マンボウさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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課長 島耕作(1)
弘兼憲史 / モーニング
昭和のサラリーマン像の投影
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海外出張時にマッサージ屋さんにおいてあった漫画コーナーで手にとり、続きをどうしても読みたくなって電子書籍で購入。どの企業をもじったのかすぐわかる日本を代表する大企業に勤めるエリートサラリーマンの山あり…谷あり波乱万丈なサクセス(出世)ストーリーです。お話には、必ずキーになる美しい女性(寅さんでいうマドンナ役か)が出てきて、女性達の愛によって、ピンチを潜り抜けていきます。本当は「島耕作と彼を愛した女たち」くらいなタイトルの方が内容を正しく表現しているような気もします。
お話自体も楽しく読めますが、昭和時代のサラリーマンが何に悩み何を求めていたのかがよくわかるので、25年前(四半世紀前)の日本および日本を取り巻く世界がどうだったのか(どう世界が日本からみて写っていたのか)の勉強にもなります。
あと、女性が読む場合には、歴史の勉強か、25年前の日本人男性にとって女性観を描いた虚構の世界くらに思わないと、つらいかもしれません。示唆に富む内容もたくさんあるにはあるのですが、基本的に男性サラリーマンの娯楽作品(スケベ本)ですので。
続きを読む投稿日:2014.01.16
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俺物語!! 2
アルコ, 河原和音 / 別冊マーガレット
作者の理想の男性像、全開!
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すっ、すごいです。「理想の男を動く絵(漫画)にしてみました」という勢いで、アルコさん、河原さんたちの「理想の男性像」が全開です!こんな男でいられれば、こりゃ人生突き抜けるわな、と思いました。女性のみな…さん、漫画の世界で妄想に浸るのは全然OKなんですが、読後にリアルの世界に戻ってきて、理想と現実のギャップに苦しまないようにして下さいね!
でもまぁ、男はある意味、あんまり考えずに、突き抜けているくらいの方がもいいのかなぁ(でも女性に対する優しさは忘れずにいれば)とは思いました。一瞬プレッシャーのようなものを感じました(汗)が、なんだかんだ言って勇気付けられました。(えっ、無理やり!?) 続きを読む投稿日:2013.10.05
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脳には妙なクセがある
池谷裕二 / 扶桑社BOOKS
読めば読むほど脳のクセのせいにしたくなる
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本書は脳科学をテーマに、26章に分け、読者が「へー」と言いたくなる話が綴られています。
ですが、それぞれが独立した項目なので、順番に読む必然性はありません。
評者は、読んでいる途中で、どこまで読んだ…のか(逆に言うと、あとどれくらい残っているのか)が、気になってきました。恐らく、本全体を通したストーリー性が無いので(テーマは本のタイトルの通り一貫性がある筈なのですが)、多重人格者による脈絡の無い話を聞かされている気分になるからだと思います。これって評者の脳のクセ!?それとも筆者のワナでしょうか。
要は、読んでいてイライラするんですよね。1つ1つはとても面白いのに。読めば読むほど、今どこにいるのか分からなくなって来て、道に迷った気分になるのです。不思議です。紙の書籍なら紙の厚さで分かるのでまだいいのでしょうが、厚みの分からない無い電子書籍だと相当にストレスです。
どうしてなんでしょうかね。脳科学を根拠に自分の脳みそを馬鹿にされているような気分になるからなんでしょうかね。もうし、脳じゃなくて脳のクセのせいにしたくなってきました。脳のクセに。
本書は、どこをどう紹介しても、一部の引用にしかならない構造になっているように思います。ですので、思い切って全体図(目次)を書いてみました。目次を読んでも、内容を殆ど思い出せません。すごい。
評者は、本書をして「24人のビリー・ミリガン」ならぬ「26人の池谷裕二さん」と呼びたい。
1. IQに左右される ― 脳が大きい人は頭がいい!?
2. 自分が好き ― 他人の不幸は蜜の味
3. 信用する ― 脳はどのように「信頼度」を判定するのか?
4. 運まかせ ― 「今日はツイテる!」は思い込みではなかった!
5. 知ったかぶる ― 「○○しておけばよかった」という「後知恵バイアス」とは?
