綾辻行人 / 講談社文庫
さすが本格派です
5
綾辻さんの本は初めて読みました。
最初の本に何を選ぶかでその作家さんに対する自分の好き嫌いが決まってしまうので、皆様の書評を読ませて頂いて慎重に選びました。
これは文句なく面白かったです。
分かりや…すい文章なので10代のミステリー初心者の方にもお奨めします。
怪しいと思うと皆が怪しく思えて、でも一人一人殺されていくので、誰が犯人なのか、動機は何なのか、最後までドキドキして楽しめました。
トリックが分かってから、もう一度読み返して、「この時間には裏で犯人はあんなことやってたのか!」と驚愕しながら再度楽しめました。
上手いなあ綾辻さん、と感心してしまいました。
動機が美しくて儚くて哀しかったですね。 続きを読む投稿日:2016.10.17
-
竜の雨降る探偵社
三木笙子 / PHP文芸文庫
穏やかで上品な印象
5
素敵なタイトルと表紙にひかれて書籍説明を読んで購入。
昭和30年頃のお話しで、元神主の水上櫂は水に縁のある不思議な青年で穏やかな印象が魅力的。
幼馴染みの慎吾が持ち込んだ謎を櫂が解いていくうちに裏…にある大きな事件を暴いて行く事になります。
若いけれどやり手社長で強気の慎吾は、冒頭から櫂に対して許してほしいけれど決して許されないと思い込んでいる暗い感情がありました。はからずも立場上、櫂の生活を基盤から奪う事になってしまった申し訳なさと悔やみが所々に独白で挿入されますが、当の櫂はケロリとしたもので慎吾の事を大切な幼馴染みと思っています。
謎解きの短編集の最後に櫂と慎吾の因縁が明らかになって、え~と驚きながもそうだったのだと納得しました。
人は自分が思っているほど寂しい存在ではないのだなと感じる美しい物語りでした。
私の書評で暗い印象を持たれるかも知れませんが櫂と慎吾の会話が親友同士らしくて軽くて面白かったですよ。 続きを読む投稿日:2016.09.24
-
倫敦千夜一夜物語 ふたりの城の夢のまた夢
久賀理世, sime / 集英社オレンジ文庫
文学と紅茶とお菓子の香りが漂う中での謎解き
4
何気無い謎から始まる1話目、少しだけ孤独な少年の未来が変わった2話目。短編の最終話では兄妹たちとヴィクターが大ピンチに陥ってしまう大活劇となります。
それにしても、相変わらずヴィクターはアルフレッド…から犬扱いなので気の毒になりながらもクスクス笑いながら読めるのが楽しい。
ヴィクター君は愛しいサラの為にものすごーく頑張るんですけどね。
英国のお茶とお菓子がしょっちゅう出てきて、美味しそうでたまらず、読んでいる途中に紅茶とお菓子を買いに走ったほどでした(笑)
巻末に、そうだったのか~とびっくりして終わるので続きが気になります。 続きを読む投稿日:2016.09.19