yattiyさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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無宿人別帳
松本清張 / 文春文庫
松本清張ファン必読
2
松本清張の時代物とは…と、興味を持ったのだが、人の暮らしの温度を感じさせない淡々とした語り口は清張の面目躍如と言ったところか。
犯罪者予備軍として救われない扱いをうけている江戸の無宿者を描いた短編集で…、歴史資料から題を取った編などは、想像力の深さ広さに唸らせられる。
人情話として楽しめるわけでもなく、剣客も探偵同心も出てこないが、時代を飛び越えて妙に身近に感じられる、納得の作品だった。
時代物が好きな方向きと言うよりも、松本清張ファン向きという感じかもしれない。 続きを読む投稿日:2014.12.07
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夜明けの星
池波正太郎 / 文春文庫
凄いの一言しか出ない
2
父を殺された娘とその殺し屋の、近くに遠くに交錯していく、二人の大河小説なのだろう。
とにかく面白い!
説教臭さなど微塵もないのに、どうしてか胸のうちに深く刻まれる人生訓がある。
ついさっきまで声をあげ…て笑っていたのに、読み終えてううと唸っている。
剣客商売より、梅安より面白い池波正太郎を見つけた気がしてうれしかった。 続きを読む投稿日:2014.12.19
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散り椿
葉室麟 / 角川文庫
映画化しそう?
2
傑作か、と思う。
エンターテイメントとしては「蜩ノ記」を超えるのではないか、とも。
暗殺された者の、自決した者の、真相はどうだったのか推理小説のような伏線と、それを背負って生きた者たちの想いに心揺さぶ…られる。
同時進行する若者の成長物語に心躍る清涼感も残っている。
何を感じるのかは、もしかすると世代に問うのかもしれない。
本当に、よくできた物語だと感じた。こんな時代に生きたいと思うのも、そんな世代ゆえなのかもしれない。。
読んで面白い。
映像化されたら、見て損のない作品になるだろうと確信する。そんな作品。
続きを読む投稿日:2015.08.30
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疾走(上)
重松清 / 角川文庫
救いはある
1
これが重松清なのか?と、ずっと疑いながら、それでもいつも重松作品を読むのと同じように一気読みしてしまいました。
どこにも救いの見いだせないストーリーなのに、登場人物たちは生き、求め、確かに救いを見出し…ていく。下手をすると、読み手には決して見いだせないような救いを。
タイトル通りの疾走感に引っ張られ、言葉遊びのようだけれど喪失感にくたくたになりながら、それでも、ラストの数十ページは泣きながら読んでいる…。
やはり、重松清はすごいな…という異色作でした。
正直疲れるので、元気のある時にお勧め。読み手の心持ちによって、様々に読めるリピート必至の作品かもしれません。 続きを読む投稿日:2013.11.17
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風が強く吹いている
三浦しをん / 新潮社
自分も走れるような気になる
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長距離走に挑むそれぞれのキャラクターが光る、魅力的なお話です。
箱根駅伝には最少の人数である10人ですが、よく描き込まれていて、(当たってる気がする占いのようなもので)誰かのどこかに自分を投影させるこ…とができるので、登場人物たちと同じように、強く共感したり反発したりしながら、どっぷりはまることができました。
あまりに前のめりに読んでいたためか、一時は
なんだか一緒に走っているような…、走ってみたいな…
もしかして私も箱根を走れるんじゃないか…?!と
大きな勘違いをさせられてしまいました。(あやうく実際に走り出しそうに…)
キャラの中でも灰二さんは恐ろしく完成された人物で、強さも優しさも、不意に見せる大人気なさや影の部分まで、まるでBLにでも出てきそうな設定に悶絶させられます。
彼が率いる寛政大の力走を、ぜひ多くの方に見ていただきたいな、と思いました。
(あ…、主人公の走くんは、文章の中に「走」という文字をいたずらに多くして読みづらくした割に、若干影が薄いです) 続きを読む投稿日:2014.12.02
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おたふく
山本一力 / 文春文庫
これで日経に連載とは
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初めて山本一力を読むなら面白いと思ったかもしれないが…。
この作家の作品をいくらか読んでいると、どこかで読んだ気がするフレーズと登場人物、キャラクターに再三出会ってしまい、読み流すにも苦痛を感じるよう…になった。
語彙は少ないし、頻繁な時間軸の置き換えは意味不明。江戸によくある伊勢屋は二階の厠近い部屋の使い方が同じらしいが、それを別の作品と同じ表現で新聞連載するなど、プロとしてあるまじき行為ではないのか?とさえ思った。
過去にはこの作家の面白いと思う作品にも出会ったが、それすら、飽きるほどのリフレインの一回目だっただけかも、と悲しい気持ちにさせられた(涙) 続きを読む投稿日:2014.12.11