6. ブランドにこだわる ― オーラ、ムード、カリスマ…見えざる力に動いてしまう理由
7. 自己満足する ― 「行きつけの店」しか通わない理由
8. 恋し愛する ― 「愛の力」で脳の反応もモチベーションも上がる!?
9. ゲームにはまる ― ヒトはとりわけ「映像的説明」に弱い生き物である
10. 人目を気にする ― なぜか自己犠牲的な行動を取るようにプログラムされている
11. 笑顔を作る ― 「まずは形から」で幸福になれる!?
12. フェロモンに惹かれる ― 汗で「不安」も「性的メッセージ」も伝わる!?
13. 勉強法にこだわる ― 「入力」よりも「出力」を重視!
14. 赤色に魅了される ― 相手をひるませ、優位に立つセコい色?
15. 聞き分けがよい ― 音楽と空間能力の意外な関係
16. 幸せになる ― 年をとると、より幸せを感じるようになる!
17. 酒が好き ― 「嗜好癖」は本人のあずかり知らぬところで形成されている
18. 食にこだわる ― 脳によい食べ物は何か?
19. 議論好き ― 「気合い」や「根性」は古くさい大和魂?
20. おしゃべり ― 「メタファー(喩え表現)」が会話の主導権を変える
21. 直感する ― 脳はなぜか「数値」を直感するのが苦手
22. 不自由が心地よい ― ヒトは自分のことを自分では決して知りえない
23. 眠たがる ― 「睡眠の成績」も肝心!
24. オカルトする ― 幽体離脱と「俯瞰力」の摩訶不思議な関係
25. 瞑想する ― 「夢が叶った」のはどうしてか?
26. 使い回す ― やり始めるとやる気が出る
なお、☆の数は、面白いと思った章の数からイライラした回数を引いて算出しました。イライラしましたが、いい本です。とっても面白いです。脳のクセのせいです。 続きを読む投稿日:2015.04.28
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極黒のブリュンヒルデ 13
岡本倫 / 週刊ヤングジャンプ
高校生青春マンガっぽくなってきた
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自分がいやになるくらい面白い(うーん、自分に残念)。
ストーリーの展開パターンに慣れてきてしまった為、あっと驚くことは減りましたが、相変わらず面白いですね。そして、読み方によっては深いです。こんな絵柄…とセリフなのに(失礼)。
問われているのは生死観、過去(記憶)との向き合い方、自分の欲望(正体)との折り合いの付け方等々。絶望的な状況でささやかな希望を吐露されると、なんだか泣けてきます。
気が付くと登場人物のだれかに感情移入していて、心と身体が一瞬分離したような感覚になります。
今回は、人が死ぬけど死なないことが多く、ちょっとほっとします(あんまり書くとネタバレか)。
しかし、どうせ死んでも死なないんだろうと思っていると、本当に死んだりするのかもしれません。緊張感をもって読むことをお勧めします、こんな絵柄ですが(しつこい)。
続きを読む投稿日:2015.07.24
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米国製エリートは本当にすごいのか?
佐々木紀彦 / 東洋経済新報社
5年も経ってから読むと、時代が変わったことに気が付きますね
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早く世間に認められたい野心家による、20代後半での米国大学院への留学体験雑記(2007年9月~2009年6月)です。評者は出来なかったことだけに、正直羨ましい。筆者の行動力も素晴らしい。最近は、某有名…出版社を辞め、新進気鋭のニュースサイトへ転職なさったようです。
内容が、論文ではなく体験記でしたので、纏めることは出来ません。いくつか「なるほど」と思った点を、自分自身の備忘も兼ね、ご紹介させて頂こうと思います。
・米国の大学の講義では事前の課題図書(Reading assignment)が非常に多いため遊ぶ暇もなく、1分単位の時間管理(Time Management)が必然となる。女子学生も多額の投資として勉強しに来ている(当然ですが)ので、勉強の邪念(恋愛対象)になるような綺麗な人が少ない。
・大学は勉強の内容以上にコネ作りの場のようだ。(学歴が卒業後もSNS等を通じたネットワーク構築上での武器になりそうですね)
・当時(2008年頃)は、韓国人留学生が、一昔前の日本人のように、人数が多い上に韓国人同士で固まってつるんでいたので、(本国の人口規模の割に)存在感が大きく凄かった。アジア人が、留学生全体の5割を占める。
・米国に中国本土から留学している中国人留学生も多いが、独立独歩でつるんでいない分だけ話し易い。反日教育を受けているが、国家としての中国と個々の中国人は別次元。日本のアニメで育ち、日本のAVのお世話になったという話しになり、意外と話せる。日本産コンテンツの力を感じる。
・高い学費と時間を投資した卒業生は、投資が回収できる金融・コンサル系の有名企業に進む人が多い。教育内容とも相性がいいようだ。(結局は金が全ての世界か?)
