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at Home
本多孝好 / 角川文庫
明るい家族計画(死語)
5
「at Home」「日曜日のヤドカリ」「リバイバル」「共犯者たち」の短編4つが入っている.
表題の「at Home」というタイトルがぴったりな内容.
「at Home」は犯罪者の親と寄せ集めの子供ど…もで構成されている一家の
中で垣間見える愛が良い.
なんだか昭和の時代の家族愛を見ているような気分にしてくれる.
そして後味が良い.
犯罪者だがギスギスしたものではなく,穏やかで,明るい詐欺師軍団.
危険極まりない.取り締まってくれ.
ただ,憧れる.
悪いことに惹かれていくのとは少し違うのだが憧れる形の家族愛.
詐欺にあった人の視点で馳星周に本を書いて貰うと犯罪は良くないという現実に引き戻してくれるだろう.
「日曜日のヤドカリ」
別名「弥生さん」である.僕は少し変わった女性が好きだ.
となるとこの弥生さんも好きになるのは仕方ないこと.
弥生さんは結婚した女の連れていた子供である.
丁寧語で話する彼女はとても素晴らしい.
僕もこんな子供が欲しい.当然べっぴんであることが必要条件ではあるが.
そして小学生.
小学生.丁寧語でしゃべる.血は繋がっていない.
僕の中に眠る100のケダモノの一つである「ロリコング」が覚醒しそうなシチュエーションである.
で,だ.この物語の一番素晴らしいところは主人公も弥生さんに終始丁寧語で会話するところである.
親子で丁寧語で会話する.
「お父さん,お腹,ぷにょぷにょです」
なんて言われた日には
「せつ子ぉぉぉぉおおおおおお」
と,なること間違いないのに冷静な主人公に脱帽です,
最近僕は脱毛気味です.
丁寧語女子.流行らないかなぁ.日本語乱れてるからなぁ.
「リバイバル」は借金まみれの主人公が外人女性と強制的に結婚させられて.
特にこれというものもなく.
なんとなく別れた奥様とよりを戻しそうなそんな話.
もうちょっと現実は最低だと思うけどこういう温いのも良い.
あと,鎖国万歳な小生は外人様は怖くて怖くて.
家に帰ると外人様がいたりしたらきっとこう叫ぶことでしょう.
「ジーザス!!」
言ってる自分に酔いしれるとウイスキーがまたうまい.たぶん.
「共犯者たち」
ストーリーとかも全然違うけどどこか「at Home」に似た印象を受けた.
主人公の家族構成は35の主人公と妹,母親.父親は20年以上前に音信不通に.
そんな中,妹の子供がどうも虐待にあってると気付く主人公.
それを解決する話.
この音信不通の父親が出てきて問題解決に貢献するがこの男,カッコイイのである.
「手が早く,腰が軽く,口がうまい」
こういう男になりたいものである.好い加減という高田純次様のようにはなりたくはないのですが.
手は遅く,腰が重く,口はもごもごな自分とは全く違う.
やはり自分とは違うところに良いなと思うのだろうか.
全編とおしてこんな家族を持ちたいと思わない.
だが,どんな種類の家族でも幸せになろうと思えばなれる.
そんなメッセージが伝わってくるあったかい本でございました.
幸せにそれほど魅力は無いですが. 続きを読む投稿日:2013.11.03
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正義のミカタ I’m a loser
本多孝好 / 集英社文庫
イジメテミタイ
1
いじめられっ子の主人公が大学に入学し,「正義の味方研究部」という一風変わった部に入って
いじめられっ子を卒業する話.
正義の味方研究部では,大学内の風紀委員のような活動を行う.
悪いことしているやつ…を成敗したり,飲み会での行き過ぎを事前に止めてみたり.
本多孝好の作品は現実と少し離れたものをうまく現実世界に落とし込んでくる.
今回は「間先輩」である.
インテリヤクザみたいなものだが実体不明で常に犯罪行為をスマートに行う人間で
現実にはまずいない.
物語は間先輩の悪事と主人公の恋愛事情で淡々と進んでいく.
中途半端に.
そう,何故か中途半端な印象を受ける.
何に対して中途半端かはよく分からないけれど.
正義の味方研究部の面々がもっと活躍したり,戦闘力の高い友達のトモイチを殴られるのが得意な主人公が助けるとか,何故か友達の彼女を略奪するような主人公が出てきたりするような...
そういったセンセーショナルなものが無い.
だから面白いのか?と言われれば面白いとは言えないまでもつまらないのか?と言われればつまらなくない.
ただ,雰囲気は好きだ.不公平だ.もっともだ.
それにしても主人公の特殊能力は素晴らしい.
殴られるのを避けれるのに敢えて受ける.
プロレスラーである.
そういう意味ではいじめられることによって得られた肉体にもっと活用の場をあげてほしかった.
いじめというのはなかなかに良いものである.
誰かがいじめられているおかげでこちらは平穏に過ごすことが出来る.
自分に降りかかってくる?
それはない.何故なら火の粉を振り払うように僕はなっているからだ.
いじめられている奴を気が向けば助けることもある.
いじめなんて別に大した問題ではない.
それは日常である.スポットライトを無理矢理向ける暇な人たちには虫酸が走る.
ただそれだけなので.
序盤の主人公がいじめられているシーンは歯痒かった.
そういう感情になるのも読書の楽しみの一つかな.
続きを読む投稿日:2013.11.03