・歴史の教養は、過去の教訓から今を理解し、的確な情勢判断に基づき未来を創造していく原動力。政治的な理由や個人の感情ではなく、歴史のファクトに基づき実証的・理性的に真摯に向き合い議論を積み上げていく姿勢に感銘。日本も学ぶべきという筆者の感想。
・韓国のロビーイング(従軍慰安婦問題)にせよ、中国に対する米国内の「封じ込め派」と「融和派」の対立にせよ、国際政治を見極め、日本の存在感を復活(パッシング状態から脱却)させるには、国を引っ張るエリートのインテリジェンスが大事。
・米国への日本人留学生が減ったのは、日本の国力とプレゼンスが下がったからではなく、国として成熟した(発展途上国を卒業した)から。絶対数としては少子化の影響もある。(日本の経済界重鎮による日本人留学生の減少に対する嘆きに違和感)
とまぁ、本書のタイトルとは全然関係の無い、留学感想文でございます。
読後、評者の心をよぎったのは「米国産のエリートを羨ましがっても、大したことないと思っても、何にもなりません」といったあたりでしょうか。
当時、米国留学よりも、仕事と家庭作りにまい進して良かったです。
続きを読む投稿日:2018.06.25
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イシュタルの娘~小野於通伝~(1)
大和和紀 / BE・LOVE
大したものです、おつうさん
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タイトルは何であれ、安土桃山時代(最近は織豊時代と呼ぶそうです)から江戸時代初めまで実在した女性書家の小野於通(おののおつう)を主軸に描いた日本の歴史漫画です。
評者は教養がなく、最初「イシュタル」…と聞いてもメソボタミアの女神とも知らず、何を想像してよいのか分かりませんでした。読み始める前は、中央アジアあたりのどこかを扱った漫画なのかなと思っていた位(「乙嫁語り」の強い影響を受けていた)です。
読み始めた後に「イシュタル」について色々ネットで調べましたが、「性愛と豊穣を司る女神」とか「固定的な夫神は存在せず多くの愛人をもつ奔放な女神」といった程度の情報しか入手できず、当漫画で描かれている大変に真面目な女性である小野於通(おののおつう)と照らし合わせると「時代や慣習の制約に捉われず自らの希望に沿って生きた女性」と作者は表現したいのであろう想像しました(違っていたら、すいません)。
読み始めるとアッという間に非常に引き込まれ、一気に1巻から10巻まで通読してしまいました。主人公の小野於通は、特殊な霊感を持った女性として、数奇な運命を辿るのですが、女性漫画ならではの、色々と魅力的な男性との忍ぶ恋や、本命の男性への愛、親が決めていた望まない結婚生活等が描かれ、逆境にあっても、強い意志と霊感、教養と書を武器に、決して挫けることの無い強い女性の生き様が描かれています。
当漫画を読む前に、司馬遼太郎の「国盗り物語」や、山岡 荘八の「徳川家康」「伊達正宗」、安部龍太郎「等伯」を読んでおりましたので、既視感のあるシーンが多いと思いましたが、描く視点は作者ならでは。新鮮です。
女性漫画家ですので、やっぱり女性を元気づけたいのだと感じました。私は男ですので、作者自身が恋愛対象としたい歴史上の男ばかりを強調している感を持ちましたが、それはそれで、思い入れがあって良いのではないかと思います。
時代、歴史の一つの描きかたとして、楽しめますよ。お勧めします。
続きを読む投稿日:2015.04.03